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BLの丘
想―sou― 一夜物語 8
2010-06-17-Thu  CATEGORY: 『想』―sou―
那智を心待ちにしている半面で、一葉は英人との会話と、全く変わりばえのない表情で現れた神戸との時間を過ごしていた。
あぁ、もちろん、英人に「仲直りのキス」なんて言われていなければ、もう少しまともに神戸とバーテンダーの表情も見られた気がする。
神戸はもうカウンターのスツールに座ることはなかった。
入口のドアのカウベルが鳴るたびに、那智か千城かと顔を巡らせる一葉と英人を、微笑ましげに眺めてくる神戸とバーテンダーがいたが、それについてもいちいち言葉を発されることもない。
一度、警備会社の人間と思える服装の人が現れて、それも異様だったけど…。(お客ではなかったらしくすぐに帰っていった)

やがてびっちりとスーツを着こなした細身の男性が入ってきた。
自分の周りにいる人たちの反応を見て、一葉でも、『良く知った人間が来たのだ』と判断できたくらいだった。
目の前に立った神戸とバーテンダーの目をぱちくりさせた姿を見れば確実に『常連客』の域を越えている。
物事を判断するには長けているようなきりっとした目元といい隙のない動き。きっちり感が全身を覆っていた。
安住に近いくらいの年齢なのだと見た目だけは判断できる。
が、身の細さだけでは、もっと若く見せているのかもしれない。

「あれ、野崎さんじゃない。千城はどうしたの?」
カウンターの奥からすかさず神戸から声がかかれば、カウンターにいる客に目を向けた『野崎』が何か不思議なものでも見るように店内に視線を巡らせた。
これが『野崎さん』なのかっ!!と咄嗟に一葉はマジマジと見てしまったくらいだ。
別にハゲてもいない、働き盛りの青年という印象すら持たせる。
「それはこちらの台詞です。社長はどうしました?」
「千城、まだ来ていないし…。えっ?一緒じゃないの?」
野崎は店内にいる客を素早く見回したようだ。
神戸は本気で不思議がっていた。
同じように野崎もカウンターに座る英人の隣にいるべき人間がいないことに疑問の声を上げる。
「先に出られたのですよ。私も運転がありますので英人さんにご挨拶だけして帰ろうと思ったのですが…」

そんなやりとりを聞けば、同じ場所に向かうにも別行動を取ったらしい上司と部下だったのだと一葉も察知した。
真っ先に見えたのが『野崎』と分かって、一瞬だけシュンとうなだれる仕草を見せた英人のような気がしたが、それもすぐに元通りに戻っている。
「あー、…、さっき千城から電話があって寄り道するからって…」
「寄り道ぃぃぃ???こんな状況で何考えてんの、千城はぁっ!!」
英人が拗ねていると伝えたのに、まっすぐに出向かなかったことに対する苛立ちのようだ。
こうやって周りからも思われている英人を、なんだか羨ましくも思った。
自分だったら誰が賛同してくれるのだろう。
那智かな、中條かな、佐貫かな…。

英人の言葉だけで、何かを感じたらしい野崎の姿がある。
さりげなく聞く…というよりは、『問い詰める』というオーラすら感じる言葉が英人に差し向けられた。
「失礼ですが、その時社長はどこへと…?」
「あー、ん、あ、べつに……」
「英人さん」
小さくて短い呼び名の中には充分なほど嫌疑がかかっていた。
一葉は初めてこの男の洞察力を凄いと思っていた。
店に入ってものの何分もたっていない。
だけど、先程英人が受けた電話の内容まで見透かしたような物知り方に、何事も隠せる人間ではないのだと知る。
だからきっと、『社長』が信頼を置いて業務を託せる『秘書』なのだろう…。

野崎に攻められる英人を気の毒に思ったのか、神戸がすぐに話題を切り替えた。
「一杯くらいやっていってよ。ここに来るの、改装の時以来でしょ」
「ですが、私には運転が…」
「とかなんとか言っちゃってぇ。本当は違うバーに行きたいんじゃないの?うち、そんなに気に入られてないんだ~ぁ」

