高槻に委ねた信頼は、今まで付き合って来た人間たちとは違っていた。
見知らぬ世界を教えてくれる、それだけではなかったと思う。
同じ学生同士のように、張り合うこともなかったし、全てを包み込んでくれる潤いがあった。
会えば落ち着いたし、醸し出される雰囲気が心地よくて、いつしか、和泉は友人たちの誘いを断ってまで高槻を優先させていた過去を知る。
・・・現実・・・
あたりまえのことだ。
高槻ほどの人間が、いちいち気にかける人物ではないとは、出会った頃に知ったことではなかったか。
どこまで付き合ってもらえるか、曖昧な線引きの存在。
分かってはいたけれど、改めて教えられた『立場』のような気がした。
自分から縋ることはできない。
高槻から拒絶されれば、"それまで"と思うしかなかった。
・・・『もう会うのをやめようか』・・・
そのセリフは、夢見心地だった和泉を現実に戻してくれるには充分だったのかもしれない。
「そう・・・ですね・・・」
個人的に出会うようになってしまったことが間違いだったのだろうか。
会えば会うほど、魅力に惹きこまれた。
近くにいて、決して嫌ではない存在。それはじんわりと和泉の中を浸食していた。
友達よりも心を、感情を許した存在なのだと思う。
和泉が何を言っても、温かくうけとめてくれたこと。
"大人"の余裕なのだろうか。
その落ち着きが、安らげて嬉しかった。
高槻に拒絶されたら、和泉には何も言えない。
高槻の顔を見られずに返した言葉に、やはり考え込む高槻の姿が視界の隅に映った。
「出ようか・・・」
これ以上この場での会話はしたくないと言いたげに、伝票を掴んだ高槻が立ち上がる。
和泉は後悔しまくっていた。
自分が、あんな我が儘にも似た相談をしなければ、高槻の気持ちは動かなかったのだろうかと。
これまでも無理強いされることはなかったし、いつも和泉の都合を尋ねてくれた。
迷惑だと思ったことはなかったけれど、伝え方は、違った意味で高槻に届いてしまったのか・・・。
重苦しい雰囲気を纏ったまま、車に乗り込む。
どこかへ走り出した車は、いつも送ってくれる、和泉の家に近づいていなかった。
その方向に不思議な思いを宿すものの、思いを詰めたような表情の高槻に何も言えなくなる。
しばらく走った。
無言のままで、どちらともなく言葉を発することを躊躇いながら時間だけが過ぎる。
辿りついた場所は、暗闇に飲みこまれそうな波が打ち寄せる、海水浴場だった。
あたりまえだが、こんな時間に誰も居はしない。
エンジンを止めた高槻は、どこに置いていたのか、ミネラルウォーターのペットボトルを和泉に渡してきた。
同じものを自分は一口飲んで、渡された和泉ものど奥を潤した。
ハンドルに片腕を乗せて、和泉に視線を合わせて、・・・戸惑いがちに伏せながら「ごめん」と一言が漏れた。
意味が分からなくて、和泉は高槻を見つめ返す。
何故に謝られるのだろう。
「たか・・・つきさん・・・?」
和泉は自分の声が震えていることに気付けなかった。
高槻の声は淡々としているようで、だけど苦しそうに吐き出される。
「君のことが・・・、和泉くんのことが好きなんだ。会うたびに想いが溢れていく感情をずっと抱えていた。自分でも無茶を言ったところがあるのは分かっている。それでも、そうしても寄りそってきてくれる姿を見て、満足したかったんだ。だけど、結果的にそれは、和泉くんの負担にしかならなかったね」
じっくり聞いたつもりだった。
だけど、高槻が言う意味はこの場では理解できなかった。
兄のように信頼していたこと。人生の先輩として憧れがあったこと。
『好き』は和泉のなかにだってある。
しかし、高槻から語られる内容は・・・。
「たかつき・・・さん・・・?」
掠れた声。呆然と見開かれる瞳。
注ぎ込まれる眼差しに脅えと期待・・・、期待とはなんだと一瞬よぎった。
一番欲しい言葉を間違いなく高槻は繋いでくれる。
「和泉くんのことをずっと可愛いと思っていた。俺は、そういう人間なんだ。嫌われることが怖くて黙っていたけれど、こんなふうに無邪気に寄られるたびに悩まされた。どんな時だって一人占めしたいと思う感情が湧く。無理を言ったことも多々あったと、自分でも分かっているよ。それでも、受けてくれる和泉くんに、味をしめていたのかも知れない」
