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BLの丘
誘われたその先に 12
2013-03-25-Mon  CATEGORY: 誘われたその先に
「和泉、また早上がりだって?」
倉庫に向かおうとした和泉を、東成が呼び止めた。
最近、何かと質問されることが多いように感じるのは気のせいだろうか。
これまでは何を聞かれても正直に答えられていたし、後ろめたさもなかった。
それが高槻を間に挟んだことで、心にわだかまりが生まれてしまう。
「あ、ちょっと・・・」
「おまえ、最近、多くねぇ?真面目に働いていた頃が嘘みたいだぞ」
東成の言葉は直接胸に刺さってきた。

予定時間を急遽変更するとは、事情によっては納得できるものであったとしても、今の和泉に対しての信用はガタ落ちといっていい。
店長と高槻の間で、何やらあることは、他のパートアルバイトには知らされていないのだから当然なのだが、だからこそ、皆のなかに不満がたまっていておかしくなかった。
甘えていたのだ・・・と改めて教えられる。
店長の采配で全てが決まってしまうこの場所で・・・。
高槻が滞りなく手配してしまうから、全てが丸く収まっていると思っていたが、東成がこうして発してくれなければ知らないままだっただろう。
それは店舗内での居心地の悪さも発生させる。

だからといって、今日の予定は今更覆せるものではなかった。
きっと高槻のことだ。『行く』といったレストランにも連絡は入れられているのだろう。
高槻の迷惑になることはしたくない。
「ごめ・・・。今度っからこんなこと、ないようにする・・・」
正当な意見に何も返せず、俯いてしまえば、頭上からため息が降り下りてきた。
「別に俺がどうこう言えるようなことじゃないけどさ・・・。なんだか和泉が傷つきそうで不安なんだ」
ポツっとつぶやかれた言葉の意味を、今の和泉に理解はできなかった。
この店の中で、うまくやっていけなくなることの懸念だろうか。
友人にまで心配かけて、情けないな、と自分を罵る。
高槻には事情を話して、今後のことを考えてもらおうと頭をよぎるのだけれど、誘いは嬉しかったし、拒むことで付き合いが途切れるのではないかという、こちらも不安を抱えた。
高槻が見せてくれる世界は、和泉には新鮮で、心が湧き立ち、また友人とは違った頼れる気安さにホッと安らげる場所に変わっていた。
どんな失敗をしても、笑いに変えてくれて、『失敗は成功のもと』と和ませてくれる。
あの空間が、本当に居心地が良かったから・・・。

その日、連れられたレストランは、インド料理の店だった。
香辛料の香りが店内中に広がっている。
民族衣装を着た店員、飾られている備品も風情があって、異国に潜り込んだ感じだった。
「姉貴が輸入している店とも繋がりがあってさ。こちらから『入れ替え』で中古として卸してもらうこともあるんだよ」
ビジネスの世界は何かと輪が広いらしい。
とはいえ、軽く繋がりを教えてくれる程度で、高槻はこういった場所で仕事の話をすることはなかった。
五種類のカレーが味わえるというセットメニューを注文して、高槻と合わせて結局10種類のカレーをたしなんだ。
ナンをちぎっては、ステンレス製の器に盛られたものをからめて口に運ぶ。
こういったとき、どちらの料理、どちらの器、という閉塞感はなく、それぞれに勝手に手を伸ばせるくらいの親しみができあがっていた。
他にタンドリーチキンなどのサイドメニューも取られていたから、さすがに食べざかり(←は、過ぎた)の和泉もお腹を晒してのけぞりそうになる。
食事も会話も美味しかった。
しかし、東成の言葉がひっかかっていたせいか、今までのように心底楽しむ、というふうにはなれないでいたようだ。
そのことを敏感にも高槻は感じとってしまっている。
食事の席でこそ、いつもと変わらない雰囲気でいてくれたけれど。

ヨーグルトドリンクを飲み干す頃になって、憂いげな表情で高槻が和泉をみつめた。
「何か、悩み事でもあるのかな」
尋ね方はいつもと変わらない優しい口調だ。
そこに安堵してしまったのは和泉のほうなのかもしれなかった。
きっと正直に思いを、経過を吐露してしまっても、良い作戦・・・というか、解決策を見出してくれる思っていた。

急な誘いは嫌ではないし、でも、他の人に迷惑をかけるのは心苦しいし。
店長だって、さしさわりがないと分かる範囲で受け答えをしてくれていること。
本当に無理な時は、たとえ高槻の要望があったと分かっても、応じてはいない。それは高槻も知るところだ。
きちんと社会的なルールを守った上での外出なら、いくらだって受けられると。

テーブルに肘をつき、額を抱えてしばし黙り込んでいた高槻は、和泉にとって予想もしなかったセリフを口にした。

「もう、会うのをやめようか・・・」

"和泉が傷つく・・・"
東成が発した言葉が、何故か脳裏を横切っていった。

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ぼちってしてくれるとうれしいです。
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コメント

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余裕の無い男って…
コメントけいったん | URL | 2013-03-25-Mon 09:19 [編集]
和泉の話しを聞いて どんな答えが返って来るかと 思えば
「もう 会うのを止めようか」だって!
なんで~そうなるのかな~?

