お待たせいたしました。英人が先に書きあがっちゃったよ…
月曜日になるかと思ってたから良かったです。
涙で濡れた頬を撫でる手は冷たかった。先程までの鋭角的だった雰囲気が僅かに緩んだ気がする。
見る人を圧倒するような威圧感は相変わらずだが、涙を拭う手は危害を加えようとする者のものではなさそうだ。
薄そうな笑みを湛えてベッドの端に腰かけた男は、包み込むような大きな手で英人の柔らかな髪を一度だけ撫でた。
「見知らぬ奴に付いて行くことが危険だと小学生だって知っていることだろう。危機感や猜疑心を持たないと痛い目にあう。少しは学習しろ」
そう言って男は羽根布団を英人の体に掛けると、立ち上がり寝室を出ていった。
両手はまだ繋がれたままだったが、身体を痛めつけられることを今はされないようだ。
男の姿が視界から消えたことで幾分の落ち着きを取り戻したが、目的がわからない以上、不安は募るばかりだった。
隣の部屋には男の気配がある。
しばらくすると男が戻ってきた。手には何かの書類らしき物を携えていた。男はまたベッドに腰かけた。
「これが何だか分かるだろう?」
そう言って見せられたのは、過去に英人が書いた絵だった。絵とはいっても、ある住宅メーカーが新しく着手する新興住宅街のイメージをイベントの一部として公募したときのもので、それには小学生のいたずら書きから、プロの書く本格的な図案まであったという。
幾点かは実際販売される土地にて、展示もされたようだ。
以前英人は、誰でも応募できるという気軽さから書き上げた作品だった。
緑の中にモダンな建物が並び、建築用のイメージ図というよりは絵画的な印象の方が強かった。
これを持っているということは、この社の人間なのだろうか…?
英人はコピーされた一枚の紙面から男へと視線を移動させた。
「…ど、いうこ…と…?」
恐怖に苛まれていた英人の声は掠れていた。
「この絵をうちの会社で進めるプロジェクトのイメージのひとつとして使いたい。勝手にビジネスに使えば訴えられかねないからな。再びおまえの手に戻すには本人からの申請が必要になる。それにあの会社からこの絵の存在を消してほしいんだ」
予想もしていなかった答えに、英人の頭はこんがらがっていた。少なくともこんな状態で切り出される話ではない。
意味が飲み込めずに答えに窮していると男は淡々とした口調で事情を説明し出した。
「目的はこれを応募した社とほとんど変わらない。うちでも住宅地の新規開拓は行っている。ただうちはこの絵をきちんとしたCMの中で使用したい。それに、他にも何点か描いてもらいたいんだ。
おまえのことを調べていた時に、おまえが以前勤めていた会社の得意先でかなり高い評価を受けていたと聞いた。新人ということで大した仕事はしていなかったらしいが、才能を見出していた所はあったようだな。学生の時に新聞広告で賞を取ったこともあるようだし、うちとしてはその実力を見てみたいんだよ。
俺は自分が目を付けたものを誰かに取られるのは嫌なんでね。
うちの会社からこの絵が出れば、おまえの名前は嫌でもこの業界に知れる。その時におまえがフリーだったらたちまち狙われることになる。こうやって誰にでもホイホイくっついて行くようなヤツだからな。知らない間に誓約書でも書かされていそうだから、その前にうちで契約をしてやるよ。それと正式に発表がされるまでおまえの存在は伏せておきたい。さっきも言ったようにしばらくはここに滞在していろ」
英人は男の言うことが全く理解できなかった。あまりにも非現実的な話に、脳が拒絶反応を起こしたかのようだった。
たった一つだけ思えたことがある。
…この男の正体って…?
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またまた妄想の世界です。現実と比較して考えないでください…(汗
月曜日になるかと思ってたから良かったです。
涙で濡れた頬を撫でる手は冷たかった。先程までの鋭角的だった雰囲気が僅かに緩んだ気がする。
見る人を圧倒するような威圧感は相変わらずだが、涙を拭う手は危害を加えようとする者のものではなさそうだ。
薄そうな笑みを湛えてベッドの端に腰かけた男は、包み込むような大きな手で英人の柔らかな髪を一度だけ撫でた。
「見知らぬ奴に付いて行くことが危険だと小学生だって知っていることだろう。危機感や猜疑心を持たないと痛い目にあう。少しは学習しろ」
そう言って男は羽根布団を英人の体に掛けると、立ち上がり寝室を出ていった。
両手はまだ繋がれたままだったが、身体を痛めつけられることを今はされないようだ。
男の姿が視界から消えたことで幾分の落ち着きを取り戻したが、目的がわからない以上、不安は募るばかりだった。
隣の部屋には男の気配がある。
しばらくすると男が戻ってきた。手には何かの書類らしき物を携えていた。男はまたベッドに腰かけた。
「これが何だか分かるだろう?」
そう言って見せられたのは、過去に英人が書いた絵だった。絵とはいっても、ある住宅メーカーが新しく着手する新興住宅街のイメージをイベントの一部として公募したときのもので、それには小学生のいたずら書きから、プロの書く本格的な図案まであったという。
幾点かは実際販売される土地にて、展示もされたようだ。
以前英人は、誰でも応募できるという気軽さから書き上げた作品だった。
緑の中にモダンな建物が並び、建築用のイメージ図というよりは絵画的な印象の方が強かった。
これを持っているということは、この社の人間なのだろうか…?
英人はコピーされた一枚の紙面から男へと視線を移動させた。
「…ど、いうこ…と…?」
恐怖に苛まれていた英人の声は掠れていた。
「この絵をうちの会社で進めるプロジェクトのイメージのひとつとして使いたい。勝手にビジネスに使えば訴えられかねないからな。再びおまえの手に戻すには本人からの申請が必要になる。それにあの会社からこの絵の存在を消してほしいんだ」
予想もしていなかった答えに、英人の頭はこんがらがっていた。少なくともこんな状態で切り出される話ではない。
意味が飲み込めずに答えに窮していると男は淡々とした口調で事情を説明し出した。
「目的はこれを応募した社とほとんど変わらない。うちでも住宅地の新規開拓は行っている。ただうちはこの絵をきちんとしたCMの中で使用したい。それに、他にも何点か描いてもらいたいんだ。
おまえのことを調べていた時に、おまえが以前勤めていた会社の得意先でかなり高い評価を受けていたと聞いた。新人ということで大した仕事はしていなかったらしいが、才能を見出していた所はあったようだな。学生の時に新聞広告で賞を取ったこともあるようだし、うちとしてはその実力を見てみたいんだよ。
俺は自分が目を付けたものを誰かに取られるのは嫌なんでね。
うちの会社からこの絵が出れば、おまえの名前は嫌でもこの業界に知れる。その時におまえがフリーだったらたちまち狙われることになる。こうやって誰にでもホイホイくっついて行くようなヤツだからな。知らない間に誓約書でも書かされていそうだから、その前にうちで契約をしてやるよ。それと正式に発表がされるまでおまえの存在は伏せておきたい。さっきも言ったようにしばらくはここに滞在していろ」
英人は男の言うことが全く理解できなかった。あまりにも非現実的な話に、脳が拒絶反応を起こしたかのようだった。
たった一つだけ思えたことがある。
…この男の正体って…?
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