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BLの丘
一番近いもの 18
2010-07-30-Fri  CATEGORY: 一番近いもの
つかまえられた肌がぷるぷると震えた。
大希は『海斗は誰かに恋をしている』と伝えた。
その相手を海斗自身分かりはしなかったし、その相手を忘れろと大希に促されて返事までしてしまった。
だけど、改めてどこからくるものなのか、はっきりと知ってしまった今、悔しさや悲しさだけが海斗に打ち寄せてくる。
鳥羽の、全てを守ろうとする親切心が、重荷になっていた。
何故涙が出るのか、どうして苛立ちばかりが募るのか、『同情』にしか値しない鳥羽の感情を知って、海斗の中に生まれた『恋』がこの瞬間に打ち砕かれていた。
たった1週間の間に、鳥羽から寄せられた『優しさ』に海斗はしっかりと嵌り込んでいたのだ。
まだ何も知らず、興味が湧いている程度の『隣人』だと思っていた。
一番傷ついた時に傍にいてくれた人…。

『放っておけない』…。
鳥羽から聞かされた一言に、現実を思い知らされる。
鳥羽にしてみれば、この先、診ていく『患者』の一人のようなものなのだろうか…?

「出て…いけ…っ…、出ていけってばっ!!」
鳥羽の腕の中で突然暴れ始めた海斗を、怪訝な顔つきで見下ろされる。
海斗の部屋の玄関を、続いてきた有馬が開けて、二人のただならぬ情景に眉をひそめた。
「健太、離してやれって。おまえ、何してんの…?」
男が男を抱き締める風景など、一般市民には受け入れがたいものだろう。
救われるのは、様々なことを学習している二人だからなのか…。
「海斗、俺が悪かったって。『慰める』って、変な意味じゃなくて…」
「うるさいっ!!もういいっ!!」

悔しい…。
こんな男の為に、毎日溜め息を繰り返していたのか。
守ってくれる腕は自分だけには向けられないと悟って、あまりの淋しさと悲しさで涙が止まらなかった。
こんな想いは知りたくなかった。
幼稚園の頃に憧れた尚人先生とか、いつも面倒をみてくれた登校班のあっちゃんとかに抱いたものとは明らかに違う情熱。
そして、もう一人。
海斗の身体を開いた『父』とも違った。

「ごめん。俺の言い方、ほんと、悪かったって…」
「慰められたくなんかないんだよっ!!慰めてくれる奴ならいるからっ!!」
本心ではない言葉が漏れてしまったが、その意味を鳥羽も有馬も理解しているのだろう。
大希の存在を示唆し、思うものとは裏腹な言葉に、瞬間、海斗は後悔したがもう後の祭りだ。
鳥羽の腕を解かせる有馬の手と、諦めたように離れていく鳥羽の腕が、更なる焦燥感を生んでいるのに何もできなかった。
言わなくてもいい発言で、返って鳥羽を傷付けたことも分かる…。分かるけど…。


取り返しのつかない発言に隣人との距離は否応なく開いた。
その夜、部屋に帰ったのかと確認する大希からのメールが何通か届いた。
いままでと同じように、深入りする気にもなれず、返信もしないでぼーっと過ごす深夜に電話が鳴る。
『海斗、帰った?ごめん、何回もメールしちゃって…』
「ん…。ちょっと酔っちゃって…。返信できなくてごめん…」
正直言えば、『面倒くさい』の一言だった。
誰かに束縛されることをこんなに嫌っただろうか。
改めて大希とはもうこれ以上の付き合いができないことを知る。
後腐れない、欲求をはらす為だけの関係だったからこそ、うまくやってこられたのだと思った。
そしてそんな穢れた関係を、鳥羽に、今更ながら知られたくなかった。

昨日、告白をされて、たった一夜で後悔の嵐の中に落される。
大希に何と言ってやればいいのだろう…。
『ちゃんと帰ったんだって分かったからいいよ。また明日から忙しいだろ?仕事、頑張れよ』
今まで聞くことのなかった、鼓膜を撫でてくるような声音に大希の本気さを感じた。
弄んでいるのは自分なのだろうか…。

