2ntブログ
ご訪問いただきありがとうございます。大人の女性向け、オリジナルのBL小説を書いています。興味のない方、18歳未満の方はご遠慮ください。
BLの丘
Present 11
2010-01-22-Fri  CATEGORY: Present
狭いユニットバスで身体の全部を洗ってもらって、指一本動かす気力も体力もなくこたつの中に潜り込んだ。
鹿沼の言った冗談にからかわれ、不貞腐れた。いくらなんでも本気でヤり倒す気はなかったようだ。あたりまえか…。
顔だけを出してぼけっとしている脇で、ベッドのシーツやらカバーらをまめにも鹿沼が洗濯してくれている。
取り替えのシーツ等を引っ張り出せば、「ちゃんと替え、もっているんですか?俺なんて朝洗って干して乾かして夜敷いての繰り返しですよ」と驚かれた。
「乾かなかったらどうするの?」
「天気が良い日に洗えばいいじゃないですか」
…梅雨の時期はどうしているんだよ…

付き合うことになろうがなんだろうが、絶対に鹿沼の家には行かないと決め込めば、「家の中を探索しても怒らないでくださいよ」と、ここに流れ込む気でいるらしい。
今まで付き合った男を家に連れ込まなかった理由が分かったような気がした。変に家探しされるのが嫌なのだ。
「なんかやっぱり鹿沼と合いそうにない気がしてきた」
「ここに来られるのが嫌ならうちに来てください。俺、何見られても全然気にしないし。むしろ自分を知ってもらうようで嬉しいです」
鹿沼の口調はいつまでたっても落ち着いていて諭されているような気がする。
拗ねている自分が子供のようで、余計に気が落ち込んできた。
振り返れば大学時代に付き合っていた男とは共に一人暮らしだったしお互いの家にも行き来をしていて楽しかった。
あんな雰囲気がまた作れるというのだろうか…。

「それとね。『鹿沼、鹿沼』って俺のこと苗字で呼ぶのは禁止にしますからね。一回呼ぶごとに一つのお仕置きを考えておきますから」
「そんなこと言われたって突然変えられないよ」
「それくらい意識してください。雅臣さん」
わざとらしく言われる名前にぼうっと燃え上がるように顔が熱くなって、こたつ布団の中に顔を埋める。
ベッドの中で幾度も言わされた名前と呼びかけられた名前を思い出して身体までこたつの熱ではないものに襲われそうだった。

夕方、鹿沼と一緒にキッチンに立っている自分がこれまでと別人になったような気がした。
会社であれこれと仕事の話はしてもプライベートなことを話す機会などそうあるものではない。
性格や物の考え方は承知していても普段の暮らしの中に入ればより違うのだと感じさせられるし、それに対して不満があっても人間を嫌いになる原因にはならないのだと知る。
「なんでぐちゃぐちゃに入れちゃうのっ?!」
「煮えたかどうだかかき混ぜちゃえば最終的には同じですよ」
夕食は海鮮鍋を作ろうという提案に頷いて、鹿沼一人をキッチンに立たせるのは抵抗があったから雅臣も隣にいた。やたらと扉を開けられないためにも…。
具材をカットしていた雅臣の手元から次々と土鍋の中に放り込んでいる鹿沼の姿を見れば思わず文句が出る。

今日はこんなことの繰り返しだった。
雅臣が丁寧に何かをやり遂げようとするところを鹿沼が要領よくサクサクと片付けていく。文句を言おうが、そのたびに今のように結果論を告げられて「でも…」と言いかければ唇を塞がれた。
これまで築き上げてきた”立場”を逆転され、まるで「俺に付いてこい」と言わんばかりの態度に悔しさはあるのに、心底嫌と思えないし納得させられている。あとは気分の問題だけだ。
鹿沼の言うことは理解できてもこればかりは性格なのだ。

普段、雅臣一人しかいない部屋がにぎやかだった。それが苦痛でも嫌でもないし、楽しいと感じているのは確かだ。
そして優しい…。
…このままではやばい…。
雅臣はへんな危機感の中にいた。

にほんブログ村 小説ブログ BL小説へ
にほんブログ村
間違えて記事をあげてしまって恐れ多いほどのかたがいらっしゃってくださって…
明日のぶんを早めにあげてしまったとお許しください。

