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BLの丘
夢のような吐息 8
2010-04-18-Sun  CATEGORY: 吐息
それからも数度店を訪れることはあったが、その度に宮原は良い顔をせずに野崎を迎えた。
今では1日の流れを確認している程度の仕事しかなかったから滞在時間は1時間ほどと短くなっていた。
数日分をまとめたとしてもたいして時間は変わらない。
「整理整頓くらいご自分でできるでしょう?何のために全てのファイルを分けてあげたんですか」
「美琴が見ながら分けたほうが効率がいいじゃないか」
「いつまでも頼るのはやめてください。もう全て御自身で出来る状態にはなっているはずですよ。宮原さんもお一人でやられています。本業に支障が出るのは嫌なんです」
「宮原君に会いに来る口実にすればいいだろう?その程度の支えでいいし坊やだって認めるさ」
至極当然のように答えられた台詞に目を剥いたのは野崎の方だった。
千城は野崎の性格を良く知っていたから水谷との関係が一時的なものだということにも気付いている。
まさか野崎が誰かと落ち付く関係になるなど思いもしていないはずだ。
その隠れ蓑にすればいいという発言もいかがなものか…。
あまりのことに続く言葉が出て来ない…。

脳裏を過ったのは帰り際のことだった。
店に来るたび、帰る際に裏口の外で宮原に捕まっていた。
千城の我が儘で予定を狂わされた時ほど的確に野崎の心情を言い当ててくる。
そんな雰囲気を出しているつもりはないのに、僅かな変化さえ気付くこの男が少々脅威に思えてきた。
千城の洞察力の良さに近いものがある。彼並みの意思の疎通の良さは快感に似ている。
そして立ち去る前に必ず口づけられた。
最初の頃こそ抵抗したが、幾度か続けば野崎は諦めて好きにさせた。
どうせ体格では敵わない。
「やっと付き合う気になった?」
「身体と心は別のものでしょう?この行為に諦めを感じているだけです」
「諦め早すぎ。だから誰にでも許せるようになるんだよ。そんでもって強情だね」
強気な態度に出るかと思えばふと淋しそうな表情を浮かべる。
何かを思い出すような雰囲気に、やはり宮原の”過去”が気になった。
「まぁいいや」
そう言ってスッとスーツの中に手を入れられ、あっという間に携帯電話を取られる。
素早い動きは水谷に並ぶだろう。
「ちょっと…っ!!」
取り返そうとした手を簡単に押し留められ、その隙に番号を入れられる。
直後、宮原の尻のポケットが静かに振動した。
「はい。これ俺の携番。今度の休み、付き合ってよ。一緒に行きたいところがあるんだ」
「何で私がっ?!」
「いいじゃん、ちょっとした気分転換ってことで。美琴さんを疲れさせるようなことはしないからさ」

約束をした(覚えはないが)日は明日である。

水谷がウィスキーグラスを傾けながらニヤリと笑った。
「最近物騒なんで裏口に監視カメラを付けたらいいものが見られた」
悪戯を見つけた少年の顔をする水谷に、野崎が顔を引き攣らせたのは言うまでもない。

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やっぱりみこっちゃんは可哀想な人のような気がしてくる…。

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