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BLの丘
新しい家族 18
2012-01-22-Sun  CATEGORY: 新しい家族
日生は大学も通信教育で学んだ。
ただ、何度か大学には足を運ばなければならなかったので、全く籠っているという状況でもなかった。
同じく学ぶ者同士の交流は新鮮な世界であり、対人面で不安があったものも少しずつ払拭されていく。
内向的な性格のことは理解してくれる人も多いようだ。
そのことに強く触れてくる人はいなくて、さりげなくフォローされていたりすると、日生のほうが驚かされる。
中でも日生より三歳年上だと語った本郷沖美(ほんごう おきみ)は何かと話しかけてくれた。
すでに社会人として働いているのだという本郷は170センチに届かない日生よりも10センチ以上身長が高い。日生が細すぎるせいか、全ての人間が逞しく見えてしまうのは致し方のないことなのか…。
初めての講義授業を受けた時、本郷は「中学生が迷い込んだのかと思った…」と半ば呆然としていた。
幼く見える容姿はやたらと庇護欲を煽るのだと言われ、守られて育ってきた日生は落ち込みもした。情けない人間と言われているようでもある。

意外と近い場所に住んでいることも判明した。
本郷は昼間働いているということもあって、日生との勉強時間は異なる。日生は飽きなければ何時間でもテキストに向かうことができた。
通信教育は一般の学生のようにいつも通うわけではなく、大学側が決めた日程で授業を受ける。
「なぁなぁ、時間があいた時、どっかで勉強見てくれない?」
「え?」
帰り支度をしていた時、突然かけられた言葉は日生の動きを止める。
「だってさぁ。阿武くん、講義内容が分からないってことがなさそうじゃん。俺、途中で頭がこんがらがってきたよ~」
情けない声を上げながら本郷は項垂れて見せた。一日ずっと隣にいた人である。
『阿武』と呼ばれることにも慣れず、違和感を持つ。これまでの生活で使われることのなかった名字だ。入学書類を提出するときまで忘れていたといっていい。
テキストだけで勉強をするのと、実際に誰かに教えてもらうのは変わってくる。
日生だってずっと家庭教師がついてくれていたし、ものによっては和紀に尋ねることもできた。
忙しい中、余裕がない状況がなんとなく見えてきた。

「週に一回とかでもいいよ。なんとか都合、合わせるようにするからさ」
短い時間で親しくなれる人は少ない。遠方からやってくる人も多いため、今から日生以上に近場で友人を探すのは難しい話になる。
しかも日生は、時間に自由がきく生活状態だ。
「あ…、と…」
躊躇ったのは友人付き合い、というものをこれまでしたことがなかったからだった。
今日だけでも色々な人に話しかけられたり、この本郷の態度にしてみても、新鮮さがある。
反対に宿るのは、この関係は何かのきっかけで崩れてしまったり嫌われてしまったりしないだろうかという不安。
戸惑う日生に「とりあえず、メアドとか交換しね?俺もマメに返せるほうじゃないけどさ、会うのが無理なら、せめてそれくらいで質問させてもらえるとありがたい」と提案を振ってくる。
大学側で用意している支援もあるのだから不自由しないはずなのに、わざわざ日生に声をかけるのは、こうやって同志をつかまえたいからなのかと過った。
気軽に話せるのは単に質問する環境とは気持ちの入り方も違ってくるのだろう。
日生はこの歳になってようやく持たされた携帯電話を取りだした。
その行動にニッと本郷が屈託のない笑みを見せてくれた。
「ほんとっ。すっげー感謝するから~」
まだ使い慣れない操作を、よどみなく代わりにやってくれた。
日生の携帯に、和紀、周防、清音の次ぎに入れられた四人目の人物だった。
ふと周りを見回した時、同じように何人もの人間と交流を交わしている姿が見られた。
気兼ねなく触れあえている人々に感心するところもあったし、これが当たり前の世界なのかと思わされる。
周防や和紀は卒業後、自分たちの元に置くことを考えている。どちらにしても対人関係は重要なカギを握るはずだ。
世の中に出るという意味を、何となく感じた日だった。

和紀に抱かれるようになって一年以上が経っていた。
周防の前では今までと変わらないどこか冷めた態度で接してくる。
時に周防が接待などで遅くなると部屋に呼ばれた。何も抵抗しない日生の肌を啄ばみ、高みまで導いた。
いつも日生と和紀の大きさの違う二本の性器を一纏めにされて擦られていただけだった。それだけで日生は充分気持ちの良い体験をさせてもらって満足した。
どんどんと作り変えられていくような不安に見舞われる。
和紀から発される獣のような姿に、自分を求めてくれている安堵を感じた。だけど和紀に抱くのは、こうする目的を持ち欲望の為にここまで育てたのかという思い…。
恩を忘れるな、といつも言われている気がする。
『三千万円』…。
そのお金の代償。返し方も分からない。
引きとってもらった体は、どんな意味でも和紀たちのために使うのだと、漠然と脳裏を過る。
かつて、優しく日生を包み守ってくれた姿は、ほんの一瞬の隙間にしか見ることができない。幻だったのかと思うくらいの僅かな間で垣間見えた…。
その表情を見かけるたびに懐かしい頃を思い出した。何より嬉しかった。
和紀が欲しいと願ったのは幾つの時か。和紀の腕の中で安らぎを得たいのに我慢をし始めたのはいつ頃だったか。
抱かれながら和紀の体に両手を回して縋りつくことができた日、走馬灯のように過去が甦って、和紀の優しさに触れた。
強く強く抱きしめ返してくれる人。
彼の優しさを他に向けられるのは嫌だが、これ以上負担になりたくはないからと、日生は心に湧いた感情を封じ込めた。
抱かれるごとに、やっと感じられた『好き』という気持ちを…。

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日生、また成長しました。今いくつだ…18歳か…。
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コメント

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難しいね
コメントちー | URL | 2012-01-22-Sun 06:20 [編集]
ひなちゃん、知らない間に食われ・・・いや、大人になってた。
でも、お友だちも出来て良かったね。
お兄ちゃんに言うと邪魔されるから、内緒にして・・・も、怒られるね。

お兄ちゃんがちゃんと言わないから、ひなちゃんが可哀想な事になってる。
好きって言えないなんて。我慢しなくて良いって教わったのにね?
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