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BLの丘
新しい家族 32
2012-02-09-Thu  CATEGORY: 新しい家族
日生は翌年には復学した。
和紀と周防と共に働くことで、より早くきちんとした形で役に立つ存在になりたかったからだ。
和紀との関係が変わったことは確実に周防にも伝わっていた。特に何も言ってくることはなかったが…。
出会った頃から一転して日生に構わなくなった和紀の態度は周防も良く知るところだ。
それがまたオープンに手をかけ始めたのだから気付かないわけがない。
燻っていた気持ちを吐き出した後は素直に触れあっていく。
故意的に日生を避けていた和紀は今までの分を取り戻すかのように日生に甘かったし、日生も同じように和紀に縋った。
二十歳を越える年になっても金魚のフンのようにくっついている姿もいかがなものか、と一応二人とも思っている部分はあっても、日々は変わることがない。
やがて優秀な成績で卒業を果たした日生を、和紀は離すことはなかった。

和紀の秘書という職に就き、まさに四六時中一緒にいる状態だ。
そのことにも周防は口を出してこず、「おまえたちの好きにしろ」と勝手にさせている。
効率の良い仕事ができるのであれば会社にとっても利益を生むものになる。和紀の仕事量も増えてきた今では、付き人も必要だろうと周防は考えていた。
日生が本格的に勤務するようになったことで、和紀と周防の勤務室も分かれた。
大学生だったときも合間を見てはちょこちょこと顔を出していた日生だったが、その頃から手狭さは感じていたことだ。
興味を持ってくれれば…、程度に思って連れてきた場所に、日生はしっかりと馴染んでくれて、それは周防にとって喜ばしいことだった。
日生が望まなければ、好きな仕事につかせようとは前々から考えていた。ただ、和紀がそれを許すかは心配したところだったが…。
一時期、和紀が日生に対して間を取った時があったこと、その真意もそれとなく気付いていた。
だからといって、こちらも口を挟むほど、考えなしの行動に出る周防ではなく、端から見守ってきた…というほうだろう。
自分から距離をとっておきながら、いざとなったら和紀ならどんな手を使っても日生をそばに置くことは想像できもした。
そんなこともあって日生の将来を心配する部分がありはしたが、理想通りに事が進むのは気分が良くもなる。
そして周防はもう一つ考えていることがあった。

家に帰るとすでに帰宅していた和紀と日生がリビングにいた。
以前は周防の後をついて回ることも多かった和紀も、今ではすっかり別行動となっている。
周防の帰宅に気付くと、すぐに日生が夕食の準備を整えてくれた。
一人分の食事より若干大目に見える食卓に視線を向け、いつものことながら「おまえたちはもう食べたのか?」と確認の質問が投げかけられる。
その時々の気分なのだろうが、待っている時もあれば済ませられている時もある。つい聞いてしまうのは会話の一つでしかない。
今更、夕食は家族揃って…などと強要する気もないが…。
「うん。さっき食べちゃった。今日は何飲むの?ビールでいい?」
ダイニングテーブルに着く周防を見ながら、日生が晩酌の内容を尋ねてくる。
周防は「あぁ」と頷きかけて、先日貰って開封していない焼酎があることを思い出した。
「いや、この前もらった焼酎があっただろう。和紀、おまえも飲むか?」
顔が見えない息子に話しかければ、一拍の後、「そうだな」と返事があった。
夕食は家族揃って…、と強要はしないが、やはり一人でテーブルに向かうのは淋しいものがある、と知らずに出る行動に、和紀も分かってか無意識にか付き合ってくれる。
周防の前に座った和紀に続いて、日生も準備が整えば和紀の隣に腰を下ろした。
周防と和紀ほどではないが、成人してからは付き合いもあって日生もアルコールを口にするようになった。
この空間は心地良い。だけどいつまでもこのままでいるわけにもいかないだろうと、周防は思考を巡らせるのだ。