10← →12
トラックバック0 コメント4
Present 12
2010-01-23-Sat  CATEGORY: Present
大晦日の夜が終わろうとしている。29日の夜、初めて雅臣の部屋に上がり込んで以来、鹿沼は雅臣の部屋から帰っていなかった。鹿沼の下着まで洗濯物として堂々と干されている。
年越し蕎麦も鹿沼が作ってくれた。エビ天やかきあげを添えてくれた蕎麦はこの数年の中で一番豪華だった。
それに加えて早目に用意されたおせち料理が、かつてとは違って綺麗に盛りつけられている。
伊達巻卵の切り方も均等だった。

自分の家に誰かがいるということが”普通”になりかけていた。
空気みたいに動く鹿沼の存在は邪魔とも思えない。
自分のことをより知ろうとする姿勢が見えて、それも気分の悪いものではなかった。

こたつに潜り込んだ雅臣の頭を、すぐ隣でひざまくらしてくれている鹿沼の大きな手が髪を梳いた。
「もう眠いんですか?」
紅白歌合戦もまだ終わっていないのに、鹿沼が持ってきてくれた日本酒を口にしてしまえば眠気が一気に襲ってくる。
鹿沼は「自分の前であれば好きなだけ酒を飲んでいい」と言ってくれた。
もともと酒席が嫌いではない雅臣は目の前にあるアルコールのほとんどが口にできる。しかし今後は制約がつきそうだ…。

酔いが回れば回るほど人肌が恋しかった。
「ねむい…」
「うん。じゃあ、今年もお世話になりました。起きたら新年のあいさつをしましょうね」
チュッと額に落された口付けが今年の最後の言葉だった。
抱いて欲しいと思いながら、少し物足りなかったけど雅臣はその場で眠りについてしまった。


「なに、これ…」
心の呟きが音になってあらわれる。

明らかな”不安”だった。

ベッドの中で寝返りをうった先にあるはずの温もりがなかった。
最初の夜こそ気付かずに共に寝たが、次ぐ日も何もしなくても一緒の布団の中にいた。
それがいまはない…。
移り香だけが自分の中に染み込んでいて離れていかない。
けど、本体がないのだ。
まだ明け方の、薄暗い中で、探し求める肉体があった。
「鹿沼?」
ベッドからおりて隣の部屋、リビングに行ってもバスルームに行っても鹿沼の姿がない。
玄関には靴もなかった。
「うそ…」
まるで夢でも見ていたようだった。
睦言を交わし愛されていたと思った瞬間は何だったのだろう。
確かに自分ははっきりとした返事もしてあげられなかった。
曖昧に誤魔化して、答えは『いつか好きになるかも…』というものだった。
そばにいればうざくて、離れてしまえば淋しい…、それが恋人なの…?

人はいなくなるのが当然だと思いながらも、縋っていた自分がいるのが分かる。
失いたくないと思うのは、失った時に知るものなのだろう。
「龍太?」
声に出して呼べる…。それほど親しんだ名前なのに…。
…捨てられる…!!
そう思った瞬間に心臓が口から飛び出しそうなほど激しく高鳴って、目の奥から滴が膨れ上がった。
「りゅうたっ!!」
幾度でもその名を呼んでやろうと思えるくらいに叫んだが返ってくる声はなかった。

たった一日や二日だった。初めて鹿沼の名前を呼んだ日々。
強引に雅臣の心を開き抉るように過去を捨てさせ『鹿沼龍太』という男を植え付けていった。
なのに、甘える腕が今は存在しない…。

にほんブログ村 小説ブログ BL小説へ
にほんブログ村
11← →13
トラックバック0 コメント2
Present 13
2010-01-24-Sun  CATEGORY: Present
好きなのかと問われたらハイとも答えられない。けど自分にとって必要な存在なのかと聞かれたら間違いなく「YES」と答えるだろう。
心の拠り所として成り立ち始めたからだ。
鹿沼は雅臣の心をこれでもかと揺す振った。

嫌な過去がよみがえる。あの胸の痛みをまた感じたくない。だから人に気持ちを寄せるのが怖いのに…。
すでに鹿沼に縋っている自分を一生懸命もとに戻そうと言い聞かせていた。傷つくのは嫌だ。

雅臣は何をする気もなくしてしどけなくこたつにうずくまっていた。
シーンと静まり返った部屋が当たり前だったはずなのにその静けさがたまらなく不安にさせる。テレビを付けたところで何一つ頭に入ってこなかった。
自分が何に脅えているのか認めたくなかった。
どこに行ってしまったのだろう。休み中は外に出ないくらいのことを言っていたのに…。
起きてから10分くらいが経っただろうか。

