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BLの丘
あつみと真室のお花見
2013-04-04-Thu  CATEGORY: 乱反射
桜がまもなく満開になると、ニュースでやっていた。
リビングでくつろいでいた時、それを見て真室が「お花見に行きませんか?」と声をかけてきた。
いつも、通勤の途中など、通り過ぎるだけで、まともに見たこともないな・・・とあつみは過去を振り返る。
真室と一緒に歩くのもいいかもしれない、と過って、「そうだな、この週末にでも見に行こうか」と答えた。

真室にはお薦めの穴場があるらしい。
「小さい川のほとりに、菜の花と桜の木が並ぶんです。そんなに広い場所じゃないし、地元の人が犬の散歩をしているようなところなんですけれどね」
そこは、真室の両親が引っ越した先の近くだとか。
昔から知っていたこともあって、両親はその土地を選んだのだろうか。
それは聞くことではないなと思ったけれど。

そして日曜日の朝、若美から重箱に詰めたお弁当を受け取って、電車を乗り継いで、パスにも揺られて、目的地に着いた。
さすがに休日だからなのか、見物客はいたけれど、テレビなどで見る混雑は全くない。
誰もが静かに自分たちの世界を楽しんでいるような、のほほんとした雰囲気だった。
あぜ道に家族連れで円を作っているグループもいる。

澄み渡る青空、サラサラと流れる小川の水も清らかだ。
傍を黄色い菜の花が埋め尽くしていて、間隔を置いて、数十本の桜の木が植わっている。
ここのあぜ道は、めったに車など通ることはないのだろう。

「あつみさん、この辺にしましょう」
真室に促されて比較的端のほうの桜の木の下にシートを広げた。
おかげで一望できると言ってもいいところ。
ざわめきもなく、こんな静かな『お花見』があるのかとあつみは感心してしまった。
聞こえるのはせせらぎと、鳥のさえずり。
遠くで走り回る子供の声くらいだ。

「なんか、いいところ、聞いちゃったな。ありがとう、真室」
素直に礼を述べれば、少し照れたように、「お弁当食べましょうか」と、持ってきたものを広げようとする。
いつもあどけなく、堂々と向かってくるところがあるのに、しおらしい部分を残してくれているのは、あつみの喜びでもあった。

紙袋の中から取り出された重箱は風呂敷に包まれており、三段重のソレは、豪華なお花見弁当だった。
たぶん、デパートなどで購入したなら、一人前としても数千円で買えるものではないだろう・・・。
なにより嬉しいのは、嫌いなものが何一つないこと。
すでに真室とあつみの好みを知った若美なりの配慮がうかがえる。

雑談をしながら、ゆるやかな時を過ごして・・・。
桜の木が小さな陰りを作ってくれるから、お腹がいっぱいになっては横になってみた。
こんなふうに静かに見上げる桜なんて、見たことがなかったな・・・と感慨深いものが胸に湧いてくる。
過ぎる風が冷たくもなく、とても心地よい。

「あつみさん、寝ちゃわないでよ」
「眠くなりそうだよ」
「ちゅーしちゃうよ」
珍しい発言だな、と思いながら、瞼もあげずにクスリと笑って。
時々大胆な行動に突っ走ってくれる真室だ。
それはそれで嬉しかったから、「どうぞ」と答えた。

単純に会話がなくなるのが淋しかったのかな・・・と、寝られることを咎められたのかと思っていたけれど。
もっと濃い影が瞼の上を覆う。
次の瞬間には、唇に温かいものが降り注いでいた。
驚いたのは、同時に、シャッター音が聞こえたことだ。
慌てて眼をあければ、間近に真室のいたずらっ子の表情がある。

「ま、真室?」
キョトンと見上げると、へへへと笑っていた。
「ごめんなさい。写真、撮っちゃった」
「写真っ?!」

操作しては、画面を見せてくれる。
咄嗟に撮ったのだろうに、あまりにも良い角度で、また背景には遠くまで連なる菜の花と桜が入りこんでいた。
偶然にしてもその写りの良さには、真室も驚いていたようだ。
「わぁ・・・」
「『わぁ』って、あのね・・・」
半ば呆れながら、だけど、真室は自分のものなのだと表しているようで、嬉しくも思えてくる。
誰に見せびらかすつもりもないけれど。

