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BLの丘
ただそこにいて 23
2011-09-16-Fri  CATEGORY: ただそこにいて
俊輔は見覚えのない白い天井の下で目を覚ました。
起き上がろうとして体に激痛が走る。特に腰の…、後孔の痛みがひどく、そのことで吉賀と何があったのかを思い出した。
熱い体の原因が何であるのかは記憶に新しい。
また発熱しているのだと判断出来た。
「ここ、どこだろう…」
ゆっくりとした動きで頭をひねり部屋を見た。
真っ白なシーツがかけられたベッドが隣にもう一つ見える。
ベッドの上には仕切るカーテンレールがあったがカーテンは閉められていない。
「病院、かな…」
部屋の造りは病室といった感じだ。ベッドが二つしかない部屋はあまり広いとも言えない。
俊輔は自分に着せられているものが、浴衣のような前合わせのものであることを知る。もちろん自分の持ち物ではない。
部屋の外で人の話し声が聞こえた。
男性と女性の二人がいるようだ。
状況を知りたいと思いながら、体にある痛みとだるさで思考能力が低下していく。
あの後、吉賀がどうしたのかも気になっているのだが…。

引き戸のドアがスライドして開けられた。
「はい、お疲れ様。また明日もよろしくね」
姿を現したのは白衣を羽織った男性だった。後ろを振り返りながら誰かに話しかけているせいで、俊輔が目覚めていることに気付くのが少し遅れる。
津和野と同じ格好をしているところを見て、この人も医者なのだと知った。
30代の半ばくらいだろうか。くせっ毛なのか緩くウェーブのかかった焦げ茶色の髪と、意思の強そうな同じ色の瞳。
先程誰かにかけられた声が柔らかな印象があったので、見た目とのギャップに少し驚かされた。
見た目の印象は…、そう、キツイ感じだ。体躯の良さも強さを表しているようだった。
「あぁ、お目覚めだったんだね。どうかな。気分が悪かったりしない?」
俊輔の様子に気付くと問いかけながら首にかけていた聴診器を手に取る。
一度俊輔の額に掌を置いた後、前合わせの間から手を入れて直接皮膚に器具を当ててきた。
「あの…、ここは…?」
状況が分からないことを尋ねるのだが、診察の最中だからなのか、返事はすぐに返ってこない。
俊輔も束の間黙った。
「俺の病院。知名(ちな)が君を連れて来てね」
「ちな?」
「津和野だよ。津和野知名。昔同じ病院で働いていたから知っているんだ」
寮の部屋までやってくるとは吉賀から話でも聞いたのだろうか。だけど自分でも診られただろうに、どうしてなのかと疑問が湧く。
「一度熱を計ろうか」
目の前の医師はテキパキと動き続けている。質問するタイミングを失ってまた俊輔は黙ってしまった。
渡された体温計を脇に入れていれば、すぐに次の問いが降ってくる。
「下半身の痛みはどう?体温を計り終わったら様子を見たいから横向きになってくれるかな」
俊輔が体に痛みを持っていることを知っていた。ということは当然何があったのかも把握できているのだろう。
そのことは恥ずかしくもある。
性行為があったと自分から話せるほど、この分野においての慣れはない。
しかも自分で見られない部分を晒すわけだ。
「だ、大丈夫…」
「患者の『大丈夫』ほどあてにならない言葉はないよ。セックスっていうのは同意の上でするものなの。これは暴行っていうものに値するから」
淡々と語られてますます小さくなる。すでに一度確認済みなのだろう。
知識の無さまで露呈したようなものだ。
確かに吉賀が強引に進めたところがありはするが、頑なに拒んでしまったのは俊輔のほうだ。
素直に甘えられていたら、痛みではなく快楽を味わえたんだろうか。

体温を計り終わる時間がやってこなければいいのに…などと思っていれば、その時はすぐに訪れてしまう。
ピピピピっという電子音に反応して医師が「渡せ」と言うように掌を見せてくる。
自分で確かめる間もなく取られた体温計に、医師の眉根が寄った。
「うーん。まだ結構あるな。まぁ精神的なショックも絡んでいるんだろうけど。はい、じゃあ横になって」
寝返りをうつ、それだけでもズキズキと痛みが背骨を突き抜けていく。
「…っつぅ…っ」
昨夜は動揺もあったのだろうか。こんなに激しい痛みではなかった気がするのだが…。
体がバラバラになりそうだ。
俊輔が自分の力で動くことが辛いと感じ取った医師は手を差し伸べてきて、掛けてあった布団を剥いだ。足腰を診察しやすい体勢に変えていく。
簡単に捲り上げられた裾は、それでも臀部だけを晒した。
「腫れちゃっているんだよね。薬を塗るから少し我慢していて」
見えない部分は想像するしかない。
触れられることに脅えが混じったが、今持っている痛みほどのものはなかった。

「さてっ、と」
治療を終えた医師が俊輔を元に戻しベッドの脇に座ってきた。そして慣れたように俊輔の頭を撫でた。初対面なのに親近感を伺わせる態度は津和野にも似ている。
「俊くんだっけ。しばらくうちで暮らしてもらうから」
「え…?」
なんでもないことのようにサラリと言ってくれたが、話が全く見えない。
“うち”とはこの病院のことなんだろうか。入院するほどの事態になっていたとは露ほども思っていなかった。
それより入院する費用がどこから出てくるのか、と真っ先に浮かんだ。
「今の状態で寮での一人暮らしは無理だよ。それに君も顔を合わせづらい人がいるようだし。気持ちの整理をつけるためにも間を取ったほうがいい」
「で、でも、仕事…」
「そんなに慌てて戻ることを考えなくてもね。どうしてもという事態になったら、無利子でお金くらい貸してあげるよ」
太っ腹な発言にも驚かされる。津和野に俊輔のことをどう聞いたのか知らないが、簡単に人を信用するのも問題だろう。
「まぁ、一人でがんばるより周りの人にも頼れってことだね。そういうところに相手のもどかしさが生まれてこんな惨事になったんじゃない?」
見てきたように言われては返す言葉もなくなる。
自分の家の出来事に吉賀を巻き込みたくない思いが甘えさせなかったし、「好き」とも返せなかった。
受け止めてほしい気持ちを持ちながら、ギリギリのところで踏みとどまってしまった。
そして閉ざされてしまった後孔…。
「とにかく今は休養をとること」
医師は撫でていた手を、宥めるようなポンポンという動きに変えて俊輔を見下ろしていた。

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コメント

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No title
コメント | URL | 2011-09-16-Fri 11:11 [編集]
きえさんのお話には優しい思慮のある人がいてくれてうれしいなぁ、と思います。
津和野さんもこの名無しの先生もすてき。
Re: No title
コメントたつみきえ | URL | 2011-09-17-Sat 08:49 [編集]
L様
こんにちは。

> きえさんのお話には優しい思慮のある人がいてくれてうれしいなぁ、と思います。
> 津和野さんもこの名無しの先生もすてき。

また新しい人物が出てきちゃいました(^^;)
ほのぼの を感じてくれるような話しが書けたらいいな~という気持ちだけはあるんですけどね~。
物語を組み立てるのも文章力の無さも…。成長しませんね…。
まぁ、ふたりともいい大人ですからね。
そんなところを倉岳も好きなんでしょう。(今気付いたけど← 9歳差でしたね、津和野と倉岳)
コメントありがとうございました。
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