和紀は宥めるように日生の髪を梳き続けた。
詳しく語らなくても、現状を把握している様子だ。
「ひな。行きたくないっていうのは、自分の方向性が見えないから?それともひなを追い詰めるものがあるから?」
そこまで言われてやはり和紀は状況を知っているのだと日生は未熟さを知った。
隠したところで見透かされるのは昔からだったが、ここまで言い当てられると何も言えなくなる。
通いたくない…、そう思わせる原因をすでに知るのだろう。
和紀の膝の上に頬を乗せて、…久し振りに和紀のそばでゴロゴロした。
抱かれている時とはまた違った”触れあう”優しさが感じられる。アノ時は、どこか冷たく感じる瞬間があったりするのだが、今は微塵もそんな雰囲気はない。
今漂う雰囲気の中に溺れてしまいたい衝動にかられる。
「すぐに結論を急がなくてもいいよ。休学はできるんだから。またひながその気になるまで身も心も休めばいい」
髪を撫で、背をさすり、幼かった時と何ら変わらない和紀の態度は日生の心を解していく。
まさかの答えに日生の方が驚かされた。
急いで卒業させたいのだと思っていたことを覆される。
言葉を返せば、ずっとこのままでいいと言いたいのだろうか。
周防が『働き口』と言ったことにも和紀は良い顔をしなかった。
今までと変わらない生活。なんの変化もなく、家の中にいること…。
その全てが『和紀に尽くすもの』に繋がるのだろうか。
だけど拘束されることでも嫌だとは思わない。和紀を待つ時間なのだと思えば…。
和紀と周防、二人のためになることを、と望みながら、心の奥底では和紀に仕えることを希望している自分がいる。
それがたとえ、後ろめたい立場だったとしても、離れることは考えられなかった。
「和紀くん…」
掠れるように漏れた声に、被さってきた唇があった。
始めは優しく啄ばむように、何度も食んだり吸い上げたりとする。そのうち、日生が受け入れていることを理解して、和紀の動きも大胆になっていく。
まだ昼間…。外には清音の存在があると分かるのに、止められないのは何故なのだろうか…。
「…、ん、…ふぅ…、わ、き…く、ん…」
僅かな隙間に漏れる声。
だけど、本当に、嫌ではないのだ…。
包まれて休まれる、守られているのだと深く感じることができる時…。
なにもかもを投げ捨てて和紀の腕の中に埋もれたくなる。
徐々に熱を持つ部分を知って、羞恥に体を捩らせた。
こんな時になんだと言われそうだ…。蔑まれたくはなくて逃げたいのに、いつの間にか体は押さえられていた。
その下で感じてしまうもの…。
「ひな、すっかり感じやすくなったな」
クスっと笑って和紀の体が離れた。
「…ぁ…」
温もりが遠ざかっていくようで、淋しさに見舞われる。
恥ずかしいことを言われているはずなのに、和紀の前では薄れてしまうのはどうしてなのだろう。
それより心を占めるのは甘えのほうだった。
「人の噂なんてすぐに消える。そんなことに構っていられるほどみんな暇でもないはずだから。すぐに辞めると決めないで時を待つのもいいんじゃないかな」
和紀は話をまとめた。
嫌なことをさせようとしないのは昔からだったが、わがままとしか言えない日生の今回の行動も包み込まれてしまう。
「うん…」
「親父に言いづらいなら俺から言うし。まぁ、ひな自身からどうしたいのかは問われるだろうけど」
それは当然のことだった。簡単に辞めるとか休むとか口にして実行してもらえる内容ではない。
和紀はあっさりと認めたが周防はどう反応するだろうか。
「和紀くん、会社に戻るんでしょ?」
「あぁ。今日はなるべく早く帰れるようにしてくるよ」
「そんな…。…いつも、ごめんね…」
決して蔑ろにしない応対には感謝するばかりだ。
寝転がったまま見上げると和紀が笑顔を浮かべて髪をくしゃくしゃと撫でる。和紀はもう一度額に唇を落とし、身を起こす。
「ひなはやりたいようにすればいいから」
和紀の言葉に落ち込んでいた気分が浮上していく。
一人ではどうにも考えがまとまらなかったが、和紀に言われただけで問題が解決した気分になれるのだから現金なものだ。
日生も起き上がって玄関を出ていく後ろ姿を見送る。
同じように見送りに出てきた清音も、日生の表情を見てはホッとしたようだ。
その時になって日生も落ち着きを取り戻したのか、空腹を訴えるお腹の音が鳴り響いた。
