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BLの丘
一番近いもの 4
2010-07-13-Tue  CATEGORY: 一番近いもの
「かいちゃん、なんだかちょーお疲れっぽいんだけど」
関連企業から依頼されるプログラムの確認作業に、5つ年上の松島愁(まつしま しゅう)がこつんと海斗の後頭部を叩いた。
すでに『主任』という役職を手にしている男は、仕事をする手も早く、周りからの信用も厚い。
短めの髪のためか、目鼻立ちのとおった顔が良く見え、すっきりとした印象が全体にあった。
海斗が色白で丸顔だったし、癖っ毛の髪が肩につきそうなくらいまで伸びていたから余計に女っぽく見られたし、凛々しく見える彼に憧れる部分も持ち合わせていた。

月曜日の朝から、ついた溜め息は何度あっただろう。
10時を前に、目の前に缶コーヒーが置かれる。
溜め息の原因は仕事内容でもなく、突然湧いたご近所様だった。
昨日、あのあと顔を合わせることもなかったし、海斗が心配することは到底聞ける内容でもない。
どれくらいの音量で、喘ぎ声が聞こえてしまうものなのか…も定かではない。
が、今後、自分の部屋での性行為は控えたい…と思わされる出来事に違いはない。
引っ越し初日から、とんでもない印象を持たれたのではないか、と、海斗にとって悩みの種になっていた。

オフィスに籠ることが多い中、そしてにらめっこはパソコンばかり。
たまに息抜きでもするかのように、こうやって『言葉』がかけられる。
特に松島から茶々をいれられることは多かった。
きっちりと着こなされたスーツにビシッと締められたネクタイ。
人に逢うことのない事務所の中でも崩れることのない姿に、『仕事をしているのだ』という意識は強く持てた。
「月曜日っからそんなに暗い顔をされちゃったらやる気なくすし~。もっと明るくいこうよ」
「松島さん、いっつも元気ですよね。そのパワー、分けてほしいくらいです」
「分けてやるよ、いつだって。…今夜、どう?」
奥二重の瞳から色気のあるムードが発される。
声をかけられることが多い理由の一つは、これだ…。
この男も海斗の性癖を知っていた。
行きつけのバーで偶然出会ってしまった時には言葉も出なかったが、お互い話を広められては困る状況に弱みを握ったのか握られたのか…。
ただ、大希のようにすんなりといかないものがこの男にはあった。
『しつこい』…。
そう、しつこいのだ。
海斗に想いを寄せてくれる部分があるのが分かるから納得はするのだが、恋愛感情をもたない海斗にしてみれば、やるだけやって終わりにしてくれるほうがラクである。
『上司』という立場もあり、誘いに負けて数度抱かれはしたが、厭らしく攻めてくるやりかたは好みではなかった。
それに、回数を重ねるごとに、SMちっくなものが登場するようになった。

昨日、珍しく朝からサカった海斗は、パワーをもらうより奪われるほうだ…と身の危険を感じた。
迂闊なことは言うものではない…。

ひそっとした声が耳元にまとわりつく。
「土曜日、だめって言われちゃったからね。どこの男に宥めてもらっていたのかと思うと少し悔しいな」
「べつに、そんな人、いないし…」
「お疲れの理由ってその彼じゃないの?」
「そんなんじゃ…」
好意を寄せてくれている人間を前に、身体だけの仲の良い友達…と言うのも憚れて誤魔化せば、あげあしをとるかのように突っ込まれてきた。
「それなら、今日、大丈夫だよね。…このプログラム、あとは見てあげるよ。残業しなくても済むように」
「え?あ、いえ…、でも…」
「僕のデスクの上に、ハンコを押すだけの書類が束になっているから、押しておいて」
「で、でも…」
先程渡されたばかりの缶コーヒーを持たされる。
「業務命令。全部終わったら次の指示出すから」
ほとんど力づくで立ち上がらされた海斗の椅子を奪うように松島が腰かけた。
素早い動きで松島は海斗のやりかけていたプログラムにざっと目を通していた。
「ほとんどできあがりじゃない。僕もラクな仕事ができそうだ」
『上司』を相手にはっきりと断れないのは気の弱さなのだろうか。
パワーハラスメントと言われればそれまでだが、松島の人の良さは色々なところで見ていたから特別嫌う部分もなかった。
昨日の大希との件がなければ、ただ欲求をはらすだけ、と開き直ることもできるくらいだ。
割り切れる付き合いができる海斗だから、松島も強引に約束をとりつけてくるのかもしれない。
なにより、『性』に対して欲が強いのを松島には知られてしまっている。
口を閉ざした大希の逢瀬を今更言えるはずもなく、身体が辛いかも…と内心で溜め息をついた。
問題は次から次へと出てくるものだ…。
あきらめて立ち去ろうとした海斗の背中に、松島が恐ろしい言葉を投げた。
「あ、明日有給にしてあげるから」

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有給ってことは明日はまたRに入っちゃうな~…。
って何人の男が絡んでくるんだろう、この話…。
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コメント

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面白そう
コメント甲斐 | URL | 2010-07-13-Tue 08:47 [編集]
新作ですね、やっと今日から仲間入りできました。

なんだかちょっと寂しいような生活が垣間見える海斗くんですね。
身体だけの相手が何人かいて、多分一晩限りの相手と遊んだりもして、愛もなければ特別な想いもない、か。

両隣のご近所さんがどうからんでくるのか気になります。
3人とも知り合いなのかな、同居している二人の関係はなんだろう、あの朝はご近所さんにどれだけ聞こえたんでしょう…。
などなど
これからが楽しみです。
Re: 面白そう
コメントきえ | URL | 2010-07-13-Tue 09:59 [編集]
甲斐様
こちらにもどーもです。

> 新作ですね、やっと今日から仲間入りできました。

いらっしゃいましー。

> なんだかちょっと寂しいような生活が垣間見える海斗くんですね。
> 身体だけの相手が何人かいて、多分一晩限りの相手と遊んだりもして、愛もなければ特別な想いもない、か。

愛もなく、ただ欲望の発散みたいな生活です。
淋しいですけど、そのうち、潤いがやってくるかと…(先がながいな…)

> 両隣のご近所さんがどうからんでくるのか気になります。
> 3人とも知り合いなのかな、同居している二人の関係はなんだろう、あの朝はご近所さんにどれだけ聞こえたんでしょう…。

両隣様、ちょっと意味含んでいます。
って、絡んでくるのもまだ先の話なんですけど…(汗)
ナゾ多きご近所様の登場…と、何やら危険な匂いのするお仕事場。
ハイ、楽しみにまっていてください。(楽しませられるかな…不安)
コメントありがとうございました。
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