2ntブログ
ご訪問いただきありがとうございます。大人の女性向け、オリジナルのBL小説を書いています。興味のない方、18歳未満の方はご遠慮ください。
BLの丘
チョキチョキ 19
2011-06-19-Sun  CATEGORY: チョキチョキ
いつものように羽生を待つ閉店後だった。
更衣室に入ろうとする春日に、遠くから声が掛けられる。
「春日、圭吾君が終わったら事務所に来て。孝朗君たちを待たせるのは悪いから」
更衣室に入る前の厨房を挟んだ空間。なんだ?と人の目が春日と羽生の間を往復する。
いつも付き合ってくれる二人に申し訳ないと思うのは羽生も同じなのだろうが、隠し立てをしないこの性格は褒めるところなのか…。
「『春日』?」
真っ先に本庄が疑問の声を上げた。
それから納得したように「あ~」と頷いた。
「所沢相手かよ…。つか、羽生さん、手ぇ早過ぎ」
「け、圭吾…」
「羽生は昔から控え目な子が好きだったからな~」
珍しく越谷まで話に乗ってくる始末で、苦虫を潰したような羽生の顔が見えた。
過去の云々は暴露されて嬉しいものではない。
本庄相手には熊谷が制止の声を響かせるが、調理道具を片付けながら手も口も止まることがない厨房の人たちだった。
「ホントに?!越谷さん、それ先に言ってってばっ!!そうすればタカのこともすぐにバラしたのにっ」
「圭吾!!」
「熊谷君にまでちょっかいをかけていたのか…」
「なんか、根にもたれてるね」
「当たり前です」
「圭吾!!!!」

何やら雲ゆきの怪しい話ではあったけれど、皆が冗談を含めた反応でいるかぎり、本気のことではないのだと思える。
羽生が熊谷を気に入っていたのはどことなく知れてはいたけれど、自分と同じように見られていたとは驚きでもあった。
まぁ、そんなことを今更蒸し返すように文句を言う気にもならない春日だったが…。
羽生相手に小さく頷いて見せただけで、春日は更衣室に入り込んだ。
そうやってみんなの会話を打ち切らせたかったのかもしれない。
過去のことを問い詰めたくはないが、聞いていて気分がいいものではないのは確かだ。

後から続いてきた熊谷が、どこかオロオロしているように見えた。
「熊谷さん?」
「あ、ご、ごめんね…、圭吾が余計なこと言っちゃって…。えと、その…」
どうやら熊谷の中では、以前あったであろう確執を気にしているらしい。
誰もがふざけ半分に会話を進めていたのに、真面目に受け止めて気を揉めているのが実に熊谷らしかった。
春日はあえて明るい笑顔を向けた。
「熊谷さんと比べられたら俺なんか…。でも、熊谷さんに本庄さんがいてくれてよかった、って今は言えます」
そうでなければ、羽生の目にとまることもなかっただろう…。

本庄の名前を出した途端にはにかんだように睫毛を瞬かせる仕草が、年上ながら可愛いな、と思った。
こんなところに本庄も羽生も惹かれていくのか。
自分が羽生に、どのように映っているのかが心配であり不安を運んでくる。
気にしてはいない…と表面的には繕っても、内心ではやはり巣食うものがありはした。

羽生は本庄が上がったら二人を待たせずに…と言っていたが、結局、容赦ない本庄からの質問攻めにあって、更衣室から抜け出せなくなっている。
もちろん、そんなに深く突っ込んでくるわけではなかったが、昔からの気を許せている部分は本心を引き出してくれた。
隠すことなく話せる空間もありがたい。
自然と話が盛りあがってしまう人付き合いの良さが温かく染み込んできた。
ついさっき宿った心の闇も自然と消化されていく。

「まったく…。いつまで経ってもこないと思ったら…」
雑談に花を咲かせていたところに羽生がやってきた。
結局更衣室で3人過ごしていたことに些かの不満があるらしい。
「羽生さんてさー、超甘やかすタイプじゃない?」
「け、圭吾…」
「それは圭吾君だって変わらないでしょ」
「うちは『お仕置き』ちゃんとします」
「圭吾っ!!!!!」
何の話だ…と春日が首を傾げるところに、羽生の掌が頭上をポンポンと撫でた。
「まぁ、時と場合によってだね」
「そこ!大人の余裕?どこでも好きに出歩いていいけどしっかり手綱は握ってますって感じだ~」
「けいご~!!!」
羽生と本庄の掛け合いに、春日も熊谷もほんのりと頬を染める。
確かに全てを拘束しようとする本庄と、端から見守っているという羽生の性格は違う。
ただ、二人とも相手を思ってくれていることだけは変わらない。
本庄が上がったと分かりながらも、こうして更衣室で自由に過ごさせてくれるのは羽生の気遣いのようにも感じられる。
羽生よりもこちらの二人との付き合いの方が長い。
何もかも受け入れてくれる態度は、やはり春日の精神に余裕を与えた。
そして、そばにいてくれる…。
「さぁ、帰ろう」
羽生に促されて3人の腰が上がった。
そばにいられることの幸せ…。
本庄が熊谷と共にいたく、この店を選んだ理由が、今では良く分かった気がした。

にほんブログ村 小説ブログ BL小説へ
にほんブログ村
人気ブログランキングへ 
ぽちっとしていただけると嬉しいです。
そろそろ終わるかなぁ…。

BACK← HOME →NEXT
関連記事
トラックバック0 コメント2
コメント

管理者にだけ表示を許可する
 
No title
コメント甲斐 | URL | 2011-06-19-Sun 23:24 [編集]
ラブラブやな~
あっちもこっちも
いいなー
こんな職場で働きたい
目の保養&萌の補給に
毎日楽しいだろうな・・・
Re: No title
コメントきえ | URL | 2011-06-20-Mon 10:19 [編集]
甲斐様
こんにちは~。

> ラブラブやな~
> あっちもこっちも
> いいなー
> こんな職場で働きたい
> 目の保養&萌の補給に
> 毎日楽しいだろうな・・・

どっちみてもラブラブですね~。
いちゃいちゃは、越谷氏がけりを入れてくれることでしょう。
お料理はもちろん、萌えも補給できるレストラン♪。
美味しい所です。
コメントありがとうございました。
トラックバック
TB*URL
<< 2024/05 >>
S M T W T F S
- - - 1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31 -


Copyright © 2024 BLの丘. all rights reserved.