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BLの丘
一番近いもの 21
2010-08-04-Wed  CATEGORY: 一番近いもの
その1週間の仕事は海斗にとってハードだった。
優秀だと言われていた松島が退社したことが最大の原因であったのだが、すぐに次の人間が確保できるわけでもなく、当然現在いる社員に振り分けられる。
先週の疲れも抜けきらず、いきなり寝不足からスタートした海斗だったし、また連日の猛暑も体力を消耗させたようだ。
オフィスにいる時は寒くなるほどの冷房に当てられ、一歩出れば黙って立っていても汗が流れ出るような熱風に襲われる。
アパートのエアコンの効きも良くなく、夜もぐっすりと眠れる日が少なかった。

週末の金曜日、あまりの体調の悪さに早々に仕事を切り上げさせてもらった。
身体全身がだるかった。
アパート近くの駅に辿り着いた時には、立っているのもやっとという感じで、部屋までの道のりが酷く遠く思えた。
よたよたと歩きだしたはいいが、5分と歩かないうちに、駅前の公園のフェンスにもたれかかってしゃがみこんでしまった。
世界が回るような立ちくらみを覚えたし、吐き気も襲ってくる。
夕食時ともなった公園には誰もおらず、時折住宅街へと向かっていくライトをつけた車が走り抜けていった。
あとはまっすぐ歩いていけばいいだけだというのに、もちろん身体を支えてくれる手すりなどない。
貧血くらいなら、少し休んでいれば歩けるようになるだろう…と思っていた矢先、海斗の横を過ぎた一台の車が10メートルほど先で急停車した。
後続車がいないことを確かめてバックして戻ってくる。
最初、そんなことにも気付かない海斗だったが、すぐそばでハザードを出して停まった車と、バタンッと車のドアが閉まる音を聞いて何だろう、と顔をあげた。
「海斗さんっ?!」
海斗に近寄ってきた背の高い男は、有馬だった。
見慣れた顔を見ただけで、海斗から一気に脱力するものがある。
はぁ…と小さな吐息が漏れてしまい、同じようにしゃがみこんだ有馬がすぐに海斗の額に手を当てたり首筋を触ったりしてきた。
その時になって、目の前に停車している車が見たことのない車種だと気付いた。
海斗が乗せてもらったものは鳥羽の物しかなかった。
…いつも一緒に行動している二人なわけではないし、当然と言えば当然か…。

「すごい汗…。こんな熱い中で上着も脱がないからですよ」
有馬は海斗を立たせようとしたが、全く足に力が入らなかったし、少しでも動けば頭がくらくらとした。
「…あ、…だめ…、動くと、なんか、気持ち悪い…」
頭痛からくるものなのか、吐き気をもよおした。
ぽつりぽつりと症状を伝えれば、いきなり身体の全部が宙に浮く。
片腕を有馬の肩にかけた後、脇の下と膝裏を抱えられた…、まるで女の子のような抱き方に驚いたが、すぐそばに停めた車の助手席のドアを器用に開けるとそこに海斗を座らせた。
そのまま上着の背の中に手を入れられ、するっと脱がされて、ネクタイもはずされて喉元のワイシャツのボタンを幾つかはずされた。
シートを横にして寝かせるようにしてから、素早く運転席に回った有馬が乗り込んできて、すぐに車をスタートさせた。
「とりあえず家に行ってからまた詳しく様子を聞くから」
長い距離だと思っていたアパートまでの道はあっという間だった。

海斗から部屋の鍵を預かった有馬のその後の行動はあまりにも素早かった。
海斗は駐車場に着いても、一歩も地に足をつけることなく自分の部屋のベッドまで運ばれた。
鳥羽と並べば確かに有馬の方が大きく見えはしたが、それでも簡単に持ち運ばれてしまう自分の体格とはどんなものなのか、と情けなくなる。
この一週間、部屋の掃除などしたことのない海斗の部屋は、散らかりたい放題で足を踏み入れられるのは抵抗があったが、物を言い返す間すらとらせない。
二つの部屋の扉も開けっ放しだったから、どちらにベッドがあるかも一目瞭然だった。
海斗を横にすれば、もわっとした空気をどうにかしようとすぐにエアコンを入れ(この辺は造りが同じなので扱いやすいらしい)「パジャマのようなものは?」と問われて、そんなものはない…と首を小さく振れば、くるっと部屋を見回して干しっ放しの洗濯物を幾つか取りはずしてきた。
「とにかく、これ、全部脱がせますよ」
今居る有馬は、これまで見てきた人物と同じとは思えないほど厳しい目をしていたし命令口調ではあったが、やはり心に響いてくるような優しさは感じることができた。
今は『ご近所様』というよりしっかりした『医師』として動いている。

実際、服は『着ている』というよりも汗で纏わりついているという不快さがあった。
ワイシャツの前ボタンを外された時、じっとりと濡れた肌に気付いて、「ちょっと待ってて」と慌てたように部屋を出て洗面所で何かをしていた。
部屋の造りが同じで、家事業に慣れた有馬だからなのか、大概の物のありかは想像がつくのだろう。
こうなってしまっては勝手に家探しされることに苛立ちもなく…、…もともと気にしない性格の海斗だったが…。
乾いたバスタオルや濡らしたタオルを持ち戻ってきた。
一度海斗を少しずらしてからシーツの上にバスタオルを敷いて、その上に海斗を戻してくる。
何をされるのか皆目見当もつかない海斗の身体から、ワイシャツとスラックスがすぐに剥がされた。
「一度拭きましょう。気持ち悪いところがあったら言ってください」
そう言って、首筋から撫でるように濡れたタオルで擦られていく。
まるで介護される人間だな…と海斗は呆れていたが、何をするのも億劫な身体を気持ち良くされる快感には逆らうことができずされるままになっていた。
ただ、一枚だけ残っていたパンツを脱がされようとされた時だけは、さすがに有馬の手を止めた。

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