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BLの丘
ちょうどいいサイズ 39
2010-05-10-Mon  CATEGORY: ちょうどいい
「ここにいたら、自制心を保つのだ大変だ…」
安住はもう一度一葉の額にキスをくれた。
すぐそばで見つめ合う瞳にドキドキは続くが、いつもならばこうも真正面から向き合えないでいるのに、できてしまうとはやはり酔いの力があるのだろうか。
不安は確かにあったが、今の自分だったら、このまま何事も受け入れられそうな気すらする。

そんな一葉の心の動きに気付いたかのように、安住は「今日はこれだけね」と、初めて一葉の唇の上に、安住のそれを重ねてきた。
ただ触れるだけの…、淡い恋心のような口づけ。
唇の弾力が、額に寄せられるものや手の甲に落される柔らかさとはまた違ったもののように思えた。
一葉にとっては初めてのことだったから、触れたというだけでも充分心臓が壊れそうになっていたのだけど。

『これだけ』と言うのは、飲んだ勢い、と捉えているからなのだろうか。
一葉が眠たがっていたからだろうか。

「おやすみ。また明日ね」
安住は静かにいつもの台詞を口にして、ベッドから立ち上がった。

ドアが閉まってしまえば暗闇に包まれる。
一葉はそっと唇に指を這わせてみた。
ファーストキスってこんなにもあっけないものだったのかな…。
ちょっとだけ物足りなさはあったけど、安住の気持ちを聞けたような安堵が一葉を占めていく。
ふふふと自然と頬が緩んだ。
今頃になって感動が押し寄せてきたのだ。

掛けられた布団をぎゅーっと両手両足で抱え込んで余韻に浸った。
身体がふわふわと天まで昇っていきそうな心の軽さがあった。
そしてあっという間に夢の世界へと誘われた。

翌朝目覚めたとき、一葉の頭の中は少々こんがらがっていた。
安住が開けてくれたワインを、結構な量を飲んだのだとはなんとなく理解している。
リビングで半分寝ぼけていたのも思い出した。
安住に部屋まで運んでもらったこと、初めて唇同士が触れ合うキスもされたこと。
覚えているのだが、覚えていない。
もしかしたら夢の中の、自分の妄想が作り上げた世界ではなかったのか、と記憶がはっきりしていなかったのだ。

…っていうか、酔って安住さんに何を言っちゃったんだろう…。
その辺りも曖昧である。

いやいやいや、ファーストキスの思い出が曖昧ってそっちのほうがもっと問題だろー、と一人でうだうだと悶えた。
だからといって今更、「ゆうべ何がありました?」なんて質問をする度胸などあるわけがない。
思いっきり自己嫌悪に陥っていると、廊下を歩く安住の足音が聞こえてきた。
安住は休みだとはいっても遅くまで寝ていたりすることもなく、ほぼ規則正しい生活を送っている。
もちろん安住の生活態度を一葉に押し付けてくることはなかったが、こうやって物音が聞こえてくれば自然と一葉も動き出していた。
が、今日は顔を合わせるのが何とも照れくさい。
いつもおでこにチュッとされる朝の挨拶に慣れたはずなのに、何故こんなにも恥ずかしさが襲ってくるのだろう…。

きっと安住のことだから、些細なことと、たいして気にはしていないのだろうと、これまでの体験から想像はつくのだが、何せ自分から”おねだり”をしたようなシチュエーションが脳裏に残っているだけに気まずいものが一葉を攻めてきた。
お酒の力を改めて怖いものだと再確認した一葉は、起きるよりも再び布団の中に潜り込んでしまった。

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えちアンケ、今週いっぱいです。でも作品が出来上がるのはまだまだ先の話ですが…。
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コメント

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ちゅー
コメント甲斐 | URL | 2010-05-10-Mon 22:30 [編集]
初ちゅー しちゃにましたね。
でもよく覚えてないってのはもったいない。
ほんとにね、一葉ちゃんお酒とは相性よくないんだから、当分やめといた方がいいんじゃないのかな~。
けど、安住さんにとってはどうでしょうね。もちろん初じゃないでしょうし、お休みのキスだから親密な挨拶程度??
ん~布団にもぐりこんで悩める一葉ちゃんでした。
Re: ちゅー
コメントきえ | URL | 2010-05-11-Tue 06:45 [編集]
甲斐様
こちらにもどうもです♪

> 初ちゅー しちゃにましたね。

やっとーっですよっ!!
いつまで私に書かせる気だ?!

> でもよく覚えてないってのはもったいない。
> ほんとにね、一葉ちゃんお酒とは相性よくないんだから、当分やめといた方がいいんじゃないのかな~。

ハイ、お休み前のくつろぎ時間でも一葉には薦めちゃだめって安住によーく言っておきます。
よく覚えていなきゃぁ思い出させるだけ?!

> けど、安住さんにとってはどうでしょうね。もちろん初じゃないでしょうし、お休みのキスだから親密な挨拶程度??
> ん~布団にもぐりこんで悩める一葉ちゃんでした。

安住さんも経験値高そうですから…。もちろん遊びとかじゃなくてですけど。
お布団の中に潜り込んで解決策が見つかるかな~。
コメントありがとうございました。
コメントきえ | URL | 2010-05-11-Tue 06:50 [編集]
K様
おはようございます。

>軽く触れるだけのキスなのに 読んでるこっちまで ドキドキしてしまいました。安住さんも かなり我慢してるんだろうな~ なんて思ってたら いつか 安住さん視点も見てみたいな と 贅沢な欲求が むくむくと湧いてきました(^人^)

もともとは安住人気に書き始めたものなので、本来なら安住を主役にしなくちゃってところだったのに、くじけて『お相手』視点になった今回の作です。
安住視点、そうですよね~。たぶん、読者様の大半がそれを望んでいるのではないかな~と思っています。
一葉が書き終わったらそんなのもいいかな~(いつになるんだ?!)って考えていますけど…。
襲いたいのにそこは紳士の安住さん。
悩めるのは安住も…ってところでしょうか。
コメントありがとうございました。
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