心苦しさを抱えながら電話を置く。
溺れたい男は誰なのだろう。
想いを寄せてくれる人間と、想いを抱く人間。
知りたくなかった…と両手で顔を覆った。
距離があいてしまった隣人の中にも、確実に、『海斗が付き合う男の影』があって、言い訳のしようもない。
だけど、その男に縋ることを拒絶した海斗がいる。
とはいえ、フリーになってしまうことが怖かったりもする。
『一人にされる…』
一番の恐怖だった…。

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く、暗すぎて『チチ』とか書きたくなるのはビョーキか?!
しぼるとこ間違えて顔にどぴゅっとかひっかけられるの、保護者は許さないだろうが読者様は許してくれるんだろうか。
あ…すみません、もう、いらないあいつらですよね…(でも書きたいらしい)
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コメント

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No title
コメントmiki | URL | 2010-07-30-Fri 00:30 [編集]
海斗一体どんな過去があったのでしょうか?父親との関係って…。ますます先が気になります(>_<)
あ、『チチ』大歓迎です。あの子らが今度は何をやらかしてくれるやら(笑)
Re: No title
コメントきえ | URL | 2010-07-30-Fri 07:09 [編集]
miki様
おはようございます~。

> 海斗一体どんな過去があったのでしょうか?父親との関係って…。ますます先が気になります(>_<)
> あ、『チチ』大歓迎です。あの子らが今度は何をやらかしてくれるやら(笑)

海斗の過去も結構複雑です。(って、なんでこんなややこしい設定にしちゃうんだろう…汗)
次回『父』関係出ますので。
で、『チチ』は少々お待ちを…。(歓迎してもらえて嬉しいです)
コメントありがとうございました。
No title
コメントきえ | URL | 2010-07-30-Fri 07:13 [編集]
ら様
おはようございます。

>(。・з・)ンモォォ 海人素直になれぇ~って感じです。。。 チチ牧場大歓迎ですよ♪楽しみにしてまぁ~す( ´艸`)

意地張って生きてきちゃった部分もあるんですかね~。
あとくされない関係ばかりを続けてきちゃった海斗だから、この先どうしたらいいのか分からないところもあるんだと思います。
『チチ』は暗い話の反動みたいになっています。
コメントありがとうございました。
「慰めてくれる奴ならいる」でもそれは身体だけなんだよね
コメント甲斐 | URL | 2010-07-30-Fri 09:16 [編集]
海斗くんの重そうな過去がちょっとだけ垣間見えました。
それも含めて乗り越えなければならないことや
忘れてしまいたいことがたくさんありそうな気がします。
そんな子をまっすぐに見つめて
心も身体も包み込んでくれるような広い懐を持った人じゃないと
付き合いきれないでしょうね。
その点大希くんでは力不足なような気がします。
いい子なんですけどね…
Re: 「慰めてくれる奴ならいる」でもそれは身体だけなんだよね
コメントきえ | URL | 2010-07-30-Fri 12:51 [編集]
甲斐様
こんにちは。
(先日、べつのコーナーに『かいちゃん』と書いて、あれ?ここにも『かいちゃん』いるじゃん、とふと思いました。あ、すみません、独り言です…)

> 海斗くんの重そうな過去がちょっとだけ垣間見えました。
> それも含めて乗り越えなければならないことや
> 忘れてしまいたいことがたくさんありそうな気がします。
> そんな子をまっすぐに見つめて
> 心も身体も包み込んでくれるような広い懐を持った人じゃないと
> 付き合いきれないでしょうね。
> その点大希くんでは力不足なような気がします。
> いい子なんですけどね…

大希はすごくいい子なんだと思います…が、海斗には合わなかった模様…。
なにもかもを包んでくれる、そんな人でないと海斗は満足できないのかもしれません。
若くても『受け入れてくれる懐の大きさ』に海斗は惹かれるのでしょう。
少しずつ海斗の過去も見えてくるかな。
のりこえなければいけないものもその辺にあるのかも。
コメントありがとうございました。
No title
コメントきえ | URL | 2010-07-30-Fri 17:45 [編集]
拍手コメ レ様
えぇ、もう書いちゃいましたっ。

>『チチ』書いてください! 海斗の過去が重いので乗り切るためにもぜひ!!

あぁ、やっぱ苦しいとこ、あるんですかね。
進むたびに馴染んでいくキャラかとも思いますけど。
どうしても過去作に依存するところはあるんでしょうね。
どっちも嫌われないように書きたいです。
コメントありがとうございました。
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