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BLの丘
ふたり 19
2012-04-28-Sat  CATEGORY: ふたり
信楽に指摘されて、あからさまに戸惑った旭は、その態度だけで答えを出していた。
仕事なんて全く手につかず、飛び出すように会社を後にしたこと。
仕事中に伊吹に会い、プライベートを聞きだし、業務に支障をきたし、甘えるようにこの部屋へと転がり込んできた。
勢いのまま『抱いて』と強請って、押し付けた唇が離れて俯く。
頭上から「まったく…」と呆れたような、だけど嬉しそうな溜め息が聞こえてきた。
今までとは変わった雰囲気が漂うのは、旭に気を許した証拠なのか。
『叱らないが注意はする』というのは、こうやって痛いところを突いてくることなのだと、なんとなく悟れた。
「あ…、と…、…」
咄嗟にこれ以上の言い訳は浮かんでこなかった。
困り果てる旭を見ては、ふふっと笑い声が聞こえてくる。
「今日は大目にみてあげるよ。…シャワー浴びてくる?」
早くに寝室に向かいたいと願っている意思も汲み取ってくれている。
また抱いてもらえるのだと分かることが、旭にとっては嬉しいことこの上ない。
急降下しかけた気分も、途端に上昇気流に乗った。
「うんっ」
少し照れながらも、旭は素直に頷いた。
ベッドに入るにはまだ早い時間だとは分かっているけれど、信楽の気持ちが変わらないうちに、この身を捧げたい。
信楽が求めてくれる存在であるのだと感じたい…。

旭は信楽の膝の上から降り、バスルームへと向かおうとリビングを出ようとした。
その後を信楽もついてくる。
用意などを見に来てくれたのかと思いきや、一緒に脱衣所に入って、先に信楽が自分の衣類に手をかけるのを見て、旭は驚いた。
「信楽さん?」
「一緒に入っちゃおう。旭も、ほら、早く脱いで」
旭の住むワンルームマンションに比べたら、確かに広いバスルームではあったけれど…。
温泉地でもない場所で誰かと一緒に入る、などとしたことのない旭は、動揺して目を剥いていた。
「信楽さんっ?!」
「嫌?嫌ならやめてもいいけど…」
『やめてもいい』の言葉に、深い意味が籠っているように感じるのは旭だけだろうか…。
入浴だけではなく、その後に続く行為すら、拒絶されるのではないかと僅かな脅えが走った。
何にも動じていない落ち着きが憎たらしいくらいに思えてくる。
“大人”とは、こんなに余裕を持ってしまうものなのだろうか。
そして頭を過ったのは、伊吹ともこんな生活をしていたのかと比べてしまったこと。
信楽が望むのであれば、受け入れてあげたい気持ちも湧く。

促されるまま衣類を脱ぎ、恥ずかしさが湧きあがるのをどうにか誤魔化して、信楽に続いてバスルームへと足を踏み入れた。
慣れた様子で信楽がお湯の温度を見てくれる。
裸になって並んで立てば、信楽の背の高さも、その年齢を感じさせない筋肉もはっきりと分かる。
『可愛い』ばかりを言われ続けてきた旭とは雲泥の差、とも言うべきか…。
「旭、ほら、洗ってあげるから」
伸びてきた手が旭の背を抱き、肌が密着した。
「へっ?!あ、洗う?!」
まさか体を洗ってもらうなど、露ほども思っていなかった旭から、裏返った声が上がった。
それを聞いて信楽が首を傾げた。
「もしかして、初めてかな」
決して経験不足を責めてくるようなものではなかったけれど、旭にしてみたら明らかな比較対象が脳裏に浮かんでしまうのだからいたたまれなかった。
旭の感情に気付くのか、信楽からはまたふわりとした笑みが見えた。
「不思議な子だね…。大胆に迫ってくるかと思えば、無垢なところをちゃんと残しているし…。俺がこんな状態で関わることが悪いことに思えてくるよ…」
気持ちの整理がついていないとは信楽が正直に話してくれたことである。
それでもいいから、と縋りついたのは旭だったのだし…。
信楽の台詞に、繋がりかけた橋が閉ざされるような恐怖が浮かび、慌てて旭は信楽の肌に寄って抱きついた。
直に触れる体温の温かさが気持ち良い…。

