幾度も精子を吐き出した性器からは、ほんの僅かな白濁しかこぼれなかった。
それが何を意味することか、見つめた信楽は理解できるだろう。
もう何も言われなかったけれど…。
動かない体…。信楽は性交の後処理もしてくれて、伊吹を抱きかかえ、ベッドまで運んでくれた。
伊吹のために…。信楽の感情が、想いが、痛いほど見えてくる。
同時に、この人を裏切った自分が悪い、と、これで許してくれた信楽に感謝すべきだとも思った。
ただ抱くだけの甲賀とは違うのだと…。
雨の日、いつものように営業活動に出掛ける。
居てくれないことを願った。滅多に事務所に顔を出す人ではないけれど…。
同じように顔を出してくれているかもしれない人に用事があった伊吹だ。
「こんにちは~」
明るい笑顔を振りまいて…。だけど真っ先に視界に飛び込んできたのは、普段は空いた奥の席に座る甲賀の姿。
思わず顔が引きつりそうになるのを、手前にいた年上の社員に視線を反らすことで誤魔化した。
「多賀さん、元気だね~。こんな薄暗い日に顔を見ると、明るい気分になれるよ」
「そうですか~?そう言ってもらえるとお邪魔して良かったです。これ、今月の冊子です。あ、そうそう、新しい商品が出たんですよ~」
「俺ももう歳だからな~」
「でしょ、でしょっ」
「『でしょ』はないだろ~」
「あ、そうですね。大丈夫です。まだバリバリ現役で~。でも保険は考えてくださいよ~」
会話を聞いていた周りからも笑い声が漏れる。
仕事の邪魔になっているはずなのに、伊吹が登場したことで、ひと息いれる休憩時間のようだ。
こんな雰囲気がこの会社の明るくて来やすいところでもあった。
順に席を回り、配布物を置いて、最後が甲賀だった。
「久し振りじゃん」
そうしょっちゅう事務所に顔を出すような二人ではなく、誰に聞かれても問題のない一言だが、甲賀が発した言葉に、伊吹には重い意味が込められていた。
あの日以降、伊吹は甲賀の誘いに応じなかった。
「ご無沙汰してま~す。はい、こちらどうぞ」
当たり障りのない台詞が吐き出され、すぐにでもその場を離れようと踵を返す伊吹の手首を、甲賀の大きな手が掴んだ。
「待てよ」
驚いたのは伊吹のほうだ。こんな場所で堂々と関係をバラす気はこれっぽっちもない。
それこそ、体を武器にした営業マンだと、今まで思いもしなかった連中にまで過らせる可能性がある。
「はい、何でしょう。新しい保険のご案内ならいくらでもしちゃいますよ~」
無駄に明るく振舞う伊吹の態度に甲賀も気付くものがあるのか…。
「じゃあしてもらおうか。後でうちに来てよ」
それがただの口実だとは分かる。他の社員の目の前で、営業を語ってプライベートな時間に会う理由だった。
「え…、うち…?」
「早速今日とかどうよ?」
「多賀さん、売るね~」
こんな声のかけられかたをして断れるわけがなかった。誰だって契約の一つを大事にする。
売り上げが見込めると思えば食いついていくのが営業というもので…。
職場で話すより自宅でゆっくりと…と思う社員がいるのもおかしな話ではない。
「え、と…、石部さん…」
「住所、知ってんだろ?終わったら連絡するから」
あまりにも堂々と発される全ての言葉に、頷く以外の行動が取れるだろうか。
表情が引き攣りかける伊吹を感じるのか、甲賀の手が離れた。
ホテルで会うことは何度もあっても、自宅に呼ばれたことはない。本気だろうか。
彼の生活が知れる場所…。
嘘でもいい。
久し振りに出会い、その手に触れられて、伊吹の欲望が体を巡ってしまった。
事務所を出て、雨の中に下りたって、降ってくる雨を見上げた。
伊吹の心みたいだ。
信楽に何度抱かれても、甲賀がくれたような”気持ち良さ”は得られなかった。
素を曝け出すような、狂ったセックスはあれから一度もない。
伊吹がしがみついて、守ってくれるような力強さが感じられない。それは余計に伊吹の気持ちを冷めさせた。
演じるセックスではなくて、体の相性のいいセックスがしたい…。
一度覚えた味は、簡単に消えてはくれなかった。
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それが何を意味することか、見つめた信楽は理解できるだろう。
もう何も言われなかったけれど…。
動かない体…。信楽は性交の後処理もしてくれて、伊吹を抱きかかえ、ベッドまで運んでくれた。
伊吹のために…。信楽の感情が、想いが、痛いほど見えてくる。
同時に、この人を裏切った自分が悪い、と、これで許してくれた信楽に感謝すべきだとも思った。
ただ抱くだけの甲賀とは違うのだと…。
雨の日、いつものように営業活動に出掛ける。
居てくれないことを願った。滅多に事務所に顔を出す人ではないけれど…。
同じように顔を出してくれているかもしれない人に用事があった伊吹だ。
「こんにちは~」
明るい笑顔を振りまいて…。だけど真っ先に視界に飛び込んできたのは、普段は空いた奥の席に座る甲賀の姿。
思わず顔が引きつりそうになるのを、手前にいた年上の社員に視線を反らすことで誤魔化した。
「多賀さん、元気だね~。こんな薄暗い日に顔を見ると、明るい気分になれるよ」
「そうですか~?そう言ってもらえるとお邪魔して良かったです。これ、今月の冊子です。あ、そうそう、新しい商品が出たんですよ~」
「俺ももう歳だからな~」
