泣きじゃくる一葉をうっとおしそうに見つめられ、彼をおいて違う部屋に移動させられようとしていた時に、制止する声を振り切って飛び込んできた男がいた。
佐貫と安住の姿を目にした途端、成俊の張り詰めていた緊張が一気にほどける。
「成俊っ!!!」
「一葉っ!!!」
「なんだっ?!おまえらっ!!!!」
成俊の腕を掴んだ男が成俊を背後に隠そうとしたが、素早い動きで佐貫が立ちはだかった。
成俊も逃げようと手を伸ばす。
「みつ…っ」
「なりっ、来いっ」
突然現れた人間に、その場にいた人間が全員身構えた。
それらを一瞥で佐貫は封じ込める。
男の手から逃れた成俊は一目散に佐貫に飛び込んだ。
「何があったのか説明してもらおうか」
鋭い視線に一瞬の戸惑いが男たちに浮かんだ。
自分たちを前にして怖気づくものを何一つ纏わないのは、慣れた人間だからなのだと知らされる。
だいいち、ここまで簡単に入ってこられたのだ。
安住の腕に縋りついた一葉は、ただ嗚咽を上げるだけだった。
「なにがって、そのガキが俺の背広にアイスなんかぶつけたんだよっ。おとしまえ付けるのが当然だろうがっ!!」
「ひゃ、ひゃくま、ん、慰謝料…って…」
佐貫に強く抱きしめられて安堵した成俊が、少しの落ち着きを取り戻して、片言のような声をあげる。
佐貫の眉が吊り上がった。
「なんだとっ?!完全な恐喝だろう?!こんなところでなく、署で調書取ってしっかり話を聞いてやるっ」
「随分立派な衣装をお召しですね。証拠品として提出してもらえますか?鑑定でも何でも回しますよ」
安住はこちらに非があるのなら応じるといった態度だが、法外な金額に泣き寝入りする様子はない。
罪状や法律が絡んでくれば、佐貫も安住も容赦することはなかった。
「ひっく…、ご、ごめんなさ…、俺が…」
かろうじて上げた一葉の声に、安住は原因が一葉にあることを悟ったが、尚更「大丈夫だよ」と優しく背を撫でていた。
一葉が事の一端を作ってしまったのなら、余計に安住は逃げも隠れもしないと、正面から向き合う。
このような場所にいながら、全く動じることのない気配に、男が声を荒げた。
「てめーら、何モンだっ?!」
「恐喝程度で警察に目を付けられたなんて上に知れたらおまえらの立場もヤバくなるんじゃないのか?!こんなちっぽけな事務所、いつでも切られるだろうよ」
「警察?!まさか貴様…っ!!!」
「初対面の人間に向かってどんな言葉使いをしろと、おまえの組は教えてないのかっ?!いかに下っ端か良く分かるな」
この場では偉そうだった男も佐貫に怒鳴られて黙った。
教育が行き届いてないと言いたげな佐貫の言葉はこんな人間たちの立場も状況もつかみきっている。
それだけで充分なくらい威圧感を示す。
上層部に知られれば面倒をかけたと、どやされるだけだ。
「この子がかけたご迷惑料はお支払いいたしますが、一般常識のものにのっとって決めさせていただきます。それ以外の要求があれば法廷でお会いしましょう」
ぴしゃりと言い放った佐貫と安住に連れられて、成俊と一葉は連れて来られた時の恐怖心とは全く反対の安心感を宿らせて事務所を出た。
最後に言い置いた、佐貫の身分を明かす台詞に、怯む連中の姿を見れば、今後何も言われないで済むのだとはそれとなく感じ取れた。
万が一に何を言われようとも守ってくれる存在がある。
たくましく頼りになる人がそばにいる。
あいつらも、とんでもない人間の連れに手を出したのだと嫌でも知ることとなったのだ。
他の人間が同じような状況に陥らなければいいと、成俊は少し思っていた。
詳しい説明を改めて求められた時、状況をつたえれば、安住から告げられたことは、「食べ物は座って食べなさい」ということだけだった。
散々佐貫に説教していた成俊もさすがに返す言葉がみつからなかった。
