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BLの丘
策略はどこまでも 番外ヒサ編 5
2009-07-20-Mon  CATEGORY: 策略はどこまでも
誠に勝手ながら、昨日の記事を一部修正いたしました。(夜中1時頃)
内容的には変化はありませんので読み返していただく必要はないと思います。
一応、ご報告だけ…。



残業に入る前の夕方の休憩時間を利用して、ホームセンターに預けた鍵を取りに行くと出来上がっていた。
那智のマンションにたどり着き、新しく作った鍵をカギ穴に入れてみると、当然だがきちんと回った。
普段であればチャイムを鳴らして呼び出し、那智が迎え出てくれた。それも嬉しいことだったのだが、自ら鍵を手にして勝手に入れるという行動には言い知れぬ喜びが沸き立った。

会社を出る前に電話を入れた時、那智は元気そうな声をあげてきた。鍵を返しに行くと伝えると、「待ってる」と返事があって、その言葉を聞けただけで自分を受け入れてもらえた気がして安堵した。

玄関を入り短い廊下を進むと、リビングに明かりが灯っており、テレビから流れてくる音声も聞こえる。
リビングに通じるドアを開けると、ソファでゴロンと横になった那智の姿を確認できた。
「やぁっと帰ってきたぁ。俺、もう眠かったのにぃ」
言葉だけを聞けば待ち焦がれていたようだが、甘い雰囲気などは微塵も感じられなかった。

時はすでに夜の9時を過ぎていて、夕食と思われるコンビニの弁当のパックがテーブルの上でゴミの山と化している。
歓迎されたムードもなく、久志は少しだけムッとしながらも、わざと那智の機嫌に気付かないふりをして、彼の転がるソファへと向かった。
ゆっくりとした動作で身を起こした那智のとなりに、並んで腰を下ろした。

「もう眠いって、まだ9時だろ。お子様かよ、おまえは」
嫌味ったらしく言葉をかえせば、こんなふうになったのは誰のせいだと言いたそうな那智が口を尖らせて睨みあげてくる。
そんな態度が、お子様そのものだと内心では思ったがあえて言葉にはせず、可愛い仕草に誘われるように細い体を引き寄せると有無を言わせずに抱きしめ口づけた。

二人のこれまでの関係を突然変えてしまった行動を取った自分を、次に会ったときにどんな顔で迎えられるのかと多少の不安がよぎったものの、いつもと変わらないあどけない表情を差し向けられれば、思い上がりは強くなる一方だった。

このまま…と、脳裏に思い描かれた先に続く行動を取ろうと思った瞬間、那智に気付かれたようで、すぐさま胸をドンドンと叩かれる。
さすがに学習したらしい。
このまま強引にコトを進めても良かったのだが、昨日、今朝と続けば節操のないヤツと思われそうで、とりあえず今回はおとなしく那智の身体を解放した。
テクニックには自信があったし、初めて受け入れたであろう那智の身体が、自分に陥落するように仕向ける方法などいくらでもある。
少し前まで、那智に対しこんなことは妄想の世界でしかなかった。現実の中で触れられる幸せは何にも代えがたい。

顔を赤らめた那智が照れくさそうに顔を反らした。
「もぅ…っ」
ふてくされた時に頬をぷくっと膨らませるのは那智のクセだった。どんな仕草でも久志の眼には愛しさ以外の何物でもなく映る。
「那智。可愛いだけだぞ」
「ウルサイッ」
クスクスと笑いながら一旦視線を、テーブルの上に散らかされたままのゴミたちに向けた。
「那智、鍵あったの?俺、持っていっちゃったのに?」

今朝、この部屋を出るときに那智の持つ鍵を預かっていった。
コンビニの弁当など朝はなかったはずだし、残骸がここにあるということは当然買いに行ったわけで…。
家主がいないのに出かけられる理由は、久志が持っていった以外の鍵が存在していたということ。
やはり…と思いながらそっとさぐりを入れてみる。

「うん、もう一個合鍵持ってるし。でなきゃ、お前に鍵、渡したりしないから」
まるで当たり前だ、というような口調に久志は面食らいそうになった。先ほどの照れはどこに消えたのかというくらいそっけない。
まったくこの態度の変わりようはなんなんだよ…。
素直に甘えるなんていうことはまずする那智ではないが、コロコロと変わる雰囲気には軽くへこむものがある。

それはそうと、早く返せよ、と掌を見せてくる。
その掌をマジマジと見つめながら、自分の手に握られたままのカギを渡さずにそっと翳して聞いた。
「ねえ、俺に渡す気ないの?」
「何を?」
「ここの鍵」
「どうして?」
那智は人に鍵を持たせることの意味を知らないのだろうか。
「だって俺来ても入れないじゃん」
「俺がいるときに来ればいいだろ」
「休み合わないのに?しかも那智、仕事終わるの遅い」
「いない間にここに来る気?何で?」
「那智を待つため」
「待たなくていいから」
呆れたように那智がつぶやいた。何かをたくらんでいるなど、微塵も感じていないらしい態度で首を横に振られる。
まだ自分に最後の部分まで気を許していないのかと思われるような反応は淋しいだけだ。
だが、久志はめげなかった。

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