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BLの丘
策略はどこまでも 12
2009-07-06-Mon  CATEGORY: 策略はどこまでも
翌朝、会社に出勤すると、中條の機嫌は悪かった。だが、本気で怒っているものではなく、どちらかといえばいたずらを叱られた子供が拗ねているようにも見て取れた。
そっと、使われていない会議室に呼ばれると、意味もなく緊張感が漂う。中條の話そうとしている内容が分かったからだ。
数台の長テーブルが置かれているだけの部屋。折りたたみ椅子を出してくるわけでもなく、その長テーブルに腰をちょこんと乗せ、胸の前で腕組みをした中條が、遅れて入ってきた那智に咎めるような口調をした。

「なんだって昨日のうちに、安住に電話なんてしちゃうかな」
「感謝の気持は速攻で表せって中條さんが俺に教えたんですよ」
「しかも全部バラしてくれたし。おかげで僕の綿密なる計画が頓挫したじゃないか」
「えっ!?榛名との取引、ダメにされちゃったんですか!?」
雲行きの怪しい言葉が中條から漏れれば、不安感は急激に上がる。大きな目をさらに見開いて驚きの声を上げれば、落ち着け、と中條が掌を振って見せた。
「そうじゃなくてさ。榛名との取引は元々僕が担当することになっていたけど、ゆくゆくはさくらちゃんに任せようと思っていたんだよね。だけど、初めからそんな話をするとプレッシャーを感じて何にもできなくなっちゃう性格だからさ。どうしようか考えていたら、偶然にも安住から連絡が入って、これは使えるなって思いついた案件だったの。表向きの窓口として徐々に慣らせていけば、そのうち抵抗もなくなるだろうって。さくらちゃんがもう少し度胸のある子だったらあまり心配しなかったけど、これくらいのことで潰されちゃっても嫌だったからねぇ。昨夜、こってり絞られたから、今更何かを企てようとか思う気も失ったよ」
中條の全身から力が抜け、外国人がするような、肩をすくめられ掌を上に向けて首を少し傾けられれば、会議室に入ってきた時の緊張感がはらりと崩れ落ちた。
これみよがしに那智の口が開く。
「そんな気、起こさないでくださいっ。だいたい、『綿密なる計画』って…。悪巧みじゃないですか」
「なに?その失礼な言い方」
「安住さんだって、そんなの脅迫だって言ってましたよ」
「あいつは仕事柄、些細なことも犯罪言葉に置き換えようとするから」
そんな言葉は大げさだといった感じで、掌がぱたぱたと振られた。さらに中條からは大真面目に今後の計画を伝える報告がされた。
「さくらちゃんにとっても、悪い話ではないはずだよ。当面は僕が受け持つけれど、いつ引き継がれてもいいように、そのすべてにさくらちゃんを連れていくからね」
もう、冗談や軽はずみな口調では返すことのできない内容だと那智は悟った。

それからは、那智はかなりの忙しさに追われていた。
これまででも手に余しそうな得意先の他に、中條と手がける榛名建設との取引に本格的に参入したからだ。
実際には中條が全てを請け負っていたので、ただ黙って同行し、そのやり取りを見守る程度でいたのだが…。

一か月以上が過ぎ、仕事で忙しいという生活の中、日常にも変化が起きていた。
安住と中條を含める3人での一席を設けることはできなかったが、昼食の時間ならいつでも、という安住の言葉に誘われるように、時に那智は安住の家に訪れていた。
もちろん事前に、那智の得意先との時間を考えた上で、何時にコーヒーを飲みに立ち寄っても良いかを尋ねていた。
安住は自宅で客との打ち合わせなどを行っているので、来客のある時には行くことができない。
しかし、数日前に連絡を入れれば、例の定食屋で待ち合わせをするということもあった。

季節もだいぶ冷え込んできた10月の末、久しぶりに高柳から連絡のメールが入った。
『岩村がこちらに来るので、金・土と休みを取ったから、一緒に会わないか』というものだった。
那智は高揚する気持ちを抑えきれずに、すぐに『OK』と短い返事を打った。


