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BLの丘
木漏れ日 35
2013-08-31-Sat  CATEGORY: 木漏れ日
白神のことを嫌いになれない理由は、その無邪気さにあるのだと思う。
学力のことを自慢してくることもないし、鳥海の性格も理解しくれているから話がとてもあう。
自分の本音を漏らしても真剣に聞いてくれるし、真面目に答えてくれる。
白神も鳥海に遠慮するような仕草は見せない。
お互いが、お互い様に過ごす。特に取り繕う必要がないから心が居心地がいいと安堵する。

出しぬかれたと思ったのは自分の足りなさで、知らなかったのは自分たちに立てられる噂をどうでもいいことと耳を傾けなかった結果で、白神もひけらかすようなことはしなかったから。
白神にとっては、自分への評価は自分のもので、他人の意見なんてどうでもよかったのだ。

「どうする?どうする?」と期待を寄せる白神と、家で仔猫相手にじゃれている時に八竜が帰宅した。
「あち~っ。母さん、風呂」
帰宅後、真っ先に台所にいる母親に叫んだ八竜に、「洗ってあるから、自分で沸かしなさいっ」と反撃にあっている。
その途端にねこじゃらしを投げ出した白神が、「用意してあげますっ」と飛び出した。
五城目家の設備はほとんど理解している白神に成長した。
母親も気を使うところもなく、"増えた手のかからない息子"として扱っている。
ついこの前だって、「洗濯機、まわしておいてもらえる?干すのはするから」と言った母親に、「僕、やりますっ」と嬉々として動いていた。
ただ、そこに母親の服だけなかったのは、一応女性としての恥じらいを持っているのか、男性陣のものと一緒に洗いたくない潔癖症があるのかは聞かない。

「おぉ、サンキュ。ちょっと部屋行ってくる」
「はーい。…あ、八竜さん、今度のおやすみ…」
「休み?あぁ、なんかするって言ってたっけ?」
鳥海には会話だけが聞こえてくる。
とりあえず八竜も覚えていたところはあったようだ。
どんな表情をしているのかまでは分からないが、声のトーンで白神が緊張してる感じがするし、八竜は相変わらず、『だから何?』的なそっけない感じだ。
こんな時、決まって白神はショボーンとしているんだろうな。
その後に続くものがあったのか、八竜の二階に上がっていく足音が聞こえて、白神が戻ってきた。
やっぱり白神は悩ましい表情だ。
「鳥海~」
「遊園地行きたいって言ったの?」
「言ってない」
肝心なところはこちらに頼ってくる手法もいつものことか…。
状況だけは整えるのに、肝心の一言が言えないのは相手が八竜だからなのか。
普段はいらないくらい積極的なのにな…。

「でもさぁ、にぃにそう言って一緒に来ると思う?」
世間的に見れば、何が悲しくて休日にガキの子守り?の心境だろう。
そう言えば瀬見にも連絡を取っていない。
まだ瀬見が同意してくれていれば、友達の手前…と付いてくる可能性は高いけれど。
かといって、いきなり瀬見に話をするのも、どんな理由をつければいいのか全く思い浮かばなかった。
「鳥海が、『ふたりで行くのもなんか怖いし…』とか言ってみるとか?」
「最初っから行くなって言われそう」
「鳥海、観覧車、乗れないことにしなよ」
「なんで?」
「僕、一人で乗るの、淋しいから」
そうは言われても、昔からありとあらゆる乗りものを乗りこなしていた事実を八竜が忘れているとは思えない。