玄関の鍵が閉まっていたことすら知らなかった。
カチャリと解錠する音がして玄関のドアが開く。半開きだった玄関とリビングを繋ぐドアが空気の流れで動いて、帰ってきた鹿沼を招き入れた。
「あ。起きてた?」
明るい声はいつもと変わらない。雅臣を視界に入れると共に万遍の笑みがこぼれる。
ホッとしている自分がいた。
「あけましておめでとうございます」
新年のあいさつなどどうでもよく感じて、なんで自分が起きた時に傍にいてくれなかったのだろうかという自分勝手な我が儘が浮かんだ。
「……め、でと…」
一応、言葉に出してみたつもりだが、到底通じるようなものではないほど掠れて小さくて、そんな声を発してしまった自分に嫌気がさして俯く。
安心したと同時にまた涙が浮かびそうでこんなに感情的になっている自分が信じられなくもあった。
そんな雅臣の姿を見て、表情を曇らせた鹿沼が雅臣の傍に寄った。鹿沼に明らかに様子がおかしいと教えているようなものだ。
「どうしたの?…濡れてる」
雅臣の顔を覗き込んだ鹿沼が、濡れた睫毛に気付いて指を伸ばしてくる。頬を包まれるように持ち上げられて、視線を合わせることが怖くてスッと顔ごと反らした。
心の中まで全部見透かされそうだ。鹿沼は雅臣の欲しいものをくれるだろうと分かるだけに、それに縋ってしまう自分になりたくない。
「醤油が切れちゃったんです。淋しかった?」
「…あくびしたから」
雅臣が起きた時にいなかった理由を告げられ、更に気持ちまで当てられて拗ねた。
「素直じゃないですね」
クスッと笑った鹿沼の顔が近づいてくる。触れるだけの口付けをもらって、余計に淋しさが募った。

…いやだ…、堕ちるのは嫌だ…。

「お雑煮がいいですか?おしるこ?おしるこは即席のになっちゃうけど…」
正月らしいメニューを口ずさみながら鹿沼は言ったけど、そんな食欲もわかなかった。
なんだろう…淋しいほうがうえにたっている。
思わず手を伸ばして「もっと」と強請りそうな自分を押さえるのに必死だった。
こんなふうになる自分がおかしい…。

「雅臣さん?」
何の返事もしない雅臣を怪訝そうにまた鹿沼が見た。
「すみません。黙って出て行っちゃって。すぐに帰ってくるつもりだったから」
自分がどんな顔をしているのか分からないが余程不安そうな顔をしていたのだろう。鹿沼は立ち上がりかけた身体を止めた。
これ以上そばにいられたらもっと寄り添ってしまいそうで、そんな人間になることが怖くて鹿沼にそっと背を向ける。
「こんなに早く起きるとは思わなかったんで。でも嬉しいもんですね。雅臣さんに心配してもらえるなんて」
「…してないもん…」
心配なんてしていない…。自分に言い聞かせるようだった。

背中から抱きしめられたら、虚勢を張っていたものが崩れ落ちていくようだった。
鹿沼の温かさを身体の方が覚えてしまっている。
こらえていたはずなのにぷくっと浮く涙は鹿沼を思ってではないと言いたいのに声ももう出ない。
長いこと、人に甘えることのなかった心が一度味を知ったらその泥沼の中に戻りたがった。

にほんブログ村 小説ブログ BL小説へ
にほんブログ村
12← →14
トラックバック0 コメント1
Present 14
2010-01-25-Mon  CATEGORY: Present
「可愛いこと言う。もう朝食なんて抜きにしてベッドの中に行きたいんっすけど」
鹿沼の声は冗談とも本気とも区別がつかなかった。雅臣の気分を変えたくて言っているのか、本当にそう思っているのか…。
昨夜も遅くまで飲み食いしていたせいもあったし、朝から不安に晒されたせいで食欲などない。
抱かれてしまえば、このまま鹿沼に溺れてしまいそうだ。身体の隅々まで愛されたら心の中に宿った気持ちを認めてしまいそうで、その先は別れることに脅える日々になるのだろうか…。