考え抜いて、覚悟を決めた眼差しはあまりにも熱いと思った。
なにげなく、淡々と過ごしてきた日々とは違うものが、ここに、この先にある。
だけども何も、高槻自身を否定や拒絶するようなことは浮かばなかった。
嫌う要因にはならなかったのだ。
高槻はためらいを捨てるように言葉を続けた。
「そばにいたい、という思いは、きっと和泉君が持っているものとは違っている。俺は君を抱きしめたいし、性的なこともしたい。そういう対象なんだ。君はノーマルだろう?早めに別れるのがいいと思う。この先、何をするか分からないからな・・・」
自嘲的に笑った表情はあまりにも辛く悲しげだった。
そんな顔をさせたくてここにいるわけではないのに・・・。
「嫌ってくれた方が、どれだけマシか・・・」
苦しみを吐き出すような声。
中途半端にそばに居られることの辛さを物語られる。
真実を知って、『自分とは関係ない世界』と割り切れたら、高槻にとっても区切りが付けるものになったのだろうか。
それでもやはり、和泉は、高槻を異端児と見ることもできなく、今までと変わらぬ信頼を寄せることができる。
性的な云々は良くは分からない。
高槻を高槻として、一人の人間として見るのではダメなのだろうか。
「嫌いになんか、なれないです・・・」
消えそうな声で、だけど狭い空間でははっきりと届いていた。
驚いたように見開いた瞳は、まだ何かを告げたそうに、しばし揺れていた。
真正面から捕えられたとき、苦しそうに表情がゆがむのを見た。
・・・簡単なことではない。
そう、語るかのように・・・。
にほんブログ村
ぼちってしてくれるとうれしいです。
不定期更新を申し訳なく思います
少しでも多く 早く 届けたいと。
なるべく 続けていきたいです
見知らぬ世界を教えてくれる、それだけではなかったと思う。
同じ学生同士のように、張り合うこともなかったし、全てを包み込んでくれる潤いがあった。
会えば落ち着いたし、醸し出される雰囲気が心地よくて、いつしか、和泉は友人たちの誘いを断ってまで高槻を優先させていた過去を知る。
・・・現実・・・
あたりまえのことだ。
高槻ほどの人間が、いちいち気にかける人物ではないとは、出会った頃に知ったことではなかったか。
どこまで付き合ってもらえるか、曖昧な線引きの存在。
分かってはいたけれど、改めて教えられた『立場』のような気がした。
自分から縋ることはできない。
高槻から拒絶されれば、"それまで"と思うしかなかった。
・・・『もう会うのをやめようか』・・・
そのセリフは、夢見心地だった和泉を現実に戻してくれるには充分だったのかもしれない。
「そう・・・ですね・・・」
個人的に出会うようになってしまったことが間違いだったのだろうか。
会えば会うほど、魅力に惹きこまれた。
近くにいて、決して嫌ではない存在。それはじんわりと和泉の中を浸食していた。
友達よりも心を、感情を許した存在なのだと思う。
和泉が何を言っても、温かくうけとめてくれたこと。
"大人"の余裕なのだろうか。
その落ち着きが、安らげて嬉しかった。
高槻に拒絶されたら、和泉には何も言えない。
高槻の顔を見られずに返した言葉に、やはり考え込む高槻の姿が視界の隅に映った。
「出ようか・・・」
これ以上この場での会話はしたくないと言いたげに、伝票を掴んだ高槻が立ち上がる。
和泉は後悔しまくっていた。
自分が、あんな我が儘にも似た相談をしなければ、高槻の気持ちは動かなかったのだろうかと。
これまでも無理強いされることはなかったし、いつも和泉の都合を尋ねてくれた。
迷惑だと思ったことはなかったけれど、伝え方は、違った意味で高槻に届いてしまったのか・・・。
重苦しい雰囲気を纏ったまま、車に乗り込む。
どこかへ走り出した車は、いつも送ってくれる、和泉の家に近づいていなかった。
その方向に不思議な思いを宿すものの、思いを詰めたような表情の高槻に何も言えなくなる。
しばらく走った。
無言のままで、どちらともなく言葉を発することを躊躇いながら時間だけが過ぎる。
