店に入ってきて注文を頼むのと同時なくらいに爆弾発言をしたのはなんとなく分かる。
「や、…めるって、一葉さぁ…。次の就職先、決まってんの?」
「あー、やー、まーぁ…。ないけど…」
未来はただのフリーターしかない。
落ち込みながら現実を伝えれば盛大な溜め息に迎えられた。
「かずはぁぁぁ…」
どこまでだらしない人間なのだと思われるのは耐え難かったし不甲斐なさは承知している。
それでも安住に背を押してもらった今、安心感もあって、これ以上苦痛の日々は送れなかったのだ。
自分の性格は確実に『営業』には向かない。
それは那智でも理解してくれることだと思う。
「まぁ、分かるけど…。こんなグズグズの性格で今までよくやっていたなって思うところもあるよ」
相変わらずキツイ発言だが的を射ているだけに文句も出ない。
「ん…。今さぁ、安住さんにコーヒーの淹れ方を教えてもらっているんだ。バリスタの資格なんて早々取れるものじゃないけど、基礎くらいは習って…。できたら喫茶店とかそういうところで働くのが向きそう…って思ってて…」
客を迎え入れる方が性格上合うような気がした。
コーヒーの淹れ方は安住を見ていて興味を持った程度だったが、いざやってみると奥が深くてはまっている。
安住と共通の話題が作れるという点でも惹かれた。
喫茶店で働く、とは安易な考えだったが、自分から押し掛ける『営業』よりはずっと良さそうに思えたし、安らいでもらえる空間を作るのは楽しそうだ。
実際にできるかどうかは分からないが、一つの手段として安住も「なんでもやってみればいい」と言ってくれる。
「安住さんも、ほんと心が広いよね。で、引っ越しすることにしたの?」
「だって家賃、払っていけなくなっちゃうんだもん」
「ま、収入がなくなるんだから当然かぁ。住める場所があって良かったって言うべき?でもうまくいっているんだ。安住さん、無理しそうにないから一葉が強請らなきゃ身体の関係、進展しないと思っていたけど意外とすんなりいったもんだね」
突然振られた話題に一葉の心臓は高鳴ってしまった。
これまで何もないとは那智は思っていないようだ。
付き合っている以上、身体の交わりは必然的に生まれるはずなのに、安住は強要してこなかった。
それはなんとなく淋しいものでもあったし、安心している部分もある。
まったく経験のない一葉にとって、未知の世界だけに怖い。
触れたい…と時々思いながらも幼稚な一葉はまだ大人の世界を開けないでいる。
「あ、あのさ…、…ねぇ…。そういうのって待つべき?それとも…あの、俺から何か言うの…?」
まるで子供の相談である。
口に出すこと自体が恥ずかしい。
だが同じ立場ある那智だから聞ける内容だった。
那智は徐に驚いていた。
「ね、一緒に住むのに、まだ何もなかったとか言うんじゃないよね…?」
「あ…、う…ん…」
「信じらんない…っ」
那智に頭を抱えられて一葉は返す言葉を見失った。
実際キスすら体験がないのだ。
身体の関係が合わないことは性格の不一致に匹敵し、別れる原因になるとは耳にしている。
いざ、身体を合わせる場面になった時、自分はどうなってしまうのだろう。
あまりにも幼すぎて放り出されるのではないだろうか。
想像したくない未来が頭を過って一葉はうろたえた。
強請らない自分がわるいのだろうか…。
「だって、『誘う』みたいなこと、俺できないよ~…」
「うん、俺もしないけど」
「じゃあ、何で先に進むの?」
「相手次第ってとこ?ヒサは強引だしもともと経験値高かったし。…そっかー、なんか分かる…。安住さん、無理強いする性格じゃないし、一葉からどうこうなんて間違いなくしないよね」
就職よりも難しい問題を投げつけられたようだった。
『恋人同士』になりたくてもなれない焦れったい関係をつづけているようでもある。
「ねぇ、那智ぃぃぃぃぃっ…っ」
「もう、無理っ!!こんな相談、俺にしないでっ」
「じゃあ誰にすればいいのっ?!」
顔を赤らめた那智に拒絶されて一葉はもうどうして良いのかわからなくなった。