「なぁ、和紀。日生を連れてここを出ていくか?」
それは提案、というより尻を叩く親の意見だった。
「何、突然」
いきなりの話題に和紀だけでなく日生もどうしたのかと訝しがる。
周防はのどごしの良い液体を流し込みながら話を続けた。
「おまえもいつまでも親元にいる年じゃないだろう。日生が大学を卒業するまでは、と待ってはいたが…」
暗に二人の生活のことも含みを持たせれば、和紀はすぐに気付いたようだ。そのあたりの意思の疎通は、日生とでは築けない血の繋がりがあるのか…。
「じゃあ、隣の空き部屋、もらうかな」
すんなりと受け入れるものの、そこはちゃっかりと算段している。
このマンションの最上階には三戸しかない。全て周防の所有するものだったおかげで不要な人間が来ることはなかった。今自分たちが住む最奥と手前の清音の家が現在使用されている。その真ん中に引っ越そうというのだ。
まぁ、やがて…と考えていなかったわけではない『住居』ではあったのだが…。
空いていた場所は、時折奈義が来た時に『隠れ家』的な意味で使っていただけだ。人目がないのは周防にとっても寛げた。
「ったく…」
「寝室だけ隣に移すよ。清音さんも大変になっちゃうし」
「な、な、…和紀くんっ、何言って…っ」
「引っ越す意味が全く無いだろうが…」
「そこは色々と大人の事情ってことで」
さすがに日生も意味を理解したのか慌てふためくが、周防と和紀の間に隠す雰囲気は見られなかった。
変に隠そうとしてぎくしゃくするよりは知られていると分かっていた方が遣り易い場合もある。
「『実家に帰らせていただきます』の言葉がこれほど効力を持たない話もないんじゃないか?」
「連れ戻すにはラクだな」
「俺はいつだって日生の味方でいてやるからな~」
周防は日生に向かって口調を弛める。
夫婦喧嘩、ならぬ、兄弟喧嘩をした時には無条件で日生を受け入れることを伝えれば、日生は「二人とも、もう…」と小さく呟くにとどまった。
ここにいては、周防の存在を気にして、安心してコトにおよべないのを考えているのだろう。
顔が見えない家族より、見えた家族のほうが良いとは、誰もが思うことだったが…。

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新居?! 二世帯住宅?! (←意味違う…汗)
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コメント

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パパ
コメントちー | URL | 2012-02-09-Thu 13:14 [編集]
スゴいな、パパ。
流石パパって感じ?

ひなちゃん、名実ともにパパの息子になるのかな?
お兄ちゃんかなあ。

何はさておき、ひなちゃんが幸せなら良いです。
相変わらず、箱入りだけど。


パパ、清音さんと結婚しないのかなあ。しないか。

No title
コメントけいったん | URL | 2012-02-09-Thu 13:56 [編集]
さすが”渋メン”周防♪
(※渋メン・・・50代以上のイケメンさんの事)
強くて優しくて寛大で大人だわ~(*≧∀≦*)
ひなと和紀を温かく見守ってくれてたんですね。

周防が独身のままでは 若夫婦も心配
私も ちーさんと同じで 清音さんとの結婚をお勧めしますわ~(^ω^)b

でも!まさか!周防と奈義って事は!!
ヾノ≧∀≦)ィヤィヤ...って...ありか...?...(ノ∀\*)キャ...byebye☆


Re: パパ
コメントたつみきえ | URL | 2012-02-09-Thu 18:50 [編集]
た―様
こんばんわー。(←滅多に夜に来ることはない……どうでもいい…)

> スゴいな、パパ。
> 流石パパって感じ?
>
> ひなちゃん、名実ともにパパの息子になるのかな?
> お兄ちゃんかなあ。
>
> 何はさておき、ひなちゃんが幸せなら良いです。
> 相変わらず、箱入りだけど。

はいっ、複線残してます。
日生、息子になるんでしょうかね。
今のところまだ旧姓を名乗らせているのですが(いろんな書類上)
違和感はあちこちで感じることになるんでしょうね。
日生は今ではすっかり『三隅家』の人間なので気遅れすることはないと思うのですが…。
改めて聞かれて、その時に違和感残しているんじゃ?!仕事面でも。

> パパ、清音さんと結婚しないのかなあ。しないか。

パパと清音さんの結婚?!
あり得そうであり得なくない…。
だって長年何かしら感じとってきたアレアレがあるのでしょうから~~~。
でもうちはBL放送局(?!)なんですよ~。

コメントありがとうございました。


Re: No title
コメントたつみきえ | URL | 2012-02-09-Thu 18:56 [編集]
けいったん様
こんばんは。

> さすが”渋メン”周防♪
> (※渋メン・・・50代以上のイケメンさんの事)
> 強くて優しくて寛大で大人だわ~(*≧∀≦*)
> ひなと和紀を温かく見守ってくれてたんですね。

渋メン 初めて知りましたヽ(゚∀゚)ノ
かっこいいっ!
そんな中で育った子供も絶対にイクメン(←)だと思います。
パパの愛情を感じて、更に弟も教育、育てるとねぇ…。

> 周防が独身のままでは 若夫婦も心配
> 私も ちーさんと同じで 清音さんとの結婚をお勧めしますわ~(^ω^)b
>
> でも!まさか!周防と奈義って事は!!
> ヾノ≧∀≦)ィヤィヤ...って...ありか...?...(ノ∀\*)キャ...byebye☆

あうぅぅぅぅぅっ
うちの読者様の鋭さには何も言えません。
はい、BLですから~。
清音さんとの結婚はないかと…。
淋しくなった母屋(?!)に通う誰かさんなんでしょうかね~。
...(ノ∀\*)キャ...  え?!
別に追い出したいパパじゃなくてね…。

コメントありがとうございました。
Re: パパ
コメントたつみきえ | URL | 2012-02-09-Thu 19:00 [編集]
たまに夜くると、時間の焦りもあるのか間違えました。

たー様、じゃなくてちー様。
すみませんm(__)m

お名前の書き間違えするなんて~っ

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