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BLの丘
真っ赤なトマト 1
2011-04-11-Mon  CATEGORY: 真っ赤なトマト
24時間営業のファミリーレストランは、社員のシフトを交代制で組んでいた。
副店長である熊谷孝朗(くまがい たかあき)は、早番遅番と割り振られた中で遅番にあたることのほうが多い。
退勤できるのは深夜か明け方。とはいえ、夜から朝までは専属である、契約社員のリーダーと呼ばれる責任者に店を任せられるのだが…。
その時々の混み具合などで、きっちりと決まった勤務時間もなく、バイトの突然の休みなどで休日返上させられることも多々あった。
こちらのレストランは、厨房内の責任は料理長にあり、店全体の責任を店長が担っている。
店の全てを任されているはずなのに、よほどのことがない限り店長でも料理長に口応え出来ない意味深なムードもあった。
料理についての云々は、専門である料理長のほうが詳しいから…ということらしい。
料理長も滅多に深夜にいることなどなく、代わりに2人の社員が交代で入っていた。

今日は深夜のリーダーが休日だったために孝朗は夜の9時から朝の9時までの勤務時間の予定だ。
大学に通っていた頃からアルバイトをしていて、そのまま社員になったという経歴で、入社からわずか4年で副店長という地位にあがっていた。
人の出入りが激しい業界で、転勤などを繰り返すうちにいつの間にかなってしまった…といった感じだった。
今の店に勤務するようになってからすでに2年の時が経ち、そろそろ異動かな、と思うこともある。
店舗はいくつもあったから、同じ店にずっといる、ということもない。
社員はアルバイトとは異なる制服を持っていた。
アルバイトがユニフォームである白のシャツに蝶タイ、腰に膝上までの黒のエプロンを身につけているのに対して、社員はネクタイとジャケットの着用が義務付けられていた。
ジャケットの存在は孝朗には有り難かった。
細腰であるため、どうしても頼りなさだけが強調されてしまう。おまけに実年齢にはみられない童顔だ。
良く動く黒い瞳とぽってりとした唇が丸顔の中に収められている。
バイト時代から、「そんな華奢な体で料理が運べるのか?」とよくからかわれたものだ。
最初、厨房のバイトを希望したのだが、人手が足りていたことと、水が入れば30キロの重さを越す寸胴鍋を持てないだろうと判断されたことがホールに入ったきっかけだった。
実際、空っぽの鍋でさえ「うっ」と呻いた過去があった。(厨房にいるパートの女性に笑われたのは言うまでもない)

孝朗よりも遅れて出社した厨房社員の本庄圭吾(ほんじょう けいご)が正面入り口から入店してくる。
基本的に裏口からの入退出は認められていない規則だった。
孝朗の姿を見つけると笑顔を向けてきた。
孝朗とは対照的に、日々の労働で鍛えられた筋肉隆々の男だ。
厨房にいるから余計に、なのだろうが、髪は短めに切りそろえられ、清潔感が漂っている。
自分と同じ年ということもあって、店の中でも随分と親しくしていた。
「タカ、今日、夜?」
客の手前もあってあまり無駄な会話はできないが、これくらいは挨拶のようなものだ。
「そう。9時までだって」
「おっ。上がり一緒じゃん。じゃあ終わったら寮で飲もうよ」
二人とも、会社側が用意してくれるアパートに住んでいた。
『寮』と呼ぶのは社員の癖のようなものだ。自分自身で住居を探して、他の社員と距離を持つ人間もいるが、孝朗も圭吾もそういったところに頓着はしていない。
というより、二人とも自分で探すのが面倒なだけだったが…。
「あぁ、いいよ。まぁ、上がれたらね」
客の流れは予測不可能だ。
もっとも忙しくなれば圭吾も店から出られる状況ではなくなるのだろうが。

深夜は昼間ほど客の出入りがあるわけでもなく、孝朗も常に客席の前にいなくて済んでいた。
アルバイトだけでも充分事たりる。忙しくなれば呼びにくるし、その前に厨房から声を掛けられて、表の状況を告げられることもある。
厨房からも客席の一部は見渡せたから、店の奥にある事務所にいる孝朗よりも把握しやすかった。
深夜勤務の場合、ほとんどが事務処理に費やされる時間となった。
来客数や出数などデータをしらべ、一日の売上金を確認するなど、やることはてんこ盛りとある。
その合間に食事をとったり、アルバイトの休憩をはさんだりとして、慌ただしく朝を迎えるのが常だった。

深夜0時を過ぎた頃、パソコン画面と向かいあっていた時にコンコンと事務所のドアが叩かれる音がした。
「ハイ?」
「タカ、忙しい?」
真っ白のコックコートに身を包んだ圭吾がひょっこりと顔を出す。
腰にはふくらはぎまである黒のロングエプロンを巻かなければいけないはずなのに、取り去られてラフな格好だった。
「んー。今発注のデータ送ってるとこだけど」
「あとどれくらい?メシ、一緒に食わない?」
お誘いが来るということは、圭吾が休憩に入ったのだろう。
まぁ、社員の休憩時間なんて、あるんだかないんだかのもので、特に0時以降の厨房は圭吾一人しかいない状態だったから、何をしていても分からなかった。
「もう送信、終わるよ」
「ホント?何食いたい?」
「うーん、なんか、軽いものがいいな。パスタとか…」
「もっとちゃんと力の付くもん、食えよー。こんなほっせー腰してさー」
近付いてきた圭吾がふいに背後から両手で孝朗の腰を掴んだ。
「わっ!!」
圭吾の体が飛び上がるように跳ねる。
「また痩せたんじゃねー?」
「変わってないよっ!!もうっ!いきなり触んないで!!」
「タカ、脇腹弱いよな」
孝朗の反応にクスクスと笑みを浮かべながら、圭吾は注文を聞いて事務所を出て行った。
圭吾は時々こうして孝朗に触れてくる。単なるスキンシップだとは理解できても、その度に敏感に反応する自分に、孝朗はいつも心臓をドキドキと鳴らしてしまった。
余裕綽々とした態度がより自分との差を突き付けてくるようで、少々の情けなさも浮かぶ。
この歳になるまで孝朗は誰かと付き合ったという経験がなかったから、人に気軽に触れるのも触れられるのも少しだけ抵抗があった。
未熟者のような気がして、差をつくづく感じさせられるのだった。

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コメント

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No title
コメントけいったん | URL | 2011-04-11-Mon 10:11 [編集]
タイトルが、可愛い♪

日を空けないでの 新連載!
どんな物語なのかな? タイトルみたいに 可愛いの?
真っ赤→(〃▽〃)ゞbyebye☆
Re: No title
コメントきえ | URL | 2011-04-11-Mon 12:08 [編集]
けいったん様
こちらにもありがとうございます。

> タイトルが、可愛い♪
>
> 日を空けないでの 新連載!
> どんな物語なのかな? タイトルみたいに 可愛いの?
> 真っ赤→(〃▽〃)ゞbyebye☆

すぐに止まりそうですが…連載。
どんな物語なんでしょうヽ(゚∀゚)ノ???
可愛いのはきっとタカなんでしょうが。
はい、すでに真っ赤になってしまったタカでございます。(真っ赤だったのかwww)
説明部分だけで終わってしまう1話目。
この後なにかが…きっと…たぶん…。
コメントありがとうございました。
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