辿りついた場所は、暗闇に飲みこまれそうな波が打ち寄せる、海水浴場だった。
あたりまえだが、こんな時間に誰も居はしない。
エンジンを止めた高槻は、どこに置いていたのか、ミネラルウォーターのペットボトルを和泉に渡してきた。
同じものを自分は一口飲んで、渡された和泉ものど奥を潤した。
ハンドルに片腕を乗せて、和泉に視線を合わせて、・・・戸惑いがちに伏せながら「ごめん」と一言が漏れた。
意味が分からなくて、和泉は高槻を見つめ返す。
何故に謝られるのだろう。
「たか・・・つきさん・・・?」
和泉は自分の声が震えていることに気付けなかった。
高槻の声は淡々としているようで、だけど苦しそうに吐き出される。
「君のことが・・・、和泉くんのことが好きなんだ。会うたびに想いが溢れていく感情をずっと抱えていた。自分でも無茶を言ったところがあるのは分かっている。それでも、そうしても寄りそってきてくれる姿を見て、満足したかったんだ。だけど、結果的にそれは、和泉くんの負担にしかならなかったね」
じっくり聞いたつもりだった。
だけど、高槻が言う意味はこの場では理解できなかった。
兄のように信頼していたこと。人生の先輩として憧れがあったこと。
『好き』は和泉のなかにだってある。
しかし、高槻から語られる内容は・・・。
「たかつき・・・さん・・・?」
掠れた声。呆然と見開かれる瞳。
注ぎ込まれる眼差しに脅えと期待・・・、期待とはなんだと一瞬よぎった。
一番欲しい言葉を間違いなく高槻は繋いでくれる。
「和泉くんのことをずっと可愛いと思っていた。俺は、そういう人間なんだ。嫌われることが怖くて黙っていたけれど、こんなふうに無邪気に寄られるたびに悩まされた。どんな時だって一人占めしたいと思う感情が湧く。無理を言ったことも多々あったと、自分でも分かっているよ。それでも、受けてくれる和泉くんに、味をしめていたのかも知れない」
考え抜いて、覚悟を決めた眼差しはあまりにも熱いと思った。
なにげなく、淡々と過ごしてきた日々とは違うものが、ここに、この先にある。
だけども何も、高槻自身を否定や拒絶するようなことは浮かばなかった。
嫌う要因にはならなかったのだ。
高槻はためらいを捨てるように言葉を続けた。
「そばにいたい、という思いは、きっと和泉君が持っているものとは違っている。俺は君を抱きしめたいし、性的なこともしたい。そういう対象なんだ。君はノーマルだろう?早めに別れるのがいいと思う。この先、何をするか分からないからな・・・」
自嘲的に笑った表情はあまりにも辛く悲しげだった。
そんな顔をさせたくてここにいるわけではないのに・・・。
「嫌ってくれた方が、どれだけマシか・・・」
苦しみを吐き出すような声。
中途半端にそばに居られることの辛さを物語られる。
真実を知って、『自分とは関係ない世界』と割り切れたら、高槻にとっても区切りが付けるものになったのだろうか。
それでもやはり、和泉は、高槻を異端児と見ることもできなく、今までと変わらぬ信頼を寄せることができる。
性的な云々は良くは分からない。
高槻を高槻として、一人の人間として見るのではダメなのだろうか。
「嫌いになんか、なれないです・・・」
消えそうな声で、だけど狭い空間でははっきりと届いていた。
驚いたように見開いた瞳は、まだ何かを告げたそうに、しばし揺れていた。
真正面から捕えられたとき、苦しそうに表情がゆがむのを見た。
・・・簡単なことではない。
そう、語るかのように・・・。
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ぼちってしてくれるとうれしいです。
不定期更新を申し訳なく思います
少しでも多く 早く 届けたいと。
なるべく 続けていきたいです
お越しくださいましてありが゛とうございます。
>毎日本当にドキドキしてます。ありがとう。どうなるんだろう??ドキドキです。
なんとか、なんとか書いていきたいと思っています。
今回はそれなりにプロット的なものがあるので 書き進められています
気ばかりあせって 文中に味がないものになっているような気がしていますが。
