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BLの丘
一番近いもの 20
2010-08-03-Tue  CATEGORY: 一番近いもの
里帰りはたまにする。
新幹線に揺られること、数時間か、航空便で何時間か。
大概は予定を組んだ日の航空券が送られてきて、海斗は一番楽な移動方法で懐かしの地に足を運んでいた。

年末年始の時期やお盆のころ…と時期は決まっていたが、兄弟もいなかったから一年に一度でも顔を出せば母は満足してくれたし、血の繋がりのない父も喜んでくれた。
4番目の父と母との仲は長い。
過去の3人が、2年、3年と短い周期で変わったことを思えば、10年以上も続いているのだから驚きもするが…。
海斗には特別な意味もあったから、同じ顔が見られて居てくれることは嬉しいことでもある。

この夏は今まで過ごした時とは全く違っていて、どこか安堵するものにすがりたかったのかもしれない。
松島に手酷く扱われ傷つき、大希との関係もどうしていいのか決断できずにいる。

花巻の家を飛び出した後、有馬が改めて謝罪しにやってきた。
一時的に鳥羽を引き離したかったようだ。
「言葉が足りなかったって本人も反省しているから。本当に悪気はなかったんだ。飲んでいた席で調子に乗っちゃって…。何となく海斗さんが元気ないような感じもあったから気にしての上で…。すみませんでした」
鳥羽を庇って謝罪までしに来るとは有馬にも何か特別な感情があるのだろうか。
それともただの近所づきあいを思ってなのだろうか。

海斗は今頃になって、自分が怒りだしたことが理不尽だったと反省した。
こちらの感情に答えてくれないと分かっての苛立ちで、やつあたりと言っていい。
何も知らず、元気づけてくれようとした鳥羽にすれば、これまでと変わらず接していただけなのに、いきなり怒鳴られた上に泣き出されれば意味すら分からなかっただろう。
それなのに、たった数分のうちに事態を判断し、こんなにもあれこれと気遣ってくれるのは、二人だからなのだと思った。
「いい…。ゴメン、俺も感情的になっちゃって…」
感傷に浸る海斗を思ってか、有馬もダラダラと何かを言いはせず、すぐに帰っていった。
隣の部屋で、鳥羽がどんな気持ちでいるのか、申し訳なくなってくる。
彼の親切心を良く知るから、余計に自分が取った行動を後悔した。

だから大希から電話をもらったことで燻るものが大きくなり、海斗はなかなか寝付けず、最悪な月曜日の朝を迎えた。
偶然だったのか、玄関を飛び出すなり、鳥羽と出くわした。
気まずさはあったけれど、無視する気も起こらず、鳥羽も何か言いたそうだった。
だが、海斗にはもう時間がなく、立ち話をしている暇は一秒もない。
「おはよう…」
「おはよう。ごめん、寝坊してすごく忙しいんだっ」
謝りたい気持ちを持ちながら、慌てふためく海斗の姿はどう捉えられているのだろう。
決して話をしたくないわけではない、と誤解されないか心配しつつ伝えれば、「駅まで送ってやるよ」と申し出られた。
駅まで徒歩で20分足らず。一つの乗り換えはあっても、会社が駅の正面にあったため、海斗は車を持っていなかった。
「でも…」
「俺も出掛けるついでだし。会社の方がいい?」
いくらなんでもそこまでしてもらう必要はない。
躊躇する海斗の腕をつかまれ、「ほら、急ぐんでしょ」と促される。
昨夜のことを気にしている部分はあるのだろうが、いつもの鳥羽と変わらない態度に安堵している自分がいるのも確かだった。
助手席に乗せられた途端に鳥羽が口を開いた。
「昨夜はさ、本当にごめん。あんな言い方になっちゃったけど、海斗のことはすごく心配しているんだ。なんていうか、ちょっと無防備なところがあるっていうか放っておけないっていうか…。海斗だから守ってやりたいって思うんだと思う。 俺、いつも勢いで動いて蓮にも怒られるんだけど、もうちょっと海斗のこと、考えてやるべきだったな…って。あんな事件まであった後で、俺が言ったこと、酷かったな…って反省してる」
いつもは明るい口調ばかりの鳥羽が神妙に言ってくれば、その気持ちも伝わってくるようだった。
「もう、いいよ…」
「昨日は落ち込んでいるようにも見えたし、そんな時に非常識だったよな」
鳥羽はスーパーで大希に出会ってしまってからの海斗の変化に確実に気付いていたのだろう。
昨夜の有馬もそんなことを言っていたことを思い出す。
鳥羽なりの優しさだったのだとも今では冷静に振り返ることができた。
「俺こそ、怒鳴ってごめん…」
「もしさぁ、心配ごととか悩みとかあるんだったら、いつでも話きいてやるから。まだまだ頼りないかもしれないけど」
照れくさそうに笑う鳥羽の姿が新鮮だった。
これまで振りまわされるような態度ばかり取られていた。
何も知らないことばかりの隣人に、海斗はまた一つ興味を持った。
だが所詮、鳥羽が向けるものは同情でしかないと改めて教えられたようで、心苦しいものが胸を覆っていった。

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久々の登場になりました…。
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コメント

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大希→海斗→鳥羽←?有馬
コメントけいったん | URL | 2010-08-03-Tue 18:25 [編集]
簡単な人物相関図<↑>を 作ってみました!簡単すぎますか?
鳥羽と有馬の情の関係が 愛か友か イマイチ 分からないですし 鳥羽の気持ちも 海斗じゃないけど イマイチ はっきり しないですし...(?_?)...
ここに 花巻が 入ると もう 匙投げ状態ッ!
タイトルの「一番近いもの」って 今更ながら どう意味なんだろうと 考えてます。
今更ですね、アハッ...(^▽^;)ゞbyebye☆
Re: 大希→海斗→鳥羽←?有馬
コメントきえ | URL | 2010-08-03-Tue 19:31 [編集]
けいったん様
こんばんは~。

> 簡単な人物相関図<↑>を 作ってみました!簡単すぎますか?
> 鳥羽と有馬の情の関係が 愛か友か イマイチ 分からないですし 鳥羽の気持ちも 海斗じゃないけど イマイチ はっきり しないですし...(?_?)...

ホントは15話くらいで状況説明を終えたかったんですけど…(長っ!!!)
あ、でも海斗が気づいたあたりから動き出したかな。
どーでしょーかねーぇ(o´艸`o)

> ここに 花巻が 入ると もう 匙投げ状態ッ!
> タイトルの「一番近いもの」って 今更ながら どう意味なんだろうと 考えてます。

あー、でも「一番近い」
いっぱい意味がありますね。
けど、これ以上人間が増えることもないです。
コメントありがとうございました。ヽ(^。^)ノbyebye☆

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