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BLの丘
乱反射 9
2012-10-15-Mon  CATEGORY: 乱反射
久し振りに見る由利の姿に狙いを定めて、隣のコーヒー店に足を運べば…。あまりにも目立つ双子の存在がいた。
並ぶ順番の中、腕を絡ませ、周りに聞こえないように耳に唇を寄せて内緒話を繰り広げる光景は、はっきり言って目の毒だ。
どことなく近寄れない雰囲気があるのだが、そこは萩生が堂々と寄っていく。
小銭を握らせては、あつみや瀬見は端から見守る存在になった。
真室が初めて見た光景に、「ふ、双子…なんですか…?」と驚いた様子で尋ねてくる。
見慣れれば問題がないが、初見では違いなど気付かないだろう。
空気の流れ…とも言えるのか。興味本位でやってきたことに気付いた由良は、冷たい視線を投げかけてくる。
あつみも瀬見も、普段来ることがないとはすでに知れた話。
ただ、真室の存在を確認しては、悪戯心が働くのか、由良と由利は囁きながら、同じ表情と動きを見せて混乱させてくれる。
…まったく、意地の悪い双子だ…。
これで購入を済ませては、真室に「どっちだぁ」と尋ねてくるのだろう。
唯一のヒントは、由良の首に下げられた、社員証だったが…。
真室が細かいところに気付くかどうかは謎である。

人数分のカフェラテを手にして、萩生があつみの分を、由良が瀬見に手渡し、由利が「どうぞ」と真室に向かい合った。
「湯田川さん、お久しぶりです」
ちょこんと頭を下げ声をかけてきたもので、真室も由良と由利の違いに気付くのだろうか。
「おぉ、元気にしてたか?」
わずか数歩の短い距離。社屋の前まで歩みながら、近況を報告し合う時間を持った。
初対面に真室は動揺もあったようだが、かつての社員と知れば自然と気持ちが解れていくようだ。
「湯田川さんと高畠さんにいじめられていない?」なんて由利が冗談交じりに真室に語りかけるのを、真室も「きびしいんですよ~」と泣き声をもらしている。
…いやいや、甘やかしているだろう…と内心でぼやくあつみと萩生に、瀬見が「お兄ちゃんとは違うからなぁ」と、甘やかす基準がちがうことをポツリと呟いていた。
萩生が由良を、雄和が由利を、兄貴が真室を、それぞれ寛大に扱っているようにはできない、と心底思ったあつみでもある。

社屋前のところで、時間いっぱいまで由利を交えて雑談の時を過ごした。
周りを過ぎていく社員も、珍しいと思える光景に視線を投げていく。
今夜はこちらに泊まるのだという由利に、「久し振りに飲む?」と声をかけたのはあつみだ。
もちろん雄和もやってくることは想定内。
目配せだけで確認を取り合う双子は、嫌とは言わなかった。
「ユーリ、今夜は一緒に寝ようね」
別れ際、声をかけた由良に、萩生は苦笑を浮かべていた。
更に(また会うのに)お別れの『チュ』をした双子に、真室は絶句状態だ。
あの家庭が今夜どうなるのかは、想像しないでおこうと、あつみは内心で溜め息をこぼす。
まぁ、由利と雄和が出会った場所で、また由利が酔い潰れてしまっても、今度はしっかりと見守ってくれる人間がいることだけは確かだった。

企画室内に戻ると、呆然としたような真室が、萩生に向かい合っている。
「た、高畠さん…、あのふたり…区別つくんですか…?」
萩生と由良が付き合っていることはもう知れているのだから、改めて出会ってしまった双子に対しての素朴な疑問なのだろう。
萩生は肩を竦めている。
「もちろん。…つーか、あつみも新庄も分かっているって」
「すごっ」
初対面では分からないものも、時を重ねれば知れてくるものがある。
それは、真室のことに対しても…なのだろうか。
まだ新入社員。接触が多くなればなるほど、真髄が見えてくるようなもの。
あつみは冗談を含ませながら、真室に説明した。
「そうだなぁ。萩生がデレ~ってしているのが由良で、先輩ぶり発揮しているのがユーリだ」
「デレ~っじゃないだろっ」
「いや、そうだろ。まったく、幸せオーラ振りまいてくれちゃって」
嫌味を交えた台詞は、真室の痛い言葉にとどめを刺された。
「湯田川さん、どこまで飢えているんですか?まぁ、お兄ちゃんのお弁当で満足しているくらいだし。なんだか切ないですね」

