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BLの丘
ただそこにいて 41
2011-10-04-Tue  CATEGORY: ただそこにいて
伊佐は「難しく考えなくていい」と諭してくる。
少しだけあけた距離を再び埋めて、伊佐はいつものごとく背中をとんとんと叩いた。
「とりあえず返済のことは任せて」
「でもそれじゃ伊佐さんが…」
「今の俊輔を一番に拘束しているものはそれだろう。その問題がクリアできれば考えに余裕ができるって前にも言ったはずだけれど」
「だけど…」
いくら周りからの信頼があったとしても…、条件が揃っていると言っても、出会って数日の人間に返済を頼む図々しさは俊輔の中に存在しない。
体を渡す、という事実もまだ現実味を帯びていない。
伊佐は少し考える仕草をとってから、話を変え始めた。
「じゃあ俺に返すっていうのは?無利子で貸すから。利息分がなくなっただけでもかなり変わるよ」
「そんなこと…」
「言うことを聞きなさい。それに正直なところ、俊輔が受け持っている金額は、俺にとって痛くも痒くもないものなんだ。好きな時に返しに来る出世払いってことでいいよ。あぁ、もちろん体でっていうのも受け付けるけどね」
金銭感覚の違いはすでに知ったことだったが、こうも簡単に言われてしまうと返す言葉が見つからない。
最後には本気とも冗談ともつかない言葉まで盛り込まれて、先程聞かされた『伊佐のものになる』という話が白紙に戻っていくのを教えられた。
最初から伊佐は、本気で俊輔を手に入れようなんて考えていなかったのか…。
ただ、今の俊輔を思い通りに動かす為には、一度その身を我がものにしたほうが従わせやすい。
だから伊佐は『俊輔をまるごともらう』と言ったのだ。
所有物にして言い含めてから俊輔を解放する…。
「伊佐さん…」
うまく丸めこまれている感じは否めない。
これも魔法の力なんだろうか…。
「我慢しすぎず、気持ちを表現するのは悪いことじゃないよ。もちろん相手を傷つけるのは問題だけれど。俊輔は自分でどうにかしようと溜め込み過ぎるんだ。もっと周りの人間に目を向けて甘えればいい。昨日の夜のように、そばにいてほしいのなら、そう言えばいい」

昨夜、ここで伊佐に抱かれた時のことが頭を過る。
半分は現実逃避だった。感情を表せる魔法の世界をもっと味わいたくて、包まれる温かさに溺れて…、悪夢にうなされる夜から守ってくれるのだという安堵の中にいたくて…。
伊佐はあの時だってはっきりと吉賀の元に戻るべきなのだと伝えてきた。
吉賀に素直になれず、間違った選択をした俊輔を理解していたから、抱くことで俊輔に本当の気持ちを気付かせた。
いや、素直になることを覚えさせた、というべきか。
現に伊佐に向かっては、『吉賀と離れるのは嫌だ』と思いが溢れたばかりだ。

「俊輔には黙っていたけれど、昨日、彼、ここに来たんだよ」
「え?」
突然の話題に俊輔が勢いよく顔を上げる。
少し困った顔の伊佐が宥めるように俊輔の髪を梳いた。怒らずに聞けということなんだろう。
「俊輔と話がしたいって言って来たんだ。だけど眠っていたからそのまま帰した」
「なん、でっ?!吉賀…。どうして?起こしてくれれば…」
「会ったら俊輔は自分の気持ちを全部伝えられたか?」
咄嗟に反論する俊輔に当時の俊輔の様子を問われて呆然とした。
「俊輔はまた彼を突っぱねただろう?そんなことをすれば、受け入れられないと再度彼を傷つけるだけだ。彼だって自分のしたことは充分なくらい反省している。そんな彼をまた拒絶すれば、それこそ今後の修復は難しくなるよ」
時間を置くべきだ…とは何度か言われた。
それは吉賀に…というより俊輔にとって必要なものだったのかと思う。
同時に俊輔は、吉賀にまだ嫌われていないのかとホッとするものが生まれた。
安心、なのか…。ほろりと涙が頬を伝った。
伊佐にいだく安堵感とは違った安らぎのようなもの。

「俊…。全て丸く収めてやるから、今は俺の言うことを聞け」
伊佐の手が俊輔の涙を掬う。
堪えていたものが噴き出すかのように涙が次々と零れ出る。
いつか、津和野の胸を借りて大泣きしたときのようだ。
だけどはっきりと違うもの。疲れきって何も見いだせなかった時とは違っている。
…本当にほしいもの…。
伊佐は胸に抱きしめて、髪の上に唇を寄せて、ただ泣き縋る俊輔を黙って包んでくれていた。

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またリアル画像です。こちらも別宅では紹介したことがあるのでご覧になったことがある方はいるかも。
Law Kirio 背後注意!!
いつもこんなものをみているのか?!と人格疑われそうですが…。ハイ…。萌えてます。
いや、今回のこれは、若くていいなぁと思ったので…(今書いてるのも若いけど…)
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