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BLの丘
淋しい夜に泣く声 16
2009-09-17-Thu  CATEGORY: 淋しい夜
身なりを整えた男女が行き交いをしている中で、仕立ての良いスーツに身を包んだ元樹が英人に近寄ってくる。
元樹の周りには数人の頑丈そうな男がいたが、久し振りの再会を気に留めてくれたのか躊躇うことなく歩を進めていった。
「どうしたの?こんなところで。仕事うまくいってんの?まさか英人に会えるとは思わなかった」
立地的に平凡な英人と同年代の人間が足を踏み入れられる界隈ではなく、ましてや一部の隙もなく飾られた全身を見れば元樹が疑問に思うのも理解できる。
高校生時代に付き合いのあった元樹も、大学が別れてからは連絡もほとんどなかった。
当時から身体だけの付き合いと言えたような仲だっただけに、無理に追いかけようともしなかったから、自然消滅という終わり方も納得していた。
「すっげー、嬉しい。全然連絡くれなかったし。英人ってば引っ越しまでしちゃってさぁ。今どこにいるの?携番教えてよ。また会える?」
矢継ぎ早に質問を投げかける元樹は、昔とは変わった人懐っこさを見せた。はにかんだ笑顔を惜しげもなく見せつけてくる。
あの頃は人を寄せ付けない堅さがあったというのに、人は成長していくものなのだな…と変に思わされている。
懐かしさにも負けていたのだが、あからさまに喜びを表す元樹に嬉しさもあった。ここ最近気を許せない状況下にあった英人は、榛名からそっと離れ元樹の傍に寄った。

「今はちょっと色々と忙しくて…。落ち着いたら連絡するよ」
榛名には聞こえないような小さな声で元樹に返事をする。
元樹は何かを悟ったかのように一瞬だけこちらを見据えている榛名に視線を飛ばした。
自然と元樹の声もひそめられた。
「もしかして今、付き合っている奴とかいんの?」
その言葉の対象は否応なく榛名に向けられている。
まさか、と慌てた英人は思いっきり首を振っていた。どうしてそんな態度を取ったのか、後から考えても理由など思いつかなかった。
「別に…。あの人とは仕事絡みだからそんなんじゃない」
「今はフリーってこと?英人、すっげー綺麗になったな。俺、もう一回チャレンジしていい?」
言葉こそ冗談に聞こえるが、いたく真面目な視線に英人の心が大きく揺らいでいた。

高校1年の夏休みに初めて男というものを受け入れた。
元々男の体にしか興味のなかった英人が、泊まりにいった元樹の家で彼の裸体を見た時の興奮は言いようがなかった。
それに気付いた元樹が、自分のことを打ち明けてきた。ゲイであり、女性を愛せないこと。目を止めるのは英人のような可愛げのある男であること。たぶん当時の元樹には相当な決意が必要だったのだと思う。
英人が元樹を受け入れるのは興味本位のことだった。
それからは川に水が流れるように自然と元樹に抱かれるようになった。英人には好きとか嫌いとかの感情はなく、ただ沸き上がる性感を慰めてもらうためだけのものだった。
元樹はとても優しくて英人はただその行為に溺れていった。
その頃から英人は自分の魅力というものに気付き始めていた。吸いつくように寄ってくる男たち。少しでも肌を触れさせれば灯りに群がる虫のように男たちは後を絶たなかった。
幼い頃から男女の交じり合いを目の当たりにしてきた英人にとって、男同士の行為もすんなりと受け入れられた。常に交じり合うことは『普通』で、当時の元樹を驚かせたこともある。
その時にようやく、自分がどれだけ卑しく醜い人間なのかと思い知った…。
大学が離れてからもしばらくは元樹と身体だけの繋がりがあったが、お互い講義やアルバイトなどで生活が忙しくなると自然とその関係は崩れていった。

スッと英人を囲むように元樹の腕が英人の腰に絡みついた。
「連絡して。裏にプライベート用の携番、書いてあるから」
そっと掌に硬い紙を握らされる。有名な自動車メーカーのロゴがデザインされた名刺で、今の元樹の状況をさりげなく窺わせた。
まるでハグでもするかのように抱きしめられ、英人の耳元を背の高い元樹の唇がそっと掠めた。
「今度英人が俺を許してくれたら絶対大事にする」
触れてくる指先は初めての時よりも繊細で魅惑的だった。

「英人」
背後から落ち付き払った低い声が聞こえた。
ハッと振り返ると、いつも以上に鋭さを増した榛名の姿があった。決して近づいてこようとはしないが、元樹に向ける視線は恐怖すら浮かぶほどだ。
「車を待たせている」
怖気づく英人を呼び寄せるかのように声をかけ、後部座席のドアを開けた状態で「早くしろ」と促されていた。

「ごめん、元樹。絶対連絡するし。ただ、しばらくはちょっとまだ忙しくて…」
「そうみたいだな。男を清算してくるくらいの時間は待っててやるよ」
完全に誤解されているようだったが、今状況を説明している暇はなかった。それに、元樹と付き合いのあった頃から、英人が元樹以外の男と関係があったことは元樹だって知っている。今更取り繕う言葉なんて浮かびもしない。
飄々とした姿は今でも健在のようだ。

名残惜しさを胸に秘めながら元樹と別れて榛名が待つ傍に寄った。英人は心がざわざわと波風を立て始めていることを知った。

榛名専用の運転手付きの高級車に先に乗せられ、振り返ろうとした先を榛名の体で視界は遮られた。
もう一度元樹の姿を目に入れることはできなかった。

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高校生の分際で身体だけの関係ってどうなのよ…
けど英人ならありえんのかなぁぁぁ。

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