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BLの丘
新しい家族 19
2012-01-23-Mon  CATEGORY: 新しい家族
奈義が、夜から賑わう繁華街の近くにあるハンバーガーショップの中に日生の姿を見つけたのはほんの偶然だった。
この辺りは昼間と夜の雰囲気をがらりと変えてくる。
まだ夕方の時間帯だったが、自分たちのシマにある店の様子でも見に行こうとふらり飛び出した後のこと。
信号待ちの車の後部座席から何気なく外に視線を投げれば、窓際の席で向かい合わせに座った二人の男が見えた。
店内は煌々と明かりを点けてくれているために、中の様子は丸見えだ。
日生の容姿は忘れることがない。最後に会ったのは随分と前だったが、八歳の子供が十七歳になるほどの変化があるはずがなく、すぐに気付くことができた。
こんな時間にどこかの男と一緒にいるとは、和紀の手を離れたということだろうか。
その可能性は非常に低いだろうと思いながらも、だけどずっと日生と話をつけられなかった奈義にとってはチャンスに化けていた。
「おいっ!停めろっ!!」
突然の命令に、運転手は何事かと慌てて路肩に幅寄せする。
奈義は何も言うことなく自分でドアを開けると道に降りたっていった。後方を慌てた様子で駆け下りてくる部下たちがいた。
いつもであれば全く無縁な店舗の中に、肩で風を切り堂々と入っていくと、一部の店員と客からざわめき、そして静寂が広がった。
明らかに堅気でない人間が数名流れ込んでくれば、どうしたものかと委縮する。
四名席に腰かけていた日生の退路を塞ぐように、奈義は隣にどかりと腰を下ろした。
テーブルの上には食べ終えた紙クズと飲みかけのドリンク、勉強でもしていたのか、難しい文字が並んだ本が広げられていた。
こんなところで『お勉強会』か、と僅かに鼻で笑ってしまったものだ。
人間、頭で学ぶことも大事だろうが、日生は社会を知らなさすぎて、逆に教えてやりたい親心が芽生えるのだ。
目の前の男は訳も分からなく呆然と奈義を見つめたものの、すぐに視線を落としてしまった。
「…な、ぎ…さん…」
やはり事情が飲み込めない日生が奈義の名を呼べば、それだけで関係があるのだと周りの人間に教える。
普通ならまず関わることのない人種だろう。しかも大学生分際で。
「久し振りだな。随分と色艶増したようじゃねぇか。とうとう和紀に抱かれでもしたか」
久々に見た日生の艶めいた色は、半端ないオーラを放っている。以前見た幼さだけを纏ったものとは明らかに違うもの。
美貌だけでなく欲望を覚えた体に変わっていた。
これから先の時間、この近辺をウロウロしていれば確実に何かのトラブルに巻き込まれるのではないかと思えるくらいだ。
目の前の男に目的があるのかは知らないが、早目に手を切らせるのが得策だと思えた。
奈義の発言に日生は意味を理解したのか頬を染め上げた。純情な面が消えていないのは充分な売り文句になる。
「そんな…」
恥じらいながら瞳を伏せる仕草が何を生みだすのか知りもしないのだろう。全ての動きが欲情を掻き立てる。
「周防にこれでもかって締め出し喰らってなぁ。おまえに近付けなかったけれどいいところで出会えたもんだ。なぁ、日生。周防がどれだけ反対しようが、おまえから言い出せば聞いてくれると思わないか?大学にも入ったみたいだし、いつまでおんぶに抱っこって甘えてる気だよ。世の大学生はアルバイトの一つもするもんだぞ」
奈義が言いたい裏の意味を日生は簡単に理解する。
和紀はこのままでいいと言ってくれたが、そんなふうに言い含められて良い話ではないのだ。
…あとは、また、相談したらいい…と安直な考えが生まれた。
奈義も周防に日生から言えばいいと提案してくれる。

奈義は俯いてしまった男に向き合う。
「坊や。今日の『お勉強会』はここで切り上げてくれねぇかなぁ。日生には俺の方から話したいことがあるんでな」
奈義のほとんど脅しとなる台詞に、本郷はコクコクと無言で頷いて、急いで自分の荷物を片付け始めた。
奈義が強引に日生の二の腕を掴んで立ち上がらせる。それから後ろに控えていた男に、「おい、日生の荷物、持ってこい」と命令するだけにして店舗を出た。
「ちょっ、奈義さん?!」
「店にでも行って話をしようぜ。高級クラブだ。こんなチンケなドリンクを出すところとは違うんだよ」
『店』と言われて、過去に聞かされた『接客業』という言葉が脳裏を過った。
今から連れて行かれる場所が、そこになるのだと、世間知らずな日生でも悟ることができる。
日生は期待と不安を胸に宿しながら、大人しく奈義の乗る後部座席の横に座った。

ほとんど抵抗もなく付いていく姿は、本郷には『慣れたもの』という印象にしか映らなかった。
もちろん彼らとの深い関わり合いを否定しないもの。
そのことが日生の人生をまた変えるものとなった。

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ストック、ここで切れました…。
連日40度前後の熱を出して意識がもうろうとしてます。・゚・(ノД`)・゚・。
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コメント

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大丈夫?
コメントちー | URL | 2012-01-23-Mon 05:16 [編集]
ひなちゃんも、きえさんも。
心配ですよー。

ひなちゃん、怪しいお店に連れて行かれちゃう。
オジサン、諦めてなかったんだね?
折角できた友達も、いなくなったらどうすんの!オジサンてば!

きえさん、お大事に。
No title
コメントけいったん | URL | 2012-01-23-Mon 11:15 [編集]
40℃前後Σ(゚д゚;)ガーン
あの時(別宅blog)には もう熱があるって仰ってたから...
きえ様、風邪が長引いてしまってるじゃないですか!
更新の事や色々な事は放って 早く治して下さい
お願いしますから(T人T)

ちーさんと同じで 私も心配です(。・´ェ`・。)
もうそれだけの熱が続いているのでは 市販薬では無理ですから 早く病院には行って下さい。
お大事に。<(_ _*)> byebye☆

コメへの返事は不要でね♪
あっ感想コメを書くのを忘れてた(汗)
大丈夫ですか?
コメントさえ | URL | 2012-01-23-Mon 12:25 [編集]
きえちゃん、病院には行きましたか?
車の運転はヤバそうだから早く誰かに連れて行ってもらうのよ~。
そして、栄養とってゆっくり休んでくださいね。
更新は気長に待ってるので、今は休んで早く治してね~。
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コメント | | 2012-01-23-Mon 16:17 [編集]
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