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BLの丘
策略はどこまでも3
2009-06-30-Tue  CATEGORY: 策略はどこまでも
「いや、別に一日くらい俺いなくったって支障ないし。つーか、さ。誰が来るか聞いてる?」
12月の師走の最中、わざわざ『気軽な飲み会』とまで追記された同窓会に、どれくらいの人数が参加するのかと疑問は確かに浮かぶ。
参加人数の少なさを危ぶむ声に、同じことを思っていたんだなーと那智はこの案内状を受け取った何人の人間がそう感じたのかを思ってしまった。
整髪料で整えられた髪をクシャクシャと掻きまわしながら、また案内状はテーブルの上に投げられた。
「んにゃ。まったく。俺今帰ってきて見たばっかだし。誰とも連絡とってない」
「今ぁ?何をそんなに頑張って仕事しちゃってるわけ?…そっかぁ。知らないかぁ」
高柳はこんな時間になって帰宅したことを驚いていたようだが、仕事をしていれば色々なこともあるかとそれ以上は言いはせずに話を元に戻した。
やっばり誰のとこに案内状が届いているのかしりたいのか、こいつも、と那智は思った。
高柳とは昔から考えていることが似ていて、一緒に行動を取る時などでも話がスムーズだった。
「今回の幹事も岩村だろ?…12月なんて…。…そうだよ、岩村じゃん。ヒサ、岩村と仲良かったんだから聞いてよ」
那智はひらめいたかのように疲れてトロンとした目を突如開いた。

在学中から岩村は合コン等の幹事役を引き受けていた。周りの面倒見が良いというのもあったし、何より責任感が強かったから、みんなの信頼度が厚く慕われていた。岩村が企画する合コンや飲み会は定評があって参加率が高かった。
那智だって岩村とは親しかったほうだが、高校から一緒だった高柳には及ばない。今だって頻繁に連絡を取り合っていることはこれまでの話の中で聞いている。
それなのに参加者のことを自分に尋ねて電話をかけてきた高柳を不思議に思わなかったなんて…。最初に掛ける相手が違うだろう?
「うーん。それがあいつも忙しいみたいで連絡つかないんだよなー。それに参加者がどれくらいいるかなんて今の時点であいつだって分からないだろ?なっちのとこで、誰が参加するとか話聞いたら教えてよ」
要は誰に案内状が行っているかよりも、誰が参加するのかを知りたいってとこか。確かにどれくらい親しかった人間が何人来るかによってから決めたいとも思う。

「ああ、まあいいけど。ちなみにヒサ、行く気なの?」
仕事のことまで思えば、参加意思があるとは思っていなかったから聞いたのに。
「なっちが行くなら休み取る」
「俺、基準?!」
笑いながらであっても即答されれば、多少の驚きも生まれる。
「だってなっちが行くって言えば、結構な人数が集まるじゃん」
「それ、嫌味?」
返された言葉に尖った声が響いた。おまえの存在、どんなものだと思ってるんだ?と。
冗談と分かるやり取りに本気できつい声を上げたわけでもなく、高柳も続けて軽口をたたいた。
「じゃあ、俺となっちが行くって言えば、会場、いっぱいになっちゃうね」
「ほんとムカつく」
電話口で口端を上げながら内心、このクソッと悪態をつく。いつもこんなやりとりで今更怒る気分にもなれない。

それでも真面目な話、高柳は岩村同様、交友関係が広かったから、高柳が参加すると言えば集まる人数は相当数かもしれないと思い返した那智は、小さく息をついてから言葉を続けた。それにたぶん、高柳自身が行きたがっているような気がしたから。
「あー、ヒサにそこまで言われたら行かないわけにいかないじゃん。とりあえず、参加でいいよ。そのかわり、岩村からちゃんと随時経過報告もらっとけよ」
場合によってはキャンセルも考えるから、と付け足した。
「りょーかいっ!」
ある意味、年内最後の楽しみが増えたかな。と先の予定を思いながら、お互いに「おやすみ」と挨拶をして電話を切った。
今度こそ、風呂に入ってビールを飲んで眠れそうだ。
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