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BLの丘
契りをかわして 8
2012-03-13-Tue  CATEGORY: 契り
R18 性描写があります。閲覧にはご注意ください。


吐き出したことで全てが変わった性感帯があった。
耳元に寄せられる口元。囁かれる僅かな名前…。「伊吹…」
全身の全て…鼓膜まで犯される…。
低くて脳髄に響き渡る声は嫌ではないし…、なにより、掴んで包んでくれる逞しい腕が…。

「こ…が…」
わざと甘えたわけではない。放出を伴って意識が削がれた。
本能のままに、”包んでもらえる”と縋った精神。
「甲賀…」
弛緩した体の奥からもう一度囁くと、認めたように口端を上げた甲賀が伊吹の全身を包んだ。
一時は悔しいと思ったはずなのに、包まれる安堵に負けた。肉質の良さにホッと溜め息が零れる。
勘の良い彼は何を求めるかまで知ったのだろうか。
でも今求めたのは彼の筋肉から吹きだされる一時的な安堵。
それが自分のものになりはしないと、すでに諦めていた伊吹なのかもしれない。
そしてわかっているのだろう、甲賀も…。開き直りとは時に怖い。一時の逢瀬にあまりにも慣れてしまっていた伊吹だったが。

入り込んでくる熱。うねる肉筒が迎えた。すんなりと埋められて…。
感じる快楽を浴びるのは…、全身を覆われていく安堵と享楽。
こんなセックスは知らなかった…。溺れていく…。狂わされていく…。
連続して与えられる快楽への充(み)ち。
泳がされるようなキスも初めてだった…。
何もかもを曝け出すセックスも初めてだった…。
「やめて」と強請っても止められることのなかった愛撫と性交。
だけど嫌うことなど一つもなくて…。
待つ間もなく、すぐに入り込んできた甲賀の熱に溜め息とも喘ぎとも分からないものが発された。
「あ…っ、んっあっっっ」
一度達したおかげで、体の全てが…、鼓膜まで性感帯だった。どこを触られても意識を飛ばしそうになる。
「伊吹…」
両足を抱え上げられ、重なった体の先で囁かれる名前。
ブルッと震えると、「もう一回は待ってよ…」と囁かれる。
萎えたはずだった先に手のひらが入り込み…。
手のひらの温かさがあるはずなのに表面温度の冷たさにドクリとする。
握り込まれて、その反応など感じ取っているのだろう。
ゆるやかに動いていたはずの掌が、明らかな動きを見せた。

「い…っやぁ、だめっ、こ…が、ぁ…来てぇ…」
何の気も無しに誘ったいつもの言葉のように思えたが…。全てが違っている。…それが本音…。
口端を上げた甲賀はゆっくりと中途半端だった侵入を全て果たす。
それからの動きは恐ろしく緩慢だった。
伊吹は我を忘れて、何度放出の時を迎えたのだろう…。

気を失うまで溺れた。
訳も分からない言葉を幾度も口走った。
その中には、「甲賀、好き…っ」という言葉もあったような気がする。
溺れていく中で、甲賀は決して伊吹を離しはしなかった。
どんな体位になろうと、しがみつく伊吹を守るように…。
だからこそ発せた言葉だったのか…。
それが、いままで感じたことのない愉悦と安堵だったのだと、伊吹自身知ったのだろうか…。

こんなことは本当に初めてで…。セックスが気持ちいいものだと初めて知って意識がすり替えられた。
甲賀と繋がっている時は、『早く終わりにして』とも、自分から何かを強請ることも失った。
相手の思うままに翻弄させられる。
その中で生きられる。

「こうが…っっ」
「伊吹…」
耳元に届いた、鼓膜という一番の性感帯に響く声…。

伊吹は意識を飛ばすまで、何度も執拗に甲賀に責め立てられ、そのそばでどれほど縋りついても動じない逞しい体を感じて安堵した。
“守ってくれる”…。
一時的なものでもいい。
やすらぎを得たい心は、”見た目”にでも平気で縋りついた。
まさに、一時だったのだ。今が安らげればいいと…。
顧客との関係などその程度だと…。最初から多くは望んでいない。
それなのに反面で引きずった心…。