そもそもこんな話題を口に出せるようになっている自分にも驚いているのだが。
「聞いてあげようか?」
カウンターの奥から洗いざらしの髪のままで登場した男に声をかけられて、一葉と那智の会話が止まった。
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ごっちゃになっていてすみません。
そして出てこなくてもいいのに勝手に動くうちのキャラです…。
こんなやつに相談したら何を教えられるのやら…。
「や、…めるって、一葉さぁ…。次の就職先、決まってんの?」
「あー、やー、まーぁ…。ないけど…」
未来はただのフリーターしかない。
落ち込みながら現実を伝えれば盛大な溜め息に迎えられた。
「かずはぁぁぁ…」
どこまでだらしない人間なのだと思われるのは耐え難かったし不甲斐なさは承知している。
それでも安住に背を押してもらった今、安心感もあって、これ以上苦痛の日々は送れなかったのだ。
自分の性格は確実に『営業』には向かない。
それは那智でも理解してくれることだと思う。
「まぁ、分かるけど…。こんなグズグズの性格で今までよくやっていたなって思うところもあるよ」
相変わらずキツイ発言だが的を射ているだけに文句も出ない。
「ん…。今さぁ、安住さんにコーヒーの淹れ方を教えてもらっているんだ。バリスタの資格なんて早々取れるものじゃないけど、基礎くらいは習って…。できたら喫茶店とかそういうところで働くのが向きそう…って思ってて…」
客を迎え入れる方が性格上合うような気がした。
コーヒーの淹れ方は安住を見ていて興味を持った程度だったが、いざやってみると奥が深くてはまっている。
安住と共通の話題が作れるという点でも惹かれた。
喫茶店で働く、とは安易な考えだったが、自分から押し掛ける『営業』よりはずっと良さそうに思えたし、安らいでもらえる空間を作るのは楽しそうだ。
実際にできるかどうかは分からないが、一つの手段として安住も「なんでもやってみればいい」と言ってくれる。
「安住さんも、ほんと心が広いよね。で、引っ越しすることにしたの?」
「だって家賃、払っていけなくなっちゃうんだもん」
「ま、収入がなくなるんだから当然かぁ。住める場所があって良かったって言うべき?でもうまくいっているんだ。安住さん、無理しそうにないから一葉が強請らなきゃ身体の関係、進展しないと思っていたけど意外とすんなりいったもんだね」
突然振られた話題に一葉の心臓は高鳴ってしまった。
これまで何もないとは那智は思っていないようだ。
付き合っている以上、身体の交わりは必然的に生まれるはずなのに、安住は強要してこなかった。
それはなんとなく淋しいものでもあったし、安心している部分もある。
まったく経験のない一葉にとって、未知の世界だけに怖い。
触れたい…と時々思いながらも幼稚な一葉はまだ大人の世界を開けないでいる。
「あ、あのさ…、…ねぇ…。そういうのって待つべき?それとも…あの、俺から何か言うの…?」
まるで子供の相談である。
口に出すこと自体が恥ずかしい。
だが同じ立場ある那智だから聞ける内容だった。
那智は徐に驚いていた。
「ね、一緒に住むのに、まだ何もなかったとか言うんじゃないよね…?」
「あ…、う…ん…」
「信じらんない…っ」
那智に頭を抱えられて一葉は返す言葉を見失った。
実際キスすら体験がないのだ。
身体の関係が合わないことは性格の不一致に匹敵し、別れる原因になるとは耳にしている。
いざ、身体を合わせる場面になった時、自分はどうなってしまうのだろう。
あまりにも幼すぎて放り出されるのではないだろうか。
想像したくない未来が頭を過って一葉はうろたえた。
強請らない自分がわるいのだろうか…。
「だって、『誘う』みたいなこと、俺できないよ~…」
「うん、俺もしないけど」
「じゃあ、何で先に進むの?」
「相手次第ってとこ?ヒサは強引だしもともと経験値高かったし。…そっかー、なんか分かる…。安住さん、無理強いする性格じゃないし、一葉からどうこうなんて間違いなくしないよね」