「…鹿沼なんて嫌い…」
小さな小さな声が漏れる。こんなふうに雅臣の心を奪おうとする鹿沼が怖くて、不安を持たせる鹿沼を嫌えたらいいのにと思ってしまう。
「また『鹿沼』って言った。ちゃんと名前で呼んでくださいって言ったでしょ」
「呼ばない。もう二度と呼ばない…」
諭すように言われればまた拗ねる自分がいる。
背中から抱きしめられていた雅臣を覗き込むように鹿沼の穏やかな笑みを浮かべた顔がとなりにあった。
「黙って出て行っちゃったことは謝りますから。機嫌を直してください」
「やだ…」
「こんなに可愛い拗ねかたをされたら自制心なんて吹っ飛ぶんですけど…」
俯いていた顎の先をつままれて強引に向きを変えさせられる。振り返るような体勢にされ、上から覆いかぶさるように口付けられたらもう自分を守るものはなかった。

「は…ぁ…」
唇を離すのを嫌がったのはどちらだったのか…。けど雅臣が鹿沼を求めていたことは確かだった。どれだけ舌を絡め合っても物足りない。もっと強く自分を吸いつくして欲しいと思ってしまう。どうやったら不安と言うものはなくなるのだろうか。
「りゅ…た…」
こぼれた唾液を顎のほうから舐めあげられ、そっと呟く鹿沼の名前に、何かがきれたような鹿沼が雅臣をグイッと引き寄せた。
「マジでもうダメ。ごはん、あとっ」
え?と思った時には身体が持ち上げられていることに驚く。
「ちょ、ちょっとま…っ!」
「待てません、ダメです」
穏やかだった口調が少し怒っているようでもある。
「こんな煽られ方をされて何もしなかったら男が廃る」
ベッドに戻され覆いかぶさってきた鹿沼は獣のようだった。

煽ったつもりはないが自分でも求めていたのだから同じような事なのだろう。
深い口付けを与えられ、それでもまだどこかためらいのある雅臣に気付く。
「もっと素直になって。甘えてくれていいですから。安心してください。雅臣さんを傷つけることはしません。俺のことを信じて」
真摯な瞳が雅臣を覗き込んだ。全身で雅臣を愛しているのだと訴えられるような態度に、甘えてしまいたい気持ちと後悔したくない気持ちの狭間に追い込まれた。
何も答えられずにいる雅臣に鹿沼がたたみかける。
「雅臣さんが本当に俺のことを嫌いだっていうなら諦めます。でも少しでも可能性があるのなら、このまま傍にいたい。これ以上辛い過去に縛られて明るい未来が見られない姿を見るのは耐えられない。絶対に守ってやるから、その心を開いてください」
雅臣は心を震わせた。いつかやってくる別離の時のことを考えたら怖くて仕方ないのに、グイグイと引っ張る釣り糸に引っかかってしまいたい。
自分の力だけで泳ぐことに疲れているのかもしれない。
「…こわい…」
初めて明かした心の内を鹿沼は優しく包み込んだ。
「不安になんかさせない」

たとえどれだけの言葉を浴びても、雅臣がすんなりと自分を開くのには時間がかかりそうだった。
鹿沼はそれでもいいと言ってくれている。
「雅臣さんが俺を信じてくれるまでずーっと待っていますから」
「じゃあ、ずっと信じない」
「はい。他の所にも行かせませんけどね」

休暇に入る前から鹿沼は優しかったと思う。冗談ばかり言い合っていたけれど、どこにいたって楽しかった。
楽しみがこの家にもやってきたようだった。
にぎやかな部屋もいやじゃない。朝のシーンとした静けさを振り返れば、人の温もりがどれだけ心をとかしてくれるものかと思う。
素直に鹿沼のいいなりになるのは癪に障ったが、今朝の不安もまた味わいたくない物の一つだった。

にほんブログ村 小説ブログ BL小説へ
にほんブログ村
(このまま休み明けに行ってもいいですかね…?それとも今度はSじゃない鹿沼?元旦のまた朝っぱらから…)
13← →15
トラックバック0 コメント0
Present 15
2010-01-26-Tue  CATEGORY: Present
ビミョーにR18です。閲覧注意お願いします。

『ずっと信じない』…。
雅臣が呟いたその意味は『ずっと待たせる』ということにも等しいと分かっているのだろうか…。
そして待っていてほしいと願う心。ただの我が儘にすぎない。