『気持ちいい…』

セックスに対して初めて感じた、快楽。…その他にもらえた精神的な癒楽。
一夜だけの出来事にしてはあまりにも大きかったことだと実感しつつ、明け方、目を覚ました伊吹はバスルームを使用した。
甲賀も疲れたのか、まだ起きる気配がない。
布地に包まれているが、触れた筋肉質な体は伊吹が知っているものだ。
他の何人…。そう考えて虚しさに思考を止める。
年上という立場、相手が顧客ということを思って、静かに甲賀が吸っていた煙草の下にホテル代を意味する一枚の札を置いた。
二度とこんなことはないだろう。それとももう一度あってほしいのか…。
複雑な思いは、感じた体に直結している。…あんな体験は、過去になかった…。…もう一度…。
狂って何もかもを失った時間…。

疲れた体を引きずるように、表通りに出てタクシーを拾った。
春の夜明け。薄らと白じんできた時間帯。
もう、…まだ…、寝ていてくれればいいと願った先の、帰りついたマンションには、明りが灯っていた。

電気をつけっぱなしで寝ているんだろうか…。まさか待たれているんだろうか…。
色々考えはしても、伊吹が帰る場所はここしかなかった。
何の物音もしないマンションの廊下を歩き、静かに鍵を開ける。
夜明け前、何一つ音がしないことに安堵して自室に入ろうと廊下を歩いた先…。
カチャリとあいたドアがあった。
浅井信楽(あさい しいら)。過去、仕事を失った時から伊吹を精神、経済共に面倒を見てきてくれた、二つ年上のフリーライターである。

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やっと話が進んだよ… ┐( ̄ヘ ̄)┌ フゥゥ~
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コメント

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No title
コメントけいったん | URL | 2012-03-13-Tue 01:05 [編集]
”R”シーンも勿論だけど 伊吹の心身共にの”極み”を ガン見してた私も ヘトヘト~_ノフ○ グッタリ

多賀の口角上げる笑いが ニヒルで痺れる!
それに (お+か)される様な声って 一度 拝聴したいものですわ~壁|▽//)ゝ

これで 2人の関係が変われば いいのになぁ
・・・と、思ってたら 第3の男が登場!
こ、これは!三角関係!?
波乱・キタ━━━(゚∀゚).━━━!!!...byebye☆
一気読み
コメントちー | URL | 2012-03-13-Tue 05:48 [編集]
やだあ、11日はお休みって言ってたのに~。
まあ、おかげで楽しんじゃった(笑)

伊吹さんに男が!
甲賀はどうする?

私も、伊吹さんと筋肉楽しみました。
ありがとう、甲賀。また、脱いでね。

Re: No title
コメントたつみきえ | URL | 2012-03-13-Tue 07:40 [編集]
けいったん様
おはようございます。

> ”R”シーンも勿論だけど 伊吹の心身共にの”極み”を ガン見してた私も ヘトヘト~_ノフ○ グッタリ
>
> 多賀の口角上げる笑いが ニヒルで痺れる!
> それに (お+か)される様な声って 一度 拝聴したいものですわ~壁|▽//)ゝ

私もぐったり(-_-;)
壁に耳がぁぁぁ。私も聞いてみたいです。
なんでしょうね、フッって笑うみたいです。
まだ?もう? 29歳のくせして(笑)

> これで 2人の関係が変われば いいのになぁ
> ・・・と、思ってたら 第3の男が登場!
> こ、これは!三角関係!?
> 波乱・キタ━━━(゚∀゚).━━━!!!...byebye☆

やっと1日目が終了ですよ~。
私の、この引きずる書き方はどうにかならないものかと…(←)
そして、出てきましたヽ(゚∀゚)ノ
だって二人しかいない話、つまんないでしょ?!
コメントありがとうございました。

Re: 一気読み
コメントたつみきえ | URL | 2012-03-13-Tue 07:45 [編集]
ちー様
おはようございます。

> やだあ、11日はお休みって言ってたのに~。
> まあ、おかげで楽しんじゃった(笑)

すみませーん。予告はあてになりませんね~(笑)
適当に覗いてみてってとこでしょうか。
でも楽しんでもらえたようで良かったです。

> 伊吹さんに男が!
> 甲賀はどうする?
>
> 私も、伊吹さんと筋肉楽しみました。
> ありがとう、甲賀。また、脱いでね。

甲賀と伊吹の関係が現在どんなものなのでしょうか。
伊吹は開き直り型みたいなんですけど、この一夜は何か変えたんでしょうね。
甲賀は好みの体だし。(←体かよ、なんだけど…)
また脱いでくれるかなぁ。
脱いでくれるようにお願いしてみます(笑)
コメントありがとうございました。

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