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BLの丘
想いを確かめて 5
2012-07-17-Tue  CATEGORY: 想いを確かめて
K様 村新着に上がっていたとご指摘ありがとうございました。
私の技術(知識)では消し方が分かりませんので…、諦めてupします。
お待たせするのもなんですものね…。




去り際、湯沢は改めて千城に向かい合った。
「千城くん…。なんとお礼をしたら良いのかな…」
英人には湯沢が口にする”お礼”の意味が分からなかった。
千城が暮田家と正式に切り離してしまったことだろうか。
だがそれは考えれば、最終的にどんな権力でも圧力でもかけて、この展開に持ち込んだだろうと読むことができる。
だからこそ、堂々と『榛名』の名前を出した。
「君がしてくれたことは、私達にとって”和解”だった…」
「和解?!」
ますます理解不能に陥る英人に一度は視線を投げたけれど、たったそれだけで湯沢の言いたいことを千城は把握してしまったらしい。
ふわっと英人にしか見せないような、比較的穏やかな笑みを浮かべて対応する。
「申しあげたでしょう。英人を守るためなら俺は何でもしますよ」
「英人の件を片付けるのと同時に俺のことまで解決してくれるとは、ね」
「それは単なる偶然ですが」
穏やかな笑みはニヒルなものに変わる。”偶然”が故意だったのだとは、表情だけで判断できた。
最後まで全てを予測した咄嗟の企てだったとまでは、英人には想像もつかなかった。

「な、なに?」
一人、のけものにされていることにようやく気付く。
確かに物事の理解力は千城なんかに敵うものなどないのは百も承知しているけれど…。
千城が、英人の疑問ばかりで大きく見開いた眦から頬を撫でた。
「英人が暮田家との接触を持たせないように、同じように湯沢さんとの間も断ち切ったんだ」
会話の中に、そんなことは一言もなかった。黙って聞いていた英人は一言も漏らさないように聞いて、頭で整理していたはずだった。
交互に千城と湯沢に視線を送ると、湯沢は「やはり英人には千城くんが必要だな」とどこか呆れたような笑みを見せた。
「朝子の墓参りを英人と一緒にしていたことで、あの人はこちら側の繋がりを自分なりに想像したんだ。自分たちでは入り込めないものを。…それは英人が俺を赦したことを証明したし、同時に『榛名』との交流があることを表している。俺に関わることまで、”危険”と判断したんだろう。実際、英人は葬式が終わった後も、実家からは何一つ連絡を入れてもらえなかった、差別的な証拠だ。俺はどれだけ罵られるかと思っていたが、英人の手前もあったんだろうな。更に千城くんは財産の件でもバッサリ切って発言すらさせなかった。二人(父と母)とも”無縁”と知らしめて、朝子とのことまで認めざるを得ない状況に追い込んだんだ。事実上の”和解”だよ」
「どれだけ嫌った親でも、情が生まれた今、何かにつけて言われることは気分のいいものではない。それが分からないのか、あの人は自分たちの行動を棚に上げて屈辱的な発言を繰り返した。問題になりそうな種は摘みとって枯らすのが一番面倒がなくて良いんだ」
たたみかけられるように告げられる双方の発言に、英人の脳内はパンク寸前だった。
何より千城がこれっぽっちも暮田家のことを良く思っていないのは、冷徹な声音で感じ取ることができる。
『娘を引き取ろうともしなかった…』…。
揶揄した台詞は、少なくとも英人は両親に情愛があることを知らしめていた。
別世界に住む人間だと、徹底的に排除した結果だ。
だから、湯沢にも近付くなと…。

「ちしろ…」
英人だけではない。かろうじて引っかかっている程度の存在の湯沢かもしれない。
それでも湯沢まで叱責を浴びることなくこの状態に持ち込んだのは、英人が真実を知り、父親を頼る感情があると理解しているからこそ…。
どこまでこの人は先を読むのだろう…。
自分もせめて行間を読めるくらいの読解力を身につけなければ…と思うが…。
十中八九、無理な話…。
でも聞けば教えてくれるのだから、これでいいや…という甘えた気分に包まれる。
「ありがと…」
涙がこぼれそうになる。逞しい腕が、『絶対に傷つかないように守ってやる』と力強く背を抱いてくれた。
いつだって、いつまでだって変わらないから、英人は不安を払拭して甘えられる。
深く深く愛してくれる、この心と体に…。

