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BLの丘
緑の中の吐息 19
2013-06-20-Thu  CATEGORY: 吐息
肌の上を流れる水流が気持ちいい。
冷えていた身体は、瑛佑の体温によって温められていたけれど、それとはまた違った落ちつきを届けてくれた。
思考をどうにか別の方へと向けて体を鎮静化したかった。
美琴が羞恥に耐えているのを知るのか、瑛佑は手早く、髪からシャワーを当てていく。
平然としている瑛佑とは対照的に動揺しまくりの自分が、少々情けないやら、また浅ましさを自ら露呈しているようで逃げ出したくなる。
背後にいてくれるのをいいことに、膝の上に置いた両手を中央へと寄せるてみて、あとは口が動くばかりだ。
「瑛佑っ、自分で洗えますからっ」
「今は軽く流すだけにして、一回あったまっておこう。美琴さん、筋肉も凝り固まっちゃってギシギシ言ってるでしょ」
瑛佑の軽く握ったこぶしが、首筋や肩を叩いた。
寝心地の良い寝具で眠ったわけではないのだから当然のことで、それを言ったら一晩中、美琴を抱えていた瑛佑のほうがずっと無理な姿勢だったのではないか。
常に美琴を気にかける気持ちと、扱われ方にホロリとさせられ、でも咎めてしまう口調は変えられない。
それが美琴流の甘え方だったのだけれど…。
「あなたはご自分のことをされてくださいっ。あの、タオルを…」
「これ、いっこしか借りてないんだもん、美琴さんが終わって湯船に届けてから、俺のことするし」
手持無沙汰になるのだと言いきられて、言葉に詰まる。
確かに自分の洗浄シーン(?)を見られているのも困りものだが…。
当たり前だが、疑問も過っていった。
汚してしまったとしても、他にもタオルはあったはずで、洗って使えば済むことで…。
何故に借りるのかと振り返り、視線だけで問うと、ニッコリと笑われた。
表情だけで良からぬ事態に陥ったことが瞬時に判断できる、瑛佑の機嫌の良さが浮かんでいた。

「女将さんが洗濯してくれるっていうから、全部預けてきちゃった」
「全部っ?!」
リュックをひっくり返して汚れものを選ばずに渡した…と言わんばかりだ。
さらに「おじちゃんが、近所のコンビニでパンツ買ってきてくれるって言うんで、今着てきたやつも全部」とあっけらかんと言い放ってくれる。
「な…っ?!」
驚きに目を見開く美琴をものともせず、瑛佑は口笛でも吹きそうなご機嫌で美琴の背中を洗いだす。
ただの泥汚れだけならいいが、絶対に人に預けられたくないものが、そこには含まれていたはずだ。
「えいすけっ!!!(////)ノ」
「洗濯機に放りこんだの、俺だし、あとは全自動で全部やってくれてるよ。だーからーぁ、貸切風呂、堪能させてもらおう」
先程、一度出ていった瑛佑がなかなか戻ってこなかったのは、この件があったからか…と、今頃知ってもすでに遅い。
美琴に相談しなかったのは、確実に止められることが分かっているからで、最終的に受け入れられるのであれば執り行ってしまうに限ると瑛佑も学習済みだった。
頭が固すぎるのか、しかし、瑛佑と同じ目線で物事を捉えて開き直れる感覚は美琴にはまだない。
結局はため息一つついて全てを享受することになる。
笑顔が見られるから、素直に聞き入れ、美琴もそれ以上の発言もなく口を閉ざすことができる。