「でしょ、でしょっ」
「『でしょ』はないだろ~」
「あ、そうですね。大丈夫です。まだバリバリ現役で~。でも保険は考えてくださいよ~」
会話を聞いていた周りからも笑い声が漏れる。
仕事の邪魔になっているはずなのに、伊吹が登場したことで、ひと息いれる休憩時間のようだ。
こんな雰囲気がこの会社の明るくて来やすいところでもあった。
順に席を回り、配布物を置いて、最後が甲賀だった。
「久し振りじゃん」
そうしょっちゅう事務所に顔を出すような二人ではなく、誰に聞かれても問題のない一言だが、甲賀が発した言葉に、伊吹には重い意味が込められていた。
あの日以降、伊吹は甲賀の誘いに応じなかった。
「ご無沙汰してま~す。はい、こちらどうぞ」
当たり障りのない台詞が吐き出され、すぐにでもその場を離れようと踵を返す伊吹の手首を、甲賀の大きな手が掴んだ。
「待てよ」
驚いたのは伊吹のほうだ。こんな場所で堂々と関係をバラす気はこれっぽっちもない。
それこそ、体を武器にした営業マンだと、今まで思いもしなかった連中にまで過らせる可能性がある。
「はい、何でしょう。新しい保険のご案内ならいくらでもしちゃいますよ~」
無駄に明るく振舞う伊吹の態度に甲賀も気付くものがあるのか…。
「じゃあしてもらおうか。後でうちに来てよ」
それがただの口実だとは分かる。他の社員の目の前で、営業を語ってプライベートな時間に会う理由だった。
「え…、うち…?」
「早速今日とかどうよ?」
「多賀さん、売るね~」
こんな声のかけられかたをして断れるわけがなかった。誰だって契約の一つを大事にする。
売り上げが見込めると思えば食いついていくのが営業というもので…。
職場で話すより自宅でゆっくりと…と思う社員がいるのもおかしな話ではない。
「え、と…、石部さん…」
「住所、知ってんだろ?終わったら連絡するから」
あまりにも堂々と発される全ての言葉に、頷く以外の行動が取れるだろうか。
表情が引き攣りかける伊吹を感じるのか、甲賀の手が離れた。
ホテルで会うことは何度もあっても、自宅に呼ばれたことはない。本気だろうか。
彼の生活が知れる場所…。
嘘でもいい。
久し振りに出会い、その手に触れられて、伊吹の欲望が体を巡ってしまった。
事務所を出て、雨の中に下りたって、降ってくる雨を見上げた。
伊吹の心みたいだ。
信楽に何度抱かれても、甲賀がくれたような”気持ち良さ”は得られなかった。
素を曝け出すような、狂ったセックスはあれから一度もない。
伊吹がしがみついて、守ってくれるような力強さが感じられない。それは余計に伊吹の気持ちを冷めさせた。
演じるセックスではなくて、体の相性のいいセックスがしたい…。
一度覚えた味は、簡単に消えてはくれなかった。
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いやぁ~見ていて 恐ろしい程の膠着状態で(笑)
全て 伊吹次第って事でしょうか?
しかし 肝心の伊吹がねぇ~(´-ω-`)ウーン・・・
それとも 甲賀の この誘いで 変わるのかな?
伊吹の心変わり(体変わりとも言う)を知っていて 黙っている信楽が、ちと可哀想になって来た私です。
不憫じゃのぅ(ノェ`。)ウゥッ・・・byebye☆
全て 伊吹次第って事でしょうか?
しかし 肝心の伊吹がねぇ~(´-ω-`)ウーン・・・
それとも 甲賀の この誘いで 変わるのかな?
伊吹の心変わり(体変わりとも言う)を知っていて 黙っている信楽が、ちと可哀想になって来た私です。
不憫じゃのぅ(ノェ`。)ウゥッ・・・byebye☆
けいったん様
こんにちは。
> いやぁ~見ていて 恐ろしい程の膠着状態で(笑)
> 全て 伊吹次第って事でしょうか?
> しかし 肝心の伊吹がねぇ~(´-ω-`)ウーン・・・
>
> それとも 甲賀の この誘いで 変わるのかな?
>
> 伊吹の心変わり(体変わりとも言う)を知っていて 黙っている信楽が、ちと可哀想になって来た私です。
> 不憫じゃのぅ(ノェ`。)ウゥッ・・・byebye☆
伊吹、なにげにひどい男です(笑)
この後ねぇ…。
甲賀とどうなっていくのか、まぁのんびり待っててください。
信楽の努力は報われるのかしら。
大人な信楽、思い通りに過ごしていく甲賀。本能のままの伊吹…。
また何か動き出さないと…(←)
コメントありがとうございました。
こんにちは。
> いやぁ~見ていて 恐ろしい程の膠着状態で(笑)
> 全て 伊吹次第って事でしょうか?
> しかし 肝心の伊吹がねぇ~(´-ω-`)ウーン・・・
>
> それとも 甲賀の この誘いで 変わるのかな?
>
> 伊吹の心変わり(体変わりとも言う)を知っていて 黙っている信楽が、ちと可哀想になって来た私です。
> 不憫じゃのぅ(ノェ`。)ウゥッ・・・byebye☆
伊吹、なにげにひどい男です(笑)
この後ねぇ…。
甲賀とどうなっていくのか、まぁのんびり待っててください。
信楽の努力は報われるのかしら。
大人な信楽、思い通りに過ごしていく甲賀。本能のままの伊吹…。
また何か動き出さないと…(←)
コメントありがとうございました。
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