圭吾が孝朗の部屋にやってきてからしばらくして、所沢と鳩ケ谷も姿を現した。
きっと圭吾が出てきた時の物音で目が覚めたのだろう。
散らかっているが、部屋にあがってもらおうとしたが、忙しいのが見て取れる所沢達は廊下でいいという。
「ゆうべはごめんね。せっかく来てくれたのに…」
孝朗が頭を下げると慌てたように所沢が首と手を振った。
「いえ、こちらこそ、お疲れのところに押しかけてしまって…。でも意外な熊谷さんの姿が見られたから得した気分です」
「意外?」
「あんな風に人前で寝ちゃうとは思っていなかったから…」
途端に孝朗の顔がかぁぁぁと赤らむ。醜態を見せた気分だった。
確かに初めてのことだ。それだけこれまでの生活に社員としての気を使ってきたことでもあったが…。
「あーゆー、熊谷さん可愛くていいっすよっ」
「可愛いって…、鳩ケ谷、おまえな…」
これが年上の元社員に向かっていう台詞だろうか…。
恥ずかしさの中に呆れを交えて見つめ返すと、ふたりともにっこりと笑顔を向けてくれた。
雰囲気が変わればもっと取っつきやすかった、ということなのだろう。
「おふたりともお元気で。またいつかお会いしましょう」
「うん。今までいろいろとありがとう」
「おう。おまえたちも頑張れよ」
「こういう熊谷さん、もっと早く知りたかったよー」
突然鳩ケ谷の腕が伸びてきたと思ったら、いきなりガシっと抱き寄せられて孝朗の髪に唇が付いた。
ハグのつもりなのだろうが、次に唇が向かった先が頬だったことに、圭吾がすぐさま声を荒げる。
「おいっ!!おまえなーっっ!!!!」
「いいじゃないですかー、最後くらいーっ」
鳩ケ谷は店でのじゃれあいの延長だと思っている。平然とした態度はこんなことに慣れきってしまっているせい…。
ドギマギしながら孝朗は鳩ケ谷の腕をほぐそうとした。
「もぅっ!店の外でこういうことしないのーっ!」
名残惜しげにしながらもすんなりと鳩ケ谷は離れていく。
所沢が関係をはっきりと認識してしまったのではないかと、瞳を見返すのを躊躇ってしまった。
二人は笑いながら去っていったが、残ったのは険悪なムードだけだった。
孝朗は部屋の中に引き戻される。まだ玄関だ。
苛立った圭吾の声が低く聞こえた。
「ほんっっとに、タカ、無防備過ぎ!!なんだよ、あれーっ」
「だ、だって…、突然のことで…」
「いつかタカ、誰かに襲われっぞっ。危機感持て、もっと!」
圭吾の腕に包まれて、圭吾が心配しているのが伝わってきた。
経験の無さが余計に意識をもたないのか、そんな姿を見ているのが、圭吾にとっては心配でたまらないのだろう。
「ごめん…」
抱え込まれて額や頬にくちづけが落とされていく。
啄ばむように唇を塞がれ、優しく口腔を撫でられる。
体を預けたことで、少しは圭吾の機嫌も直ったらしい。
昼間からこんな…と、孝朗は思いながら、ふと脳裏を過ったことがあった。
「あ、あのさ…、これって”間接キス”って言うの…?」
鳩ケ谷が触れたのは頬だったはず。そこにも今、圭吾も触れた。
孝朗の言葉に何かを思い出したような圭吾は、あからさまに眉間に皺を寄せた。
「あーっムカつくーっっっ!!!マジ、ムカつくーっっっ!!!」
子供みたいに喚く圭吾がなんだかいじらしいと感じた。
クスクスと笑い声をあげてしまえば、余計に怒られる。怒るというより拗ねるというべきか…。
挨拶の一つ、とでも思えれば少しは浮かばれるのかなぁと、孝朗はのんきなことを考えていた。
「ほら、引っ越し、引っ越し。圭吾も荷物片付けに行きなよ」
「あー、やるよっ!明日朝一で来てもらって、さっさと新居に行ってやるっ!!」
『新居』という響きに、孝朗はドクンと心臓を高鳴らせた。
そうだ、明日から四六時中一緒にいるような生活に変わるのだ。
誰かと付き合ったこともない孝朗には、それがどんなものになるのかも想像ができなかった。
何よりも照れくさい。頬がそっと染まる。
なんとか冷静になろうと努めるのにどこか逸る気持ちも抑えられない。
にほんブログ村
ぽちっとしていただけると嬉しいです。
12← →14
きっと圭吾が出てきた時の物音で目が覚めたのだろう。
散らかっているが、部屋にあがってもらおうとしたが、忙しいのが見て取れる所沢達は廊下でいいという。
「ゆうべはごめんね。せっかく来てくれたのに…」
孝朗が頭を下げると慌てたように所沢が首と手を振った。
「いえ、こちらこそ、お疲れのところに押しかけてしまって…。でも意外な熊谷さんの姿が見られたから得した気分です」
「意外?」
「あんな風に人前で寝ちゃうとは思っていなかったから…」
途端に孝朗の顔がかぁぁぁと赤らむ。醜態を見せた気分だった。
