2ntブログ
ご訪問いただきありがとうございます。大人の女性向け、オリジナルのBL小説を書いています。興味のない方、18歳未満の方はご遠慮ください。
BLの丘
見下ろせる場所 24
2011-07-25-Mon  CATEGORY: 見下ろせる場所
『誓いのキス』…。
そんな深い意味はないのかもしれない。だけど純真な慎弥を見ていると…。
どうしたってそう捉えるし、邪気があるようには受け取れない。
自惚れているのは自分だけなのだろうか。
僅かに触れた温かさだけで、満たされていく自分自身も充分現金な人間だ。

突然のことに驚いてはいたが、いたって冷静でいようとするのは年上としてのプライドなのだろうか。
最初こそ、慎弥の好きにさせ、触れあわせただけだったが、離れていこうとする態度に、引き止めたくなる。
自分の思いも伝えたい…と。
同じ気持…、いや、もっとそれ以上…。燻っていたものを改めて暴かれるような焦りもあるのに落ち着く…。不思議だ…。

『帰ろう』…
そういったはずなのに、一度触れた体は容易く離れることなどできなかった。
慎弥から寄り添ってきたのだから尚更…。相手からのアプローチはこの上なく嬉しい。
この時がこんなに早く来るとは…。重なった唇はより深く相手を貪っていく。
自分の独りよがりな感情ではなく触れあえたことは、皆野の気持ちを余計に昂らせた。

逃がしたくない渦が皆野の中に湧きおこり、慎弥の腰に回した腕が二人にあった空間を埋める。
「あっ…っ…」
間を置こうとする体を抱え込むと慎弥の吐息が漏れた。皆野はその一呼吸すら惜しいように、再び塞いでしまう。
自らの舌先で唇を舐め、僅かに空いた隙間にそっと差し込む。
どう動こうかと悩む慎弥の戸惑いがちな舌が可愛い。それを捕らえると絡めて吸い付く。柔らかくて温かな口腔が皆野を迎え入れて馴染んでいく。
求めているのが自分だけではない、そう思える慎弥からの動きは余計に皆野を安堵させ、また火を付けた。
幾度も口腔を蹂躙し、時々息をつかせて、また我がものとして愛撫する。

最初こそ仕掛けてきたのは慎弥であるはずなのに、皆野の動きについていけなくなったと言わんばかりに、微かな抵抗が見えた。
赤子がくすぐられて「いやいや…」と身を捩る姿のようだ。
無理強いをする気はなかった皆野は束の間慎弥を解放したけれど、すぐに、ふっと口角を上げて再び目の前の唇を塞いだ。
今度は決して激しくもなく…、触れあわせる程度のもの…。
離れて正面から見つめる姿勢に変わると、途端に顔を赤くして俯いてしまう。
大胆な行動に出たのは慎弥の方なのに、過ぎてみれば羞恥で顔を上げられなくなっている。
仕掛けておきながらこれだ…。その態度がまた可愛らしすぎて愛おしさが増した。

「どうしたの?」
悪戯半分に聞いてみた。慎弥の言いたいことなんて百も承知の上で。…そして求められているのが自分だという自惚れを感じて…。
皆野が話しかけた言葉に、悪戯心を感じた慎弥が逃げ出そうとする。その腕を捕まえて「ごめんごめん」と笑いながら謝った。
すっぽりと腕の中に収まる存在は温もりを確かめるように大人しくなった。
皆野の気持ちも充分に感じ取っているようだ。
「誰にも触らせないから安心して。慎弥くんのためにあるんだから」
「…ぅん…」
そして特別な意味があるからこれほど慎弥に尽くせるのだと言い聞かせる。
キスをするのも、慎弥だからこそ…。

あまり遅くなっては…と、別れがたい気持ちを隠しながら1時間ちょっとのドライブを楽しむ。
次の約束もなかったけれど、気まぐれにやってくるだろう慎弥を思うと、決まっていない分、待ち遠しさが生まれるような気がした。
車内で会話は尽きることもなく、元気な姿に皆野も癒される。
わざと元気に見せているわけではないのが感じられてそれがまた嬉しくもあった。
ありのままの姿でいてくれることが何よりもホッとさせてくれるものである。

岩槻家は市の中心部より少し離れた郊外にあった。住宅街ではあるが、一軒ごとの間が広く、屋敷にしろ庭にしろ、充分な広さがある。
塀に囲まれていたから中までは見えなかったが、門扉を開けてもらおうと慎弥がインターフォンを押すのを窓を開けた状態で皆野は見ていた。
慎弥が中に入っていくのを見届けたら去ろう。それくらいの感覚でいたのだ。
だけどすぐに門が開かれることなく、しばらく待たされる。
これは慎弥も不思議だったようで、どうしたのかと首を傾げてモニターを覗きこんでいた。
たぶん家の中からはその様子が眺められているはずだ。
「征司くん?」
慎弥が問いかけるが反応がない。
「征…」
もう一度問いかけようとした時、門の内側で色々な物音が聞こえた。
玄関と思われしドアが開けられる音、走り寄ってくるような足音、すぐそばで聞かれる、手動で門を開けようとする音。
ガーッとスライド式の門が開くと、岩槻が立っていた。

にほんブログ村 小説ブログ BL小説へ
にほんブログ村
人気ブログランキングへ 
ぽちっとしていただけると嬉しいです。
関連記事
トラックバック0 コメント2
コメント

管理者にだけ表示を許可する
 
No title
コメント甲斐 | URL | 2011-07-26-Tue 00:04 [編集]
『門が開くと、岩槻が立っていた』
って、門限すぎた女子高生とお父さん!?
の図が浮かんできました
お兄ちゃんご立腹ですか
よその人の懐いちゃった仔猫にお仕置きですか
Re: No title
コメントきえ | URL | 2011-07-26-Tue 06:03 [編集]
甲斐様
おはようございます。

> 『門が開くと、岩槻が立っていた』
> って、門限すぎた女子高生とお父さん!?
> の図が浮かんできました
> お兄ちゃんご立腹ですか
> よその人の懐いちゃった仔猫にお仕置きですか

女子高生とお父さん。そんな感じですね~。
でもよその人に預けたのはお兄ちゃん自身ですからね~。
文句言われる筋合いはない、と言いたい(?)皆野です。
慎弥、ちょっとハメはずして遊びすぎましたか?!
お仕置き…ってここでお仕置きになったらさんぴ(モゴモゴ)になっちゃうことしか想像できませんでしたΣ( ̄□ ̄;)(←)
コメントありがとうございました。
トラックバック
TB*URL
<< 2024/05 >>
S M T W T F S
- - - 1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31 -


Copyright © 2024 BLの丘. all rights reserved.