ドタバタと仕事を終え、約束の時間に遅れながらも那智は待ち合わせの居酒屋に直行した。
すでに飲み始めていた高柳と岩村が向かい合って座っていた。
身長190センチを越える高柳と180センチ程度の岩村が向かい合って座っているのに、目線はあまり高低差がない。
そこに自分が入れば、明らかに見下ろされる存在となった。

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ようやく、会社編が終了!?
次は親友たちの酒盛り。
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策略はどこまでも 13
2009-07-06-Mon  CATEGORY: 策略はどこまでも
金曜日の夜は、店内はそれなりに混雑していた。
高く区切る仕切りなどない、座敷のテーブルが幾つか並ぶ程度の広くない店内で、高柳の存在は充分なくらいに目立っていた。
周りに座る女性陣が色めき立って二人の座るテーブルをチラチラ見ているのが、店を入った途端に分かった。

那智はかつて、これほどまでに人を惹きつける男を他に見たことがない。
高柳のシャープな顔立ちから放たれる二重の鋭い眼光。高い鼻を中央に、形良いものばかりがその周辺を飾っている。体育会系で鍛えられた厚みのある胸板、スラリと伸びた身長。一見、鋭角的な印象を持たせているのに、近づいてみれば圧倒感などなく、いたわる仕草があちこちに見られる。
高柳と高校生の時から同級生だったという岩村は、大学時代では見られなかった眼鏡をかけていた。遊び心を加えたブルーベリー色のセルフレームが、彼の知的な印象を和らげている。決して見劣りする顔立ちではないのに、高柳の前になれば全てが霞んでしまう気がした。
ある意味、可哀想にも思える。

二人のテーブルに近づいた那智は、高柳に言われるがまま隣に腰を下ろした。
「なっちーぃ、久しぶりだね」
正面に座っている岩村がニコニコと人の良い笑みを浮かべた。高柳とは違って、優しさを全面に見せる彼はとても気さくで、初対面でも違和感なく話せてしまう。
高柳とはまた違った意味で人から慕われるタイプだった。

「よう! もう、どれくらい会っていなかったんだっけ?…1年振り? 岩村も仕事大変そうだな」
「そういう、なっちもね。とうとう大手との取引開始だって?」
「え?なんでそんな話を…」
知っているのか…?なんていう疑問も、隣の色男を見れば、全てが解決しそうだった。
これまでにも、詳細こそ述べていないが、高柳とは電話やメールで色々とやりとりをしていた。その中には上司からいずれ預けられる気の重い仕事がある、などといった内容もあったりする。当然、口外するなという念を押した上で話した愚痴だった。

チラリと隣を見上げれば、我関せずといった雰囲気を作り上げた高柳が呑気にビールを呷っていた。
思わず口をすぼめて頬をぷくっと膨らませれば、岩村から宥めるような声が飛んだ。
「まあまあ、お互い、企業秘密はたくさんある身なんだし。時にはポロリと漏れるよね」
そんな岩村も大手銀行に勤め、来春からは海外転勤が決まっているという話だった。
岩村の信頼度の高さは、その口の堅さにも表れている。だから時折とても人には話せないような相談事も受けていたと聞く。
那智がこぼしてしまったことも、聞いた高柳が岩村に話してしまったことも、咎める雰囲気は微塵もないあやす言い方。
高柳にとっても、何を話しても安全と言われる領域だったからこそ、那智の話をしたのだと思えば、あまり怒れる気分にもなれなかった。
那智もそんな岩村に安心して、気心の知れた間柄に戻り、会っていなかった年月を埋めるかのように、話は色々な方向へ飛んだ。

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す、進んでいません…(汗
以前の告知が水の泡。
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策略はどこまでも 14 
2009-07-06-Mon  CATEGORY: 策略はどこまでも
話のほとんどは来年度から異動になる岩村の海外転勤のことで、彼の行き先がブラジルだと言われればまた驚いた。
年が明けてしまえばどうにも時間が取れずに、12月の多忙の最中であったが無茶だと分かっていても日本を離れる前に、皆と接しておきたかったから…と、あの同窓会を企画したらしい。