家の中で何を言っていても、外では自分の方がずっと世間知らずな子供だった。
ただ佐貫と安住が揃って口にした言葉は同じで、「何もなくて良かった…」と安堵された。
あと少し二人の登場が遅れていたら、どうなっていたのか…。
要求されたことを成俊は佐貫に言えずにいる。
少なくとも、自分から求めるような人間になり下がったとは言いたくなかった。
いくら、一葉を守ってやるためとは言っても…。
4人揃って一緒に安住の家に戻ると、オロオロとした中條の姿があった。
この男も、佐貫の過去を知る人物だった。
もちろん、成俊に起こったことは知らないはずだが、かつての恋人が命を落としたことは承知している。
それだけに佐貫が、成俊に何かあったときにどれだけ苦しむのか、心配されているのだと簡単に理解できた。
見守ってくれる人が、自分の周りにはたくさんいた。
いつでもどこでも守られている存在。情けないけれど嬉しい。
自分の身を覆ってくれる優れた戦士たち。
それは自分の身を守ってくれる鎧兜のようだった。
―完―
にほんブログ村
こういう世界のことはあまり詳しくないので、リアルは追及しないでください。
佐貫と安住の姿を目にした途端、成俊の張り詰めていた緊張が一気にほどける。
「成俊っ!!!」
「一葉っ!!!」
「なんだっ?!おまえらっ!!!!」
成俊の腕を掴んだ男が成俊を背後に隠そうとしたが、素早い動きで佐貫が立ちはだかった。
成俊も逃げようと手を伸ばす。
「みつ…っ」
「なりっ、来いっ」
突然現れた人間に、その場にいた人間が全員身構えた。
それらを一瞥で佐貫は封じ込める。
男の手から逃れた成俊は一目散に佐貫に飛び込んだ。
「何があったのか説明してもらおうか」
鋭い視線に一瞬の戸惑いが男たちに浮かんだ。
自分たちを前にして怖気づくものを何一つ纏わないのは、慣れた人間だからなのだと知らされる。
だいいち、ここまで簡単に入ってこられたのだ。
安住の腕に縋りついた一葉は、ただ嗚咽を上げるだけだった。
「なにがって、そのガキが俺の背広にアイスなんかぶつけたんだよっ。おとしまえ付けるのが当然だろうがっ!!」
「ひゃ、ひゃくま、ん、慰謝料…って…」
佐貫に強く抱きしめられて安堵した成俊が、少しの落ち着きを取り戻して、片言のような声をあげる。
佐貫の眉が吊り上がった。
「なんだとっ?!完全な恐喝だろう?!こんなところでなく、署で調書取ってしっかり話を聞いてやるっ」
「随分立派な衣装をお召しですね。証拠品として提出してもらえますか?鑑定でも何でも回しますよ」
安住はこちらに非があるのなら応じるといった態度だが、法外な金額に泣き寝入りする様子はない。
罪状や法律が絡んでくれば、佐貫も安住も容赦することはなかった。
「ひっく…、ご、ごめんなさ…、俺が…」
かろうじて上げた一葉の声に、安住は原因が一葉にあることを悟ったが、尚更「大丈夫だよ」と優しく背を撫でていた。
一葉が事の一端を作ってしまったのなら、余計に安住は逃げも隠れもしないと、正面から向き合う。
このような場所にいながら、全く動じることのない気配に、男が声を荒げた。
「てめーら、何モンだっ?!」
「恐喝程度で警察に目を付けられたなんて上に知れたらおまえらの立場もヤバくなるんじゃないのか?!こんなちっぽけな事務所、いつでも切られるだろうよ」
「警察?!まさか貴様…っ!!!」
「初対面の人間に向かってどんな言葉使いをしろと、おまえの組は教えてないのかっ?!いかに下っ端か良く分かるな」
この場では偉そうだった男も佐貫に怒鳴られて黙った。
教育が行き届いてないと言いたげな佐貫の言葉はこんな人間たちの立場も状況もつかみきっている。
それだけで充分なくらい威圧感を示す。
上層部に知られれば面倒をかけたと、どやされるだけだ。
