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BLの丘
ただそこにいて 68
2011-10-31-Mon  CATEGORY: ただそこにいて
吉賀と津和野の顔を呆然と見比べてしまった俊輔に気付いて、津和野がクスリと笑う。
「仁多くんにはヒップホールのオモチャをあげただけだよ。まぁ、柔らかさは違うけどコツは掴めるだろうからね。ここでじっくり解し方を教えてあげました」
「先生っ!そんなこと、言わなくったって…!」
津和野から告げられることに吉賀が途端に眉間を寄せ、かつ恥ずかしそうに声を荒げた。
いかにも『練習した』と言わんばかりの発言は、確かに恥ずかしいだけである。しかも道具相手に…。
その物がどんなものであるのか想像するのも怖いのだが、少なくとも俊輔の脳裏を横切った絡まり合いはなかったようだ。
「俊くんの恐怖心が払拭されたかも、と聞けば、俊くんから求めることもあるわけじゃない。その時にまた失敗させるようなことはさすがにねぇ」
「せ、せんせ…」
隠すことなく発される言葉の数々に、ますます俊輔は顔を染めていく。
伊佐が『気持ちいいこと』と教えてくれたことを吉賀と…と思うのは当然のことで…。
俊輔に対して吉賀のほうが遠慮するのも見えていたことなのだろう。
津和野と伊佐の間で隠し事がなかったのために状況は嫌でも知られるし、感情も読み取られる。
最初にけしかけるのは自分のほうだと言われているようでもある。

昼間だというのに散々に露骨な話をされて、医務室を去ろうとするとき、津和野がニコニコと笑いかけた。
「ローションもゴムもいつでも揃えてあげるよ。注文しにおいで」
「自分で買いに行くっつーのっ!!」
頻度を確認されるようなことは絶対に避けたい。それこそ顔を合わせられなくなる。
吉賀も言い分は理解しているので速攻で反撃に出ていた。
肩を震わせて笑われているのだからからかわれているのだと分かる。ここまで手をかけさせたことの、最後の楽しみでもあるのか…。
何の言葉も発せずに、俯いたまま俊輔は医務室を後にした。これ以上何も言われたくない心境だ。

「俊輔…、その、…あのさ…」
廊下を歩きながら、何か言いづらそうに吉賀が話しかけてくる。
「何?」
隣を振り仰ぐと吉賀の視線が少し彷徨った。
どうしたのだろうと首を傾げてしまう。
「俺のこと、変態とか思わない…?」
「へ?何で?」
いきなり何の話かと訳が分からずに、俊輔はキョトンと見上げた。
「だって、…あんなことしてたから…」
「あんなこと?」
余計に分からなくなる俊輔に、吉賀は言葉を濁す。俊輔が気にしていないことなのだと改めて分かったことで、ほじくり返さなければ良かった、という後悔もどこか伺えた。
「吉賀?」
「い、いい。なんでもない。忘れて…」
「吉賀?どうしたの?」
こんな風に終わりにされては返って気になるというのに、吉賀はそれ以上口にしたくないようだった。
俊輔は吉賀が声に出した『変態』の意味がどこに繋がるのかと考えてしまう。
吉賀が何をしたというのか…。俊輔が嫌悪するようなことをしたというのだろうか。
その中身は津和野との会話にあるのだろう。聞かれたくないことが含まれていたのは吉賀の反応でなんとなく分かったが、何が問題点なのかまでは、俊輔では判断がつかない。
そんなことを言えば、逆にもっと責められるのは体を許してしまった俊輔の方ではないかと思える。
自分のことをこれ以上言われるのもなんなので、俊輔もこの話題を闇に葬ることにした。

