疲れた体はあっという間に眠りの世界に誘われた。
久し振りに出勤したから精神的にも疲労していた部分があったのだと思う。
眠れずにいた夜に、眠れる魔法をくれた伊佐だったのだろうか…。
翌朝目覚めると、すでに隣に伊佐の姿はなかった。時間を確認すれば、出勤時間に間もなく…という、かなりギリギリな時だった。
「なんで起こしてくれないの~」
不満が思わず声になる。
慌てて起き上がろうとして…、起き上がったけれど、異物感が腰のあたりを襲ってきた。
痛みではなくて、何かが後孔に挟まったような変な感じ…。
きゅうっと孔を締めて、何もないことを確認したくなるような、妙な感覚だった。
勢いよく動く、ということができない。もちろん、過去に味わったような苦痛は何もないけれど…。
ゆっくりとした動きで階下に行き、リビングに入るとキッチンから伊佐の声がする。しかし、それは俊輔に向けられたものではなかった。
「…どうにかするものだろう。自分を提供してでも教育しとけ。……知るか、自業自得だろう」
リビングに入っていく物音に気付いた伊佐の視線が、俊輔とぶつかる。途端にニコリと笑って、強引に通話を終わりにしようとしていた。
「とりあえず俊輔は休ませるからな」
「え?!」
伊佐の台詞には俊輔の方が驚かされるだけだ。
俊輔が真相を確かめるよりも早く、伊佐は電話機を置いていた。
かき回していたらしい味噌汁の鍋の火を切る。
「俊、朝飯、すぐ食えるぞ」
「そ、そんなことより、…休みって?!」
「どうせ体の調子も万全じゃないんだろう。今日は休んでおくのがいいから。言うことを聞けって言っただろう」
有無を言わせない口調に圧倒されそうになる。
…が、何もかもを流される控え目さは今の俊輔にはない。
「そんな…っ、勝手に…っ」
反論する俊輔に、何か諭すように伊佐のため息にも似た吐息が零れ落ちた。
「なぁ、俊。今のヨチヨチ歩きで会社に行ってどうなる?彼との昨日のこともある。今は会うべきじゃない」
誰に対してのことなのかは嫌でも知れてくる。
昨夜、自分を取り巻く環境で何が起こったのかも…。
吉賀を求め、退け…、最後には伊佐に甘えて縋った。
恐怖心が湧くかの有無を確かめるため、と棚に上げたとしても、この状態で吉賀の前に現れれば、それ相応の疑い(この場合真実であるのだが…)を持たれてもおかしくない。
伊佐はすでに『体調不良』という名目で俊輔の休暇をもぎ取っていた。
その中には、昨日感じた”精神的苦痛”も含まれているらしい。
そんなことになればますます吉賀が辛い思いをしてしまうのではないかと危惧するのに…。
伊佐から漏れる台詞は、「知名に任せておけばいい」というもので…。
どうやら、医師二人の間では、面倒を診る役割分担が決まっているようだった。
自分たちのことを他人に任せるのもどうなのかと思うけれど…。
ダイニングテーブルの椅子に座ると、そこに置かれたドーナツクッションが、改めて良い働きをしてくれていることに気付く。
直接的な刺激を与えてこない。非常にありがたいことだった。
伊佐は俊輔の中にまだ異物感があることを聞きだすと、万が一のために、とかつて飲んだことのある”排便しやすくなる薬”をまた飲ませた。
極力、痛みは伴わせない、伊佐なりの配慮らしい。
後々にも気を使うべき点が多いことを改めて知る『性行為』だった。
だけどあの快楽を吉賀と共に感じられるようになったら…。悦びはまた変わるのだろうか。
この違和感も繋がれた証として嬉しいものになるのだろうか。
そんなことを考えながら、狂ってしまいそうになる自分を思い浮かべて、恥ずかしさに頬が熱くなる。
朝から何を淫猥なことを考えているのだと思わず自分を戒めたくらいだ。
そして、伊佐の顔を正面から眺めてしまった時、初めて自分がとんでもない醜態を晒したことに気付いた。
伊佐は何でもないことのように振舞っているが、過ごした時は人に聞かせられたものではない。
しかし、あまりにも平然と過ごされるため、俊輔も、これが当たり前の”朝”なのかと思ってしまった。
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久し振りに出勤したから精神的にも疲労していた部分があったのだと思う。
眠れずにいた夜に、眠れる魔法をくれた伊佐だったのだろうか…。
翌朝目覚めると、すでに隣に伊佐の姿はなかった。時間を確認すれば、出勤時間に間もなく…という、かなりギリギリな時だった。
「なんで起こしてくれないの~」
不満が思わず声になる。
慌てて起き上がろうとして…、起き上がったけれど、異物感が腰のあたりを襲ってきた。
痛みではなくて、何かが後孔に挟まったような変な感じ…。
きゅうっと孔を締めて、何もないことを確認したくなるような、妙な感覚だった。
