「デカいベッドだよな~」
二人が並んで寝ても、二人揃って寝返りがうてる。三人でも余裕で寝られそうだ。
その中で俊輔は、吉賀の胸に額を付けてまどろんでいた。
バスルームで一度精を吐き出したというのに、吉賀の欲求は治まることもなく、ベッドでも二度イかされた。
体は疲れ切っていたが、人肌が心地良く離れ難い。
「うん…。寮に入れたら部屋が埋まっちゃうよね」
伊佐の家のベッドも大きかったが、違和感がなかったのは部屋が広かったからだろう。
自分たちの生活空間に入れるのは難しい。
「ベッドの上で生活するようになるよ」
「ふふふ」
そんな光景を思い浮かべては笑いが漏れる。
吉賀も笑みを見せて俊輔の額に唇を寄せた。
「でもさ。いつか寮出て、二人で暮らしていけたらいいな」
「え?」
想像もしていなかった理想を語られて驚き顔を上げた。
別に寮で暮らせと言われているわけではなく、独身の人でも通っている人はたくさんいる。常に顔を突き合わせるような環境が嫌だと思う人だっているのだから問題があることではないが、俊輔の脳内には『寮を出る』という人生計画はなかった。
「そりゃ簡単にはいかないだろうけれどさ。こうして一緒にいられたらいいなと思って…」
何もかもが与えてもらえるだけの寮の生活とは変わっていくだろう。
そこにかかる資金繰りなども関わってくる。そのことを吉賀は言っているのだろうが、それらを乗り越えても共にいたいという気持ちが伝わってくる。
「うん…」
『いつか』…。
それがいつになるのかは分からないが、目標になることが得られてほんわりと心が温かくなった。
暗く考えるばかりの生活だったのが、吉賀の存在で一転した。
ぎゅっと抱き締められて、俊輔からも手を伸ばす。
重なり合う唇は『いつか』を約束するもののようだった。
二人で一緒に暮らす…。それまではプチ贅沢でホテルを利用するようになった。
また津和野が「色々な部屋を利用して自分たちの新生活の参考にしたら?」などと入れ知恵してくれたおかげで、吉賀は張り切っている。
ホテルにあるような調度品を揃えられるとは思えないが、雰囲気が変わった部屋に迎え入れられるのは俊輔も楽しく感じられた。
最初津和野に言われたように、確かに『楽しめる』場所である。
出入りに少々気を使うところはあるけれど…。
月に一度は伊佐の前に顔を出す。
振り込みでも済まされる返済なのだが、元気な姿を見せてあげたい気持ちもあった。
もちろん吉賀も付いてくる。
伊佐に対して心配したところもあったけれど、伊佐は態度を一切変えないし、吉賀も過去のことと割りきったようだった。
広々としたリビングのソファに案内されて、用意されていたケーキと紅茶をいただく。
「俊くん、少しふっくらしたかな」
「え?太ったってこと?!」
「健康的じゃない。余裕を感じられていいけど。過度な増加は問題だけど今くらいはちょうどいいよ」
「うーん…」
「吉賀くんの影響もあるんだろうね。立派な王子様になってくれたようでお姫様は幸せですか」
伊佐は嬉しそうに笑ってくれる。
自分というものを押し込めて生きてきた日々から変わったことは俊輔自身が一番良く感じている。
その基盤を作ってくれた伊佐にも、引っ張っていってくれる吉賀にも感謝の気持ちは絶えない。
「解けない魔法の杖を手に入れたんだから幸せになるんだよ」
そう言って、伊佐は吉賀に「お願いするよ」と微笑んだ。
自分のことを気遣ってくれる人に出会えて、それだけでも充分なくらい幸せだと思う。
吉賀も伊佐も見守ってくれている。
どちらも失えない存在。
心の中でそっと願った。誰かと比べて特別な何かが欲しいというものではない。
『ただ、そこにいてくれればいい』…と。
―完―
にほんブログ村
ぽちっとしていただけると嬉しいです。
長くなりましたがお付き合いありがとうございました。
二人が並んで寝ても、二人揃って寝返りがうてる。三人でも余裕で寝られそうだ。
その中で俊輔は、吉賀の胸に額を付けてまどろんでいた。
バスルームで一度精を吐き出したというのに、吉賀の欲求は治まることもなく、ベッドでも二度イかされた。
体は疲れ切っていたが、人肌が心地良く離れ難い。
「うん…。寮に入れたら部屋が埋まっちゃうよね」
伊佐の家のベッドも大きかったが、違和感がなかったのは部屋が広かったからだろう。
自分たちの生活空間に入れるのは難しい。
「ベッドの上で生活するようになるよ」
「ふふふ」
そんな光景を思い浮かべては笑いが漏れる。
吉賀も笑みを見せて俊輔の額に唇を寄せた。
「でもさ。いつか寮出て、二人で暮らしていけたらいいな」
「え?」
想像もしていなかった理想を語られて驚き顔を上げた。
別に寮で暮らせと言われているわけではなく、独身の人でも通っている人はたくさんいる。常に顔を突き合わせるような環境が嫌だと思う人だっているのだから問題があることではないが、俊輔の脳内には『寮を出る』という人生計画はなかった。