確かに初めてのことだ。それだけこれまでの生活に社員としての気を使ってきたことでもあったが…。
「あーゆー、熊谷さん可愛くていいっすよっ」
「可愛いって…、鳩ケ谷、おまえな…」
これが年上の元社員に向かっていう台詞だろうか…。
恥ずかしさの中に呆れを交えて見つめ返すと、ふたりともにっこりと笑顔を向けてくれた。
雰囲気が変わればもっと取っつきやすかった、ということなのだろう。
「おふたりともお元気で。またいつかお会いしましょう」
「うん。今までいろいろとありがとう」
「おう。おまえたちも頑張れよ」
「こういう熊谷さん、もっと早く知りたかったよー」
突然鳩ケ谷の腕が伸びてきたと思ったら、いきなりガシっと抱き寄せられて孝朗の髪に唇が付いた。
ハグのつもりなのだろうが、次に唇が向かった先が頬だったことに、圭吾がすぐさま声を荒げる。
「おいっ!!おまえなーっっ!!!!」
「いいじゃないですかー、最後くらいーっ」
鳩ケ谷は店でのじゃれあいの延長だと思っている。平然とした態度はこんなことに慣れきってしまっているせい…。
ドギマギしながら孝朗は鳩ケ谷の腕をほぐそうとした。
「もぅっ!店の外でこういうことしないのーっ!」
名残惜しげにしながらもすんなりと鳩ケ谷は離れていく。
所沢が関係をはっきりと認識してしまったのではないかと、瞳を見返すのを躊躇ってしまった。
二人は笑いながら去っていったが、残ったのは険悪なムードだけだった。
孝朗は部屋の中に引き戻される。まだ玄関だ。
苛立った圭吾の声が低く聞こえた。
「ほんっっとに、タカ、無防備過ぎ!!なんだよ、あれーっ」
「だ、だって…、突然のことで…」
「いつかタカ、誰かに襲われっぞっ。危機感持て、もっと!」
圭吾の腕に包まれて、圭吾が心配しているのが伝わってきた。
経験の無さが余計に意識をもたないのか、そんな姿を見ているのが、圭吾にとっては心配でたまらないのだろう。
「ごめん…」
抱え込まれて額や頬にくちづけが落とされていく。
啄ばむように唇を塞がれ、優しく口腔を撫でられる。
体を預けたことで、少しは圭吾の機嫌も直ったらしい。
昼間からこんな…と、孝朗は思いながら、ふと脳裏を過ったことがあった。
「あ、あのさ…、これって”間接キス”って言うの…?」
鳩ケ谷が触れたのは頬だったはず。そこにも今、圭吾も触れた。
孝朗の言葉に何かを思い出したような圭吾は、あからさまに眉間に皺を寄せた。
「あーっムカつくーっっっ!!!マジ、ムカつくーっっっ!!!」
子供みたいに喚く圭吾がなんだかいじらしいと感じた。
クスクスと笑い声をあげてしまえば、余計に怒られる。怒るというより拗ねるというべきか…。
挨拶の一つ、とでも思えれば少しは浮かばれるのかなぁと、孝朗はのんきなことを考えていた。
「ほら、引っ越し、引っ越し。圭吾も荷物片付けに行きなよ」
「あー、やるよっ!明日朝一で来てもらって、さっさと新居に行ってやるっ!!」
『新居』という響きに、孝朗はドクンと心臓を高鳴らせた。
そうだ、明日から四六時中一緒にいるような生活に変わるのだ。
誰かと付き合ったこともない孝朗には、それがどんなものになるのかも想像ができなかった。
何よりも照れくさい。頬がそっと染まる。
なんとか冷静になろうと努めるのにどこか逸る気持ちも抑えられない。
にほんブログ村
ぽちっとしていただけると嬉しいです。
12← →14
( ´△`)アァ-孝朗怒られちゃった。。。
しかも、とどめの一言(爆)
圭吾・・・この先が思いやられるね。。。
でも、これから四六時中新居でも職場でも一緒だから大丈夫かな?( ´艸`)ムププ
しかも、とどめの一言(爆)
圭吾・・・この先が思いやられるね。。。
でも、これから四六時中新居でも職場でも一緒だから大丈夫かな?( ´艸`)ムププ
らぅら様
おはようございます。
> ( ´△`)アァ-孝朗怒られちゃった。。。
> しかも、とどめの一言(爆)
常に怒られっぱなしの孝朗です(笑)
> 圭吾・・・この先が思いやられるね。。。
> でも、これから四六時中新居でも職場でも一緒だから大丈夫かな?( ´艸`)ムププ
一緒~♪ですが…。
心配尽きないよね~圭吾。
はい。どうなることでしょうヽ(゚∀゚)ノ
コメントありがとうございました。
おはようございます。
> ( ´△`)アァ-孝朗怒られちゃった。。。
> しかも、とどめの一言(爆)
常に怒られっぱなしの孝朗です(笑)
> 圭吾・・・この先が思いやられるね。。。
> でも、これから四六時中新居でも職場でも一緒だから大丈夫かな?( ´艸`)ムププ
一緒~♪ですが…。
心配尽きないよね~圭吾。
はい。どうなることでしょうヽ(゚∀゚)ノ
コメントありがとうございました。
| ホーム |