突然の申し出に伊佐は一瞬考えた。
自分のベッドで眠っている俊輔を目にした時、吉賀の中でどんな感情が生まれるのだろう。
津和野とのじゃれあいを見ただけで嫉妬の嵐に吹かれたような男だ。今は反省の色を見せているが、内心に込み上がってくるものまでは想像ができない。
同時に今後に残る記憶として留めさせることではないだろうと判断する。
見てしまったものはどうしたって記憶に残る。吉賀の中で燻る材料にしかならない。
「申し訳ないけれど、人を自宅スペースに簡単に案内できるほど俺の神経も図太くはないんだ」
口角を上げ誤魔化しと冗談、半分本心を混ぜて吉賀の申し出を断った。
もっともらしい理由は納得がいくのか、吉賀もガクンと項垂れる。
「そ…うですよね…」
いきなり他人を家にあげろというのも無茶な話、と気付いたように、吉賀は大人しく帰ろうと玄関口に向かった。
伊佐は少し申し訳ないな…と心の内で思っていたりする。
彼が思い悩み打ちひしがれている時に、何はなくてもくっついて一緒に眠っている時間があるわけだ…。
俊輔の容姿を思えば役得…とも言えるのだが…。もちろん聞かせられたことではない。
「俊輔のこと、よろしくお願いします…」
ペコリと頭を下げた吉賀に、「安心して。取って食うようなことはしないから」と冗談めかせば僅かでも敵意むき出しの視線が投げかけられる。
会わせなくて正解だった、と伊佐は内心で苦笑していた。
そしてこれは寮に戻した後もまた大変だろうな…と先のことを想像しては心配もしてしまう。
そこには『津和野も気の毒に…』という同情も混じっていた。
吉賀を送り出し一度寝室を覗きに行く。
伊佐が寝かしつけた時とは体勢が変わっていて、横向きに丸まるようになっていた。布団の端をしっかり掴んでいるところなど、赤ん坊が大事なぬいぐるみでも抱えているようだ。
本当に抱きしめたいものはなんなのだろう。
安らかに眠る俊輔の寝顔を見ては、ふっと笑みがこぼれる。
ベッドの端に腰かけた伊佐は、俊輔の髪を梳きながら頭を撫でた。
「ごめんね。王子様を追い払っちゃった。でも今よりももっと素敵な王子様になって俊くんを迎えにきてくれるはずだよ」
その時、俊輔も素直に彼に寄り添えられたらいいのに、という願望もあった。
顔を合わせて分かることもある。
吉賀のまっすぐな性格は重荷を背負う俊輔にはどこかで負担だったのかもしれない。
まっすぐすぎて、切りこまれてどうしたらよいのか分からず、結局すべてを拒絶することで自身を守ろうとしたのだろう。
抱えているものの一つでも相手に聞かせて共有できたら違った方向へと向かえる。
吉賀が変われる時までに、俊輔も変えてあげたい。
小さな思いが伊佐の中に渦巻いていた。
まだ会わせるのは早い…。
傷を負ってからわずか数日。治ったのは見た目のものだけだったとは伊佐のみが知る。
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ぽちっとしていただけると嬉しいです。
短いんですけれど視点切り替え、ちょうどキリがいいのでここで…。
150000名様ありがとうございました~ヽ(゚∀゚)ノ
自分のベッドで眠っている俊輔を目にした時、吉賀の中でどんな感情が生まれるのだろう。
津和野とのじゃれあいを見ただけで嫉妬の嵐に吹かれたような男だ。今は反省の色を見せているが、内心に込み上がってくるものまでは想像ができない。
同時に今後に残る記憶として留めさせることではないだろうと判断する。
見てしまったものはどうしたって記憶に残る。吉賀の中で燻る材料にしかならない。
「申し訳ないけれど、人を自宅スペースに簡単に案内できるほど俺の神経も図太くはないんだ」
口角を上げ誤魔化しと冗談、半分本心を混ぜて吉賀の申し出を断った。
もっともらしい理由は納得がいくのか、吉賀もガクンと項垂れる。
「そ…うですよね…」
いきなり他人を家にあげろというのも無茶な話、と気付いたように、吉賀は大人しく帰ろうと玄関口に向かった。
伊佐は少し申し訳ないな…と心の内で思っていたりする。
彼が思い悩み打ちひしがれている時に、何はなくてもくっついて一緒に眠っている時間があるわけだ…。
俊輔の容姿を思えば役得…とも言えるのだが…。もちろん聞かせられたことではない。
「俊輔のこと、よろしくお願いします…」
ペコリと頭を下げた吉賀に、「安心して。取って食うようなことはしないから」と冗談めかせば僅かでも敵意むき出しの視線が投げかけられる。
会わせなくて正解だった、と伊佐は内心で苦笑していた。
そしてこれは寮に戻した後もまた大変だろうな…と先のことを想像しては心配もしてしまう。
そこには『津和野も気の毒に…』という同情も混じっていた。
吉賀を送り出し一度寝室を覗きに行く。
