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BLの丘
契りをかわして 2
2012-03-07-Wed  CATEGORY: 契り
誰が主催しているのか分からないが、男女ともに15名ほど、計30名前後の人間が小洒落たレストランに集まっていた。
合コンというか、ちょっとしたパーティーは、並べられた料理を好きに取り、気に入った相手とテーブルに座る形で行われている。
しかも名札付き。
気軽な格好で…と言われて、横着にも伊吹は仕事帰りのままだった。人前に出て恥ずかしい格好ではない…、それが伊吹の持論でもある。
『もしかしてお見合いパーティー?!』と伊吹の心を過るものがあったが、今更引き返せるわけもなく、まぁ適当に流せばいいやとお気楽な考えが浮かんだ。
こんな時、培ってきた社交的な面は、効力を発揮してくれる。
テーブルについて話をして、気が合えばそのまま先に進むのだろうし、ダメならまた違う人間を探すのだろう。
男性側としては、真っ先に職業を聞かれるようなもので、正直に答えれば勧誘を恐れるのか、さり気なく逃げていく人間もいる。
それとなく雰囲気作りだけはして、あらかたの人間と顔を合わせたところで、伊吹はそっと会場を抜け出していた。
正直なところ、伊吹の好みは女性にはない。
昔から惹かれるのは同等な精神をもってくれる男性だった。物事の考え方が同じだったり、夢見るものが似ていたり…。
委ねてくるような女性より、ずっと寛げたし、自由に生きられる感覚があった。
女性に対してトキメキもしないし、何より『抱く』というより『抱かれる』方がホッとする。
たぶん、包まれることで社会の責任感から逃れられるような錯覚に陥られるからだろう。
営業という職業だったからもあって、付き合った男性は何人かいた。
あたりまえのように、伊吹の好みは体躯の良い男だ。その付き合った人たちに恋愛感情があったのか、肉体関係を求めたのかは微妙だが…。

合コンと聞いて女性がいることは承知の上で引き受けた話だったのに、迎え来るものが『結婚』となれば、どれだけ人の良い伊吹でも気が滅入ってくるところだ。
営業活動をできそうな場所であればまだしも、将来を見据える相手に、親しくなるような話はできなかった。
「はぁ…」
トイレでかなり長くの時間を過ごし、だが、甲賀のことを考えても中途半端にできないと脳裏を過る。
適当な言い訳をつけて逃げたいところだ。
顔を水でジャバジャバと洗って気分を切り替えた。
トイレを出るドアをあけると、ちょうどあった隅の喫煙コーナーで、甲賀が煙草の煙を吸い込んでいた。
咄嗟に、何やら気まずさがあるのは甲賀も同じだったのではないかと脳内でチカチカと点滅するものがあった。
見知った顔に落ち込んだ内面が晒されそうになる。
しかし本音を告げるのはマズイことだろう。
仕事帰りのままで来てしまった伊吹とは違って、甲賀は昼間見た姿と違っている。当たり前か…。あの作業着で来るはずがない。
スーツなどという畏まった格好ではないが、体格の良さをはっきりと映し出す見装は印象を変えた。
いや、以前から甲賀がしっかりとした筋肉の持ち主だとは、それとなく気付いてはいたけれど…。
「あ…。いかがですか?良い人、見つかりました?」
すぐに軽やかに話しかける声が出るのは普段の生活の賜物としか言いようがない。
それと、会場に戻るよりここで甲賀と話をしているほうが気が休まる。
甲賀はフッと口端を上げて笑い、肩を竦める。その態度はどこか、この合コンに興味がなさそうにも見えて、勘が当たったと思った。
誘ってきたのは甲賀なのに、ふと疑問が掠めた。…それとも気のせいだろうか…。
「さぁ。俺も友達に同行を頼まれて来たクチでさぁ。どうでも良かったんだ。『一人じゃあ…』なんて言ってた奴が今じゃ積極的に動いてるよ。…多賀さん誘っちゃったのはこういうことに興味があるのか知りたかったからなんだけど」
「?」
相手の言うことを咄嗟に理解できる能力はあるはずだと自負していたが、甲賀の後半の言葉の意味は伊吹の思考を止めてしまった。
営業用のニッコリとしたスマイルのままで固まってしまうと、甲賀の手が伸びてくる。
「髪、濡れてる」
「あ…。さっき顔洗って…」
「何で?」
まだ残っていたらしい水滴を指先がはじいた。伊吹の髪はすぐに揺れるから多少濡れた事は知っていた。
会話はスイスイ進めていけるほうだと思っていたが、答えることに躊躇いを持ったのは久し振りだ。
触れた骨張った指に視線が吸い寄せられてしまったから…だろうか。
伊吹の容姿と人懐っこさで、人に気軽に触れられることは多々あることだが、心を揺さぶられるようなことはまずない。
それなのに、甲賀には珍しくドキンとするものを感じてしまった。
躊躇する感情を持つと、人は動揺するのだと思い出した気分だった。
「え…と…」
伊吹からは言葉が漏れない。その態度は、普段物事をテキパキと進めてしまう印象の強かった甲賀にとっても、不思議なものに映ったようだった。

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コメント

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コメント | | 2012-03-07-Wed 10:54 [編集]
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Re: No title
コメントたつみきえ | URL | 2012-03-07-Wed 18:13 [編集]
秘コメ様
こんばんは。

えーと……。
ブブー。ハズレの滋賀県でした。

> 一瞬「伊賀」対「甲賀」の忍者対決?!かと思いましたが多賀さんでしたw

あ、それ、笑えますね。
すごく白熱したやりとりがありそうです。
合体することができるのかなぁ~(笑)

> 「契り」という言葉にも、ほう、保険契約のことか…?とばかなことを…(苦)
>
> そういえば 保険会社の社員がしつこい新聞屋の勧誘を、保険に入ってくれたら新聞とってやると撃退してたのを思い出しました。

うますぎる~~~っ!!!(爆)
勧誘って困るお客さんの一つですよね。
そりゃ、新聞屋さんも諦めそうです。
金額と期間が違いすぎる…。
ねぇぇぇ、何を「契る」んでしょうね。
もう保険契約は取っちゃったし。

> ご…ごめんなさい、くだらない話ばかりで。
> 新連載がそれだけ楽しみでワクワクしているんだろうとご理解くださると嬉しいです。

いつも楽しい話題を振りまいてくださり私も刺激を受けます。
楽しみにしてくださる方がいるのだと知れるとパワーが湧きます。
コメントありがとうございました。

うー
コメントちー | URL | 2012-03-07-Wed 18:27 [編集]
保険の営業マンですかあ。
何か身につまされますわ。
頑張ってって言いたくなる。

なんだか楽しみな展開になってきました。私、筋肉フェチなんですよー。
早く脱いでみて?(笑)
Re: うー
コメントたつみきえ | URL | 2012-03-07-Wed 22:01 [編集]
ちー様
こんばんは。

> 保険の営業マンですかあ。
> 何か身につまされますわ。
> 頑張ってって言いたくなる。

Σ(T▽T;) な、なにか……。
頑張って働いている伊吹でございます。
保険営業って大変ですよね~きっと(←)

> なんだか楽しみな展開になってきました。私、筋肉フェチなんですよー。
> 早く脱いでみて?(笑)

筋肉フェチ~~~♪♪♪
私と一緒ヽ(゚∀゚)人(゚∀゚)ノだ~っ。
脱がせたいのですが~。
私の描写力、執筆力ではうまく伝わらないと思いますので、詳しく書きませんからご自身で想像されてください。(←コラコラ)
コメントありがとうございました。

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