昼食も取らずに帰宅したことを思い出し、衝動的な行動を起こしたのだと振り返る。咄嗟のことに対応できずパニックに陥っていた。
日生の反応に清音が「まずは腹ごしらえですかね」とからかってくる。
和紀との間で問題解決してしまえば、深入りしてこないのが清音の良いところだった。
立場もあるのだろうが、周防たちが決めたことに口出ししてくることもない。だけど良い悪いをしっかりと教えてくれるまさに”お母さん”である。
和紀も同じように育ってきたと聞いたときはどことなく嬉しいと感じたものだ。
『家族』という絆で繋がっている気がしたから。
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ポチっていただけると嬉しいです。
カウンターのゾロ目踏む人いるかな…。
詳しく語らなくても、現状を把握している様子だ。
「ひな。行きたくないっていうのは、自分の方向性が見えないから?それともひなを追い詰めるものがあるから?」
そこまで言われてやはり和紀は状況を知っているのだと日生は未熟さを知った。
隠したところで見透かされるのは昔からだったが、ここまで言い当てられると何も言えなくなる。
通いたくない…、そう思わせる原因をすでに知るのだろう。
和紀の膝の上に頬を乗せて、…久し振りに和紀のそばでゴロゴロした。
抱かれている時とはまた違った”触れあう”優しさが感じられる。アノ時は、どこか冷たく感じる瞬間があったりするのだが、今は微塵もそんな雰囲気はない。
今漂う雰囲気の中に溺れてしまいたい衝動にかられる。
「すぐに結論を急がなくてもいいよ。休学はできるんだから。またひながその気になるまで身も心も休めばいい」
髪を撫で、背をさすり、幼かった時と何ら変わらない和紀の態度は日生の心を解していく。
まさかの答えに日生の方が驚かされた。
急いで卒業させたいのだと思っていたことを覆される。
言葉を返せば、ずっとこのままでいいと言いたいのだろうか。
周防が『働き口』と言ったことにも和紀は良い顔をしなかった。
今までと変わらない生活。なんの変化もなく、家の中にいること…。
その全てが『和紀に尽くすもの』に繋がるのだろうか。
だけど拘束されることでも嫌だとは思わない。和紀を待つ時間なのだと思えば…。
和紀と周防、二人のためになることを、と望みながら、心の奥底では和紀に仕えることを希望している自分がいる。
それがたとえ、後ろめたい立場だったとしても、離れることは考えられなかった。
「和紀くん…」
掠れるように漏れた声に、被さってきた唇があった。
始めは優しく啄ばむように、何度も食んだり吸い上げたりとする。そのうち、日生が受け入れていることを理解して、和紀の動きも大胆になっていく。
まだ昼間…。外には清音の存在があると分かるのに、止められないのは何故なのだろうか…。
「…、ん、…ふぅ…、わ、き…く、ん…」
僅かな隙間に漏れる声。
だけど、本当に、嫌ではないのだ…。
包まれて休まれる、守られているのだと深く感じることができる時…。
なにもかもを投げ捨てて和紀の腕の中に埋もれたくなる。
徐々に熱を持つ部分を知って、羞恥に体を捩らせた。
こんな時になんだと言われそうだ…。蔑まれたくはなくて逃げたいのに、いつの間にか体は押さえられていた。
その下で感じてしまうもの…。
「ひな、すっかり感じやすくなったな」
クスっと笑って和紀の体が離れた。
「…ぁ…」
温もりが遠ざかっていくようで、淋しさに見舞われる。
恥ずかしいことを言われているはずなのに、和紀の前では薄れてしまうのはどうしてなのだろう。
それより心を占めるのは甘えのほうだった。
「人の噂なんてすぐに消える。そんなことに構っていられるほどみんな暇でもないはずだから。すぐに辞めると決めないで時を待つのもいいんじゃないかな」
和紀は話をまとめた。
嫌なことをさせようとしないのは昔からだったが、わがままとしか言えない日生の今回の行動も包み込まれてしまう。
「うん…」
「親父に言いづらいなら俺から言うし。まぁ、ひな自身からどうしたいのかは問われるだろうけど」
それは当然のことだった。簡単に辞めるとか休むとか口にして実行してもらえる内容ではない。
