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BLの丘
ただそこにいて 51
2011-10-14-Fri  CATEGORY: ただそこにいて
迎えに来た伊佐は医務室に入った時は硬い表情をしていたものの、俊輔の姿を見るとホッとしたように頬を弛めた。
「また何かあったんじゃないかと思ったよ」
伊佐の言う『何か』がどんなものなのかは想像しがたいが、実際にあったのだから反論することもできない。
診療用のベッドを椅子代わりに座っていた俊輔は俯いてしまい、心配をかけたことを「ごめんなさい…」と謝った。
近づいた伊佐がとりあえずこの場では、「無事で良かった」とポンポンと頭上に掌を乗せる。
離れた場所で一日の整理をしていた津和野が盛大な溜め息をついていた。
「あんまり無事とも…ねぇ…」
その台詞に反応して伊佐の目つきが些かきつくなった。
「どういうこと?」
「仁多くんと会っていたらしいよ。それ以上のことを、この子は言わないんだよ」
だんまりを続けたことをチクリと津和野に責められるのは、津和野を頼りにしなかった嫌味なのだろうか。
寮の部屋で尋ねられて答えなかったことを津和野はそれ以上問うことはなかったが、親しい伊佐が来たので愚痴に変わったようである。
津和野が発することに伊佐も反応する。
「話をしたの?何を言われた?」
過去のアレコレを知る二人に相談するべきことなのは重々承知しているが、赤裸々に語ることなど俊輔にはできないでいる。
吉賀と気持ちを確かめあって嬉しいことなのに、身体が受け入れられなかったことが悲しい。
それより、再会早々体の関係に持ちこもうとした性急さを白状することか…。
ここで答えることには相変わらず抵抗があって俯いたままでいれば、「まぁいいや。帰ろう」と伊佐に促される。
「久し振りの仕事で疲れたよね。今日は早く休んだほうがいいよ」
「まさか、何も聞かないつもりかよ」
「言いたくないことを言わせる理由はないだろう」
「あのな…」
伊佐に任せると言っていたはずなのに、そのやり方に納得できないといった感じで津和野からはまたもや盛大な溜め息が零れ落ちた。
津和野にしてみれば明日からの業務に支障が出ると考えられていてもおかしくなく、はっきりさせたいことも多いはずである。
しかし、いつものごとく、伊佐は「慌てるな」という姿勢を崩さない。
こうやってふんわり包んでくれる雰囲気が余計に俊輔を安堵の世界へと誘う。

伊佐の家に戻った俊輔は、食事を取り、入浴を済ませ、テレビを見て寛ぐ…といった、普段と変わらない生活を送った。
伊佐は吉賀とのことは何も聞いてこず、仕事の調子はどうだったか、とか、体調に変化がないかと聞いてくる程度にとどまった。
聞かれなければ態度ですら表すことができない俊輔は、安堵と共に不安も抱いている。
先にベッドに入った俊輔だったが、眠ることもできず、今日起きた出来事を悶々とかかえて悩んでいた。
不安の原因は吉賀に嫌われるのではないか…ということだ。
あの場では吉賀は抱きしめてくれたけれど、相手を欲しいと思う欲求の一つ、性行為をきちんと行えないなら愛想をつかされるのではないかと…。
俊輔だって、伊佐と味わったようなあの気持ち良さを、吉賀と共に感じたいものがあった。
だけど求められるものは、完全に繋がる行為。
俊輔がソレをできないと、今日、確かな形で吉賀に教えてしまっていた。
どうして恐怖心が先にたってしまうのだろう…。それさえなければ、それさえ克服できれば…。渦巻くものが胸の中でざわざわと波を立てた。

遅れて入ってきた伊佐の気配に、俊輔の体が伊佐の方を向いた。
人肌を求めての単なる寝返りかと思ったらしい伊佐だったのだろうが、俊輔が声を上げたことで、「まだ起きていたの?」と驚かれる。
「伊佐さん…」
今一度呼びかけると、不安に揺れる俊輔を分かったように、体を抱き寄せてくれる。
「魔法は解けないから安心していいよ」