「まぁったくさぁ。地球の反対側だよ。次に日本に戻るのはいつ?って感じじゃない?片道丸一日くらいの時間がかかるって言うのに」
半ば愚痴とも聞こえたが、話しっぷりは未知なる世界に期待を馳せているようにも見える。彼が選ばれてその地に赴くことは言わずとも知れた。
「外国語、堪能な奴は世界一周コースじゃね?日本に戻ってくるの、定年後だったりして」
からかうように笑みを張り付けながら、低音ボイスが響く。
岩村は英語の他にスペイン語も完璧に話すことができた。新任地のブラジルはポルトガル語圏であるらしいが、スペイン語と似ているらしくどこまで通じるかは疑問らしい。
とはいえ、在学中から海外のあちらこちらを旅行しまくっていた岩村は、その他の語学も多少なりとかじっていて、基本のあいさつ程度なら理解できており、彼が話せる言語は未知数だ。

そのことを揶揄して高柳が言ったのだが、気にした様子のない岩村は肩をすくめた。
「こんにちは。ありがとう。が何カ国語言えたって、意味無いよ」
「お前が転勤するたびに招待されてやるから、航空券、送れよ」
「絶対に12月限定にしてやる」
この二人は顔を突き合わせるたびに、どうして嫌味の押収になってしまうのか…。まぁ、それが仲の良い証拠なんだろうと那智は思う。
こんな言い合いを繰り広げている時は、自分は口を挟むものではないと在学中に覚えた。一言言おうものなら、二人の矛先が自分に向かうのだと過去の経験で知っていた。
それこそ蜂の巣状態にされて、いいように言葉で弄ばれる。いつのまにやら話は全く関係ない方へ飛んでいて、時には丸めこまれて必要外のことを白状させられていたりするのだから、二人の話術は恐怖さえあった。

黙って二人の言葉遊びを聞いていると、ふと岩村に、そういえば…と話を振られた。
「ブラジルってコーヒー豆の原産国なんだって?なっち、コーヒー好きだったよね。赴任したら本場の豆を送ってあげるね」
突然高柳との会話を打ち切って自分を見られては、那智はキョトンとした。
同時に、コーヒーという単語から、頭の中に安住を思い描いていた。
「ほんとっ!?ありがとっ」
コーヒー好きと自他ともに認めれば、岩村の言葉は何よりうれしい。特にここ最近はインスタントではなく、きちんと挽いた豆を好むようになっていた。
それもそのはず。
那智が口にするコーヒーの大半は、安住の入れるものにあったのだから。
コーヒー豆の種類が多種多様にあることは安住に聞いた。そして彼は独自にブレンドをこなしていた。
実際、安住の所にお邪魔すること、数十回。同じ味のコーヒーが出てきたことは少ない。
これまでにも、ブラジル産と聞いたコーヒーが出てきたことはあったが、日本を離れていない安住がどういう経路で手に入れたかは知らない。
自分で分かるところから送られてくると思えば信用も置けたし、何よりその豆を安住が喜びそうな気がしてならなかった。
そんな話題から、つい那智は、安住の存在を口滑らした。
偶然とはいえ仕事でつながった関係のバリスタ。時折通う自宅。彼が醸し出す空間。

話を切り出した途端に、高柳と岩村が無言で目のやり取りをした気がした。それまで和やかだった雰囲気が即座に冷えていくのを感じた。
隣に座った高柳が
「那智」
と声をかけて、緊迫感が気のせいではないことを知った。
高柳は、普段は皆と同じく気安く『なっち』と呼んだが、機嫌の悪くなった時などは、その存在を表すかのように、『那智』と名前を呼び捨てにする。
機嫌の良い悪いに応じて名を呼ばれることに不平不満などまるでなかった那智はそのまま、特に理由を聞くこともなく長年をすごしていたが、そんな声が聞かれるたびに、何か悪いことをしてしまったのだろうかとひるむのだった。
「そいつんとこにいつも入り浸ってるって?」
いつもよりも低い声が降ってきた。

