顔を赤くしたり、また青くしたりと、変化の激しい一葉をからかうように、中條はクスクスと笑みを浮かべた。
「ヤバイね、その格好。僕でもそそられる」
「ひゃっ」
言葉という肌を撫でていくような囁きが一葉の心臓をますます高鳴らせた。
何も身に着けていない下半身に気を取られ、ひっぱりすぎたせいで肩は露出し、筋肉も何もない薄い胸が上から見れば丸見えといっていい。
一葉はまずどこを先に隠すべきなのか、それすらも分からないくらいてんぱっていた。
こんな姿、人に見せたくない。
「べつに男同士なんだからいいじゃん。なんだか、このまま飾っておきたいくらいの可愛さがあるよね」
「な、な、ないですっ!ないですっ!!ないですからっ!!」
「それって享の好み?それとも一葉ちゃんの趣味?」
必死になって抵抗するような一葉の態度がおかしいのか、中條はさらにからかってくる。
もしも安住と中條の仲が本当なら嫌味でしかないはずの台詞も、中條からはそんな雰囲気は微塵も感じられなかった。
何も答えられずに真っ赤になっていれば、「まぁいいや。一葉ちゃんに食べさせてってお味噌汁があるからおいで」と呼ばれた。
『おいで』…って、いや、だから、その、あの…。
中條は座りこんだままの一葉を促しただけで、さっさと戻っていってしまった。
剥き出しの下半身にすんなり立ち上がることもできず、うろたえ続ければ、廊下の向こうの部屋から「一葉ちゃ~ん」と呼ぶ声が聞こえてくる。
…呼ばれたって行けないよ~…
一向に動かない一葉に痺れを切らしたのか、また中條の歩いてくる足音が響いてきた。
「二度手間かけさせないでね。ほら、さっさと立つ」
まるで上司にでも注意でもされているかのようだった。
腕を取られ、一葉は立ち上がらせられたのだが、スースーとする下半身を押さえるように、またパジャマの裾を引っ張った。
その行動を中條が不思議なものでも見るかのようにぱちぱちと瞬きをし、徐に「まさか…」といきなり後ろをめくり上げられた。
「わっ!!」
「あれ、何も穿いていなかったんだ」
中條は淡々と改めて事実を伝えてくれるが、普段隠している部分をいきなり人目に晒してしまった一葉は生きた心地がしなかった。
「ふぇっ」
「あー、ごめんごめん。でもクリーニングってワイシャツとスーツしかなかったけど。享ってば洗濯機の中に放り込んだままなのかな」
泣き出しそうになる一葉を宥めてはくれたが、告げられたことに涙も引っ込む。
…下着無しで帰るの…?
オロオロとする一葉をやっぱり中條は気にしていない。
「ま、享が帰ってきたら聞いてみよう。享がしじみのお味噌汁を作っていったからそれを食べて時間を潰していればいいよ」
中條に引っ張られ、一葉は否応が無く廊下を歩かされるはめになった。
どうやら安住が戻ってくるまで待っていろということらしいが、こんな格好を晒すくらいならベッドの中がいいと思わず駄々をこねてしまいそうだった。
お味噌汁とかなんとかと言っている時ではない。
安住と中條の間柄がはっきりしないから余計に心にもやがかかる。
そこには悲しさすらあった。
安住の『特別』になろうなどという図々しい夢を見ていたつもりはなかったが、彼のいない間に家のことを任されている中條の存在はやはり大きかった。
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「ヤバイね、その格好。僕でもそそられる」
「ひゃっ」
言葉という肌を撫でていくような囁きが一葉の心臓をますます高鳴らせた。
何も身に着けていない下半身に気を取られ、ひっぱりすぎたせいで肩は露出し、筋肉も何もない薄い胸が上から見れば丸見えといっていい。
一葉はまずどこを先に隠すべきなのか、それすらも分からないくらいてんぱっていた。
こんな姿、人に見せたくない。
「べつに男同士なんだからいいじゃん。なんだか、このまま飾っておきたいくらいの可愛さがあるよね」
「な、な、ないですっ!ないですっ!!ないですからっ!!」
「それって享の好み?それとも一葉ちゃんの趣味?」
必死になって抵抗するような一葉の態度がおかしいのか、中條はさらにからかってくる。
もしも安住と中條の仲が本当なら嫌味でしかないはずの台詞も、中條からはそんな雰囲気は微塵も感じられなかった。
何も答えられずに真っ赤になっていれば、「まぁいいや。一葉ちゃんに食べさせてってお味噌汁があるからおいで」と呼ばれた。
『おいで』…って、いや、だから、その、あの…。
中條は座りこんだままの一葉を促しただけで、さっさと戻っていってしまった。
剥き出しの下半身にすんなり立ち上がることもできず、うろたえ続ければ、廊下の向こうの部屋から「一葉ちゃ~ん」と呼ぶ声が聞こえてくる。
…呼ばれたって行けないよ~…
一向に動かない一葉に痺れを切らしたのか、また中條の歩いてくる足音が響いてきた。
「二度手間かけさせないでね。ほら、さっさと立つ」
まるで上司にでも注意でもされているかのようだった。
腕を取られ、一葉は立ち上がらせられたのだが、スースーとする下半身を押さえるように、またパジャマの裾を引っ張った。
その行動を中條が不思議なものでも見るかのようにぱちぱちと瞬きをし、徐に「まさか…」といきなり後ろをめくり上げられた。
「わっ!!」
「あれ、何も穿いていなかったんだ」
中條は淡々と改めて事実を伝えてくれるが、普段隠している部分をいきなり人目に晒してしまった一葉は生きた心地がしなかった。
「ふぇっ」
「あー、ごめんごめん。でもクリーニングってワイシャツとスーツしかなかったけど。享ってば洗濯機の中に放り込んだままなのかな」
泣き出しそうになる一葉を宥めてはくれたが、告げられたことに涙も引っ込む。
…下着無しで帰るの…?
オロオロとする一葉をやっぱり中條は気にしていない。
「ま、享が帰ってきたら聞いてみよう。享がしじみのお味噌汁を作っていったからそれを食べて時間を潰していればいいよ」
中條に引っ張られ、一葉は否応が無く廊下を歩かされるはめになった。
どうやら安住が戻ってくるまで待っていろということらしいが、こんな格好を晒すくらいならベッドの中がいいと思わず駄々をこねてしまいそうだった。
お味噌汁とかなんとかと言っている時ではない。
安住と中條の間柄がはっきりしないから余計に心にもやがかかる。
そこには悲しさすらあった。
安住の『特別』になろうなどという図々しい夢を見ていたつもりはなかったが、彼のいない間に家のことを任されている中條の存在はやはり大きかった。
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