束の間の抱擁の後、腕の力が抜けて振り返った時、父はもう何メートルも離れた場所で背中だけを見せていた。
人前でありながらこんなふうに振舞えてしまえるのも、安心感があるせいだろうか。
「父さんっ!」
英人の声にも振り返ることなく、湯沢の歩みは止まらない。代わりに片手を軽く上げて「また…」と再会を約束してきた。
幼いころ、とても大きいと感じていた背中は、今はとても小さい。


帰り、どこかで食事でも摂っていこうか…という千城の提案に、英人ははっきりと首を振っていた。
「いらない…。…それより、家に帰ろう…」
英人の真意は汲み取られているのだろう。
何かを食べる…という行為より、肌を合わせる行為のほうを英人は望んでしまっていた。
今がどれほど明るい時間でも、千城と一緒になってからは、時間の感覚が鈍っているような気がする。
…ただ、甘えたかった…。
この腕は自分のものだけのものなのだと、再び確認しておきたい欲望が湧きあがってくる。
今の自分に残っているものが、千城だけだと思うからだろうか。
もともと、千城しかいなかったけれど…。
乗り込んだ千城の運転するスポーツカーはグングンとスピードを上げていく。
それがなんだか、千城も急いてくれているようで、英人は一人、心の中で安堵の息をついていた。

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こいつらにえっちさせなかったら、絶対に飛んでくるよな…ミサイル発射(ノ#-_-)ノ === ∋=>(;/゜o゜)/

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コメント

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だ、大丈夫じゃない?
コメントちー | URL | 2012-07-17-Tue 14:40 [編集]
こんにちは。暑くて溶けそうです。仕事、いやぁ。
英人達、これで終わらせたら叱られちゃう?


・・・あ、スゴークスゴークスゴーク、怒られそうです。

英人パパ、やっぱり好き~。
千城さんは、格好良過ぎて・・・
Re: だ、大丈夫じゃない?
コメントたつみきえ | URL | 2012-07-17-Tue 17:16 [編集]
ちー様
こんにちは。
39度だとか40度だとか騒がれているきえちゃち(←自分で"ちゃん"言うな―――)です。

> こんにちは。暑くて溶けそうです。仕事、いやぁ。
> 英人達、これで終わらせたら叱られちゃう?
>
>
> ・・・あ、スゴークスゴークスゴーク、怒られそうです。

暑くても仕事はがんばるのだぁ(←他人事)
ここで終わりにしたら間違いなく、怒られるでしょうね…。
だからどうにかえち書かなくちゃ…。
昔書いた記事をこぴぺってして終わりにしようかな~(←どこまで節電? いや、PC開設時間を短縮しようとか…考えていないわけではないけど…。ただの横着…もしないつもりだけど…)

> 英人パパ、やっぱり好き~。
> 千城さんは、格好良過ぎて・・・

パパ、私もどんどんと良い人に育てていっているような気がします。
昔むかーし、いやーなパパだったけれど…。
…つか、産んだ息子(?)はやっぱりどれも可愛いっ。
最終的に悪人を作れない私でした…。
千城は…、あー…、うーん、…憧れの塊?!

コメントありがとうございました。
No title
コメントけいったん | URL | 2012-07-17-Tue 20:02 [編集]
そうだね♪
お家に帰ろうね、英人と千城の家に♪

今日は、疲れたね、英人。
千城に心も体も癒して貰ってね♪
[家]( ̄ー ̄(^_^*)ゝ...byebye☆
Re: No title
コメントたつみきえ | URL | 2012-07-18-Wed 07:05 [編集]
けいったん様
おはようございます。

> そうだね♪
> お家に帰ろうね、英人と千城の家に♪
>
> 今日は、疲れたね、英人。
> 千城に心も体も癒して貰ってね♪
> [家]( ̄ー ̄(^_^*)ゝ...byebye☆

色々あった日でしたね。
問題は解決したし。謎も解けたし。
あとは体の解決策を…。
千城と英人の愛の巣には、邪魔をする者は誰もおりません♪
コメントありがとうございました。

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