明らかに分かる問いにカウンターの下で蹴りを入れたのはバーテンダーだったし、まったく悪びれていない英人の無邪気とも言える表情が野崎の帰宅を拒んでいた。
たぶん、この瞬間に野崎は何故自分が呼ばれたのか知ったのだと思う。
あからさまに表現されてつかれた溜め息の後に、開いた入口には、この世の全てを制覇しそうな威圧感を湛えた鋭い目つきの男と、同じ年くらいの、だけど気崩した格好の若づくりの男が立っていた。
先に入ってきた男は髪も撫でつけられ着衣も乱れることなく、仕事帰りをおもわせるきっちり感があったが、もう一人の男は、髪は黒い色に近かったし、身に纏う装飾品も、派手さはあってもギラギラ感はない。
だけどどちらも人目を惹きつけることは確かだった。

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増えた…一気に参加者が増えた…。そろそろ会話集になるかも…?!

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コメント

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さすが勘のいい野崎さん、でも手遅れ
コメント甲斐 | URL | 2010-06-17-Thu 01:13 [編集]
役者はそろいましたね
では、謎解きを…と名探偵は全員を大広間に集めました。。。。?
というわけではないのでしょうが、何やら楽しいことが起こりそうな予感。
神戸さんといっしょに面白がりたい!!
Re: さすが勘のいい野崎さん、でも手遅れ
コメントきえ | URL | 2010-06-17-Thu 07:13 [編集]
甲斐様
おはようございます。

> 役者はそろいましたね
揃いましたかね~
あと2匹…。

> では、謎解きを…と名探偵は全員を大広間に集めました。。。。?
> というわけではないのでしょうが、何やら楽しいことが起こりそうな予感。
> 神戸さんといっしょに面白がりたい!!

神戸さんも甲斐様もお楽しみのお時間って感じですね。
でも、一葉視点なので、どこかずれます、きっと。
ごめんなさい。
ご希望があればまた違う視点からアレコレと…(いいのか、こんな発言をして…)

コメントありがとうございました。
No title
コメントきえ | URL | 2010-06-17-Thu 09:21 [編集]
K様
こんにちは~

>一気に増えましたね~♪千城とともに登場したのは やはりアノ人?千城ったら ほんとに面白がってますねぇ。みこっちゃんの反応が楽しみ。残るは 那智と安住さん?そうなると 那智は『僕だけひとりぼっち』状態になっちゃいますが、そのときは 迷わすヒサシに電話だね!これからどんな会話が繰り広げられるのか… あぁ やっぱり カウンターの下に潜り込まなくっちゃ!!

増えました~。一気に登場人物が…(書けるのか…汗)
お席が足りないので読者様はカウンターの下になっているようです(すみませんm(__)mけど足で絡められる愛撫とかも見られるかも?!)
千城と一緒に登場したのはもちろんあの人。どこまでも楽しむ千城だし、神戸の期待にも応えます。仲がいいんです、基本的にこの二人は。
こっちでも英人が妬きそうなくらい。
恋人同士が集うこのバー。
一人ぼっちの一葉とこれからくるはずの那智。
さぁどんなふうになるんでしょうか。
(なんだか、詰め込みで本当に申し訳ないんですけど…)
コメントありがとうございました。
No title
コメントきえ | URL | 2010-06-17-Thu 18:53 [編集]
MO様
こんばんは。

>野崎さん「英人君に挨拶だけして帰る」なんて、無理無理!皆 手ぐすね引いて待ってたんだから。何がマズイのかが、分かりましたね。千城ったら、やることが素早いですね~。ちゃんと連れてくるんだから。楽しい夜になりそうです♪

えぇ無理です。そんな簡単に帰れませんから、野崎サン。
仕事ができるのは社長か秘書か?!
ひーちゃんが「まずいよ~」とつぶやいていたのは、ここでお二人がご対面することです。
でもここにいる全ての人間が望んでいるのですからね。
夜はまだまだこれから。
…で、私の手は追い付くのか?!
コメントありがとうございました。
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