「そりゃ簡単にはいかないだろうけれどさ。こうして一緒にいられたらいいなと思って…」
何もかもが与えてもらえるだけの寮の生活とは変わっていくだろう。
そこにかかる資金繰りなども関わってくる。そのことを吉賀は言っているのだろうが、それらを乗り越えても共にいたいという気持ちが伝わってくる。
「うん…」
『いつか』…。
それがいつになるのかは分からないが、目標になることが得られてほんわりと心が温かくなった。
暗く考えるばかりの生活だったのが、吉賀の存在で一転した。
ぎゅっと抱き締められて、俊輔からも手を伸ばす。
重なり合う唇は『いつか』を約束するもののようだった。
二人で一緒に暮らす…。それまではプチ贅沢でホテルを利用するようになった。
また津和野が「色々な部屋を利用して自分たちの新生活の参考にしたら?」などと入れ知恵してくれたおかげで、吉賀は張り切っている。
ホテルにあるような調度品を揃えられるとは思えないが、雰囲気が変わった部屋に迎え入れられるのは俊輔も楽しく感じられた。
最初津和野に言われたように、確かに『楽しめる』場所である。
出入りに少々気を使うところはあるけれど…。
月に一度は伊佐の前に顔を出す。
振り込みでも済まされる返済なのだが、元気な姿を見せてあげたい気持ちもあった。
もちろん吉賀も付いてくる。
伊佐に対して心配したところもあったけれど、伊佐は態度を一切変えないし、吉賀も過去のことと割りきったようだった。
広々としたリビングのソファに案内されて、用意されていたケーキと紅茶をいただく。
「俊くん、少しふっくらしたかな」
「え?太ったってこと?!」
「健康的じゃない。余裕を感じられていいけど。過度な増加は問題だけど今くらいはちょうどいいよ」
「うーん…」
「吉賀くんの影響もあるんだろうね。立派な王子様になってくれたようでお姫様は幸せですか」
伊佐は嬉しそうに笑ってくれる。
自分というものを押し込めて生きてきた日々から変わったことは俊輔自身が一番良く感じている。
その基盤を作ってくれた伊佐にも、引っ張っていってくれる吉賀にも感謝の気持ちは絶えない。
「解けない魔法の杖を手に入れたんだから幸せになるんだよ」
そう言って、伊佐は吉賀に「お願いするよ」と微笑んだ。
自分のことを気遣ってくれる人に出会えて、それだけでも充分なくらい幸せだと思う。
吉賀も伊佐も見守ってくれている。
どちらも失えない存在。
心の中でそっと願った。誰かと比べて特別な何かが欲しいというものではない。
『ただ、そこにいてくれればいい』…と。
―完―
にほんブログ村
ぽちっとしていただけると嬉しいです。
長くなりましたがお付き合いありがとうございました。
- 関連記事
お疲れ様でしたー
吉賀最後は王子様って言われて良かったねー
吉賀最後は王子様って言われて良かったねー
お姫さまは、王子さまと末永く幸せに暮らしたそうな...
あっそれから 心優しい魔法使いたち...
彼らも そんな二人を静かに いつまでもいつまでも見守ってくれたそうな...
めでたし~めでたし~♪ヾ(*^。^*)ノ いえぇ~い
完結お疲れさまです┏○ペコ...byebye☆
あっそれから 心優しい魔法使いたち...
彼らも そんな二人を静かに いつまでもいつまでも見守ってくれたそうな...
めでたし~めでたし~♪ヾ(*^。^*)ノ いえぇ~い
完結お疲れさまです┏○ペコ...byebye☆
長い連載、お疲れ様でした。
毎回、更新を楽しみにしていました。
もう少し二人の恋を眺めていたい、そんなキモチになりました。
ずっと、仲良く暮らして欲しいですね。
毎回、更新を楽しみにしていました。
もう少し二人の恋を眺めていたい、そんなキモチになりました。
ずっと、仲良く暮らして欲しいですね。
しろ様
おはようございます。
> お疲れ様でしたー
>
> 吉賀最後は王子様って言われて良かったねー
応援感謝です。
吉賀もようやく認めてもらえたようです。
俊輔が幸せそうにしているのが確認できたからね~。
伊佐も一安心ってとこでしょうか。
王子様、この後も頑張ってほしいです。
コメントありがとうございました。
おはようございます。
> お疲れ様でしたー
>
> 吉賀最後は王子様って言われて良かったねー
応援感謝です。
吉賀もようやく認めてもらえたようです。
俊輔が幸せそうにしているのが確認できたからね~。
伊佐も一安心ってとこでしょうか。
王子様、この後も頑張ってほしいです。
コメントありがとうございました。
けいったん様
おはようございます。
> お姫さまは、王子さまと末永く幸せに暮らしたそうな...
>
> あっそれから 心優しい魔法使いたち...
> 彼らも そんな二人を静かに いつまでもいつまでも見守ってくれたそうな...