キスしてもらったお礼に、と今度はあつみが組伏せていた。
「写真なんか撮る余裕、なくなるようにしてやるよ」

ここが静かな場所だから・・・。
人通りもほとんどないから・・・という甘えもあった。
外でこんなこと、したことがない興奮もあつみを煽ってくれた。
チュッチュッと啄ばむようなくちづけを贈って、そっと舌を割り込ませる。
頭部を包んでは逃げられないようにして、太陽の下で真室の口腔内を味わった。

どうかいつまでもこの場所が、このままで・・・と願う。
『また来年も一緒に来ような』
くちづけの合間に囁いたつぶやきに静かに頷いてくれた。

あたたかい春の日・・・。
いつも『新しい門出』の時。



この話とは関係ないのですが、けいったんさまから詩を頂きました。
お披露目 ということで・・・(^^ゞ
いつもありがとうございます。



『桜雪』

淡く ひらひらと  
指で掬えば 仄かに伝わる ぬくもり

儚く ひらひらと 
口に含めば 微かに感じる いつくしみ

君と出合って 
何度も迎えた季節 何度も過ごした季節

今年は 強く強く 願う 
また 君と この季節を…


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コメント

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桜といえば
コメントたつみきえ | URL | 2013-04-04-Thu 16:50 [編集]
まったくの 私の個人的な感想でしかないのですが

http://kiehan.blog54.fc2.com/blog-entry-412.html

こんなのも書いていたなぁとちょっと思い出しました。

できるだけハピエンで・・・と思っていたのに、何故にこんなものが出たのか
私自身不思議です。
暗い気持ちにさせたなら ごめんなさいね
春じゃなくて 初夏(o'ω'o)?
コメントけいったん | URL | 2013-04-05-Fri 13:50 [編集]
真室と あつみ
人目が無いのを 良い事に イチャイチャしていると 
「丘の住人」の名カメラマンに 撮られちゃうよ~(笑)

今日の此方は 外は 少し汗ばむくらいで
室内でも 肌寒さも感じず やっと過ごし易くなって来ました。

桜も 満開の時期は過ぎ 葉桜もチラホラと…
今日のような青空の下では すごく綺麗に映えて 魅せられます。

打って変わって 明日は 風雨共に強い悪天候との予報
今日で 桜も見納めかと。
今年も 写メは撮れなかったけど しっかり 目に焼き付けたから いいも~ん。
☆パシャッパシャ☆> Σ 【ヽ( ̄ * )

P.S.いつも 勝手に贈りつけた詩を 丁寧に扱って下さって ありがとう♪♪感謝☆(人゚∀゚*)☆感謝♪

 
イチャイチャ~
コメントさえ | URL | 2013-04-05-Fri 23:55 [編集]
桜の下でイチャイチャいい感じだね~(*^^*)
ちーちゃん写真撮って~!
けいったん詩上手だね~♪
きえちん、もぐもぐに桜写メあるので見て~♪
よかったら使ってくださ~い♪

もうすぐ終わるけど5日は私の誕生日でした~(*^^*)
へへっ♪
あれ?
コメントちー | URL | 2013-04-07-Sun 04:29 [編集]
なぜか、コメがない・・・かな
にゃんでだろー。ま、いっか。

きえちん、貼ってくれたお話、私は、好きだよー。
切ないけれど、そういう経験があったからこそ、野崎さんとの出逢いもあった訳だし。
双子さんだし←大人だから、さん、にしてみた

あっちゃん、マムちゃん、無防備すぎー。
若美お兄ちゃんのお花見弁当食べたぁい!
そうそう、油断してると私がカシャっ!っとね。
今回のもいただきましたぁ。
双子ちゃんのキス写真はたくさん集まったけど、他はなかなかねー。
ひーくん、千城さんあたりは頼めばやってくれそう(笑)だけど。

さて、次は野外で、チューシリーズにしましょうか。
野外チュー?!
コメントたつみきえ | URL | 2013-04-07-Sun 09:01 [編集]
忘れていましたが 双子も 桜も 過去に書いていたのですね
思い出してびっくりしたところもありました

春 出会いと別れの季節ですね

野外でちゅーする人はあとは誰でしょうね

カメラマン(じゃなくて腐ーレンズ女)がんばれーっ

いろいろ皆さまから刺激もらって まだまだ何か書き続けたいです
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