『かぼちゃの馬車に乗ったお姫様…。何の心配もしなくていいから。素直に楽しいとか嬉しいと感じたことを顔に出したり声にするんだ』

幾度も木霊した声が俊輔の心を解していく。
伊佐の前で”恥ずかしい”がないのは、一度体を預けてしまったからなんだろうか…。

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15日で『淋しい~』アンケ閉じます。時間は不明…。
意外と多くてびっくりしました。当初考えていた数だったら先着何名様…になってたかも…。
まぁ、いいから、さっさと作れ?!…汗…ハイ…
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コメント

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No title
コメントけいったん | URL | 2011-10-14-Fri 00:28 [編集]
俊輔と吉賀の間で起こったこと。。。
中々 言えないよね~(゚ω゚:)(。_。:)ウンウン

でもね、このままって訳にはいかないでしょ?

魔法使いの伊佐なら・・・ね!
ほら 俊輔、勇気を出して~

エイッ♪Ψ(●'∇')Ψ~~~・:*:・・:*:・・:*:・+☆...byebye☆
Re: No title
コメントたつみきえ | URL | 2011-10-14-Fri 07:10 [編集]
けいったん様
おはようございます。

> 俊輔と吉賀の間で起こったこと。。。
> 中々 言えないよね~(゚ω゚:)(。_。:)ウンウン
>
> でもね、このままって訳にはいかないでしょ?
>
> 魔法使いの伊佐なら・・・ね!
> ほら 俊輔、勇気を出して~
>
> エイッ♪Ψ(●'∇')Ψ~~~・:*:・・:*:・・:*:・+☆...byebye☆

そう簡単に口にはできないですよね。
ぶっちゃけて話ができるほど人生生きてもいないし。
まだまだウブな可愛い子です。
だからそこんとこは大人が上手に察してあげないと~。
俊輔も伊佐には気を許していますからね。
魔法使いさん、頑張っていただきたいものです。
コメントありがとうございました。
No title
コメント甲斐 | URL | 2011-10-14-Fri 10:25 [編集]
結局、俊輔くんも吉賀くんも二人とも恋をするには幼過ぎたんじゃないでしょうかね
もちろんプラトニックに恋しく思うのまではいいとして
その先は大人になってから…って感じで
それでも大人になりきれないから
抑えきれずにその先まで求めたり
欲しいならばと与えなくてはと思うところからすれ違ってる気がしました

そのへんいろんな経験している大人たちには
歯がゆいような微笑ましいような部分ありそうです
そろそろ魔法使いの杖の一振りはありませんか
Re: No title
コメントたつみきえ | URL | 2011-10-14-Fri 13:38 [編集]
甲斐様
こんにちは。

> 結局、俊輔くんも吉賀くんも二人とも恋をするには幼過ぎたんじゃないでしょうかね
> もちろんプラトニックに恋しく思うのまではいいとして
> その先は大人になってから…って感じで
> それでも大人になりきれないから
> 抑えきれずにその先まで求めたり
> 欲しいならばと与えなくてはと思うところからすれ違ってる気がしました
>
> そのへんいろんな経験している大人たちには
> 歯がゆいような微笑ましいような部分ありそうです
> そろそろ魔法使いの杖の一振りはありませんか

恋してくれるのはいいんですけれどね。
進む先が…。欲求のままに、憧れのままにって進まれちゃうと…。
えーと、一応23歳。大人の部類…?!
でも俊輔はビンボー生活から恋愛どころじゃなかったんですよね。
吉賀は…どうだったんでしょう。
しかしこの突発性は『大人になったつもり』の慌て方なんでしょうか。
まぁ、5年間寮で暮らしていたというのはお互い変わりませんが。
欲しいなら与える…。自分が与えたいって思わないとね。

魔法使い…。頑張ってほしいものです。
コメントありがとうございました。
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