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BLの丘
想―sou― 一夜物語 6
2010-06-15-Tue  CATEGORY: 『想』―sou―
一葉は一瞬戸惑いを見せる。
「わか、んないです。友達と会う時は友達同士の時間を大事にしなさいって言われてて…。だから那智、あ、今から来る人ですけど、那智とこうして外で会う時には、自分は邪魔になってしまうからって…」
「ねぇ、もしかして、年上の人?それもすごく離れた…とか」
一葉の戸惑いを抵抗と捉えたのではないと、ピンと感じたように神戸が言葉を重ねてきた。
まるで見透かされたようで、一葉は一気に顔を赤らめる。
そこに全ての答えがあった。
「どっかの誰かさんとはえらい違いだな。すぐにしゃしゃり出ていくし」
「しょーぉー」
バーテンダーにまたきつく言われて、神戸は『心外だ』と言いたげに睨み上げていた。

「ふーん。でもそれも時には淋しいでしょ。たまには『みんなでワイワイやろう』って声をかけてみたら?そういうこと、嫌いな人?一葉ちゃんも大人しそうだし、二人の雰囲気には合わないのかな」
神戸に『時には淋しいでしょ』と問われれば、そんな感情もあるのかな、と思う。
でも中條たちと賑やかな晩餐を繰り広げることもあるくらいなのだから、嫌いと言うわけでもないんだろう。
ただ一葉の友達とも触れ合ってほしい思いは確かにあった。もちろん、多くはないけど。
「そんなことないと思いますけど…」
「だったら一度声をかけてみなよ。もちろん、今日とは言わないから。だけど年上の人だったっていうのは納得する。そんな感じだよね。一葉ちゃんって同年代の恋愛、絶対に似合わないもん。なんだろう。ぜ―んぶ包んであげたいっていう雰囲気」
「長流が言うと意味深にしか聞こえないからやめろって」
「日野ってばやきもち焼いているんだ」
英人がすぐにからかいの相槌を打てばそれも認めたくないらしいバーテンの姿がある。
「長流に声を掛けられていたなんて耳にされて出してもらえなくなったらうちが困るだろう」
「ショウのその発言もどうなの?なんだか僕が誘っているみたいじゃない」
「アヤシイ店に思われたくないだけだよ」
「ちょっとあのねぇっ」
『ナンパされる店』と暗に含められて、神戸はいきなりスツールを降りるとカウンターの中へと戻っていった。
そして徐にバーテンダーの腕を掴むと、奥へと続く扉の中に消えていく。
突然始まった痴話喧嘩に一葉がオロオロとしてしまえば、神戸がいなくなって良く見えるようになった英人が、「気にしなくて平気だよ」と一葉を落ち着かせた。
綺麗な笑顔を浮かべるんだ…と一葉は思わず見入ってしまったくらいだ。
もともとの容姿も人を寄せ付ける魅力を充分に備えているのだろうが、光沢のある肌艶はやはり一般市民の一葉とは異なるものなのだと感じさせた。

「たぶん今頃仲直りのキスでもしているところだから」
「え、き、キ…?!」
英人はサラリと口にした台詞でさえ、一葉は繰り返すことができなかった。
そういえば、随分前に来た時にも、店の中で平然と”挨拶”をしていた二人の姿があったっけ…と思い出してボッと顔に火がつく。
人前であれなら、見えないところではどんなのなのだろう…と想像してはドアに目がいってしまって益々ジタバタとした。
そんな一葉を見て、「君って純情だね」とクスクスと笑われる。
でも、嫌味っぽい言い方ではなくて、率直な意見、と言う感じだ。
一葉もそう言われることに慣れているからいちいち目くじらをたてるようなこともない。
やはり同じ年とは到底思えない…と一葉は心の中で繰り返した。
完全に経験値の差なのだろう。

「日野の性格も老成したところあるし、神戸さんも基本的に物分かりがいい人だから、喧嘩なんて滅多にしないんだよ。俺もよく二人に宥められているし」
「そ、そうなんだ…」
宥められているということは、そんなにしょっちゅう、英人は今回のような騒動を起こしているのだろうか…。