>
> めでたし~めでたし~♪ヾ(*^。^*)ノ いえぇ~い
>
> 完結お疲れさまです┏○ペコ...byebye☆
めでたし~めでたし~♪♪の終了です。
人騒がせな王子と姫でしたが…。
魔法使い、今後もなにかと苦労がありそうな…予感?!
いやいや、温かく見守ってくれている、ということでね。
どんな事態でも請け負ってくれそうです。
ようやく完結しました♪
コメントありがとうございました。
おはようございます。
> お姫さまは、王子さまと末永く幸せに暮らしたそうな...
>
> あっそれから 心優しい魔法使いたち...
> 彼らも そんな二人を静かに いつまでもいつまでも見守ってくれたそうな...
>
> めでたし~めでたし~♪ヾ(*^。^*)ノ いえぇ~い
>
> 完結お疲れさまです┏○ペコ...byebye☆
めでたし~めでたし~♪♪の終了です。
人騒がせな王子と姫でしたが…。
魔法使い、今後もなにかと苦労がありそうな…予感?!
いやいや、温かく見守ってくれている、ということでね。
どんな事態でも請け負ってくれそうです。
ようやく完結しました♪
コメントありがとうございました。
ちー様
おはようございます。
> 長い連載、お疲れ様でした。
> 毎回、更新を楽しみにしていました。
>
> もう少し二人の恋を眺めていたい、そんなキモチになりました。
>
> ずっと、仲良く暮らして欲しいですね。
予想外に長くなりました(…途中まで行先が決まらずに書いていたから…汗汗)
でも無事完結してくれて良かったです。
二人の恋はまだまだこれから成長していくんでしょうね。
そしていつか狭い寮を出て、仲良く二人暮らししてくれると思います。
羽ばたいていくことでしょう。
コメントありがとうございました。
おはようございます。
> 長い連載、お疲れ様でした。
> 毎回、更新を楽しみにしていました。
>
> もう少し二人の恋を眺めていたい、そんなキモチになりました。
>
> ずっと、仲良く暮らして欲しいですね。
予想外に長くなりました(…途中まで行先が決まらずに書いていたから…汗汗)
でも無事完結してくれて良かったです。
二人の恋はまだまだこれから成長していくんでしょうね。
そしていつか狭い寮を出て、仲良く二人暮らししてくれると思います。
羽ばたいていくことでしょう。
コメントありがとうございました。
あー終わっちゃいました~
いろいろあったけど、
こうして二人が寄り添って仲良く生きていける未来が見えてきたので
よかったなーと思いました。
いつか、二人の愛の巣ができて
ささやかながらも幸せな家庭が築けますように…
そして、いくつになっても
津和野さんや伊佐さんも
同じように優しい眼差しで見守っていてくれるのでしょうね
長い連載お疲れ様でした
いろいろあったけど、
こうして二人が寄り添って仲良く生きていける未来が見えてきたので
よかったなーと思いました。
いつか、二人の愛の巣ができて
ささやかながらも幸せな家庭が築けますように…
そして、いくつになっても
津和野さんや伊佐さんも
同じように優しい眼差しで見守っていてくれるのでしょうね
長い連載お疲れ様でした
甲斐様
おはようございます。
> あー終わっちゃいました~
> いろいろあったけど、
> こうして二人が寄り添って仲良く生きていける未来が見えてきたので
> よかったなーと思いました。
>
> いつか、二人の愛の巣ができて
> ささやかながらも幸せな家庭が築けますように…
ようやく終わってくれました。
風邪をひくといろいろな事件が起こるんですね(笑)
でも思いが通じて、明るい未来が待ってる二人です。
いつか愛の巣が持てるといいです。
> そして、いくつになっても
> 津和野さんや伊佐さんも
> 同じように優しい眼差しで見守っていてくれるのでしょうね
>
> 長い連載お疲れ様でした
逞しい保護者がいてくれて二人も安心でしょう。
いつでも気にかけてくれて、今更恥ずかしがることもないだろうし。
初々しさがなくなりそうなのは……ちょっと淋しいですが。
コメントありがとうございました。
おはようございます。
> あー終わっちゃいました~
> いろいろあったけど、
> こうして二人が寄り添って仲良く生きていける未来が見えてきたので
> よかったなーと思いました。
>
> いつか、二人の愛の巣ができて
> ささやかながらも幸せな家庭が築けますように…
ようやく終わってくれました。
風邪をひくといろいろな事件が起こるんですね(笑)
でも思いが通じて、明るい未来が待ってる二人です。
いつか愛の巣が持てるといいです。
> そして、いくつになっても
> 津和野さんや伊佐さんも
> 同じように優しい眼差しで見守っていてくれるのでしょうね
>
> 長い連載お疲れ様でした
逞しい保護者がいてくれて二人も安心でしょう。
いつでも気にかけてくれて、今更恥ずかしがることもないだろうし。
初々しさがなくなりそうなのは……ちょっと淋しいですが。
コメントありがとうございました。
| ホーム |