あーだこーだと言っているうちに、八竜が風呂から上がってきた。
「あー、さっぱり~」
髪は濡れたまま。Tシャツにハーフパンツを合わせた格好で、ボスンっとソファの前に座布団を寄せて胡坐をかく。
途端に白神が立ち上がってビールとグラス、簡単につまめるものを母親から分けてもらって運んでくる姿が、なんともいじらしい。
それらをあたりまえのごとく受け入れている八竜で、昔は自分で冷蔵庫に向かっていたのに、いつのまにかその姿も見られなくなったことに気付く。
傍から見ていればもう充分なほどなのに、決定的な言葉が聞かれないだけに、白神としては不安なのだろう。
白神から手渡されたものを「サンキュ」といつもの言葉で返して、ゴクゴクと喉を潤している。
一息ついてから、思い出したように「で、休みがなんだって?なんか、前から言ってたよな」と忘れていない素振りを見せた。
中途半端にした会話は八竜の中でも覚えられていたようだ。
「えーと…」
口籠る白神がすぐに鳥海に視線を向けてくる。
縋るような目に、どう言おうかと脳を動かしても、正直に言うしかないと、開き直る。
「藤里と遊園地に行こうかって、相談してたんだけど」
「あ、そう。行ってくれば?」
なんとも素っ気ない返事に、白神の落ち込みは半端ない。
…そうだよ、こういうにぃだよ…。
内心で毒づいたけど。
もうこう答えられたら、あとは自棄だ。
能代が教えてくれた"入れ知恵"が次から次へと喉奥から流れた。
本当にあの熊は策士か?と過去の経験を想像してしまう。

「オレと藤里で、学食でそんな話してたら、『一緒に行きたい』って言ってきた人がいたの。あんまりいい噂聞かない人だから断ったんだけど、場所も時間も知られちゃっているから、藤里、怖いんだよ。ほら、オレたち、『かっこかわいい』部類でしょ」
「おまえの『かっこ』は余計だっ」
意味もよく分からなく、能代に言われた言葉を繰り返せば、即座に否定された。
その意味を聞いたのだけれど、『人気者だ』としか答えてもらえなかった。
「とにかく~。オレたち、遊びに行きたいのっ」
我が儘を通せば、難しい顔をして悩む姿に変わった。
突き放したものとは違う態度に、何が八竜の刺激になったのかは分からなくても、ぞんざいにされていないのだけは伝わった。
うーん、としばらく唸りつつ、「まぁ、いいよ。暇だから」と同行してくれると返事がある。
その途端に、ぱぁっと白神はニコニコ顔に変わった。
鳥海は最後のとどめだ。
「にぃ、一人でつまらなかったら、この前の誰か呼ぶ?」
「あー、暇なの、いたかな」
急なことに声をかけるのも躊躇うところがあるのか、こっちも悩ましげだが、こういった時にすぐに機転が働く白神の脳内はどうなっているのか。
「鳥海がっ。鳥海、瀬見さんにジェットのこと、聞きたがっていたんだよねっ。あんまりアブナイことがあるのなら諦めようかって考えてたところでぇ」
"諦める"と気が向いたことに反応したのは当然八竜で、絶対に影で、その方向に持っていかせようと話を進めるに違いないと気付く。
話題に上がっていないのは昨今のやりとりで安心していたのだろうし、八竜にしてみたらそれこそ決定打を打ち込んでほしいところなのだろう。
「瀬見に連絡してみるか」
すぐさま携帯電話を取り出した八竜を見て、思わず鳥海と白神は顔を見合わせていた。

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コメント

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ント・・(。´・_・`)ゞ 私は…
コメントけいったん | URL | 2013-08-31-Sat 12:31 [編集]
何事も 如才なく 頭が働く藤里よりも 我がままだけど不器用な鳥海の方が 好きだなぁ~

だから 鳥海を応援したくなる!
まぁ 肝心の鳥海が 自身の気持ちを ハッキリ分かってないから 応援し甲斐が無いけどねーヾ( ̄▼ ̄||)ァハハ・・・

今度は 遊園地で ダブルデート…((φ(・д・。)ホォホォ、メモットコ♪
ゲットするのは、瀬見が触れた 
(〃▽〃)。o ○【チケットの半券、使用済みストロー、空のペットボトルetc...】
エェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェーーーーーーーーヽ( ̄▽ ̄;)丿と、
腐レンジャーの皆に ドン引きされながらも 妄想する私でした!www