「この子がかけたご迷惑料はお支払いいたしますが、一般常識のものにのっとって決めさせていただきます。それ以外の要求があれば法廷でお会いしましょう」
ぴしゃりと言い放った佐貫と安住に連れられて、成俊と一葉は連れて来られた時の恐怖心とは全く反対の安心感を宿らせて事務所を出た。
最後に言い置いた、佐貫の身分を明かす台詞に、怯む連中の姿を見れば、今後何も言われないで済むのだとはそれとなく感じ取れた。
万が一に何を言われようとも守ってくれる存在がある。
たくましく頼りになる人がそばにいる。
あいつらも、とんでもない人間の連れに手を出したのだと嫌でも知ることとなったのだ。
他の人間が同じような状況に陥らなければいいと、成俊は少し思っていた。
詳しい説明を改めて求められた時、状況をつたえれば、安住から告げられたことは、「食べ物は座って食べなさい」ということだけだった。
散々佐貫に説教していた成俊もさすがに返す言葉がみつからなかった。
家の中で何を言っていても、外では自分の方がずっと世間知らずな子供だった。
ただ佐貫と安住が揃って口にした言葉は同じで、「何もなくて良かった…」と安堵された。
あと少し二人の登場が遅れていたら、どうなっていたのか…。
要求されたことを成俊は佐貫に言えずにいる。
少なくとも、自分から求めるような人間になり下がったとは言いたくなかった。
いくら、一葉を守ってやるためとは言っても…。
4人揃って一緒に安住の家に戻ると、オロオロとした中條の姿があった。
この男も、佐貫の過去を知る人物だった。
もちろん、成俊に起こったことは知らないはずだが、かつての恋人が命を落としたことは承知している。
それだけに佐貫が、成俊に何かあったときにどれだけ苦しむのか、心配されているのだと簡単に理解できた。
見守ってくれる人が、自分の周りにはたくさんいた。
いつでもどこでも守られている存在。情けないけれど嬉しい。
自分の身を覆ってくれる優れた戦士たち。
それは自分の身を守ってくれる鎧兜のようだった。
―完―
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佐貫&安住さんカッコ(*゚∀゚)ィィ!
成俊と一葉の為ならって感じですね。。。(笑)
ってか、成俊と一葉っていくつだっけ?(爆)
『食べ物は座って食べなさい』って怒られてるし・・・( ´艸`)ムププ
中條にも心配かけちゃって。。。
でも、何事もなくヒーローが登場して(´▽`) ホッです♪(危なかったけどねぇ~。。。(ボソ))
成俊と一葉の為ならって感じですね。。。(笑)
ってか、成俊と一葉っていくつだっけ?(爆)
『食べ物は座って食べなさい』って怒られてるし・・・( ´艸`)ムププ
中條にも心配かけちゃって。。。
でも、何事もなくヒーローが登場して(´▽`) ホッです♪(危なかったけどねぇ~。。。(ボソ))
らぅら様
こんにちは~。
> 佐貫&安住さんカッコ(*゚∀゚)ィィ!
> 成俊と一葉の為ならって感じですね。。。(笑)
我が子のためなら火の中水の中の保護者ですヽ(゚∀゚)ノ
どこにでも向かって行く最強部隊。
> ってか、成俊と一葉っていくつだっけ?(爆)
> 『食べ物は座って食べなさい』って怒られてるし・・・( ´艸`)ムププ
26歳ですね~。
いつまでたってもお子様のままでいる…。
そうそう、座って食べましょう(爆)
ついて回ろうという押しつけがましさがないところがさすがです。
> 中條にも心配かけちゃって。。。
> でも、何事もなくヒーローが登場して(´▽`) ホッです♪(危なかったけどねぇ~。。。(ボソ))
危なかった…。
大丈夫です。ハピエですから(`・ω・´)ノ
コメントありがとうございました。
こんにちは~。
> 佐貫&安住さんカッコ(*゚∀゚)ィィ!