「ちが…。…いいの、信楽さんに教えてもらえることだったらなんでも…」
今更『初めて』を誤魔化せるはずもない。
バレたなら開き直る。
旭が身を寄せた腹部に、僅かな反応をみせた信楽の性器の動きを感じた。
触れた体で…なのか、言葉で…なのかは定かではないが、少なくとも揺り動かす素質が自分にあるのだと感じられるのは嬉しいことだった。
「旭…。『体から始まる関係』なんて簡単に口にするものじゃないよ」
湿り気を帯びたしっとりとした声が降り注がれる。
どんな状態でもいいから信楽から離れたくなかったと訴えた台詞は、かつての信楽と伊吹を卑下してしまうものになったのかと、今更ながらに気付いた。
だが言ってしまった言葉はもう取り返せない。
「あ…」
「俺がそういう人間に見られるのか、旭がそんな人間なのかと疑いを持たせるものになる」
安易に発してしまった言葉は、伊吹ほどではなくとも経験があるものと捉えられていたらしい。
経験値の少ない人は嫌なのだろうか…。
そんな不安を抱え始めた旭に、信楽が言葉を続けた。
「知れば知るほど、旭の可愛さが見えてくるな…」
呟きにも似た、静かな声…。
信楽の声音には、旭にのめりこんでいくことの恐怖を感じている戸惑いが、浮き彫りになって表れたようだった。

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コメント | | 2012-04-28-Sat 04:00 [編集]
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Go 信楽!
コメントちー | URL | 2012-04-28-Sat 05:21 [編集]
ああ、ようやく信楽さんが動きだした。
(イヤイヤ、蹴りを入れなきゃいけなかったし←え?)

旭も強気そうでも、すぐに伊吹を意識しちゃって可愛い。
お風呂で散々、遊ばれ・・・いや、イチャイチャしてください。

鬼畜信楽さん。ちょっと見たいかも。
Re: タイトルなし
コメントたつみきえ | URL | 2012-04-28-Sat 07:15 [編集]
Kさま
おはようございます。

> なんだか いい雰囲気ですねぇ。
> 信楽さん 大胆かと思えば恥ずかしがり屋な旭くんのギャップに 惹かれ始めてる?そして、育児が始まる日も そう遠くない予感がします(笑)

育児(爆)
旭はお子様ですからね~。
ちゃんと調教(教育)していただかないと…。
見た目はすでに許容範囲の信楽ですから。
ガンガン突き進んでくる圧倒さと、その影に潜む無垢さに、更に惹きこまれていくことでしょう。
コメントありがとうございました。

Re: Go 信楽!
コメントたつみきえ | URL | 2012-04-28-Sat 07:29 [編集]
ちー様
おはようございます。

> ああ、ようやく信楽さんが動きだした。
> (イヤイヤ、蹴りを入れなきゃいけなかったし←え?)

(ボソ)喜んで蹴っていたのでは…
やっと信楽、行動に出ました!
ジレジレの人が動き出したら、旭の予想外の行動だったり…。

> 旭も強気そうでも、すぐに伊吹を意識しちゃって可愛い。
> お風呂で散々、遊ばれ・・・いや、イチャイチャしてください。
>
> 鬼畜信楽さん。ちょっと見たいかも。

過去がある人だと知っているし、相手の事も理解しているから、旭はどうしても思っちゃうんでしょうね。
お風呂で何が始まるんだか…(え)
鬼畜~~~。昔伊吹もいじめられちゃったことがあったしね~。
コメントありがとうございました。

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