和紀はあっさりと認めたが周防はどう反応するだろうか。
「和紀くん、会社に戻るんでしょ?」
「あぁ。今日はなるべく早く帰れるようにしてくるよ」
「そんな…。…いつも、ごめんね…」
決して蔑ろにしない応対には感謝するばかりだ。
寝転がったまま見上げると和紀が笑顔を浮かべて髪をくしゃくしゃと撫でる。和紀はもう一度額に唇を落とし、身を起こす。
「ひなはやりたいようにすればいいから」
和紀の言葉に落ち込んでいた気分が浮上していく。
一人ではどうにも考えがまとまらなかったが、和紀に言われただけで問題が解決した気分になれるのだから現金なものだ。
日生も起き上がって玄関を出ていく後ろ姿を見送る。
同じように見送りに出てきた清音も、日生の表情を見てはホッとしたようだ。
その時になって日生も落ち着きを取り戻したのか、空腹を訴えるお腹の音が鳴り響いた。
昼食も取らずに帰宅したことを思い出し、衝動的な行動を起こしたのだと振り返る。咄嗟のことに対応できずパニックに陥っていた。
日生の反応に清音が「まずは腹ごしらえですかね」とからかってくる。
和紀との間で問題解決してしまえば、深入りしてこないのが清音の良いところだった。
立場もあるのだろうが、周防たちが決めたことに口出ししてくることもない。だけど良い悪いをしっかりと教えてくれるまさに”お母さん”である。
和紀も同じように育ってきたと聞いたときはどことなく嬉しいと感じたものだ。
『家族』という絆で繋がっている気がしたから。
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出たよ!和紀の過保護っぷりがぁ~今更ですけどね...┐(^~^;)┌
でも日生が、落ち着いてくれて安心!
さすが、和紀は ひなの特別な存在ですね♪
今回のひなに起こった出来事、和紀が ひなに言った言葉に 周防パパは、どう思うのか。
周防パパ、冷静なご意見をお願いします!
どうぞ宜しゅう(o^▽^)o)ペコッ...byebye☆
でも日生が、落ち着いてくれて安心!
さすが、和紀は ひなの特別な存在ですね♪
今回のひなに起こった出来事、和紀が ひなに言った言葉に 周防パパは、どう思うのか。
周防パパ、冷静なご意見をお願いします!
どうぞ宜しゅう(o^▽^)o)ペコッ...byebye☆
ちーさん♪
ひなの保育園の件ですが...
あの保育園は、ちょっと年齢的に ひなには まだ早い気がするのですが
ここは きえ様に頑張って頂いて 託児所or乳児院でも作って貰った方が いいのではないでしょうか。
産婦人科から墓場まで~ですd(o^-^o) ウヒッ♪
ちーさん、きえ様、どう思われます?
o(´⑧`)o バブーbyebye☆
ひなの保育園の件ですが...
あの保育園は、ちょっと年齢的に ひなには まだ早い気がするのですが
ここは きえ様に頑張って頂いて 託児所or乳児院でも作って貰った方が いいのではないでしょうか。
産婦人科から墓場まで~ですd(o^-^o) ウヒッ♪
ちーさん、きえ様、どう思われます?
o(´⑧`)o バブーbyebye☆
やっぱり | URL | 2012-02-01-Wed 21:10 [編集]
ここは、清音さんか!
親子は甘やかすだけだからなあ。
お兄ちゃん、甘やかし過ぎ。
けいったんさま。
きえさま。
きえさんも早いって言ってましたねえ。
私、何だか甘く見てました。
だって、あまりにも子供なんですもん。
けど、彼等はちゃんとした大人でしたねえ。社会人だった(゜ロ゜)
乳児園?あはっ、良いかも。
ひなちゃんも、早く大人になって保育園に行けるように・・・ならなそう(笑)
親子は甘やかすだけだからなあ。
お兄ちゃん、甘やかし過ぎ。
けいったんさま。
きえさま。
きえさんも早いって言ってましたねえ。
私、何だか甘く見てました。
だって、あまりにも子供なんですもん。
けど、彼等はちゃんとした大人でしたねえ。社会人だった(゜ロ゜)
乳児園?あはっ、良いかも。
ひなちゃんも、早く大人になって保育園に行けるように・・・ならなそう(笑)
けいったん様
こんにちは。
> 出たよ!和紀の過保護っぷりがぁ~今更ですけどね...┐(^~^;)┌
> でも日生が、落ち着いてくれて安心!