伊佐が寝かしつけた時とは体勢が変わっていて、横向きに丸まるようになっていた。布団の端をしっかり掴んでいるところなど、赤ん坊が大事なぬいぐるみでも抱えているようだ。
本当に抱きしめたいものはなんなのだろう。
安らかに眠る俊輔の寝顔を見ては、ふっと笑みがこぼれる。
ベッドの端に腰かけた伊佐は、俊輔の髪を梳きながら頭を撫でた。
「ごめんね。王子様を追い払っちゃった。でも今よりももっと素敵な王子様になって俊くんを迎えにきてくれるはずだよ」
その時、俊輔も素直に彼に寄り添えられたらいいのに、という願望もあった。
顔を合わせて分かることもある。
吉賀のまっすぐな性格は重荷を背負う俊輔にはどこかで負担だったのかもしれない。
まっすぐすぎて、切りこまれてどうしたらよいのか分からず、結局すべてを拒絶することで自身を守ろうとしたのだろう。
抱えているものの一つでも相手に聞かせて共有できたら違った方向へと向かえる。
吉賀が変われる時までに、俊輔も変えてあげたい。
小さな思いが伊佐の中に渦巻いていた。
まだ会わせるのは早い…。
傷を負ってからわずか数日。治ったのは見た目のものだけだったとは伊佐のみが知る。
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短いんですけれど視点切り替え、ちょうどキリがいいのでここで…。
150000名様ありがとうございました~ヽ(゚∀゚)ノ
目に見える傷よりも見えない傷のほうが
治るのに時間がかかりそうです
伊佐先生と津和野先生は
俊輔にとっては味方で守ってくれる人だと思っても
吉賀にとっては丸ごと信じられる存在じゃないですから
「取って食う」ことはないといわれてもムカつくでしょうね
というか、些細な冗談にもかっとする余裕のなさが彼の状況なんだろうなと思ったらかわいく見えました
でも乱暴や暴走はいかんよ~
治るのに時間がかかりそうです
伊佐先生と津和野先生は
俊輔にとっては味方で守ってくれる人だと思っても
吉賀にとっては丸ごと信じられる存在じゃないですから
「取って食う」ことはないといわれてもムカつくでしょうね
というか、些細な冗談にもかっとする余裕のなさが彼の状況なんだろうなと思ったらかわいく見えました
でも乱暴や暴走はいかんよ~
甲斐様
こんにちは。
> 目に見える傷よりも見えない傷のほうが
> 治るのに時間がかかりそうです
心の傷、って結構根深いですよね。
意外なところで表れてしまったりして、そのたびに過去のことを気付かされたり…。
本人はもちろん、周りの人も改めて消えることのない闇を知るのでしょう。
> 伊佐先生と津和野先生は
> 俊輔にとっては味方で守ってくれる人だと思っても
> 吉賀にとっては丸ごと信じられる存在じゃないですから
> 「取って食う」ことはないといわれてもムカつくでしょうね
> というか、些細な冗談にもかっとする余裕のなさが彼の状況なんだろうなと思ったらかわいく見えました
> でも乱暴や暴走はいかんよ~
吉賀、何言ってもやっぱりお子様です。
感情のまま動いちゃうというか…。
それではいけないんだよって津和野にも伊佐にも言われているのにね。
いざってとき、さりげなく冗談でも言われたセリフにしっかり反応しちゃって(笑)
余裕がない状況。うん、そうですね。精神的にも結構きちゃってるとこだし。
伊佐に喰われないように頑張れ、吉賀ヽ(゚∀゚)ノ ←
コメントありがとうございました。
こんにちは。
> 目に見える傷よりも見えない傷のほうが
> 治るのに時間がかかりそうです
心の傷、って結構根深いですよね。
意外なところで表れてしまったりして、そのたびに過去のことを気付かされたり…。
本人はもちろん、周りの人も改めて消えることのない闇を知るのでしょう。
> 伊佐先生と津和野先生は
> 俊輔にとっては味方で守ってくれる人だと思っても
> 吉賀にとっては丸ごと信じられる存在じゃないですから
> 「取って食う」ことはないといわれてもムカつくでしょうね
> というか、些細な冗談にもかっとする余裕のなさが彼の状況なんだろうなと思ったらかわいく見えました
> でも乱暴や暴走はいかんよ~
吉賀、何言ってもやっぱりお子様です。
感情のまま動いちゃうというか…。
それではいけないんだよって津和野にも伊佐にも言われているのにね。
いざってとき、さりげなく冗談でも言われたセリフにしっかり反応しちゃって(笑)
余裕がない状況。うん、そうですね。精神的にも結構きちゃってるとこだし。
伊佐に喰われないように頑張れ、吉賀ヽ(゚∀゚)ノ ←
コメントありがとうございました。
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