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BLの丘
ただそこにいて 58
2011-10-21-Fri  CATEGORY: ただそこにいて
津和野と吉賀の間に何が起こったかなどもちろん聞けるはずもなく…。
ただ、以前とは違って妙に落ち着いてしまった吉賀の姿に、妙な違和感を覚えた。
無理して、どうにか今の関係を保とうとするような…。
真っ向からぶつかってきてくれるような吉賀が好きだったのに、一線を置かれたような仕草に、返って不安が募るだけだ。
それを拒絶したのは自分であるのかもしれないけれど…。

伊佐の腕の中は確かに心地良かった。ぬるま湯に包まれてなんの心配もないと、幼心に戻れたような…安心感。
でも吉賀と共に追いかけたいのは、そんな温かさではない。
二人して何かをやりとげたい目標みたいなもの…だろうか。
まさに二人して築いていく未来が見える。
強引に連れ去ってくれる方が返って気持ち良く過ごせるのかもしれない。
その先に待ち受けているものが何であるのかなど分かりはしないが、いつか、伊佐と共に食べたイカ焼きが何故か脳裏に浮かんだ。
あんなふうに過ごせる”恋人同士”のような時間。
憧れで夢で、願望。
あの時、一瞬でも浮かんだ顔は吉賀であって、そんな時間を彼と共に過ごしたいという、贅沢が生まれた。
強引でも引っ張っていってくれる強さに、ずっと憧れていた。
…同じ時を過ごしたい…。

それが今、吉賀を我慢させているようで…。
津和野に何を言われたのかは知らないが、落ち着き払った姿は俊輔の知らない吉賀である。
そんなふうに、吉賀の『自然さ』をうしなわせたくもない。
「吉賀…?」
不安にも似た声が漏れてしまう。
抱きしめられた腕の中で脅えのような囁きが漏れると、別の意味で不安にさせたと思ったのか、吉賀のかかえる手がより一層やわらかくなった。
「俊輔…。怖がんなくていいから…。大事にしてやるから…」
奪うような激しさは感じられない。…いや、抑え込んでいる、というべきだろうか。
我慢している吉賀の姿が、嫌でも体に染み込んできた。
全ての原因は、この前、受け止められなくて逃げ出してしまった自分のせいなのだろう。
吉賀にまで苦痛を味あわせたことが俊輔の中で重りとなる。
抑え込まれることに、物足りなさを感じるのは贅沢なことなのだろうか。
瞬間的に離れていく体に思わず縋りつく。
伊佐に頼ったわけでもなく、津和野に奪われたくもないと…。
俊輔が求めるのは吉賀だけなのだと、まるで言い聞かせるように。

「俊…?」
「信じてる…。俺のこと、大事にして…」
甘え強請るような、そんな台詞は吐いたことがない。
でも今、共に居たい、素直になる、その全てが集約されたように、思うものが自然と零れ落ちた。
津和野や伊佐に教えられたアレコレよりも、俊輔を思ってくれる、また、吉賀を受け止めるのだと思わされる言葉が全身を走りぬけていった。
「俊輔…」
抱き締めてくれる体が、離さないと言っているようで、さらなる悦びを宿す。
彼がいつの間にか覚えた人懐っこさとは違う、人に対する柔らかさも、俊輔に対して見せる嫉妬心も、何もかもが愛しいと感じた。
それを肌で味わえる今…。
僅かな間でも疑いを持ち、吉賀に捨てられるのではないかと疑念を抱いたことを反省する。
そして、津和野からあれこれと言われたことで吉賀の、俊輔を求める意識も変わっていた。
単なる欲望の表れだけではなく…。

「俊輔、好きだ…」
「うん、好き…」
津和野の指導なのか、伊佐のいいつけなのか、とりあえずこの場では、思いを確かめ合い、キスだけで終わりにした二人だった。

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コメント | | 2011-10-21-Fri 07:52 [編集]
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No title
コメントけいったん | URL | 2011-10-21-Fri 09:14 [編集]
俊輔は、伊佐先生にでしょ!
では 吉賀は、津和野先生に!?

電話で それぞれの受け持ちを割り振ってたからなぁ。

津和野先生の指導方法って...怖くて聞けないよね、俊輔!

