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BLの丘
策略はどこまでも 9
2009-07-03-Fri  CATEGORY: 策略はどこまでも
なぜ中條が安住を知っているのか、どうしてここで榛名建設の名前が出たのか、そして何よりもどんな理由から自分が担当に選ばれているのかが全く理解できない。
新人から毛が生えた程度の存在で、それなりの仕事しかできていない自分が関わるにはあまりにも大きすぎる相手だ。
大きな瞳をパチクリさせ、口をポカンと開けたまま返す言葉の一つも見つけられずにいる那智に、中條からは盛大なため息が漏れた。

「『今日は楽しい一時をありがとう。またお会いできる日を楽しみにしています』って、安住から伝言。
名刺渡されたって言うから、携番にかければいいのに、わざわざ僕に連絡入れて来てさ。恩着せがましく、どこの会社がいい?って幾社か挙げられたから最大手の榛名建設を選んでやったよ。紹介っていってもあいつのことだ、必ず取引までもっていかせるけどね」

ニヤリと笑った中條の顔が、すでに今回の取引を受けたことを物語っている。
当然のことながら利益が生まれることを表している。もちろんただでそんな仲介役を請け負う人間がいるなど思っていない。
自分の知らぬところで話が進められていることに一抹の不安を感じた那智は何がどうなっているのだ、と更に詳しい説明を求めた。

「ちょっ、ちょっと待ってください。…えぇっ!?はるなぁ?!榛名って、へっ、なんでぇ????」
ようやく意識を取り戻したらしい那智からその名が漏れたことに、隣にいた鈴原が「おせーよ」と呟いている。
ほとんど放心状態になっていた那智には、成り行きを理解するまでに、まだしばらくの時間を要しそうだった。
「安住さんっ?!…ってあのバリスタ?弁護士?なんで俺っ!?」
叫び続ける那智に苦笑いを浮かべながらも中條は裏事情の説明を始めた。
「安住は僕の同級生なんだ。さくらちゃんの名刺を見て連絡してきたんだけど、今後の友好を深めるためにもこのあたりで一つ取引はいかがですか?だって。まったく、わざとらしく話をふりやがってさ。絶対条件はさくらちゃんを出すことだったんだけど、榛名相手にさくらちゃんはまだ無理だって話をしたら、安住が関わる仲介の接待だけでもさくらちゃんを出してこいって言われた。もちろん僕が同行することをこちら側からの条件としてつけたけどね。直接取引後は好きなようにしていいって言われたけど、表向きの営業窓口にはさくらちゃんを置いて、安住との連絡口になれって言われている。まあ、安住と大したやりとりが発生するわけでもないし、榛名と契約まで行けば安住なんて関係ない。ただ、安住と榛名に関する接待はすべてさくらちゃんの担当だよ」

同級生?友好?取引?条件?接待?契約…?単語が飛び出すたびに那智は清水の舞台に立たされている気分になった。
この業界、黙って仕事が手に入るわけでもなく、当たり前のように「打ち合わせ」と称される「お食事会」が絡んでくる。
何をいっても実際引き受けているのは中條さんじゃないか…。お飾り人形のように、この身一つを単に窓口として提供することで、中堅の自社が大手と取引を始められることを思えば当然乗り気になるはずなのに。
黙って、「はい。わかりました」と言えない何かがそこに潜んでいる気がして、那智は首を縦に振れなかった。
「つまりその接待さえ無事こなせば、榛名との取引が完了するかもってことでしょっ!すっげー、さくらちゃんっ」
ひとごととおもっているのだろうか、鈴原が感動したように那智の背中を叩いた。その痛さにも呻いたが、心の中ではもっと重い鉛のようなものが渦巻いている。

今日偶然に出会った人間から、自社の営業をも左右しそうな大手との取引をチラつかせられれば、怪しいイロだって当然見えてくる。
ただでさえ、グレーゾーンの広がるこの業界で、首を横に振ることがいかに危険なことかは承知しているつもりだったが、中條と繋がっていると分かれば、安心感からか不満もつい口からこぼれた。
「ちょっと待ってください。俺、分かってないしっ。っていうか、榛名ぁ?絶対無理」
「だから、僕がいるんじゃん。安住には話してあるから。実際榛名と取引するのは僕であって、さくらちゃんはとにかく安住の機嫌をとってよ」
榛名建設との取引に、絶対に外せない安住の存在。そして、そことの取引に使われている自分。ひたすら安住の機嫌を取れと言われれば、ますます頷くことなんてできない。
直接的な営業に係わり合いをもたないと言われた今、那智の落ち込みはマックスに達した。
榛名建設との取引に必要な俺の存在ってなんなんだよ…。

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ごめんなさい。
先に謝っておきます。
この業界(すべての世界においてですが…)に関しての知識は皆無に等しいです。
あくまでも私の妄想です。フィクションです。
不快に思われる方がいたらすみません。
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