> さすが、和紀は ひなの特別な存在ですね♪
出ました!!(爆)
どこまでも甘過ぎる保護者です。
でもこうして日生の不安を取り除いちゃうんですからね~。
お兄様、すごいです。
> 今回のひなに起こった出来事、和紀が ひなに言った言葉に 周防パパは、どう思うのか。
> 周防パパ、冷静なご意見をお願いします!
> どうぞ宜しゅう(o^▽^)o)ペコッ...byebye☆
周防パパも落ち着いた人です。
無理に何かを押し付けたりしません。
全ては日生のことを考えて~、って受け止め方も寛大です。
さて、保育園…。
そうですね~。年齢的に早い…うん、そうかも。
日生には保育園以前の乳児用施設でないと…。
そう、無菌培養で育ってますからね~。
保育園の中で一人殻に閉じこもっていそうです。
(え、でも乳児院、作りませんよ~笑)
コメントありがとうございました。
こんにちは。
> 出たよ!和紀の過保護っぷりがぁ~今更ですけどね...┐(^~^;)┌
> でも日生が、落ち着いてくれて安心!
> さすが、和紀は ひなの特別な存在ですね♪
出ました!!(爆)
どこまでも甘過ぎる保護者です。
でもこうして日生の不安を取り除いちゃうんですからね~。
お兄様、すごいです。
> 今回のひなに起こった出来事、和紀が ひなに言った言葉に 周防パパは、どう思うのか。
> 周防パパ、冷静なご意見をお願いします!
> どうぞ宜しゅう(o^▽^)o)ペコッ...byebye☆
周防パパも落ち着いた人です。
無理に何かを押し付けたりしません。
全ては日生のことを考えて~、って受け止め方も寛大です。
さて、保育園…。
そうですね~。年齢的に早い…うん、そうかも。
日生には保育園以前の乳児用施設でないと…。
そう、無菌培養で育ってますからね~。
保育園の中で一人殻に閉じこもっていそうです。
(え、でも乳児院、作りませんよ~笑)
コメントありがとうございました。
○様(間違いなくちー様だと思っておりますが)
こんにちは。
> ここは、清音さんか!
> 親子は甘やかすだけだからなあ。
> お兄ちゃん、甘やかし過ぎ。
どこまでも甘やかします。
親子共々日生には甘々ですね~。
突然やってきた可愛い存在は、いつまでたっても可愛いのでしょう。
> けいったんさま。
> きえさま。
>
> きえさんも早いって言ってましたねえ。
> 私、何だか甘く見てました。
> だって、あまりにも子供なんですもん。
> けど、彼等はちゃんとした大人でしたねえ。社会人だった(゜ロ゜)
>
> 乳児園?あはっ、良いかも。
> ひなちゃんも、早く大人になって保育園に行けるように・・・ならなそう(笑)
忘れていますが、それなりに経験(?!)積んだ大人たちなんですよ~。(園児のくせして)
日生が保育園に行けるようになるには、まず『脱おにいちゃん』ですね。
何があってもこんなふうに甘やかされているんですから。
和紀が家から出そうとしないのも問題点ですけど。
(そんなんじゃ、いつまでたってもお友達の輪ができないよ~笑)
コメントありがとうございました。
こんにちは。
> ここは、清音さんか!
> 親子は甘やかすだけだからなあ。
> お兄ちゃん、甘やかし過ぎ。
どこまでも甘やかします。
親子共々日生には甘々ですね~。
突然やってきた可愛い存在は、いつまでたっても可愛いのでしょう。
> けいったんさま。
> きえさま。
>
> きえさんも早いって言ってましたねえ。
> 私、何だか甘く見てました。
> だって、あまりにも子供なんですもん。
> けど、彼等はちゃんとした大人でしたねえ。社会人だった(゜ロ゜)
>
> 乳児園?あはっ、良いかも。
> ひなちゃんも、早く大人になって保育園に行けるように・・・ならなそう(笑)
忘れていますが、それなりに経験(?!)積んだ大人たちなんですよ~。(園児のくせして)
日生が保育園に行けるようになるには、まず『脱おにいちゃん』ですね。
何があってもこんなふうに甘やかされているんですから。
和紀が家から出そうとしないのも問題点ですけど。
(そんなんじゃ、いつまでたってもお友達の輪ができないよ~笑)
コメントありがとうございました。
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