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ひぇっ。いつになったら…
こんなはずではなかったは(汗;滝汗
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策略はどこまでも 16
2009-07-08-Wed  CATEGORY: 策略はどこまでも
高柳の堂々たる体躯を見た後では、自分の体がいかに貧弱かを思わされる。バスルームの中、鏡に映った自分の体に、那智はがっくりと項垂れた。
今更身長はどうなる問題ではないと分かってはいても、ならば筋肉くらいなら、と思ってみたのだが、昔から何をしても筋肉が付きづらいのか、一度だって逞しい体になったことはなかった。
決して『もやしっこ』というほどではないのだが、とにかく比べる相手が悪すぎる。
気を取り直そうと、熱いシャワーを浴びた。髪を洗い、シャワーで流していると、カチャッという音が聞こえた気がした。
ふと振り返ってみれば、全裸の高柳がそこに立っていた。

先ほどまで、目に焼きついて離れなかった人物が、現実のものとして存在すれば、慌てた那智からは悲鳴にも近い声が上がる。
「なにしてんのっ?!」
「俺もシャワー浴びる」
「じゃ、じゃあ俺が出るまで待ってろよ」
「いいじゃん。時間短縮」
「ならねーよっ」

短い言い合いを繰り広げる間にも、狭いバスルームに入り込んだ高柳は、シャワーヘッドを取ると、那智の頭に向けた。
「早く流しちまえよ」
「ヒサっ!やめろって!!」
動揺しまくっている那智の言うことなど、全く聞く耳を持っていない高柳は、勝手に那智の髪に指を入れ、洗い流し始めた。

誰かと一緒に風呂に入るなど、何年振りだろう。
高校の修学旅行も、大学の卒業旅行も海外だったので、皆で風呂に入った記憶はない。そのことが余計に那智を不安に陥らせた。
高柳は平然としている。自分に沸き立つ羞恥心はおかしいのだろうか。

並んで立てば、身長差をありありとうかがわせられる。那智の視界は高柳の胸板で埋め尽くされた。
抗議をしようにも受け入れてもらえず、高柳は那智の体と自分の身体を洗い始めた。
「も、も、もーいー、もういいからっっ!!」
高柳の手が下半身にかかろうという頃、那智は必死で抵抗した。高柳のスポンジを持つ手をどうにか掴んで、それ以上の侵入を阻む。
顔を真っ赤にして、必死の形相で手を掴まれた意味を理解したのか、高柳は大人しく那智の手にスポンジを握らせた。
「べつにそんなに緊張することじゃないじゃん」
「俺はするのっ!!」

高柳に背を向け、素早く洗い終えると、シャワーで流してさっさとこの場から逃げようと思う。
背後で、どんな視線で自分の姿を見られているのかが、ものすごく気になる。が、振り向いて高柳の顔を見ることなんて今の那智にはできなかった。
「俺、先に出るっ」
うつむいたまま、顔を上げられずに、バスルームから撤退しようとしたのに。
狭いバスルームでは、高柳にどいてもらわないと自分がすり抜けるスペースすらないことを知った。
「どけって」
「俺ももう終わるし」
那智から受け取ったシャワーで自らの身体を流していた高柳が平然と答える。
まさかとは思うが、一緒に出て、一緒に着替えて…とやりたいわけじゃないよな…???
背の高い高柳が、手を伸ばしてシャワーヘッドを定位置に戻した。
その手がいきなり那智の腰を捕まえて引き寄せられる。
濡れた肌と肌が、しっとりとくっついた。

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眠気の中、しかも酔っ払いながらかいているので、もしかしたら後で訂正がはいるかも…です。
その時にはお知らせいたします。
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策略はどこまでも 17
2009-07-08-Wed  CATEGORY: 策略はどこまでも
何がなんだか分からなかった。
いきなり引き寄せられた那智の体が水の膜を作る高柳の肌に触れた。勢い余った額が、厚くて硬い筋肉の胸板に当たる。
力強い太い腕が那智の細い腰をグルリと抱え込んだ。
肩口に落とされた高柳の顔は見えない。
「ねえ那智、エッチしよう」