…この後輩…、いつ刺してやろうか…。
瀬見がこの場にいなかったことだけ、一応感謝しておく。
アイツがいたら、間違いなく笑いのタネだ。
もちろん、腹を抱えていた萩生がいたのだが…。
眉間に皺を寄せたあつみの存在など、全く気にしていない真室は、午後の仕事にとりかかっていた。

行き慣れた居酒屋だった。
前もって連絡をしておいたおかげで、待たされることもない。
掘り炬燵式のテーブルに、雄和、由利、由良、萩生と並び、正面に瀬見とあつみ、真室と座った。
「僕、来ちゃって良かったんですか…?」
珍しく謙虚になる真室に「こいつら(正確には双子)のイチャぶり、見学しておけ」とあつみはふっかけた。
“違い”を見極められるかの、貴重な機会だ。
似たような商品が多い中で、特別なものが生まれるか…。
…双子を商品に例えたら申し訳ないだけなのだが…。
“目”に期待するものは大きい。

人懐こい性格は、すぐに由良と由利にも馴染んでいった。
お弁当を頼んでいる、などといった日常生活から、「レシピ欲しいね」と呟いた由利に、「ユーリにご飯作らせてるのっ?」と由良から叱責が飛んでいる。
弟を甘やかしたい兄はここにもいた…。
「ユーリはレンジでチンとカップラーメンが精一杯なんだよっ。いっぺんに二品作るとかしたら、火傷とか傷とか作っちゃうんだからっ。そんなところにお嫁にはだせないっ」
「ゆ、ゆらぁ…」
「もう出したんだからいいじゃん。あとはあっちの生活で…」
「萩生は口出しすんなっ」
目の前で繰り広げられる攻防戦に、口を閉じる萩生を、少々気の毒に思う。
弟を良く知り、分かっている兄だとは理解できるけれど…。
あえて口を出してこない雄和は、双子の全てを受け入れている証拠なのだろうか。
何にせよ、久し振りに見た双子は目の保養であり、新鮮な空気を運んできてくれたように思える。
離れたからこそ、もっと近付こうとするような雰囲気がはびこっていた。

店の前で別れる時、由利と由良、保護者はタクシーに乗って一つの道をたどっていくのを見送った。
そして初めて、真室と瀬見が同じ路線だと知った。
一度は訪れた真室の家だけに、瀬見も分かるところがあったのだろう。
改めて言う機会がなかっただけで。
「マムちゃん、送っていってあげよう」
軽口をたたく瀬見に、「マムちゃんはないです~っ」と唇を尖らせる真室がいる。
それぞれの背中を見送り、あつみは、激しい疎外感に襲われていた。

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そろそろ動こう…。
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コメント

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No title
コメントけいったん | URL | 2012-10-15-Mon 01:41 [編集]
カッコイイ系、綺麗系、可愛い系と揃って 目の保養の集団ですね~(*・ω・*)ポッ

でも ??r(・x・。)アレ???
瀬見と真室が、一緒に帰っちゃうの?
しかも マムちゃんだって~~!

湯田川…アンタ…...┐ε-(´・_・`:)┌

---とある居酒屋にて---
「お酒は~♪ぬるめの~♪燗がいい~♪肴は~♪見目いい~♪男がいい~♪ ウィ~~」
「あー…はいはいっと…」
「瀬見と真室がぁ~で、一人ポツンだよ湯田川~如何なってるのよ~ヒック!!」
「 zzz…。o 0」
「ちょっと ちーさんって 聞いてんの~? 起きてよ~!」
゙ヨッパライヘ(~~*ヘ))...((ノ*~~)ノヨイヨイ...byebye☆


キャッホー
コメントちー | URL | 2012-10-15-Mon 04:45 [編集]
双子ちゃん、来たあ。
可愛いくせに、意地悪双子。
ああん、可愛いじゃないのー。

由利と由良。一緒に寝るの?
いや、寝ても良いけど、良いんだけど・・・ね?
久しぶりだからって、旦那さん放っておいていいの?