「神戸さん、俺のこと、『画家』とか言ってたけど、本当は趣味で描いている程度でさ。本業は神戸さんの下でCMのプランニングを手掛けているの」
「しゅ、趣味っ?!」
思わず店内をぐるりと見回した。
本業が別にあって、片手間で描いた絵とはとても見えない。
篠原の意見も聞いていた後だけに、一つの仕事さえ手に余る一葉とは、生きている世界が違うのだと嫌と言うほど感じた。
だけど再び英人に視線を戻した時、あまりにも無邪気な笑顔で一葉を見ているものだから、なんだか心がざわざわとした。

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コメント

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こみっちゃんはまだかいな~
コメントkai | URL | 2010-06-15-Tue 12:12 [編集]
友達との時間を大切に、だなんてここに登場するキャラたちの中で一番の大人ですね
吐息すら独占したいとか
体臭も自分のモンだとか思っている人もいるのに・・・

一葉ちゃんイロイロ聞いちゃって頭が破裂寸前!?
くれぐれもいけないい兄さんについてちゃったり、相談事などしないようにね
こんな(?)ところで一人でいるなんて知ったらパパが速攻飛んで来て回収されちゃいますね
Re: こみっちゃんはまだかいな~
コメントきえ | URL | 2010-06-15-Tue 12:43 [編集]
甲斐様 こんにちは~(って甲斐様ですよね?!違っていたら謝罪のしようがないくらい平伏)
なんだかご一緒で嬉しいです。

> 友達との時間を大切に、だなんてここに登場するキャラたちの中で一番の大人ですね
> 吐息すら独占したいとか
> 体臭も自分のモンだとか思っている人もいるのに・・・

いましたね~、なんでも独り占めしようとする人。
見習っていただきたいくらいの心の落ち着きなんだか、我慢なんだか…。

> 一葉ちゃんイロイロ聞いちゃって頭が破裂寸前!?
> くれぐれもいけないい兄さんについてちゃったり、相談事などしないようにね
> こんな(?)ところで一人でいるなんて知ったらパパが速攻飛んで来て回収されちゃいますね

絵も見られるバーと話には聞いていて、色々なお勉強のためにも、またさくらちゃんも一緒だしと安心しきっているパパのはずです。
まさか、こんな一夜があったとは…っ!!!!
いけないお兄さんについていかないように、そこには"見張り番"がいるのでたぶん大丈夫かと…。
でもこのお店に来るごとに、思考能力の幅が広がって少しは良いかも…(お子ちゃまには刺激強すぎ?!精神年齢18歳未満お断りの看板でも作った方が?!)
で、話題の中心のみこっちゃんですよね…。あとちょっと…。
移動には時間がかかるんです。「どこで○ドア」でもあればいいんですけど。
あ、甲斐様っ!!店内撮影禁止なんで、スクープ用の写真を撮るためのカメラは持ち込まないで~。(携帯?あ、そんな便利グッズが…)
コメントありがとうございました。
No title
コメントきえ | URL | 2010-06-15-Tue 15:09 [編集]
MO様
こんにちは。
連コメ頂いていたようなのに、レス遅くなりすみません。

>本来、英人が愚痴を吐き出しに来たのに、神戸ったら 野崎の恋愛話に興味津々だし、一葉の世話は焼きたいし、しまいに日野と痴話げんかなんて、大忙しですね(^_^;)  なんだか英人が一番余裕があって、大人みたい(>_<) この後の展開が楽しみです♪

英人の愚痴はいつものことですしね。大した問題にもならないことを充分承知の神戸です。
それよりも良いネタをもらっちゃった~♪ってところでしょうか。
まさか野崎のお話がこんなところから漏れてくるとは…。
そしてこれまで幼稚園生か?!という話題を那智と繰り広げてきた一葉にも気をとられ。挙句の果てには日野の嫉妬を買って自分が宥められているんだか宥めているんだか…。
あんな英人が一番大人っぽい?!それは一葉視点だからです、きっと!
こんなバカみたいな話にお付き合いくださいまして本当にありがたいです。
コメントありがとうございました。。
な~にしてるのかなぁ~?
コメントさえ | URL | 2010-06-15-Tue 19:56 [編集]
神戸さんと日野っちはな~にしてるのかなぁ~?携帯片手にヒミツのドアをそ~っと開けて激写したいなぁ~。ものすご~い写真が撮れそうですね♪
どうせならひーちゃん撮影会でも♪
甲斐様良かったら二人で激写しませんか~?
と、人を巻き混んでしまいそう。
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