「はあぁぁっ?!」
突然の行動と想像もし得なかった言葉に目を剝いた。那智の頭では高柳の動きが何を意味しているのか、理解するのに時間がかかっていた。
「エッチしたい」
背中に回った腕に、さらに力強く引き寄せられると、腹に男の欲望が当たった。それが何を望むものなのかは容易に判断できる。
「な、な、な…何、…え?…えぇ?!」

軽くパニックに陥って、それでも状況を整理しようとするのだが、男女間の経験だってあまりなかった那智には到底余裕を取り戻すことなどできなかった。
顔を上げた高柳が、那智の尖った顎の先に指を添えると、白い首を大きく反らせた。見上げた格好の那智の瞳に、悲しげな高柳の視線が飛び込んでくる。
見たことのある悲哀を含んだ瞳だった。
那智の心の中で、パンドラの箱の鍵が開くような気がした。
「俺のこと、嫌い?」
低い声が降ってくる。湿ったバスルームの中で、高柳の声にはさらに妖しさが増したように聞こえる。
この質問はどういう意味で聞いているんだろうか…。友情…?それとも……?

「キスしてもいい?」
無言のままの那智に再び声が聞こえた。返事をする間もなく、那智の柔らかくて紅くぷっくりとした唇が高柳のものと重なる。
高柳の薄い唇の間から肉厚の舌が飛び出して、呆然とした那智の歯列を割った。
もはや声など出せる状態ではなかった。高柳の舌は逃げようとする那智を追った。舌を絡めとられ、歯列や頬肉まで全てを蹂躙される。こんなに激しいくちづけは自分でしたこともなかったし、もちろんされたこともなかった。
じんわりと高柳の熱を移されたように、口内がジンジンと疼いて痺れてくる。
百戦錬磨と言われたほどの高柳の相手をするには、自分は幼稚過ぎる気がした。高柳にとって相手にする者はどうやってきめられるのだろう…。

「…んふっ…」
抗う気力も失った頃、那智の膝がカクンと崩れると同時に、ため息のような吐息が漏れた。
自分で上げた声に、那智は驚いていた。何もかもが奪われるようで怖かった。
パンドラの箱が開いてしまったことを、この時那智は感じた。
呼吸も整わないほどに荒い息を繰り返す那智は、こぼれ落ちそうな涙を見られないように、そっと高柳の胸元に顔をうずめた。



大学に入ってしばらくしてから、高柳久志の存在を知った。周りにいた女子がやたらと褒め称えているので、嫌でも耳に入ってくる名前だった。
講義を受けているうちに、岩村卓也と仲良くなった。彼は誰とでも分け隔てなく親しくなっていたし、気さくな性格は那智とも合った。
彼の親しい友人の中に高柳がいて、最初那智は意外に思ったものだ。どちらかといえば品行方正といったタイプの岩村が、遊び歩いているような高柳と親しいことが意外だった。だが高校の時の同級生だと聞き、また那智が思っているほど高柳は遊び歩いてもいなかった。

高柳は入学当時、高校から続けていたラグビー部に入部していた。190センチを越える長身とその運動量で鍛えられた体つき、おまけに顔までいいときたら女子が放っておくはずもなく、彼の周りを勝手に女子が囲んでいただけらしい。

そのうちに、岩村が「サークルの先輩に頼まれたから人数合わせで合コンに参加してほしい」と言ってきた。特に予定もなかったし、色々なつながりを持つ一つの手段として、那智は参加を快諾した。
その席には高柳もいた。女子のほとんどの視線を集めていたため、参加した男からはブーイングもあったのだが、突如始まった王様ゲームで、高柳とのキスの相手を那智は見事引き当ててしまった。

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現実から離れていくこの回想シーン…
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