就職よりも難しい問題を投げつけられたようだった。
『恋人同士』になりたくてもなれない焦れったい関係をつづけているようでもある。
「ねぇ、那智ぃぃぃぃぃっ…っ」
「もう、無理っ!!こんな相談、俺にしないでっ」
「じゃあ誰にすればいいのっ?!」
顔を赤らめた那智に拒絶されて一葉はもうどうして良いのかわからなくなった。
そもそもこんな話題を口に出せるようになっている自分にも驚いているのだが。
「聞いてあげようか?」
カウンターの奥から洗いざらしの髪のままで登場した男に声をかけられて、一葉と那智の会話が止まった。
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ごっちゃになっていてすみません。
そして出てこなくてもいいのに勝手に動くうちのキャラです…。
こんなやつに相談したら何を教えられるのやら…。
那智くんのカレシの上司さんもいいご趣味ですよねこのお店の常連さんとは。
もちろん安住さんはとーっても紳士なんですから、清い関係ですよ那智くーん。
でも、一葉ちゃん、漸く自分の将来をまじめに考えるようになったのはいいけれど、相談する人は選ぼうよ。
お風呂上りの妙にすっきりしてしまったこの人のいうこと聞いちゃうと、キャラ変わって大変なことになるかも~
手取り足取り詳細なご指導いただけることは間違いないのですが・・・
一葉ちゃんのそういう方面の成長物語も楽しみにしています。
もちろん安住さんはとーっても紳士なんですから、清い関係ですよ那智くーん。
でも、一葉ちゃん、漸く自分の将来をまじめに考えるようになったのはいいけれど、相談する人は選ぼうよ。
お風呂上りの妙にすっきりしてしまったこの人のいうこと聞いちゃうと、キャラ変わって大変なことになるかも~
手取り足取り詳細なご指導いただけることは間違いないのですが・・・
一葉ちゃんのそういう方面の成長物語も楽しみにしています。
甲斐様
こんばんは。
> 那智くんのカレシの上司さんもいいご趣味ですよねこのお店の常連さんとは。
読み返してて、そういえばよく飲みに行く連中がいたなぁ…と思いついたまでです。
> でも、一葉ちゃん、漸く自分の将来をまじめに考えるようになったのはいいけれど、相談する人は選ぼうよ。
> お風呂上りの妙にすっきりしてしまったこの人のいうこと聞いちゃうと、キャラ変わって大変なことになるかも~
> 手取り足取り詳細なご指導いただけることは間違いないのですが・・・
> 一葉ちゃんのそういう方面の成長物語も楽しみにしています。
考えるようになりましたね。
同居するってことで心配も増えてきたのでしょう。
詳細なことを教えられてより一層オロオロしだしそうですよね。
気が向きすぎて新生活に支障が出ても…?!
というか、まさに『レベル違い』なので…。
一葉のあっちの面の成長物語ですかー。
うーん、長くなるなぁ、きっと…。
コメントありがとうございました。
こんばんは。
> 那智くんのカレシの上司さんもいいご趣味ですよねこのお店の常連さんとは。
読み返してて、そういえばよく飲みに行く連中がいたなぁ…と思いついたまでです。
> でも、一葉ちゃん、漸く自分の将来をまじめに考えるようになったのはいいけれど、相談する人は選ぼうよ。
> お風呂上りの妙にすっきりしてしまったこの人のいうこと聞いちゃうと、キャラ変わって大変なことになるかも~
> 手取り足取り詳細なご指導いただけることは間違いないのですが・・・
> 一葉ちゃんのそういう方面の成長物語も楽しみにしています。
考えるようになりましたね。
同居するってことで心配も増えてきたのでしょう。
詳細なことを教えられてより一層オロオロしだしそうですよね。
気が向きすぎて新生活に支障が出ても…?!
というか、まさに『レベル違い』なので…。
一葉のあっちの面の成長物語ですかー。
うーん、長くなるなぁ、きっと…。
コメントありがとうございました。
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