楽しんでいる方がいてくれると分かるだけで活力になります
ありがとうございました。
>毎日本当にドキドキしてます。ありがとう。どうなるんだろう??ドキドキです。
なんとか、なんとか書いていきたいと思っています。
今回はそれなりにプロット的なものがあるので 書き進められています
気ばかりあせって 文中に味がないものになっているような気がしていますが。
楽しんでいる方がいてくれると分かるだけで活力になります
ありがとうございました。
高槻告った~。
そっか~その為の会わない方がだったのね~。
ちょっとデートしてる間に更新されててニンマリしちゃったよ(* ̄ー ̄)
さあ、和泉くんは頭フル回転させてお返事するんだよ~(*^^*)
うーちゃんもももくんも探偵ごっこ再開だよ~♪
よ~く観察して日記書いてね~(^-^ゞ
地下鉄が電波入るようになったからコメしやすいわ~(*^^*)
そっか~その為の会わない方がだったのね~。
ちょっとデートしてる間に更新されててニンマリしちゃったよ(* ̄ー ̄)
さあ、和泉くんは頭フル回転させてお返事するんだよ~(*^^*)
うーちゃんもももくんも探偵ごっこ再開だよ~♪
よ~く観察して日記書いてね~(^-^ゞ
地下鉄が電波入るようになったからコメしやすいわ~(*^^*)
さえちゃん ちわーっ
> 高槻告った~。
> そっか~その為の会わない方がだったのね~。
> ちょっとデートしてる間に更新されててニンマリしちゃったよ(* ̄ー ̄)
でーとっ。
もしかしておじゃましてしまいましたかねぇ
こちらは気にせず、デート 満喫してくださいね
> さあ、和泉くんは頭フル回転させてお返事するんだよ~(*^^*)
> うーちゃんもももくんも探偵ごっこ再開だよ~♪
> よ~く観察して日記書いてね~(^-^ゞ
>
> 地下鉄が電波入るようになったからコメしやすいわ~(*^^*)
地下鉄も変わりつつあるのでしょうか。
時刻表の再編などもあって春の嵐です。
我が妹も 県またいでの勤務だったのですが、地元に戻ってきました。
近くにいるっていいね。
みんなっ、いっぱいある春、がんばろうねっ
> 高槻告った~。
> そっか~その為の会わない方がだったのね~。
> ちょっとデートしてる間に更新されててニンマリしちゃったよ(* ̄ー ̄)
でーとっ。
もしかしておじゃましてしまいましたかねぇ
こちらは気にせず、デート 満喫してくださいね
> さあ、和泉くんは頭フル回転させてお返事するんだよ~(*^^*)
> うーちゃんもももくんも探偵ごっこ再開だよ~♪
> よ~く観察して日記書いてね~(^-^ゞ
>
> 地下鉄が電波入るようになったからコメしやすいわ~(*^^*)
地下鉄も変わりつつあるのでしょうか。
時刻表の再編などもあって春の嵐です。
我が妹も 県またいでの勤務だったのですが、地元に戻ってきました。
近くにいるっていいね。
みんなっ、いっぱいある春、がんばろうねっ
2次元に また2次元の日記付録つきで愉しませていただいてます☆
きえちん 師匠 フルパワーで楽しいお話ありがとうございます
体調は大丈夫でしょか? 楽しそうだから~好いよね
ちーさん 喘息は冷感温度差が堪えますんで 首周りお気をつけてください
ni ついに本家(PC)の移動も発生 お引越し(プロバイダー)も生じ
暫くは コメがすぐできないようです。 でも読めてるよ(^^)
なんて贅沢なんでしょう!!!
地味に参加しますので お相手くださいませ
きえちん 師匠 フルパワーで楽しいお話ありがとうございます
体調は大丈夫でしょか? 楽しそうだから~好いよね
ちーさん 喘息は冷感温度差が堪えますんで 首周りお気をつけてください
ni ついに本家(PC)の移動も発生 お引越し(プロバイダー)も生じ
暫くは コメがすぐできないようです。 でも読めてるよ(^^)
なんて贅沢なんでしょう!!!
地味に参加しますので お相手くださいませ
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