旦那、二人で寝るのかしら?
Re: No title
コメントたつみきえ | URL | 2012-10-15-Mon 07:30 [編集]
けいったん様
おはようございます。

> カッコイイ系、綺麗系、可愛い系と揃って 目の保養の集団ですね~(*・ω・*)ポッ

個室の居酒屋はいいですね~。
目の前にずらりと並べて…。

> でも ??r(・x・。)アレ???
> 瀬見と真室が、一緒に帰っちゃうの?
> しかも マムちゃんだって~~!
>
> 湯田川…アンタ…...┐ε-(´・_・`:)┌

部署を飛び越えて仲良くなっていく存在ですね。
お弁当が結び付けてくれる御縁です。
しかし…、あつみとしてはなんだか納得いかない結果に…。
もうちょっと真室のことを知りましょう。

> ---とある居酒屋にて---
> 「お酒は~♪ぬるめの~♪燗がいい~♪肴は~♪見目いい~♪男がいい~♪ ウィ~~」
> 「あー…はいはいっと…」
> 「瀬見と真室がぁ~で、一人ポツンだよ湯田川~如何なってるのよ~ヒック!!」
> 「 zzz…。o 0」
> 「ちょっと ちーさんって 聞いてんの~? 起きてよ~!」
> ゙ヨッパライヘ(~~*ヘ))...((ノ*~~)ノヨイヨイ...byebye☆

また懐かしい歌が…(いえ、誰でも知っているでしょう)
酔っ払っちゃったのねぇ。
湯田川の行方が…、瀬見と真室の行方も気になるところですね。
是非千鳥足で追いかけてみてください。
コメントありがとうございました。
Re: キャッホー
コメントたつみきえ | URL | 2012-10-15-Mon 07:42 [編集]
ちー様
おはようございます。

> 双子ちゃん、来たあ。
> 可愛いくせに、意地悪双子。
> ああん、可愛いじゃないのー。

アイコンタクトだけで意思疎通を図れちゃう双子は、真室をからかっていますね。
混同してしまう光景を見ては楽しんでいる、小悪魔です。

> 由利と由良。一緒に寝るの?
> いや、寝ても良いけど、良いんだけど・・・ね?
> 久しぶりだからって、旦那さん放っておいていいの?
>
> 旦那、二人で寝るのかしら?

たまには一緒に寝たいんでしょう。
旦那は追い出されていると思います。
こちらは一緒には寝ていないと思いますが…。
双子ちゃんの抱き合って眠っている姿を見ては、旦那も癒されているんじゃないでしょうか。
こちらも目の保養で…。
えぇ、原点ですね。
この世に生を受ける前からの変わらぬ姿…。
理解できる旦那だからこそ、許してもらえるのでしょう。
がんばれ、旦那。
コメントありがとうございました。
寝落ちしてました
コメントちー | URL | 2012-10-15-Mon 07:58 [編集]
中途半端なコメでごめんなさい。

え?いつも?

師匠、昨日の私を見てましたか?
コメント書いてる途中で寝たらしく、起きたら朝でした。あっちゃん、独り言書きたかった←しないで!

せみちゃん。マムちゃんとあんまり仲良くするとね?
あなたの美人さんが怒りますからっ!
あっちゃんに任せてーっ!
Re: 寝落ちしてました
コメントたつみきえ | URL | 2012-10-15-Mon 11:06 [編集]
ちー様
こんにちは。
寝落ちでしたか~(笑)
短いなぁ…とちょっと淋しかったのですが。(いえ、いいんです。コメントいただけただけで)

> 中途半端なコメでごめんなさい。
>
> え?いつも?
>
> 師匠、昨日の私を見てましたか?
> コメント書いてる途中で寝たらしく、起きたら朝でした。あっちゃん、独り言書きたかった←しないで!
>
> せみちゃん。マムちゃんとあんまり仲良くするとね?
> あなたの美人さんが怒りますからっ!
> あっちゃんに任せてーっ!