もっと 大人の高槻氏なら 対処法があるでしょうに…
それとも そこまでする程 和泉の事を好きじゃないの?
ちょっと 焦り過ぎだよ~(^ー^;)

うーの にっき
さいきん ママが はやく かえってきます。
ママだいすきな うーは うれしいです

いーちゃんが うーの いえに きません。
おしごと いそがしいのかな?

ママに きいたら わらいながら 「おとなの よゆうが ない おとこ」なんだって!
「おとなの よゆう」って なに? おいしいの?
いーちゃんは たべられなくて すねてるの?

もぅーくんは、「おとなの よゆう」を たべたことある?

もうぅーくんは パパと タンテイごっこ したんだね。
うーの タンテイごっこは、ママに ほめられたよ♪ 
もぅーくんも ほめられた?


高槻も・・・
コメントきえ | URL | 2013-03-25-Mon 11:32 [編集]
思うところ いっぱいあるみたいです。
なんで「会うのをやめよう」なのか・・・
次号ご期待(←)

感情ってなかなか思い通りにならないんだね らしいです。
すぐに結果を出す必要はないのだろうけれど
出したい思いもあるのかもしれませんね。

『ももやのにっき』
うちのパパもさいきん はやくかえってきます。
もも は それがうれしいけれど どこかさみしそうなパパです。

「おとなのよゆう」はおいしいのかと パパに聞いたら
「あまりおいしくないな」とにがわらい。
そして 食べられないらしいうーちゃんのおじさんにたいして
「食べない方がいいよ」とちょっと つめたいためいきがこぼれてました。

「おとなのよゆう」ってマズイのかな

食べてみたいような 食べたくないような・・・

「パパ タンテイごっこ またする?」
きいたら パパは「してもいいよ」って笑ってくれました

うーちゃんのおじさん、見られることはパパにとって嬉しいみたい。
パパ、少しげんきになったかな
コメントきえ | URL | 2013-03-25-Mon 13:04 [編集]
小路(このみ)のにっき

さいきん おともだちの ういちゃんは あたらしい絵本とかぬりえをたくさんもってきてくれます
「いーちゃんがかいたがるの」と ういちゃんはいいます。
たくさん ほしくなる かようおみせがあるようです
ういちゃんとまいにち あたらしいものにえがおがうかびます。

おとこのこのももくんはすこしさみしそうだけれど。

ここはおんなのこのせかいなんだよ~♪

このみはきょうも、ういちゃんがもってきてくれたパズルで遊びました。
きょうは じぐそーぱずるで えんそくで撮った写真がパズルになっていました。
とくべつに つくってもらった パズルはママも大喜び。
パパはできあがったものを がく にかざってくれました

ういちゃんちも おなじように ママがかざってくれたそうです
同じものが家にあるっていいね。

またあたらしい写真をとろうね。

ピース(^^)v
どんどんと
コメントさえ | URL | 2013-03-25-Mon 14:20 [編集]
こんにちは(*^^*)
どんどんとお話が進んでコメ書き損なってました~(>_<)
日記楽しいね~♪
うーちゃんもももくんも探偵バッチリだね!
このみちゃんも日記に参加♪
にぎやかでいいね~♪
で、高槻は何言っちゃってるの!?
和泉が顔面蒼白だよ~(>_<)
きえちん無理しない程度に書いてね~(*^^*)
さえちゃん
コメントきえ | URL | 2013-03-25-Mon 16:22 [編集]
こんにちは

気後れしないでね
みんなまっているからね

みんなで遊んで欲しいコメ欄です
何かきこんでもいいよ

みんな、もっと参加してねー(と 勝手なことを言う)

こどもたちが賑わうコメ欄になったようですが。
あっち(そう)とは べつの意味でにぎわう幼稚園(うい もも このみ)です。

幼稚園児 何を思うのか少しこわいけど

よゆうのあるおとなになれ 息子
余裕ありまくりの娘もいるなぁ

えーと、少しずつ進みます。

コメ欄の余談はともかく・・・
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