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BLの丘
緑の中の吐息 18
2013-06-19-Wed  CATEGORY: 吐息
砂利の敷かれた広い敷地に車を適当に停めて、すぐ隣の家に入っていく。
広い土間があり、こまごまとした農具が無造作に見えるが、丁寧に手入れされて置かれていた。
農具が並べられた反対側が上がり口になっていて、黒光りした床板と、奥に畳の間が広がっているのが見渡せる。
古い建物だが、手入れが行き届いているとは、建築物に携わる仕事柄、美琴には簡単に見極めることができる。
どう見ても『一般家庭』の訪問に、美琴は焦るのだが、先を歩く男たちは気にした様子もなく、まるで我が家のように足を踏み入れていった。
良く来るところなのだとは、その態度だけでも知ることができるが…。
「お~い、来たべ~」
出迎えてくれる人がいなくても奥へと進んでいく後ろ姿を眺めては、思わず背後から声が上がってしまう。
荷物のリュックたちは男たちに奪われ(運ばれ)、美琴は瑛佑に強引に抱きあげられていた。
「あ、あの…っ」
だが、美琴が次の言葉を発する前に土間の奥から、甚平姿で髭面の、男たちと同い年くらいの男がサンダルをひっかけて顔を出してきた。
続いて、奥さんだろうか、女性が割烹着を着たいでたちで続いてくる。
「おぅ。もうすぐ風呂がいっぱいになるぞ」
「ようこそいらっしゃいました。大変でしたでしょう。洗濯もできますから、どうぞゆっくりしていってください」
人の良さそうな笑顔で奥に入るよう促され、女性の『客慣れ』した態度に少々驚かされたものの、自分たちの意見が全く無視されている現状は動揺を生みだす。
男がリュックを上がり口に置けば、瑛佑も美琴を隣に腰掛けられるよう下ろした。
全員が立ったまま話し始めてしまうのを、どのタイミングで口を挟んだらいいのだろうと一瞬考えてしまった。

"人が集まる場所"と聞いたことも脳裏を過った。
外観が"民宿のよう"だったと振り返れば、趣もなんとなく理解できる気がしてしまうのだから不思議だ。
男たちの勢いに気圧される形で、逃げ出すことができなくなってしまった現在。
困ったように瑛佑を見上げると、クスリと笑われ肩を竦められて、「まぁ、いいんじゃない」とこの流れに乗る気でいるようだった。
洗濯はともかく、すでに用意された風呂の存在は、一番の魅力に聞こえたのかもしれない。
あとはこの場に集まる人が醸し出す人柄か…。
無下に断るのも失礼だと思えてきて、穏やかに済ませる方向で動こうとする。

突然の訪問に対応してくれたことに感謝して、一通りの挨拶を済ませると、早速浴室に案内された。
農機具が収められた奥に浴室があって、土間続きであるため、外から帰った格好のままで直接脱衣所に入れる造りになっており、効率の良さを表していた。
少しだけ聞いた話、やはりここは『民宿』なのだという。ただ、観光客よりも仕事で訪れる人を受け入れる細々とした経営のため、知る人は少ない。
近年建てられたという母屋はすぐ隣にあり、古民家風情のこちらの建物が、ほとんど『解放』された空間になっているとか…。
時々こうやって地元の人が集まり、会合が開かれたりもするそうだ。
きちんと温泉が引かれているため、集まるにはもってこいの場所らしい。
風呂場は昔ながらのタイル張りの浴室だった。
それでも大人が3人は余裕で入れそうな浴槽は広いと言えるだろう。

美琴は瑛佑に支えられながら全裸に剥かれていく。
先に裸にされた美琴だけが浴室内の椅子に連れられ、自分も脱ぎに出たはずの瑛佑が戻ってくるまでには少々の時間を要していた。
男たちと、どちらから言うわけでもなく、自然と二人だけの入浴時間にしてくれたのは、全員の態度から悟ることができていた。
無駄話をしているわけでもないだろう。
しばらくしてタオルを持った瑛佑が見事な筋肉を披露しながら入ってくる。
思わず目を奪われ、しかし凝視するのも失礼だとスッと視線を彷徨わせた。
見慣れていいはずなのかもしれないけれど、欲情してしまいそうな自分を知るのも怖くて、極力平常心を保とうとする。
隣にあった椅子を美琴の背後に引き寄せて、瑛佑も座るとシャワーを手に、美琴の頭から洗いだした。
美琴は咄嗟にシャワーを取り返そうとしてしまう。
自分たちしかいなくても、人に洗ってもらうのには抵抗があり、気恥かしさも駆け巡る。
「えぃ、すけっ、自分ででき…っ」
頭のてっぺんから勢いよくお湯を降らされるのだから、目と口が閉じてしまった。
「美琴さんが見られないところまで、じーっくり洗ってあげるから安心してて。…あ~、やっぱりあちこちアザになっちゃってるね。明るいところで見るから良く分かる」
時間が経つにつれて肌の色が変色していることを指摘された。
あれだけあちこちにぶつかったのだからそれも仕方ないこと。
それより、体の隅々まで瑛佑の手で洗われることになりそうな事態にまた焦った。
"自分で見られない部分"…。
脳に浮かぶものは、下半身の反応を煽ってしまった。
俯いた視線の中に、自身の素直な部分がピクリとしたのは、気のせいだと思いたい…。

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コメント

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何から何まで~(*≧∀≦)(≧∀≦*)ネー
コメントけいったん | URL | 2013-06-19-Wed 08:44 [編集]
瑛佑の美琴への 構いっぷりを見れば見る程 
美琴が可愛くて 愛しくて 仕方がないって気持ちが 分かりますね♪

この作品を読んで 思ったのですが、
きえちん作品の攻め様の中で 瑛佑が一番 包容力があるのでは ないかと!
だって 天邪鬼で ストイックで 生真面目すぎる程の完璧主義の美琴を 圧も掛けず、甘やかしもせず、飄々と自然体で 全て 受け止める男だなんて 最高でしょ♪

今回の作品で 私の中で 瑛佑への評価が上がってま~す。
+゜*。:゜+(人*´∀`)ウットリ+゜:。*゜+  
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