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BLの丘
ただそこにいて 66
2011-10-29-Sat  CATEGORY: ただそこにいて
翌日、俊輔は体が軋んでもどうにか身動きができるようになった。
ドーナツクッションを買いに行こうと早くも思ったのは言うまでもない。
痛みはたぶん一日を過ごせば消えるだろう、となんとなしに思えてくる。
だらだらと吉賀のベッドの中で過ごした午前中だったが、簡単に用意してもらった昼食に手をつけたい気分になれなかった。
吉賀は痛みのことを気にしているようだったが、実際には後孔の痛みより、お腹が痛い、というほうだった。
トイレ事情にまた難がでていることもあるのだろうか…。
…そういえば伊佐はいつも薬を用意してくれたっけ…。
その薬が欲しいと思うが、いかにも情事の後ですと晒すようで言いたくない内容である。
とはいえ、伊佐なら「うまくいったんだね」と褒めてくれそうでもあるが…。

「俊輔、平気?」
寮内にある共同の洗濯場から大量の洗濯物を抱えて戻ってきた吉賀が、ごろごろと過ごしている俊輔を見て心配げに尋ねてくる。
「うん、たぶん…。今日は部屋で休んでるよ」
「俺、無理させちゃったかな」
「吉賀が心配することじゃないから…」
「でもさ…。何かあったら言えよ。俊輔だけに辛い思いさせるの、嫌だから」
「うん。ありがと…」
繋がれたことが嬉しいのは俊輔も同じなのだから、当然の代償だとも思っている。
部屋に返すのも心配だと吉賀は気を使ってくれるけれど、こんな時は一人でいる方が落ち着くのかもしれない。
部屋が別々でもすぐそばにいるというのは心強い。
俊輔は吉賀の部屋を後にすると自室に戻り、躊躇いを持ちながら携帯を持ち、伊佐に連絡をとった。
今となっては、吉賀に迷惑をかけず、頼れるのは伊佐しかいない。

伊佐とはすぐに連絡がついた。昨日伊佐の家から寮に戻ったばかりで、早速こんな相談もどうなんだ…と思うが、期間が開いていなかった分話しかけやすかった。
『生活はどう?』という当たり前の質問から始まり、「実は…」と言葉を濁らせたそれだけで、それとなく吉賀との関係性を関連付けられる思考はどうなっているのか…。
やはり伊佐は「うまくいったのなら良かった」と安心してくれたけれど…。
後ろの痛みはともかく、お腹が痛いと体調不良を訴えると、何故か赤裸々に質問されてしまう。
『コンドーム、使った?』
「え…」
『いきなり中出し?…あぁ…まぁ、いいけどね…。で、全部出したの?』
「だ、だ、出す…って何を…?」
俊輔のたどたどしい返答に大きな舌打ちが聞こえてきた。
『知名め…。どこまで教えてんだ、あのバカ…っ』
その呟きはかろうじて聞こえる程度のものだったが…。
俄かにも伊佐の怒りを感じた俊輔は黙ってしまう。
『俊輔、精子をちゃんとかきださなかったんだろう。綺麗にしないとダメだよ。だからお腹、痛くなったんだ』
「そ、そうなの…?」
俊輔の脳内は『かきだす』という意味が知れなかった。
そしてようやく、あの時伊佐が取りだしたコンドームは、挿入する側が使用するのだと理解する。
女じゃないし妊娠する可能性はないのだから…という安直な考えとはまた異なるようだ。
『えーと、どうするかな…。知名も今日は休みでいないだろう』
「うん…」
『じゃあ、今からそっちに行ってあげるから。彼にばれないように敷地外に出ておいで。薬もあげるから』
「で、でも…」
伊佐だって休日のはずだった。自分のためにわざわざ足を運ばせるようなことはさせたくない。
部屋で休んでいればどうにかなる、というのは過去の経験で…と思いかけて、伊佐の時とは状況が異なっていることに気付く。
後は吉賀に心配をかけないためにも、詳しいことを聞きたかった気持ちもあった。
伊佐に促されるまま言うことを聞いて、再び連絡をもらっては、会社の外へと足を向けた。
伊佐が気にしたように、これが吉賀に知られたらあまり気の良いものではないだろうと、やりとりは簡潔に済まされる。

門の外に停められた車から降りた伊佐が、小さな包みを渡してきた。中身が薬であるのは分かるけれど…。
おまけのコンドームの箱には絶句するしかない。
「挿入に関しては慣れてくればそんなにキツくなくなると思うけど。排便が辛そうな時に飲んで楽になって。タイミングは知ってるよね。それと、事後処理ができないんだったらちゃんと付けさせること」
吉賀との性行為がうまくいったことは喜ばれることとしても、俊輔の体調不良は認められない雰囲気だった。
最終的になにやら失敗があったらしい。
恥ずかしさに俯いてしまえば、「あとは彼の協力だね」と一人での責任を問わせない。
そこは散々言われた”同意の上”が関わってくるのだろうか。

視線を落とす俊輔の頭上をポンポンと叩かれる。
「一つになれるのは大事なことだけど、体調を崩したら何にもならないだろう。最低限の予防はしないとね」
快楽に任せて流されてはいけないこと、安易に考えていたことを注意されては返す言葉もなくなる。
その反面で「まぁ、いいことでもあるけどね」と苦笑もされた。
理由は分からないけれど、何もかもを否定されているわけではないらしい。

「何かあったらいつでも言っておいで。一人で抱えるのは絶対にダメだから。俺はいつでも俊輔の味方でいるし協力するからな」
力強い言葉を残してすぐに伊佐は去っていった。魔法使いの力は今でも強い。
たぶん、吉賀への気遣いなのだろう。
そこまで配慮を回せる伊佐に改めて感謝するしかない。

…だが…。もらったコンドームの箱を、どうやって吉賀に見せようかと悩む点でもある。
伊佐は会ったことを隠すようにしたが、こんなものを見せては全てがバレバレだろう。
味方なんだかけしかけているんだか分からない存在だと、少しだけ思う…。

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終わんない…。今月いっぱいは無理っぽい…。でもあともうちょっと…。
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コメント

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No title
コメント甲斐 | URL | 2011-10-29-Sat 13:28 [編集]
あーお風呂あってよかったよー
狭くても

でも、吉賀君へのレッスン大事なこと一つ忘れてたんですね
補習お願いします
そして追試です

さっすが、伊佐せんせい
魔法使いだしお母さんだし
いたれり尽くせりさ~

Re: No title
コメントたつみきえ | URL | 2011-10-30-Sun 07:20 [編集]
甲斐様
おはようございます。

> あーお風呂あってよかったよー
> 狭くても
>
> でも、吉賀君へのレッスン大事なこと一つ忘れてたんですね
> 補習お願いします
> そして追試です
>
> さっすが、伊佐せんせい
> 魔法使いだしお母さんだし
> いたれり尽くせりさ~

お風呂あって良かったです(笑)
きれいきれいしてもらえました。
追試!!今度はちゃんとできるか…でしょうか…。
(それって、またえっち書けって…?!)
伊佐ママは自分で育てた(?)子であるだけに可愛いんでしょうね。
傷つかないように守ってあげようっていう親心(いや、医師としてね)心配するんだと思います。
コメントありがとうございました。
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