一体どれくらい、瑛佑には恥を晒したのだろう…。
救われているのは、何をとっても瑛佑が「みっともない」と言わないことだ。
感情がこぼれれば喜ばれたし、困惑すれば一緒に解決策を探してくれる。
頑なになるばかりの美琴を、慌てず急がず、美琴のペースを守りながら、必要ない殻にヒビを入れていく。
昨日、"置いていかれるかもしれない"という不安を抱いたのは、瑛佑を信用できていないからで、それこそが相手に対して一番失礼なものだと思う。
瑛佑とは意思の疎通があまりにも出来過ぎているため、どうしても言葉が不足する。
お互いの行動を嫌だと思うところがないから、強い言葉も滅多に出てくることはない。
そういう意味でも、昨日の瑛佑の危機感を持った時の口調は印象的だった。
想われていると分かる。安心できる影には、善悪を間違わない逞しさが漂うから、"恥"を晒した後でも気分を切り替えてそばに寄れるのだろう。

体を洗われながら、確実にやってくるだろう、未来のことがふと脳裏をよぎっていった。
瑛佑よりも年上の自分は、瑛佑に何をしてあげて、何を残せるのだろう。
瑛佑の前から去ってしまった人のことも思う。
同じ不安だけは、また持ってほしくない。

「美琴さん、こっち向いて。お尻洗うからつかまってて」
言うよりも動かす方が早いか、椅子の上で身体が反転する。
タイルの上に膝をついた瑛佑が美琴の両腕を肩にかけさせると、腰を浮かせた。
昨日も同じようにして着替えをされたものだ。
身体が密着して表情が見えなくなるのが少しばかり羞恥心を蹴散らしてくれた。

「あ…」
しかし、秘孔の上をさすられれば話は別。
「瑛佑っ」
「だってここも汚したままだし~」
美琴のささやかな抵抗は力でねじ伏せられた。
瑛佑が明るい声をあげるのは緊張をほぐすためもあった。
眠っていた子供を起こすようなことはしてほしくないのに…。
重ねた肌では反応はすぐに知れ渡る。
ただ、美琴も瑛佑のモノを感じて、それでも堂々とした態度でいることにホッとしていたりもする。
「瑛佑…」
吐息に混じった声が漏れてしまうと、瑛佑の口角が上がるのが分かった。
「美琴さん、怪我したことは、どうせ社長にはバレちゃうよね?」
何が言いたいのだろう…。
確かに、隠したがって昨夜の下山は見送ったが…。

「まぁ、いいや。話は後で、湯に浸かろうか」
スッと話題を変えられて、疼きかけた体を放ったらかしにされた。
それはそれで、また予想外でもあった出来事で、美琴は戸惑ってしまう。

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コメント

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(o^^o)ふふっ♪
コメントけいったん | URL | 2013-06-20-Thu 15:50 [編集]
美琴の強がる言動も 全て 可愛く見えるから 不思議~?ホェ?(o・ω・o)?ホェ?
それだけ 瑛佑の側の美琴が 居心地いいんだね♪

2人の様子が ほんと 微笑ましいわぁ~.。.:*・゚(*ゝ∀・)。.:ィィ゚.+:。


今日は 歯医者さんの日でした。
行きは雨も止んでいたのに 帰りは 土砂降りで 全身 ビチョビチョ!

大雨の被害を遭われている方もいらっしゃるでしょう。 
どうか 皆様、くれぐれも お気をつけてお過ごし下さいませ。

週末には 晴れるとの予報ですし!☀⌒*晴れ*⌒☀
みなさま こんばんは~
コメントきえ | URL | 2013-06-20-Thu 20:52 [編集]
台風、大丈夫ですか~?
なかなかレスも書けなくて、でもコメントいただけて励みになってます。

美琴の再生編か? って、…いえ、そんなことありません。
新しく芽吹いたかもしれませんが。
そう、簡単に生まれ変わるんですかねぇ。
ハリネズミみこっちゃんは、ハムスターのようになれるのかしら。
走り回っていそうなのは、相変わらず?!

本当に感謝祭までに終わるのかなぁって心配にもなりはじめました。
でもまぁ、書きたいこと書いていこうと思います。

みなさん、いつもご訪問、本当に感謝しております。
ありがとうですm(__)m

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