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BLの丘
一番近いもの 6
2010-07-15-Thu  CATEGORY: 一番近いもの
立ち上がる気力もない…。
海斗だけを休暇にしたため、松島は先にホテルを出て行った。
「僕の誘いを断ったらダメだよ。他の約束があっても全てキャンセルして。言うことが聞けなかったら、会社のパソコンのスクリーンセーバー、この写真に変えるからね」
握られた携帯電話には、手足を縛られ様々なものを体に張り付けられた痴態が映し出されていた。
あたかも、そうされることを悦んでいるような映り具合だった。

チェックアウトの時間、ぎりぎりまでベッドに横たわっていた。
さすがに3日続けての性行為は経験もなく、嬲られつつけた体中の骨がぎしぎし言い、鉛のように重くなっている。
何よりも重いのは心だった。
気安く受けてしまった誘いをこんな形で後悔することになるとは…。
こんな相談を誰にしたらいいというのだろう…。

アパートの前までタクシーで辿り着いた。
松島にもらった1万円札で支払いを済ませ、足腰にくる痛みを必死で押し殺して、なんとか階段を昇る。
部屋に辿り着く前、端のほうに越してきた男が偶然外に出てきた。
たしか、鳥羽っていったっけ…。
「こんにちは。…体調悪いの?」
ぐったりした海斗にすかさず目を向けた鳥羽が心配げに声をかけてきた。相変わらず、年の差を感じさせない奴だ…。
「べつに…。ちょっと疲れているだけ…」
「こんな時間に。会社早退してきたんでしょ」
普段であれば、働いている時間。
早退したのも、最初から休んでいるのも、どっちも変わらないようなことだと思ってしまう。
答える気力もなく部屋の鍵を開けて中に入ろうとして、そのドアをうしろから引かれた。
「ねぇ、大丈夫?看病必要なら、何か手伝ってあげるよ」

余計なお世話…。
海斗は続いて勝手に入ってきた隣人にうっとおしそうな視線を投げた。

「体調悪い時に他人にうろつかれるってホント迷惑。休みたいんだよ、俺」
「会社に行ってたっていう雰囲気じゃないね」
核心をついた言葉にひやりとさせられる。
同時に勘の良さそうなこの男を知った。
日曜日の一件も脳裏を掠めて行く。
どんなスキモノかと思われる、連続した流れに、自分の立場が危うくなっていくのを感じた。

「ちょ…、これ…、この手首なに?あんた、何してんの?!」
押し返そうと彼の胸元に伸ばした手首をいきなりつかまえられた。
面倒くさがってワイシャツの袖口のボタンを留めていなかったのが仇になった。
一晩中括られた手首には擦過傷ができていた。解いて欲しくて自分で激しく悶えた結果でもある。
「はなっ…っせ…っ!!」
見られたくなかった。
SMセックスを見られるような羞恥で全身が火照った。
決して望んではいないけど、松島に取らされる体勢の中でよがる自分がいるのは確かだった。
「あんた…なにしてんの…」
再び同じ言葉が響いて、海斗は首を振った。
「関係ないだろっ!!」
「あぁっ!!関係ないよっ!!関係ないけど、身体に傷作っているって分かって、しかもこんな疲労感たっぷりの姿見せられて放ってなんておけないだろっ」
「それが余計なお世話だって言うんだよっ」
「この前の人じゃないよね?こんなひどいことをする人には見えなかったし」
やっぱり聞かれていたのだ…と確信する。
大希は海斗に甘い声以外を上げさせたことがない。
日曜日の朝からの行為といい、月曜日の夜は留守にしたとたぶん知られ、火曜日の朝帰り。
最悪だ…と海斗は思っていた。
こちらが引っ越しをしたいくらいだ。

「薬、ある?ねぇ、とりあえずうちに来てよ」
腕をつかまれたまま再び外に連れ出される。
暴れても小柄な海斗では逃げ出すことも不可能に近かったし、何より疲れ切った身体が言うことを聞かない。
鍵を閉めた様子もない隣の部屋に連れ込まれれば、キッチンに立つもう一人の男が見えた。
「蓮(れん)、傷薬」
「傷?」
有馬と名乗った男がフライパンを前にしながら戻ってきた鳥羽に不思議そうな顔を向ける。
続いて腕を引っ張られて入ってきた海斗に、益々眉間が寄った。
「さっきから何か外が賑やかだな…と思ったけど、健太、何してたわけ?」
「いいから救急箱持ってきてよ」
有無を言わさずに引っ張り上げられた奥の部屋はすっきりと片付いていてベッドと小さなテーブル、そして大量の本が積み上げられていた。
無駄なものが多い自分の部屋とは雲泥の差だ。
「ちょっ…っ!!薬とかいいからっ!!こんなのすぐ直るしっ!!」
「身体の全部をチェックしようなんて思っていないよ。とりあえず、目につくそれ、なんとかしたほうがいいでしょ」
「なんだか穏やかな話ではなさそうだね」
鳥羽に比べれば有馬のほうがだいぶ落ち着きがありそうだ。
一見、見た目だけは若いと思っていた二人だが、精神的なものは海斗よりもずっと大人のように感じる。
テーブルの前に座らせられた海斗の袖口を鳥羽が引き上げれば、何事かと救急箱ではなく菜箸を持って部屋を覗き込んでいた有馬が険しい表情を浮かべた。

…よりによって、二人に知られるなんて…っ!!

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隣人、何者?!
(あ、いやー。普通の隣人?…すでに疑問系)
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コメント

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No title
コメント甲斐 | URL | 2010-07-15-Thu 01:16 [編集]
思った以上に鬼畜入った上司でハラハラしました。

ちょっと強引でおせっかいなお隣さんですね。
でもいまの海斗さんには必要かも。
迷惑がってるみたいだけどね。
Re: No title
コメントきえ | URL | 2010-07-15-Thu 06:42 [編集]
甲斐様
おはようございます。
先ほどレス書いたのに消えました…(ーー゛)

> 思った以上に鬼畜入った上司でハラハラしました。
>
> ちょっと強引でおせっかいなお隣さんですね。
> でもいまの海斗さんには必要かも。
> 迷惑がってるみたいだけどね。

鬼畜な上司、さぁどうするんでしょうか。
お隣さんもなにするんですかね。
海斗、いっぱいもてあそばれて…(いや、可愛がられて…)
海斗は強引な人が似合うかもしれませんね~。
流されていくタイプです、きっと。
コメントありがとうございました。
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