> 成俊と一葉の為ならって感じですね。。。(笑)
我が子のためなら火の中水の中の保護者ですヽ(゚∀゚)ノ
どこにでも向かって行く最強部隊。
> ってか、成俊と一葉っていくつだっけ?(爆)
> 『食べ物は座って食べなさい』って怒られてるし・・・( ´艸`)ムププ
26歳ですね~。
いつまでたってもお子様のままでいる…。
そうそう、座って食べましょう(爆)
ついて回ろうという押しつけがましさがないところがさすがです。
> 中條にも心配かけちゃって。。。
> でも、何事もなくヒーローが登場して(´▽`) ホッです♪(危なかったけどねぇ~。。。(ボソ))
危なかった…。
大丈夫です。ハピエですから(`・ω・´)ノ
コメントありがとうございました。
K様
こんにちは。
>お久しぶりです(*^_^*) 佐貫っちどんだけカッコいいんですか(●´mn`)←佐貫氏のお話だと妙にテンション上がります。
おー、佐貫に1票ありがとうございます。
カッコイイ…カッコイイのか…(謎)
でも喜んでもらえて良かったです~。
また気軽に遊びに来てくださいね~。
コメントありがとうございました。
こんにちは。
>お久しぶりです(*^_^*) 佐貫っちどんだけカッコいいんですか(●´mn`)←佐貫氏のお話だと妙にテンション上がります。
おー、佐貫に1票ありがとうございます。
カッコイイ…カッコイイのか…(謎)
でも喜んでもらえて良かったです~。
また気軽に遊びに来てくださいね~。
コメントありがとうございました。
いつもの保護者~ズじゃない!
戦士~ズが、カッコいい~♪
もう何も 悪い事は起こらないとは 思ってましたが、ハラハラドキドキでした(T▽T)
これを 切欠に お子ちゃま達だけの お出かけは 永遠に禁止だろうなぁ~
まぁ 仕方ないか!(;´д`)=3トホホ・・byebye☆
戦士~ズが、カッコいい~♪
もう何も 悪い事は起こらないとは 思ってましたが、ハラハラドキドキでした(T▽T)
これを 切欠に お子ちゃま達だけの お出かけは 永遠に禁止だろうなぁ~
まぁ 仕方ないか!(;´д`)=3トホホ・・byebye☆
けいったん様
こんにちは~。
> いつもの保護者~ズじゃない!
> 戦士~ズが、カッコいい~♪
いつもとは違う保護者にしてみました(゚∀゚)
戦士になってみたww
かっこいい、のお言葉嬉しいです。
> もう何も 悪い事は起こらないとは 思ってましたが、ハラハラドキドキでした(T▽T)
>
> これを 切欠に お子ちゃま達だけの お出かけは 永遠に禁止だろうなぁ~
> まぁ 仕方ないか!(;´д`)=3トホホ・・byebye☆
永遠に禁止!!!
なんでしょうかね。
自分たちが付いてまわれなければ、別の部隊が登場しそうですよね(佐貫の部下とか…)
どこに行ってもいつも面倒(事件)を起こすお子ちゃまたちですから…。
コメントありがとうございました。
こんにちは~。
> いつもの保護者~ズじゃない!
> 戦士~ズが、カッコいい~♪
いつもとは違う保護者にしてみました(゚∀゚)
戦士になってみたww
かっこいい、のお言葉嬉しいです。
> もう何も 悪い事は起こらないとは 思ってましたが、ハラハラドキドキでした(T▽T)
>
> これを 切欠に お子ちゃま達だけの お出かけは 永遠に禁止だろうなぁ~
> まぁ 仕方ないか!(;´д`)=3トホホ・・byebye☆
永遠に禁止!!!
なんでしょうかね。
自分たちが付いてまわれなければ、別の部隊が登場しそうですよね(佐貫の部下とか…)
どこに行ってもいつも面倒(事件)を起こすお子ちゃまたちですから…。
コメントありがとうございました。
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