「とにかく!俊輔の負担にならないように、俺も気ぃ使うから。…あとで…、その…、ちゃんと買っておくから…」
さすがにその内容を具体的に発言するのは気が咎めるのか、ヒソヒソと耳打ちされる。こちらは何のことなのか俊輔でも理解できた。
ボンと顔が熱くなってくる。
お腹が痛くならないための予防グッズ…。
「う、うん…。…少しなら、俺ももらったのがあるから…」
もはや、このタイミングでしか言い出せない。隠しておいて後々何か疑われるのも困る。
俊輔が持っていても何もおかしいこともないのは、二人を取り巻いてきた環境のおかげで誤魔化せるものでもあった。
「俊輔…」
「みっ、未開封だよっ!伊佐さんが持っていろって…っ」
それこそ自分から積極的に準備していた、とは捉えられたくない。
伊佐を言い訳に、押し付けられた感をアピールするのも失礼かなと思うが、渡されたのは事実だ。
俊輔は自分で言いながら、自分自身で『未開封』という言葉に反応してしまった。
吉賀が持っていたローションのことだ。先程言われた『変態』と津和野が言っていた『練習』が結びつく。
吉賀が口を濁したのはその件だったのかと気付いた。
自分のために努力してくれたのに、何故変態呼ばわりできよう…。
吉賀は悔しそうな表情を見せたが、俊輔に対して細部にまで気を回せなかったのは自分の落ち度と思っているのか、伊佐についてはこれといって突っ込んでくることはなかった。
こんな話をしているのを他人に聞かれるのもどうかと、二人してそれ以上の会話は閉ざされた。
だけど胸の内で深く結び付く絆を感じる。

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コメント

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No title
コメント甲斐 | URL | 2011-10-31-Mon 13:11 [編集]
かわいいー
二人とも超かわいいよー
初心で素直な恋人たちだこと
何にも知らない二人だからこその失敗もあったけど
これから二人であんなこととかこんなこととかして
愛を育んでいくんですねぇ

津和野さんたちはこの二人がかわいくて仕方ないし
守ってあげたい気持ちもあるでしょうが
見ていて楽しんでるんだろうなと思いました
若かりし頃のピュアな姿を思い出して微笑ましく思ったり
からかって楽しんだりね
No title
コメントけいったん | URL | 2011-10-31-Mon 15:30 [編集]
ほんと 甲斐さまが仰る通りです!(○・v・)∩ ハイ♪

俊輔と吉賀を見てると
伊佐や津和野が、とっくに過ぎてしまった恋愛に初々しかった時を思い出すのでしょうね

どれだけの経験を積めば 伊佐や津和野のようになれるのでしょうか(笑)

魔法の時間は、もう終わりですね。(●・ω・)ノ★。、::。.::・byebye☆
Re: No title
コメントたつみきえ | URL | 2011-11-01-Tue 10:10 [編集]
甲斐様
こんにちは。

> かわいいー
> 二人とも超かわいいよー
> 初心で素直な恋人たちだこと
> 何にも知らない二人だからこその失敗もあったけど
> これから二人であんなこととかこんなこととかして
> 愛を育んでいくんですねぇ

これから色々知っていくまだウブな子たちです。
失敗しても見守ってくれる人もいるから安心ですね。
傷ついた分、今まで以上に大事にしあうんでしょう。

> 津和野さんたちはこの二人がかわいくて仕方ないし
> 守ってあげたい気持ちもあるでしょうが
> 見ていて楽しんでるんだろうなと思いました
> 若かりし頃のピュアな姿を思い出して微笑ましく思ったり
> からかって楽しんだりね

津和野は津和野でしっかり楽しんでいますね。
今では持っていないピュアな気持ち(笑)
それらを見せてくれるからこそ、余計に可愛いんでしょう。
その反応を見て癒されているのも少々悲しいですが…。
きっとこれからもこうやってたくさんの社員の面倒を見ていくんでしょうね。
それが楽しみなのかな。
コメントありがとうございました。

Re: No title
コメントたつみきえ | URL | 2011-11-01-Tue 10:16 [編集]
けいったん様
こんにちは。

> 俊輔と吉賀を見てると
> 伊佐や津和野が、とっくに過ぎてしまった恋愛に初々しかった時を思い出すのでしょうね
>
> どれだけの経験を積めば 伊佐や津和野のようになれるのでしょうか(笑)
>
> 魔法の時間は、もう終わりですね。(●・ω・)ノ★。、::。.::・byebye☆

昔を振り返っているんでしょうか。
いずれ自分たちのようになれるようにと(笑)
ねぇ。どんな魔法をつかったらこんな大人になるんでしょうね~。
伊佐との魔法の時間は終わりでしょうが、これからは吉賀と二人で魔法の時間を築いてくれると思います。
コメントありがとうございました。

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