初めて抱かれた時が少々(?)強引な流れだったことを振り返ると、今回の抱かれ方は慈しむような優しさがあった。
前回は雅臣に鹿沼を植え付けるようだったが、今回は雅臣の全てを包むような抱き方だった。
何度も口付けを繰り返され、柔肌を撫でられて、その肌に時折チクリと痛みが走る。鹿沼が自分の痕を雅臣の身体に刻んでいた。

「んっぅ…」
焦らすことは変わらなかったが、以前のような攻め立てるものとは明らかに違った。
鼓膜まで犯すような水音に羞恥心はどんどんと膨れ上がり、それと同時に雅臣の性が蜜を零し始める。
触れられると敏感な雅臣の身体は陸に揚げられた魚のように幾度も撥ねあがった。
醜態は散々晒したはずなのに、やはり厭らしい身体と言われるようで恥ずかしさが込み上げてくる。
上半身を舐めまわされて辿り着いた先、垂れた先走りを赤い舌先で掬われるのを見てしまった時、それがひどく官能的で顔が火照った。
「かぬ…」
「龍太」
「りゅ…、あっ」
訂正された名前を呼ぶ間もなく、性器が湿った口腔内に咥えられた。
「あ…あぁ…ん…」
女のような甘ったるい息が抜けていく。
巧みに動かされる、絡みつくように這わせられる舌には思わず腰が引けそうになる。
鹿沼の両手ががっしりと細い腰を掴んで動きを封じ、強く吸い上げられることに激しい焦りが生まれた。
「だ、だめ、だめっ!」
強い刺激をこのまま送り続けられたらどうなるのか想像は容易い。
鹿沼の髪に手が触れたが雅臣の今の力では添えるだけのものにしかならなかった。
生温かくねっとりとした鹿沼の口の中で、ビクビクと雅臣の分身が脈打つ。雅臣は口内への放出だけはどうにか避けたかったが、鹿沼の窄められた口できゅっと絞られるように数度扱かれたらあっけなく股間は限界を迎えた。
「ああぁぁっっ!!…や、…も、はなし…っ!!……んんっんっっ!!」
勢いよく白濁を零した性器をさらに二度三度と擦られ、綺麗に絞り取るように鹿沼は全てを口腔に収めて、ゴクリと喉を鳴らして飲みこんでしまった。
とても気持ち良かったことはあるにしても、それ以上の恥じらいがある。
「…あ…、やだ…」
まだ吐き出してくれれば少しは気分的に救われるところがあったのに…。
雅臣の下半身から顔を上げた鹿沼と視線が合うと、口角を上げてニッコリと笑ってから「ごちそうさまでした」と呟いた。
朝ごはんじゃないのだ…。

一気に全身を覆う羞恥心。呼吸を乱しつつ呆然としながらも恨みの言葉が漏れる。
「しんじ…らん、ない…。…うそ、…ばかっ」
恥ずかしくて照れてそっぽを向いてしまえば、その表情を追いかけてくる精悍な顔があった。
鹿沼の唇が頬に触れ、唇を奪われ、絡まった舌先に感じるのは苦い自分の味…。
それすらも、再び体を高める材料にしかならない。

「ねぇ…、またオリーブオイル、使ってもいい?それともごま油がいいですか?」
「ごま…っぁっ??!」
別に返事をしたわけではない。あまりにも意外なものの名前が飛び出したので繰り返してしまっただけだ。
あんな芳醇な香りのするものを使われた日には、二度とごま油を使った料理など食べられそうにないだろうと脳裏を横切っていった。
オリーブオイルだってあまり変わらないと言われればそれまでだが、とにかく香りの高さは比ではない。
今の行為に必要とされるものがないのだから仕方がないとはいえ、できることならどちらも使用してほしくはないと思うのは我が儘だろうか。
重なった身体の上に鹿沼の昂ぶりが触れれば、彼に我慢をさせているのは一目瞭然で、二択しかないのであれば前者を選ぶしかない雅臣だった。
「ちょっとまってて」
嬉々としてベッドを飛び降りた鹿沼の背中を、またもや見つめるしかない。
もう絶対にキッチンではあのオリーブオイルは使わない…と雅臣は心に決めた。

にほんブログ村 小説ブログ BL小説へ
にほんブログ村
14← →16
トラックバック0 コメント0
<< 2024/05 >>
S M T W T F S
- - - 1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31 -


Copyright © 2024 BLの丘. all rights reserved.