コメ書きながらでもきちんと送信されていたことが素晴らしいです。
私もしょっちゅう寝落ちしては、粗大ごみにパソコンをぞんざいに扱われてキレてますけれど。
瀬見と真室はどんどんと距離が縮まっていますね。
気付かないところで…。
気流はそろそろ乱れてきますかねぇ。
あれ? 反射か…。気流じゃないのか…(←)
コメントありがとうございました。


No title
コメントたつみきえ | URL | 2012-10-15-Mon 15:45 [編集]
♪三年目~の浮気ぐらい大目にみてよ~♪
由良「見られるか~ヽ(`Д´)ノ」
由利「なんだかナツメロが流れているね」
雄和「読者の脳内がその年代なんだよ」
由利「すぐ酔っ払っちゃうし…」
雄和「寝かせておけばいいんだよ」
由良「そうそう、年なんだから」
きえ「冷汗(・・;)全員、口を閉じましょう…」

酔っ払うと、口が…。
ヤバイ、分かっている自分が怖い…っ。
津軽海峡夏(←コラ)景色とか、長崎は今日も晴れ(←コレも)だったとか、真剣に聞いてしまった…。
歌って、頭の中をめぐるよねぇ…。

ピクッ
コメントちー | URL | 2012-10-15-Mon 21:03 [編集]
「師匠~。何か生意気な双子がいますけどー?」
「あ、アイツだな?可愛いと思っちゃって!」
「そうそう。三十路になったらツンデレなんて。ねー?」
「ちー、ハギーがいないぞ?」
「ハギー?そう言えばぁ。若くて~、素直で~、可愛い子といたよねー?」
「そう言えば、お兄ちゃんも大人で格好良かったよねーっ!」


「うわーん、萩生が浮気したぁぁ」
「えーん、由良ぁぁぁっ」

「あの、双子達まだ子供なんで許してやってくれませ
んか?」
「えー、元はと言えばあんたとハギーがねー・・・」

「わーん、ボクたちが悪かったから雄和をいじめないで~!」

(昔の)お姉さんに勝てると思うなよ?
Re: ピクッ
コメントたつみきえ | URL | 2012-10-16-Tue 07:06 [編集]
ちー様
おはようございます。

> 「師匠~。何か生意気な双子がいますけどー?」
> 「あ、アイツだな?可愛いと思っちゃって!」
> 「そうそう。三十路になったらツンデレなんて。ねー?」
> 「ちー、ハギーがいないぞ?」
> 「ハギー?そう言えばぁ。若くて~、素直で~、可愛い子といたよねー?」
> 「そう言えば、お兄ちゃんも大人で格好良かったよねーっ!」
>
>
> 「うわーん、萩生が浮気したぁぁ」
> 「えーん、由良ぁぁぁっ」
>
> 「あの、双子達まだ子供なんで許してやってくれませ
> んか?」
> 「えー、元はと言えばあんたとハギーがねー・・・」
>
> 「わーん、ボクたちが悪かったから雄和をいじめないで~!」
>
> (昔の)お姉さんに勝てると思うなよ?

ハイ(・・;)
(昔の)お姉さんは強いのがよく分かりました。
心優しいハギーに浮気の芽をおしつけるなんて…。
由利も由良も泣いちゃったから許してあげてね。
さぁ、みんなで洗面器持って、はだかのお付き合い、しましょう。
♪貴方は~もう忘れたかしら~ 由良の手ぇ まふらーにしてぇ~ 
二人でぇ行ぃった風呂屋も~ 今では恋人たちの~♪
イチャイチャ ポチャポチャ
コメントありがとうございました。
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