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BLの丘
ただそこにいて 45
2011-10-08-Sat  CATEGORY: ただそこにいて
今、吉賀が発したことは俊輔自身のことなのだろうか…。
見開いた瞳が空を彷徨った。
伊佐の手に染められている現実は吉賀にとってどんなふうに映るものなのか…。
明らかにこれまでと変わってしまった『見栄えの良さ』というのは、確かな証拠として吉賀に突き付けられているのだろう。
俊輔を抱きしめていてくれる体が震えているのは、行き場のない感情を抱えているからなのか。
吉賀の腕に力が込められる。彼の思いが注ぎ込まれてくるようだった。
自惚れに近いけれど…。
本当は俊輔を手にしたいけれど、すでに話が決まった今、もうどうしようもないとまるで訴えてくるかのよう。
それは同時に、俊輔を諦める…、諦めるのだと自身に言い聞かせているようでもあった。
「…よ、し、…か…」
「俊輔がそう決めたんなら…。…そう思うけど、でもやっぱ、悔しくて…、どうにかしたくなる…。俺が全部の原因作ってるのに、嫌われたって仕方ないのに、でもまだ俊輔のこと、追いかけてる…。好きだよ…、好きだ…。ごめんな…、ごめんな、俊輔…」
思いを吐露してくる吉賀は激しい葛藤の渦の中でもがいているといった感じだ。現実を受け入れるものの、燻る想いは全身を蝕んでいく。俊輔が逃げを打ち伊佐の元に転がる状況は理解できても、そうなるまで突っ走ってしまった感情はすぐに抑え込めるものではない。
そして思いつめるものは、俊輔を再び恐怖に陥れるものとなるのではないかと、吉賀の中にあるのだろう。
だから離れようと試みるのだが、沸き上がる思いをどうにもできないでいる。
そのことが言葉と態度の端々にあらわれていた。

いろいろなものがぐるぐると俊輔の内心を駆け巡っていった。
今でも吉賀は自分を思ってくれていること。吉賀は素直に気持ちをぶつけてきてくれていること。
そして何故か真逆となった俊輔の感情が吉賀に伝えられていること。
吉賀の中では俊輔は吉賀を拒絶したままでいるのだ。
全ては語らない自分に原因がある。
「よし、か…。ちがう…」
蚊の鳴くような声がぽつりと漏れた。これ以上の誤解を持たせたままでいいのだろうか。自問自答した末に辿り着いた答え。
「吉賀、違うの…。伊佐さんは、確かに支払のこととかで色々あるんだけれど…」
「違うって?」
顔を上げた吉賀が真正面から俊輔に切りこんできた。
どこから話したらいいのだろうか。少なくとも一度は体を渡し、その手に堕ちたかけたことは吉賀に伝えない方が良いのはわかる。
また吉賀を煽るきっかけになってしまうはずだ。
だけど一度だけできっと今後の繋がりはない。その一度を誤魔化したら、借金の話はどう説明したらいいのだろう。
何もなく借金を肩代わりする話は、おかしな出来事だった。
吉賀が聞いたように、『身請け』という話が一番正当化されており…、当然その影に体の付き合いが含まれることなど、こういった人間を多く見てきた工場内の人にとって、当たり前のごとく想像されるものだった。
吉賀は受け入れられなくても伊佐は受け入れられたと思われるもの。
吉賀の脳内では、幾度も情交を重ねている俊輔と伊佐の姿が映りだされているのだろうか…。
想像しては悲しさに震える。
そう想像されているとしても、俊輔をまだ好きと言ってくれることに溢れだすものがある。
そんな人間ではないという思いが駆け抜けた。それと一緒に、伊佐が世間で言われるような軽々しい人間ではないと庇いたかった。
魔法の国に誘ってくれた人ではあるけれど、噂されるような酷いことをされた覚えは全く無い。

「俊輔…?」
黙ってしまう俊輔に被さるように聞いてくる吉賀の顔を見返す。
『素直になれ』と幾度も背を押された意味を噛みしめた。
一度突っぱねては今後の修復も難しくなる…と伊佐に諭された言葉も脳裏を過っていく。
吉賀に負担をかけたくなくて甘えられないかもしれないけれど、想っている気持ちは打ち明けるべきなのだ…。
進む道は…、また、誰かに相談すればいい。
そんな甘えを持てるようになったのも伊佐のおかげなのだろう。

「伊佐…さんには、確かに頼ったけど…」
ぼそっと話し始めた俊輔に真剣な眼差しで耳を傾けてくる。
促される形で俊輔は滅多に本音など吐露することがなかった唇を開いた。
「吉賀が、思っているようなものじゃない…。あの人…、俺が吉賀のこと、すき…って知ってて…」
「…っ?!…何?!何て!?俊輔、今、それっ…っ!!!」
飛びつかんばかりの勢いで吉賀は俊輔が発した言葉の意味を再度知りたがる。
自然と発してしまった中に、聞き捨てならないと思った台詞が含まれていて、だけど歩んできた行程が納得できないと驚かれて…。

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コメント

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No title
コメントけいったん | URL | 2011-10-08-Sat 15:38 [編集]
そうだよ!
これ以上 吉賀に誤解されたら 大変だよ!

俊輔と伊佐の関係を 吉賀に分かって貰うのは簡単じゃないけど 今話さなきゃ いつ話せるか!(。・ω・)(・ω・。)ネー

自然と言えた「好き」の言葉
吉賀を興奮させてるけど しっかり続きを話してね♪
アノネッ...゚.+:。(*-ω-)(-ω-*)゚.+:。...ウンウン ...byebye☆
Re: No title
コメントたつみきえ | URL | 2011-10-09-Sun 06:46 [編集]
けいったん様
おはようございます。

> そうだよ!
> これ以上 吉賀に誤解されたら 大変だよ!
>
> 俊輔と伊佐の関係を 吉賀に分かって貰うのは簡単じゃないけど 今話さなきゃ いつ話せるか!(。・ω・)(・ω・。)ネー

正直に色々と話さないとね~。
周りの大人はあることないこと、吹きこんでいるみたいですから(笑)

> 自然と言えた「好き」の言葉
> 吉賀を興奮させてるけど しっかり続きを話してね♪
> アノネッ...゚.+:。(*-ω-)(-ω-*)゚.+:。...ウンウン ...byebye☆

また吉賀が暴走しなきゃいいですけれどね。
人の話はちゃんと聞きましょう という過去の教訓は生かされるでしょうか。
しっかり二人で話しあっていただきたいものです。
コメントありがとうございました。
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