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BLの丘
ちょうどいいサイズ 64
2010-06-10-Thu  CATEGORY: ちょうどいい
Rにしたいと思ったのに辿りつきませんでした。でも一部何かがあるかも?!


名前で呼びたい願望はあっても、そこを恥ずかしさと照れくささで邪魔されている。
だけど直接的な刺激を与えて来ず、焦らされるようなくすぐったさに悶えれば、続くものを求めて『名前のひとつくらい』と頭を過るものがある。
いつもなら一葉を待たせることをしない安住だったから、一葉はあっというまに理性を失う世界に飛び込んでいて、言われるがまま、安住の口から放たれる言葉を繰り返しているような状態だった。
しかし今はしっかりと意識があった。
そして安住はこのまま、焦らし続ける気でいるらしい。
それも、安住が言うことを繰り返させる方法ではなく、一葉自ら言わせるやりかたで。

「わ、忘れてなんか…、…っんっ」
「じゃあどうして『安住さん』っていうの?」
一葉がささやかな抵抗を見せれば、間髪いれずに皮膚を撫でてくるような湯の動きがある。
安住の口調は子供を諭すような優しさがあったが、問われている内容は答えに窮する。
ここでまた『恥ずかしい』と口にすれば、今度はどんな意地悪な質問をされるのだろう。
困ったように口を閉ざしてしまえば、「一葉」と熱のこもった声で呼ばれた。
安住はいつだってどこだって、こう呼べると言いたそうだ。
のぼせているのではなく、羞恥で顔が真っ赤になっていく。
名前で呼ぶ人間などたくさんいるというのに、どうして安住が口にするとこんなにも照れてしまうのか…。

ぴくぴくと反応する身体も放ったらかしにされ、答えにも詰まって涙目で安住を見返すと、安住がまた苦笑いを浮かべた。
一葉を翻弄させているくせに、自分が「まいったな…」という感じだ。
それから一葉の腰を両手で掴んで浮かせると、くるりと身体の向きを変えられ、安住の脚を跨ぐように座らせられる。
しっかりと芯の通ってしまった分身どうしが、湯の中でつつきあった。

「本当に大人げないなと自分でも思うよ。一葉を困らせたいわけじゃないんだ。ただ、なんだろうね、ここで燻っているものがある。こうやって一緒に生活していられるのも、お風呂に入れるのも嬉しくて満たされるものなのに、それだけでは満足できなくて、『もっと』と欲が沸くんだよ」
話しながら安住は一葉の手を取ると、筋肉のついた胸元に掌をあてさせた。
トクントクンと響いてくる心臓の音が伝わってくる。
「自分の好みにしたいっていう考えはおこがましいけど、できることなら…という思いはある。そうやって一葉が自分の傍にいるんだっていう確証を得たいんだろうね。どこで誰とどんなお付き合いをしているとしても、僕の隣にいる時の一葉は僕だけのものなんだって自信がほしい。いつまでも他人行儀でいるようで、近付けていないようで、不安になるんだ。だって一葉は本当に誰からも愛されているからね」
額と瞼と頬にくちづけをくれた。
『名前のひとつくらい』ではおさまれない安住の心の囁きまで心臓に届いてくるようだ。

情けないほど何もできない一葉の方が、いつか捨てられるのではないかという思いがある。
安住が気に入ってくれるというなら、そうしてあげたいとも望む。
『誰からも愛される』という表現が正しいとは一葉は思えなかったが、今日の会食で何かを感じてしまった安住の心境はなんとなく理解できた。
たぶんきっと、誰に対しても『同じ』態度でいる一葉に感じた苛立ちなのだろう…と。
一葉にぶつけたいものを持ちながら、怒ることもなく、それどころか自身を責める物言いにつくづく自分が安住に甘えているのだと知る。
たったひとつの呼び名が特別な立場を想像させてくれる。
己の『恥ずかしい』と身悶えている態度で安住の不安を煽ったことは、一葉も申し訳ないと思った。
そんなことを思う必要などどこにもないのに…とも言いたい。
慣れるまでにはまだ時間がかかるだろう。
だけどいつか『慣れていく』のだと、一葉は知っている。
「享利さん…」
今はひとつの名を…。
蚊の鳴くような声だったけど、一葉を抱き寄せた安住はニコリと笑顔だった。
密着した肌の間で硬いものがぶつかり合う。
「『恥ずかしい』っていっぱい思っていいよ。だってそれが一番一葉らしいからね」
『一番一葉らしい』姿を見たいと言う安住の言葉に、この先どれだけ『恥ずかしい』ことを要求されるのかとドキンとした。
変わっていく部分と変わっていかない部分…。
見えない将来に不安はあるけれど、安住のために変われるのならそれは本望なのだろうと思った。

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恥ずかしい~
コメント甲斐 | URL | 2010-06-10-Thu 12:01 [編集]
名前を呼ぶのがえっち中のお約束みたいな単純なものじゃなくて
安住さんの中では深い意味があったんですね。
大人気なくても正直でよろしい!

”恥らう一葉ちゃんが見たい”って言うのが
安住さんの萌えポイントだったんですね。
そしてこれからもっと恥ずかしいことをしたり、
恥ずかしいことを言わせたりしちゃうんですね。
そのたびに頬染めて抵抗したり
だって・・・そんなこと・・・と言いつつしちゃうんだ~
想像しただけでワタシまでどきどきしてきた。

そんでもって、ますます自分好みの一葉ちゃんに育て上げていくわけね。
いろんな意味でやっぱり安住さんはパパです。
Re: 恥ずかしい~
コメントきえ | URL | 2010-06-10-Thu 12:30 [編集]
甲斐様
こんにちは。お時間会いましたね。嬉しいです~。

> 名前を呼ぶのがえっち中のお約束みたいな単純なものじゃなくて
> 安住さんの中では深い意味があったんですね。
> 大人気なくても正直でよろしい!
もともと安住は感情をストレートに言う性格です。
今まではえちの中で誤魔化し誤魔化しの一葉の言葉で満足していたようですが、なんだか爆発した模様…(でもこの態度…)
安住にとってなのか、私に取ってなのか、いえ、安住にとって!!!(断言)意味深ーいお名前のようです。

> そんでもって、ますます自分好みの一葉ちゃんに育て上げていくわけね。
> いろんな意味でやっぱり安住さんはパパです。
いつから調教師になっちゃったんだろう…?????
けど、他で覚えられてくるくらいなら…パパは頑張ってあれこれと教育しますから。
『知らないおじさんにはついていっちゃいけないよ』とか。
最近思うんですけど、一葉は絶対に年上好みですよね。それもうーんと離れた、ヒト。
どんな失敗でも許してくれる、甘い言葉(あめ)をくれるひと。
人物設定もできていないのか、おい、こらっ!!って感じですけど。
ぬかりない安住です。
計画性はばっちり。
コメントありがとうございました。
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