 
Re: ント・・(。´・_・`)ゞ 私は…
コメントたつみきえ | URL | 2013-08-31-Sat 13:25 [編集]
けいったんさま こんにちは。

> 何事も 如才なく 頭が働く藤里よりも 我がままだけど不器用な鳥海の方が 好きだなぁ~

そうねぇ。意外と(ずる)賢い子でした。
人の懐に潜り込むのがうまいというか。
でも悪意がないから人受けは良いんでしょうね。

> だから 鳥海を応援したくなる!
> まぁ 肝心の鳥海が 自身の気持ちを ハッキリ分かってないから 応援し甲斐が無いけどねーヾ( ̄▼ ̄||)ァハハ・・・

ぜひとも応援してあげてください。
(まだ先は長そうだし…)

> (〃▽〃)。o ○【チケットの半券、使用済みストロー、空のペットボトルetc...】

へぇ、そうなんだぁ。φ(..)メモットコ
さぁ、何をゲットして帰ってくるんでしょうか。
アァァァ!! (((ノToT)ノ :・'.::・ >+○ヘ(・_・)オバチャン ヒロワナイデ…

コメントありがとうございました。
私はぁ
コメントちー | URL | 2013-08-31-Sat 17:33 [編集]
今日は、あっついです。

私はどっちも好きかな。
意地っ張りな鳥海くん、頭の回転の早い藤里くん。
どっちも捨てがたい。
許されるなら二人をくっつけて欲しい←ないだろ
バニラとビターみたいにニャゴニャゴと喧嘩しつつ、仲良しな二人なんでしょう。
瀬見ちゃんは、由良みたいなちょっと気が強そうで弱い子が好きなんだと見た!
ほら、見た感じ大丈夫そうだけど何の気なしに見せる無防備さ?みたいなやつかな?
わかんないけど(笑)

双子、王子、瀬見ちゃん、にぃ、モドキーズで最後の海。
双子、モドキーズ「キャッキャッキャッキャッ」
王子、瀬見、にぃ「無邪気だ。無邪気過ぎる」
保護者達は、浜辺で監視をしつつビールにタバコ。
腐レンジャー①「お兄ちゃん達、ゴミはちゃんと捨ててね!」
腐レンジャー②「仕方ない、ここに入れて」
腐レンジャー③「ちゃんと分けてね」
保護者達「??す、すいません?」
腐レンジャー④「あ、ありがとう(泣)」

ゴミを持ち帰る腐レンジャー。
その先には、師匠が待ち構えていたのであった。

「良くやった!アイス、食べて良いぞよ」

師匠、ヒナパパのは要らないの?
Re: 私はぁ
コメントたつみきえ | URL | 2013-08-31-Sat 22:12 [編集]
ちーさま こんばんは。
こちらもとても暑かったです~。

> 許されるなら二人をくっつけて欲しい←ないだろ

ありえません(断言)
でもまあ、どっかの双子みたいにチューくらいはしてるかも。
(あのふたりはもっとイケナイこともしてたっけ…)

> 瀬見ちゃんは、由良みたいなちょっと気が強そうで弱い子が好きなんだと見た!
> ほら、見た感じ大丈夫そうだけど何の気なしに見せる無防備さ?みたいなやつかな?

さぁ、どうでしょう。
好みの話はあつみと飲んでいた時に少ししていますよ。(『乱反射 2』参照)
でも具体的なものはないけど。
面倒見がいい人だから、そんなところから相手の何かを探っていくかもしれませんね。

そういえば、双子とモドキーズは会ったことがあったんだよね。
揃ったらありえないほどの天然ぶりを発揮していそう。
保護者は呑気にビールを飲んでいられるかな。

> 師匠、ヒナパパのは要らないの?

きっとその浜辺には某家族連れもいると思うので、お兄ちゃんがゴミの捨て方を教えていると思います。
「ひな。ひなが飲んだジュースのパックはこっちだよ。親父のビール缶はこっち」
「うん。いれたよ」
「ひな~、上手に入れられたね~。もう覚えたんだ~。えらいね~」(←兄バカ)
コメントありがとうございました。
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