勢いよく動く、ということができない。もちろん、過去に味わったような苦痛は何もないけれど…。
ゆっくりとした動きで階下に行き、リビングに入るとキッチンから伊佐の声がする。しかし、それは俊輔に向けられたものではなかった。
「…どうにかするものだろう。自分を提供してでも教育しとけ。……知るか、自業自得だろう」
リビングに入っていく物音に気付いた伊佐の視線が、俊輔とぶつかる。途端にニコリと笑って、強引に通話を終わりにしようとしていた。
「とりあえず俊輔は休ませるからな」
「え?!」
伊佐の台詞には俊輔の方が驚かされるだけだ。
俊輔が真相を確かめるよりも早く、伊佐は電話機を置いていた。
かき回していたらしい味噌汁の鍋の火を切る。
「俊、朝飯、すぐ食えるぞ」
「そ、そんなことより、…休みって?!」
「どうせ体の調子も万全じゃないんだろう。今日は休んでおくのがいいから。言うことを聞けって言っただろう」
有無を言わせない口調に圧倒されそうになる。
…が、何もかもを流される控え目さは今の俊輔にはない。
「そんな…っ、勝手に…っ」
反論する俊輔に、何か諭すように伊佐のため息にも似た吐息が零れ落ちた。
「なぁ、俊。今のヨチヨチ歩きで会社に行ってどうなる?彼との昨日のこともある。今は会うべきじゃない」
誰に対してのことなのかは嫌でも知れてくる。
昨夜、自分を取り巻く環境で何が起こったのかも…。
吉賀を求め、退け…、最後には伊佐に甘えて縋った。
恐怖心が湧くかの有無を確かめるため、と棚に上げたとしても、この状態で吉賀の前に現れれば、それ相応の疑い(この場合真実であるのだが…)を持たれてもおかしくない。
伊佐はすでに『体調不良』という名目で俊輔の休暇をもぎ取っていた。
その中には、昨日感じた”精神的苦痛”も含まれているらしい。
そんなことになればますます吉賀が辛い思いをしてしまうのではないかと危惧するのに…。
伊佐から漏れる台詞は、「知名に任せておけばいい」というもので…。
どうやら、医師二人の間では、面倒を診る役割分担が決まっているようだった。
自分たちのことを他人に任せるのもどうなのかと思うけれど…。
ダイニングテーブルの椅子に座ると、そこに置かれたドーナツクッションが、改めて良い働きをしてくれていることに気付く。
直接的な刺激を与えてこない。非常にありがたいことだった。
伊佐は俊輔の中にまだ異物感があることを聞きだすと、万が一のために、とかつて飲んだことのある”排便しやすくなる薬”をまた飲ませた。
極力、痛みは伴わせない、伊佐なりの配慮らしい。
後々にも気を使うべき点が多いことを改めて知る『性行為』だった。
だけどあの快楽を吉賀と共に感じられるようになったら…。悦びはまた変わるのだろうか。
この違和感も繋がれた証として嬉しいものになるのだろうか。
そんなことを考えながら、狂ってしまいそうになる自分を思い浮かべて、恥ずかしさに頬が熱くなる。
朝から何を淫猥なことを考えているのだと思わず自分を戒めたくらいだ。
そして、伊佐の顔を正面から眺めてしまった時、初めて自分がとんでもない醜態を晒したことに気付いた。
伊佐は何でもないことのように振舞っているが、過ごした時は人に聞かせられたものではない。
しかし、あまりにも平然と過ごされるため、俊輔も、これが当たり前の”朝”なのかと思ってしまった。
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いろいろあってもやっぱり吉賀くんなんだ
怖かったり痛かったりしても
優しくて気持ちのいい伊佐先生よりも求めちゃうんですよね
怖かったり痛かったりしても
優しくて気持ちのいい伊佐先生よりも求めちゃうんですよね
甲斐様
おはようございます。
> いろいろあってもやっぱり吉賀くんなんだ
> 怖かったり痛かったりしても
> 優しくて気持ちのいい伊佐先生よりも求めちゃうんですよね
伊佐との関わりはまだ短いんですよね。
ずっと一緒にいたのが吉賀なので、そんな簡単に覆らないのでしょう。
一時的な癒しでしかないのだと思います。
まぁ、伊佐もその気ないみたいだし?!
その雰囲気を俊輔も勘づいているんじゃないんですかね。
コメントありがとうございました。
おはようございます。
> いろいろあってもやっぱり吉賀くんなんだ
> 怖かったり痛かったりしても
> 優しくて気持ちのいい伊佐先生よりも求めちゃうんですよね
伊佐との関わりはまだ短いんですよね。
ずっと一緒にいたのが吉賀なので、そんな簡単に覆らないのでしょう。
一時的な癒しでしかないのだと思います。
まぁ、伊佐もその気ないみたいだし?!
その雰囲気を俊輔も勘づいているんじゃないんですかね。
コメントありがとうございました。
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