でも 私は、知りた~~い♪(●´ω`●)ゞエヘヘ...byebye☆
Re: No title
コメントたつみきえ | URL | 2011-10-21-Fri 12:08 [編集]
K様
こんにちは。

> やきもきさせられた俊くんと吉賀ですが、やっと
> 思いが通じる というか すれ違わなくてすみそう?
>
> 俊くんも伊佐さんのおかげで もう純情なだけではない
> もんね。
>
> 吉賀も津和野先生にあれこれ教わって 余裕出てきてる
> し、二人の甘々が見られる日も近い?

やっと(笑)
とても言えた内容ではありませんが、俊輔は純真に吉賀に縋っていくことでしょう。
吉賀もね~。色々と周りから言われてますから。
余裕…っていうか、抑えなきゃ…みたいな気持ですかね。
突っ走って傷つけたのは充分なくらい知ってるし。
ラブラブに交われる日は近い…のか?!

コメントありがとうございました。


Re: No title
コメントたつみきえ | URL | 2011-10-21-Fri 12:16 [編集]
けいったん様
こんにちは。

> 俊輔は、伊佐先生にでしょ!
> では 吉賀は、津和野先生に!?
>
> 電話で それぞれの受け持ちを割り振ってたからなぁ。
>
> 津和野先生の指導方法って...怖くて聞けないよね、俊輔!
>
> でも 私は、知りた~~い♪(●´ω`●)ゞエヘヘ...byebye☆

何を聞いたんでしょうかね~(〃▽〃)
怖くて聞けない内容っぽいです。津和野が言うだけに…。
電話口でのやりとりをそれとなく俊輔は聞いてしまったけれど、
吉賀は知らないことだしね。そんなことも俊輔は言えないでしょう。
何より、自分に何があったのかも言えないけれど…。
二人に指導されているっていうこと自体が、言えたものではないですなぁ。
(何してたんだって話になっちゃうもんね)
コメントありがとうございました。

No title
コメント甲斐 | URL | 2011-10-21-Fri 21:33 [編集]
吉賀君、よーく我慢できました
けど俊輔くんたら手を出されたら怖くなるけど
手を出さないきゃまたそれはそれで不安って
もーわがままなんだからー

でも、俊輔くんが心を決めて
そういうことも含めて一緒にやっていきたいと思えたんなら
よかったですよね
やさしーく真綿に包まれて大事にされるよりも
傷つくことがあっても二人で一緒に歩いていきたいっていうことを自覚できてよかったと思います
確認
コメントさえ | URL | 2011-10-22-Sat 02:38 [編集]
きえちゃん、こんばんは~。
これって俊輔?
吉賀にまで苦痛を味あわせたことが俊素←俊輔?

昼休みはチューだけで我慢ですね。
いよいよらぶらぶかしら!?
Re: No title
コメントたつみきえ | URL | 2011-10-22-Sat 06:40 [編集]
甲斐様
おはようございます。

> 吉賀君、よーく我慢できました
> けど俊輔くんたら手を出されたら怖くなるけど
> 手を出さないきゃまたそれはそれで不安って
> もーわがままなんだからー

一皮むけたら我が儘な子になっちゃいました(笑)
素直でよろしい、と言えるのか…。
吉賀がその辺を汲み取れたらね。
狼になっちゃいそうです。(加減が難しいよ~と泣かれそう)

> でも、俊輔くんが心を決めて
> そういうことも含めて一緒にやっていきたいと思えたんなら
> よかったですよね
> やさしーく真綿に包まれて大事にされるよりも
> 傷つくことがあっても二人で一緒に歩いていきたいっていうことを自覚できてよかったと思います

やっぱり俊輔には、そばにいてくれる同年代の人がいいみたいですね。
伊佐じゃあちょっとオジサンで…。
同じことを一緒に体験する、一緒に進んでいくっていうのをやりたいらしいです。
吉賀ともそういうのを分かち合えたら日々は楽しくなるでしょう。
コメントありがとうございました。


Re: 確認
コメントたつみきえ | URL | 2011-10-22-Sat 06:42 [編集]
さえ様
おはようです。

> きえちゃん、こんばんは~。
> これって俊輔?
> 吉賀にまで苦痛を味あわせたことが俊素←俊輔?

わはははっ(゚∀゚)
ご指摘感謝です。
なーに、入力しているんだかなぁ~(^_^;)

> 昼休みはチューだけで我慢ですね。
> いよいよらぶらぶかしら!?

はい、あくまでも仕事の合間なので。
いくら感情が高ぶってもそれ以上はいけませんよね~。
そろそろらぶらぶにして終わりにしたいです。
コメントありがとうございました。

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